満足度★★★★★
鑑賞日2016/09/24 (土)
流山児★事務所も風琴工房も好きでよく拝見しているけれど、それぞれの持ち味が活かされて、絶妙のバランスとなっていた。
フィリピン人との混血の青年の半生を軸に、義賊めいて親しみやすい沖縄の裏社会の人々が、沖縄の日本返還で本土のヤクザに牛耳られることを恐れ、結託しようとする経緯と、時の総理大臣 佐藤栄作と首相の肝入りで返還の交渉に携わった政治学者の苦渋の選択。
重いテーマやさまざまなバックボーンを踏まえた物語なのだけれど、転換や解説もショーアップされて楽しく、至近距離で観るアクションの迫力に眼を奪われた。
沖縄の置かれた立場の矛盾も苦悩も伝えつつ、ストーリーの面白さに引き込まれ、さまざまな場面で笑い、手に汗握る。骨太でアングラで、でも緻密さやスマートさも感じさせる、絶妙のバランス。加えて、登場人物がそれぞれとても魅力的で、ああ、もう一度観たかったなぁ、と思った。
満足度★★★★
THE小劇場的な空間にこれでもかと繰り広げられるエネルギッシュなパフォーマンスに圧倒されました。詩森さんらしく解説も転換も全てがパフォーマンス!楽しかったなぁ。五島三四郎さんをはじめとする俳優陣がとにかく格好良かった。沖縄返還の密約とヤクザの抗争。全く交わることのない出来事が並列に語られるのに個人的にはちょっと違和感があったんだけど、現在の国と沖縄住民との乖離を考えると腑に落ちるかなぁ。主人公が死なない選択をする結末にすごく救われた気がしました。
満足度★★★★
本土復帰の年、沖縄じゃ沖縄の時間が、流れていたさァ。
流山児+風琴の合同公演という趣き。役者は流山児主体だが演出的仕上り、また役者も2,3人混じって、風琴らしい。
ヤクザの視点で本土復帰当時の沖縄の民衆の温度を伝える芝居。沖縄は地理的にも「日本」という領域を構成する四島からは遠い。これは「日本という奇異な精神風土に染まらない)健全さを維持し得る距離だが、日本政府によって米国に売り渡されている(今も)現実も「距離」の一面だ。
さて沖縄の「庶民」、それも下層に属する(上層が存在したのかは知らないが)人々の自らを語る中に「混血児や親を知らない者が多い」・・という台詞があった。米軍=強者と、被占領民である沖縄人=弱者の関係を如実に表わす台詞として、今は迫ってくる。
男は「力」に憧れ、女は風俗業に身をやつす。本土復帰を前に、「力」は対本土(のヤクザ)に向けて結集されるが、うまく立ち回ろうとする欲は本土とのパイプやパワーバランスの活用に手を出してしまうという悲しい顛末もある。裏社会では「沖縄」は分断され、潰された。
主人公は母の手一つで育った(なぜか)フィリピン人との混血、これと一風変わった彼の親友がいいコンビで、「組織」に居る本土帰りのエリートのキャラクター設定もうまかった。破天荒で命知らずだが「太陽」のように周囲を照らす、と評される男、そいつに殺されかけた過去を持ちながら、大義(沖縄を本土の魔の手から守る)のためにその男とも契りを交わす武術を身につけた男、その男に惚れ、危険な選択にも奥歯を噛み締めて同意する女房・・・役者揃いである。
さて「沖縄」で進行するドラマにしばしば挿入されるのが佐藤栄作総理大臣と、彼が沖縄復帰交渉を委ねた某という学者の対話シーン。これは本土復帰が沖縄の「権利回復」でも何でもなく、実質は占領期と変わりない米軍の権利が継続することを「密約」で約束しながら、表向きには、「核抜き本土並み」を取り付けて復帰の「偉業」を成し遂げた演出がなされる、その裏側を暴露するシーンなのだが、惜しいことにこれが判りづらい。
沖縄の物語の、重要な背景を説明しているが、佐藤首相という人物、交渉者の○○という人物が、それぞれどういう動機や目的で行動しているのかが舞台上の姿を通してはもう一つ見えて来ず、重要な基本情報だけにもう一工夫できなかったか・・という憾みが残った。
満足度★★★★
繋がりは今一つ
沖縄返還時の佐藤-ニクソンの密約を軸に、時間的にはその前後の時期の沖縄裏社会を描く。裏社会がなぜ存在し続けたのか、本渡と何が違うのか、などを描きつつ、背景にある密約=沖縄差別を見せようとしているように思える。エンターテインメントとしても面白いが、やはり、この関係をしっかり見せてもらう方が興味深い。
満足度★★★★
OKINAWA1972
約1時間55分。敗戦から返還前後の沖縄の歴史を、現地の「ヤクザ」の闘争を通じて描く。地下の小空間で大勢が元気に踊り歌い暴れ、可動式大道具で場面転換。徹底したエンタメ演出になってて楽しい!米国との密約の成り立ちも教えてくれる。ひどい現実知るべき。日島亨役の五島三四郎さんが見惚れるほど良い。流山児★事務所&風琴工房の熱いマリアージュで小劇場演劇の醍醐味を味わえた。