荒野より呼ぶ声ありて 公演情報 荒野より呼ぶ声ありて」の観てきた!クチコミ一覧

満足度の平均 4.0
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  • 満足度★★★★

    地の底から湧き出た鬼
    冒頭、白い布で包まれた棺のような箱が置かれ、息子が苦悩している様子から始まる。

    何もない世界の果て。
    少年は世界の終わりを望んでいたのかも知れない。

    少年は誰と何を話してもちぐはぐな感じがしていた。


    以下はネタバレBOXに。。

    ネタバレBOX



    「出刃包丁の刃はあの子の体の中に、柄の方はあの子の部屋の机の上に投げたじゃあないですか。サシミ包丁は血を流そうとして流し台の中に、もう一つの包丁は体に刺さったままですよ。」と妻は夫に回答する。




    少年の両親は、家庭内暴力を振るっていた長男を更生させようと、あらゆる手は尽くした。
    長男は手に負えない鬼だった。


    少年の高校中退から23歳に至るまで

    「もう打つ手はないと悟った時、俺の中の鬼が俺を食い破って外に出た。」と夫。


    「私、疲れちゃった。もういいよね?私、たくさん努力したから、もういいよね?」と妻。



    あの子はきっと喜んでいる。
    供養しよう。
    全ては終わった。
    これからは心置きなく第二の人生を迎える事が出来る。。





    場面は変わり、少女と少年は好き合っていた。
    少年はいつ別れを切り出されるか、恐くて自分から別れを告げた。
    少女は少年を好きだって気持ちに際限がなく、その事が恐かった。


    少女は少年を殺した両親を憎み、言葉で両親を追い詰め罵倒します。

    物凄い迫真の演技です。
    鬼がかりの迫力!
    少女役の吉村ひろの。素晴らしいです。

    過去の観劇の記憶を遡っても彼女ほどの鬼気迫る演技を観たのは始めての事です。

    たぶん、この迫力はこの場に居た方でないと、到底解らないはず。
    あんな可愛らしく華奢な女優が鬼と化す瞬間。
    声まで裏返って本当に鬼でも降臨したかのよう。
    男性観客は相当、ビビッタはずだ!



    九州に引っ越すという両親を

    「許さない。地の果てまで追いかけてやるから、そう思え!」






    一方、死んだ長男が少女に問いかけます。

    僕は殺される為に生まれてきたの?



    でも、せめて殺される側で良かったね。



    僕に親を殺す事が出来ただろうか?



    鬼はいつ反転して出てくるか解らないでしょう?
    少なくとも貴方の両親はその鬼に怯えていた。
    「殺される前に殺せ!」
    貴方を殺人者にしない為でもあった。
    殺すか殺されるかしかなかった。
    親をどう思ってる?



    殺してあげたい。。
    親を愛していた。愛されたかった。



    愛されていたよ。
    ああいう愛しかたしか出来なかったけどね。



    愛はひょっとしたら、僕ら親子は殺し殺される事だったのかもしれない。







    長男を刺殺した浦和の高校教師は欺瞞的な家に育ち、常に優等生でいい子だった。教師になっても模範教師で、本当の自分を殺してきたようです。

    妻も夫の両親と同居し良妻賢母を演じてました。


    そうして、少年は生きているうちから人間として壊れていた。あの子の苦しみは底知れない・・。



    「出刃包丁の刃はあの子の体の中に、柄の方はあの子の部屋の机の上に投げたじゃあないですか。サシミ包丁は血を流そうとして流し台の中に、もう一つの包丁は体に刺さったままですよ。」


    とのセリフで暗くなります。

    爆音が響いて瞬時、明るくなります。


    すると、夫のヌードの上に妻役の菅原みなみの折り重なった全裸が・・横たわっています(@@!)

    いあいあ、美しいです。
    ひじょうに美しいヌードです。


    それをジッと見つめて棍棒を持った長男が佇んでいます。




    この最後のシーン。

    殺すという言葉。アブラハムのセリフが何度も出てきた事から想像すると、宗教的な要素があるようだ。
    実際に殺しては罪だが、宗教の上では殺人が認められているらしい。。


    ひじょうに重いテーマを真摯に取り組んでいました。
    何度も改訂しながら再演を重ねてきたようで、油がのってました。


  • 鬼がいたんだね
    理想の家庭というしがらみのなかで、それぞれがきっと無理をしていたのですね。呼ばれるとやはり行きたくなってしまうのが“人間”なのでしょうね。

    ネタバレBOX

    一発目の音で耳が張り裂けそうでした。吉村ひろのさんの迫力よりはなんてことなかったかもしれませんが。

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