満足度★★★★★
'80年の若者の生態は知らないが
目の前にはこの場を生きている人達がいた、というかいるように見えた。大きなドラマはないけどそれほど自然な空気感で描かれた秀作。
満足度★★★★★
モラトリアムはうらやましいけど(たぶん)終わりがある
芝居が進むにつれて、一人ひとりが魅力的に見えてきて、
そんな彼ら中にいたいと思わせる。
こんな感じならば、旅をするのも悪くない。
悪くないどころか、とってもうらやましい。
彼らへのうらやましさは、モラトリアムのうらやましさだ。
旅というある種の「言い訳」の中で楽しくモラトリアムな時間を過ごす人たち。
観ていて、「ああ、若いときに旅に出ればよかった」と思った。
ま、言い訳があってもなくても、どこにいても
同じと言えば同じなのだが。
同時多発的に交わされる会話の中にいると、
まるで同じ安宿のこちら側に座っているような感覚が襲う。
それは、入口に立ち挨拶する人に、
うっかりしていると「行ってらっしゃい」と
声を掛けそうになるぐらいの感覚だ。
満足度★★★★
狭間
日常と非日常、ありきたりと虚構の混在をもって、
時代の動きを表そうとしているかのようです。
その世界観に引き込まれ、なかなか小気味よかったです。
満足度★★★★★
明るさへの羨望。
『眠れない夜なんてない』の老人たちの帰れない悲壮感が2000年代的で、
『冒険王』の若者たちのどこにも行かない妙な勇壮感が1980年代的で、
なんて割り切れる問題じゃないのは分かっている。
あの若者たちが過去の人たちであるようにどうしても見えてしまう。
妙なポジティブさが安宿の中を支配しているのは、羨ましい。
羨ましいということは、今、日本にいて彼らが眩しく見えるからなのだろうか。
彼らはどう見ても怠惰で、褒められた存在なんかじゃない。
でも自分が、そこに“在る”可能性を、どうしても見出せない。
だから羨ましいのか?
日本人のバックパッカーは減っているという。
この芝居に過去を感じる一つの理由として挙げてもいいかもしれない。
それが、日本人の進化なのか退化なのか、判断には困るけど。
なんてことを考えた。
でも、明るいことは羨ましい。その気持ちに嘘はないんである。
俳優陣も充実。実際に若い人たちより随分若い印象が逞しい。
すでに、歴史物なおもむき。
ただ、それゆえ、たとえば江戸時代の若者が江戸若者群像を描いたとしても、それをいま舞台でそのまま忠実に再現されても若者っぽくみえないように(たぶん)、この作品はあまり若者の話には思えなかった…。
いまどき忠義とかお家再興とかを熱く語らないよね、という感じ?
満足度★★★★★
東京の、地域演劇を思う
最近観た、青森の劇団、弘前劇場の舞台「いつか見る青い空」が、頭から離れない。はっきりとしたスジのない、津軽の日常を淡々と描く、同時多発会話劇だ。洗練されているとは言いがたく、むしろ、泥臭いその舞台では、生身の役者の人生が、生き生きと、はっきりとした輪郭をもって迫ってきて、僕は、圧倒された。
青年団の、12年前の作品の再々演である今作は、目的なく世界をぶらぶらする、日本人旅行者たちのたまり場となっている、イスタンブールの安宿が舞台。総勢18人の旅行者たちの日常を、複雑な同時多発会話によって、淡々と描く作品。
これを観て、僕は、完璧な作品だ、と感じた。本当に面白かった。見方によっては重いテーマを、受け止め易いものにしている、全編にちりばめられたユーモアのセンス。複雑な会話を、とても分かり易く伝える、巧みな構成。しっかりと訓練されて、自らの役を、過不足無く演じる役者たち。どれをとっても、完璧で、洗練されつくしている。
そして、僕は、弘前劇場を、また思い出すのである。両者が、とても似ているのに、全く、正反対のものとして、映る。そしてそのとき、青年団の舞台が、とても、東京的なものとして、みえてくるのだった。すこし、そのことを、考えてみようと、思った。
向かうはいずこ?
終わりを決めずに旅をする人々。彼らが集まる安ホテルでのひととき。そこには浪漫の様なものはなく、母国から離れた土地に馴染んで暮らす日常があるのみ。しかしそれはその土地にいるからこその日常。帰る時を決めていない彼らではあるものの、いつかは戻る時が来る。その時まで許された僅かばかりの非日常。
生き様の一部を切り出しているので、それこそ劇的な起承転結を区切りながらの進行ではない。むしろ承がひたすらに続く。しかしながら人物の前後の生き様が見えるので物足りなさはない。そもそも人生なんて大半の時間を承として費やすもの。だからこそまだまだ先がある。
古舘さんを初め、好きな役者ばかりで御馳走様でした。二反田さんはハイバイの「て」に出てましたっけ?あの女子大生コンビはかなり贅沢。堪能。
満足度★★★
あー、見た、見た
30年前は、若者が「日本」からこぼれ落ちていた。
今年の「眠れない夜はない」は現在、高齢者が「日本」を捨てようとしている。
30年の時を経て、妙にリンクしているんだなぁ。
オリザの外側から「日本」を考える、というのが、見事に08年を締めくくっている。
うーーむ。
とってもうまいできで、あっというまの感じでした。
いやいや、さすが青年団。
見事なもんです。
満足度★★★★
ちょっとずつ自分
登場人物を少しずつつなぎ合わせていったら
自分が完成する気がする。
そういう意味でも“終わった感じがしない”作品。
「7割は実際に交わされた会話です」と当日パンフレットの前書きに書いてあった。
演劇に成るのに、7対3の比率がすごく重要なんだろう。