音楽劇 夜と星と風の物語 公演情報 音楽劇 夜と星と風の物語」の観てきた!クチコミ一覧

満足度の平均 4.6
1-8件 / 8件中
  • 満足度★★★★

    たくさんの自分、ひとつの自分
    『夜と星と風の物語』は、じわりとしみ込む物語だ。きっと、観た人全部の中に、地下水脈としてたたえられていることだろう。

    それは静かに、いつかきっと、何かの機会にしみ出して、乾いた心を潤してくれることもあるだろう。そんなことを思う。なんだか、今すぐではなくて、何年か先だとか、何十年か先の僕らに向けて演じられているような、とても不思議な舞台だった。

    ネタバレBOX

    当たり前のことだけれど、舞台には、役者という人がいて、そのことに、とても安心する。役者は、誰かを演じているのだけれど、大体において、舞台の上に居る間は、特定の誰かとして、そのまま、居続ける。

    最近の前衛演劇の世界では、そういう、役者が特定の誰かになることに異を唱える流れがある。現代を生きる僕らは、いくつもの自分たちのなかを生きていて、「自分」として、一人の人物を特定する必要はないと、そういう流れにある人々は考える。そして、一人の人物を、例えば、複数の役者たちが同時に演じたりする。

    自分は、何人いるものなのか。それは、時代によってかわるものである。近代と呼ばれる時代以降、長い間、自分は一人である世界が続いた。でも、それは、終わろうとしているのかもしれない。

    自分の数はかわっても、からだの数は、ひとつ。そこに、演劇の、根本的な、救いは、ある。そういう気がする。

    舞台上には、飛行士、飛行士の恋人、飛行士の両親が、登場する。けれど、今、記した、「飛行士」は、それぞれ、別人でありながら、同じ人物のようでもある。自分の数が、無数でありながら、ひとつなのだ。たとえば、飛行士は孤児で、彼の両親は、砂漠で、行方不明になった。つまり、「飛行士の両親」の息子と、ここにいる「飛行士」は、別人だ、ということになる。でも、今、この両親は砂漠をさまよっていて、そのまま、帰らなかったとしたら、「砂漠で行方不明になった」ことにはならないか。また、彼らは、昔、飛行士と、飛行士の恋人として、墜落した砂漠でさまよったという、今現在の記憶を共有しており、飛行士と恋人は、彼ら自身であるようでもある。こういう具合に、彼らは、ほとんど共通の記憶を共有しながら、すんでのところで、重なることができない、いくつもの自分たちなのである。

    星の王子さまは、こんなことになってしまったのは、自分がやってきて、時間が混乱してしまっているからだ、という。そして物語は、この混乱を収束するために、後半、猛スピードで疾走し、からまりあっていた時間は、鮮やかにほどけていき、そして、ほどけたその先には、誰も残らない。

    なんと静かで、不思議な物語だろう、と思う。このような、目に見えないものを描こうとする、抽象的な物語が、目に見える舞台という形をとろうとする。それを可能にするのは、舞台上に、役者という身体がいる、ということだ。彼らが動き、話し、歌うことで、僕らは、そこに描かれている抽象の向こうに、人の営みが捉えられていることに、そうとは知らずに気づくのである。

    舞台の袖で、音楽も、生身の身体によって、奏でられる。抽象を表現する全てが、あえて、全ての要素をそぎ落とされたとしても残らざるを得ないだろう、ひとつの身体たちによって、具体的なものとして現前される。

    そして、僕らは、確かに、そこに、居たのである。きっと、その場にいた他の誰かと、この舞台の話をしても、通じあうことはないかもしれない。みんな、違うことを感じたかもしれないのだ。それほど、今は、立場が、たくさんある。それでも、確かにそこに、一つの身体として居たというそのことだけは、きっと、共有できるのである。それは、たとえば未来の僕が、今の僕と、記憶を共有できなくなっているとしても、そしてそこでは、自分の数が、今と違っているとしても、やっぱり、通じ合える、ただひとつの確かなことなのだろうと、思う。
  • 満足度★★★★★

    素敵すぎる・・・!
    とても素敵で、感動しました。
    別役さんの本のテーマが自分のツボに近く、すっかり魅了されてしまった。
    役者さんがみんな可愛らしく、一人一人がキラキラしていた。
    押さえられない感情は、ネタバレBOXに!

    ネタバレBOX

    ラクダを受け渡していくシーンで、一人一人のキャラクターの覚悟に切なさを感じてボロボロ泣いてしまった。
    この人たちみんなに、幸せになってほしい。
    そう思えば思うほど涙があふれて、泣いた理由は はっきりとは説明できなかった。
    泣かせようと狙っているシーンなんか一個もない。
    楽しい。幸せ。切なさ。全部があふれている。

    言葉では表せない程 素晴らしかった!
  • 満足度★★★★

    美しく優しい空間でした。
    最後にありがとう!と言いたくなるような舞台でした。欲を言えばもう少しダンスが欲しかったし、後ろ向きでのせりふの声がこもって聞き取りにくくなったのは残念でした。別役氏の世界が少し遠慮がちに星の王子様を取り巻いたって感じでしょうか。久しぶりに皆が優しくなれたのではないでしょうか。

  • 満足度★★★★★

    素敵な舞台でした。
    本当に素敵な美しい舞台でした。
    観ていて、自然と涙が溢れるほど。
    音楽もすばらしかったです!

  • 思ったよりシンプルで
    別役氏とサンテグジュペリ氏の幸福な出会いに乾杯。
    ステキな舞台です。

  • 満足度★★★★

    星が降ってくる夜は
    すべてが豪華。夢の中へ漂わせて貰ったみたいな感覚です。
    音楽は生演奏だし、舞台美術・照明…
    もちろん役者陣もいい!!
    作:別役実さんのいつものセリフなどがぽこぽこ入っていたり、
    音楽劇ということで、あまりせりふなど考えることなくすんなりいっちゃいましたけれどね。
    傘とトランク。。。駅のホーム。。。月の砂漠。。。
    あの、チラシがそのまま舞台になったようでした。

  • 満足度★★★★★

    格調高い音楽劇
    なんて素敵な音楽劇だったんでしょうか。時空を越えた壮大な浪漫ですね。舞台も綺麗で,バンドもすごい。ボイパーではなくてヒューマンビートボックスって言うんですね,驚きました。稲本響がピアノを弾くのかと勘違いしていましたが,その音楽も最高です。

  • 満足度★★★★★

    なんて素敵な!(うっとり)
    素晴らしい!

    ひじょうに素晴らしいです。。

    とても優しく美しい演出です。
    月の砂漠さながら、大きなステージはまるで一枚の水彩画を見てるようでした。
    場面が変わるごとに、その絵画は大きな絵本のページをめくって夢の世界に誘ってくれるような錯覚に陥ります。

    以下はネタバレBOXに。。

    ネタバレBOX

    いあいあ、本当に美しいセットです。

    舞台は決して派手ではありません。
    しかし、孤独な星の王子さまは、このセットがしっくりくるのです。


    大きな月と赤い傘を持った薔薇のはな、その向こうにラクダが映り、漆黒の闇に浮かび上がった満天の星。

    どれもが素晴らしいです。

    演出家の藤原新平(文学座)、なんて素敵な演出なんでしょか!

    音楽もさながら、キャスト陣の歌の上手いこと。
    今回の舞台は欠点がないです。まったく満点!

    観ながら涙が出ました。
    美しい画と歌声に感動し、そして繊細で優しい物語に感動し、星の王子さまの可愛さに感動しました。



    星の王子さまは未来の花嫁を探すために三日間だけ、別の星に出かけます。
    そこで出会った、飛行士ピエールや、マリアンヌ、バラの花、飛行士の両親にかかわるうちに、

    「遠くのものばかりを見ていると近くのものが見えなくなる。僕の花嫁は僕の星に居たんだ!」

    と赤い薔薇の花が好きだった事に気付きます。


    星の王子さまはどなたでもご存知の物語なので、説明は必要ないでしょう。


    必要なのは、美しいものを見ると心が洗われるという事実だけ。



    本当に素敵な舞台でした。
    ここに関わった人達全てを尊敬しました。。

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