満足度★★★★
からしのきいた八編
素人が突つけば痛くてジメっと沈下しそうな話題が、劇的に生き生きと立ち上がる視角をもって切り込まれている。さらっと流す短短編から、ややじっくりといたぶる中短編まで、どの話も刺し具合が適度で芝居としてのムラもなく楽しめた。「現実」と地続きである所がミソだ。舞台の簡素な設えや、「裏」なはずの黒幕の仕切りの向こうに人が移動してるのが見えたりも、適度な風通しだと感じる。役者の佇まいも良い。お話は即ち問題をどう切り取り、評したか、というものとして、観客側に着地する。それゆえ、個々のお話にそれぞれ感想は湧き、それじたいが作者の提起した問題にコミットする事となる。
一作品だけ挙げれば、、ホームレスを扱った「今夜は住所不定」、渋谷区の条例の話題も含めてリアルに厳しい現実をなぞっている。しかし舞台であるマックの店員(外国人バイトと正社員)が、私達がそうあってほしいと思い描く人物に描かれていた、と私には見えた(現実にはもっと無理解で、当たらず触らずの対応にとどまり問題は自覚されない)。現実離れしない限度で考えられる最も温かいお話に仕上げたこと。それは「見放さない」眼差しに私には感じられた。 他のお話も、突き放して「異」なものとして笑うにとどまらず、どこか問題に踏み入っている。その具体的な場面としてそれぞれ立ち上がってみえるのだ。
短編が面白くある可能性が、こんな素朴な姿で現れてくれたという感じである。
満足度★★★★
実にシニカル・・・
コント風の短編集だけど、実にシニカルで、身につまされます。リアルすぎて、笑えないないものもありました。でもどうかと思っても、どうしようもないのですね。何か解決策はないのでしょうか。
満足度★★★★★
痴的? いや 知的!
8本の短編を連ねた90分程の短編集。タイトルつけ方からして中々捻りが効いている。無論、病ダレを想像する人が多かろうとの推理の上に成り立っているタイトルなのであるが、洒脱でイマジネイションに富んだ作家は、その持ち味を活かし各エピソードを実に有機的且つ批判的、そしてユーモラスに描き上げている。役者陣の演技も制作の人々の観客対応も実によい。無論、作品内容も知的で社会的、ちゃんと揶揄や毒も盛り込んである。いくらでも深読みできる内容なだけに、本質が捉えられていなければ作品がぶれてしまうが、今作に関わっている演劇人にその心配は無さそうだ。面白く、鋭く、同時に適確な距離を描かれる対象に対して持った作品である。