東京裁判 pit北/区域閉館公演 公演情報 東京裁判 pit北/区域閉館公演」の観てきた!クチコミ一覧

満足度の平均 4.7
1-9件 / 9件中
  • 満足度★★★★★

    パラドックス定数『東京裁判』=pit北/区域の最後
    実は、pit北/区域ではパラドックス定数の『東京裁判』しか観たことがない。
    しかし、この劇場の特殊な空間とサイズを見事に活かした作品である、パラドックス定数の『東京裁判』をここで観ることができるのが最後ということで、それならばと最終日に出掛けた。

    ネタバレBOX

    パラドックス定数の公演は、会場も作品の中にあることが多い。
    『怪人21面相』や『戦場晩餐』などがそうだ。
    そして、この『東京裁判』もpit北/区域という場が、作品の一部になっている。

    展開ももちろん、今回で4回目となる『東京裁判』なので、作品内の出来事はすべてわかっているのにもかかわらず、やっぱり作品に引き込まれてしまう。

    偶然だが、ここで過去2回観た席とは今回は方向が異なったことで、役者さんの別の表情を観ることができた。
    役者さんの視線の配り方とか、身体の方向の向け方、西原誠吾さんの唇がわなわなと震えている演技に初めて気が付いたりしたことも得した気分であった。

    今回pit北/区域が最後の最後ということもあって、やや演技の熱の度合いが強すぎた感はあるが、笑いのシーンではきちんと観客が笑い、舞台との一体感まで感じられた。
    これが「pit北/区域」での「パラドックス定数『東京裁判』」なのだなと実感した。

    パラドックス定数は、先に書いた『怪人21面相』や、226を描いた『昭和レストレイション』など、歴史的な事件や事実を背景に作品を作り上げているジャンルがある。

    「伝奇ものSF」の作家・半村良さんが、伝奇モノを書くときにどうしているか、という問いに対して「2万5千分の1の地図を広げて、そのどこかにスッとカミソリを入れ、そこを指で広げた場所を描く」というようなことを言っていたような気がする(たぶん・笑)。

    パラドックス定数の野木萌葱さんの作品は、まさに「歴史や事件の時間軸にカミソリを入れ、そこを広げた時空で演劇を描いている」のではないだろうか。
    実際の事件や歴史上いた人物や、その場にいかにもいそうな人物を配し、そこで起こっていたような出来事を妄想する、そんな感じではないだ。

    パラドックス定数の『東京裁判』は、観客の知識の濃淡をある程度踏まえて、基本的なところは押さえつつ、知識の濃淡に応じた楽しみ方ができるのもテーマの選択の上手さかもしれない。

    「東京裁判」についてほとんど知識がない人にとっては、初めて聞くような内容や登場人物だったり、ある程度の知識がある人にとっては、思わずニンマリしてしまうような設定や展開だったりだ。

    しかも、机1つに椅子5脚だけのシンプルな装置なのに、巨大な裁判所が浮かんでくるのだ。
    5人同士に向かう熱や外に向かって発せられる熱のバランスも良いから、5人が(立ったり座ったりの動きがあるものの)机の前にいるだけで延々会話するだけなのもにかかわらず、緊張感は途切れず、物語の動きやうねりを見せてくれる。

    残念なことに、pit北/区域という会場の面白さである地下の舞台を見下ろす1階席(傍聴席)から観ることができなかったのは残念ではある。

    また、どこかで『東京裁判』を観ることができると思うが、そのときにも是非行きたいと思う。
    『東京裁判』の作品の中にあるような、良い会場だとうれしい。
  • 満足度★★★★

    傍聴席と普通席両方で観劇
    Pit北/区域閉館は本当に残念。
    傍聴席、普通席と二つの位置から観られる劇場の構造は、
    この演目には貴重なファクターだったと思う。

    上から見下ろす傍聴席は書かれているメモの中身とか資料の文字とか
    妙に冷静にいろんなところに目がいってしまう。
    後、後列が無いので身を乗り出せるのもこの席の醍醐味。
    ただし、物語に入り込みたい場合は一般席が良いかも。

    俳優陣の熱量がすごかった!
    観る度に俳優陣の感情表現が豊かになっており、
    笑いが起こる場面も増えている気がする。


    ネタバレBOX

    ・柳瀬さんの独白場面の照明がスゴイ
    ・水越さんの眼鏡はかなり度が強い
    ・星之宮さん、誉められてのドヤ顔が可愛かった
    ・英国代表判事席と思われる位置で末永さんに怒鳴られて満足
  • 満足度★★★★★

    やはりすごかった。
    超満員の観客が芝居に飲み込まれていくようなすごい作品であった。
    役者の鬼気迫る演技は驚嘆すべきものであり、今年最後を最高の作品で見終えることができた。

  • 満足度★★★★★

    凄く良かった
    凄く良かった。やっぱりもっと早く観ておけばよかった作品。テキストの構成が見事で緩急自在。それを5人の俳優が確り演じ切る。それぞれの想いが織り込まれ痛快さと無念さが交錯する展開。ラストの暗転で胸に迫る複雑な感情の波。納得のダブルコール。何度でも再演を

  • 満足度★★★★

    歴史エンタテインメント
    完成度の高い「史実に基づく」戯曲であるが、難点も書かせて頂く。(ああ、歴史と言えばこいつの例の話・・その通り)
     作者の作品には今年、青年座でやった「外交官」にて初めて触れたが、ぜひとも自劇団での舞台を見たいと思った(青年座俳優の演技の質感が書き手の想定と若干違うと思えたので)。 今回は内容も「外交官」に通じる、十五年戦争を総括する場に立ち会う日本人の会話劇で、こちらの方は史実としてよく知られた「東京裁判」、構図も判り易かった。 そして俳優のテンポの良い演技は予想通り、これでなくては、というハマリ具合に納得。
     難点というのは言うまでもなく、登場人物(東京裁判に臨んだ弁護団)5人が、日本側に都合の良い主張ばかり選んで構築し、負の歴史(加害の側面)を見ず、自分を負かした相手に文句を言う事だけやっていたい日本人にとって心地よい、ガッツポーズの出る戯曲として作られている点だ。・・それを言っちゃ実もふたもないのだが、しかしエンタテインメントとしては知らなかった事実も(よく調べたものだ)知れたし、最近睡魔を覚えなかった芝居は少なく、その一つであった。
     「うまい」という評価は「良い」内容とセットでなければ意味がない。上に挙げた長所は実のところほめ言葉ではない。なら良い所はなかったのかと言えばさにあらず。
     (以下ネタバレで)

    ネタバレBOX

    日本の「戦後」を嘆く向きに一理あるとすれば、それはアイデンティティの問題だ。一度日本人として徹底して自らに負わせられた不当さに抗い、弁明する、それだけの誇りと責任を「自国」に対して持とうとする態度は、正常だと思う。 確かに自国民意識は戦後、希薄だった。実はそれは米国への信頼(実は従属)とともにあり、在日米軍に撤退していただく好機であった冷戦終結後も自ら望むかのように米国追従を正当とする言説にすがり続けているのは、憂うべき現状だ。そうなっている理由は、日本人が何か大事なものを抜かれてしまったからに他ならない、と考えるのも正常だと思う。だから、正常さを取り戻すために敢えて、東京裁判にみられる欺瞞を的としつつ、自らの正当性を主張するのは通過点として「有り」かも、と思う。
     もっとも小林正樹は批判的な視点で既に映画を撮っているし、この種の主張は右からも左からも言われてきた特段新しくもない代物だ。ただ、右からは戦前回帰を望むかのようないささか幼稚な主張、左からは原水爆禁止の視点と米国追従批判という風に、パターン化と言ってはナンだが、ありきたりのスローガンに耳が馴れてしまった感すらあったのではないか。
     そういうものを知らない世代には、改めて史実に触れる機会になっただろう。
     だが、年寄りくさい事を言えば、日本の国内だけで通用する従軍慰安婦否定論や南京大虐殺についての言説が、「相手国批判」とセットでしか発されない事に表われているように、冷静な歴史論議とは別物である。と同じく、東京裁判の不当性に対する憤怒からの言動も、対欧州イシュー(満州へのリットン調査団、国連脱退~対米戦争)が深刻化する以前の事実(アジア侵略・収奪)に一切触れないことに特徴がある。
     戦争で行われた殺人は通常、殺人罪には問われない・・、とは言っても、南京事件の起きた対中国進出を日本では「事変」と呼び、宣戦布告を伴わない不当な戦争、との非難をかわしていた、にもかかわらず実際には「民間人」を死なせている。
     劇中、東京裁判の弁護人の主張でパリ不戦条約の規定(=民間人殺害は戦争犯罪)にも言及されていたし、それは米国の原爆投下が焦点化した所で出されているのだが、日本軍は原爆よりうんと以前に民間人を殺しまくっていた。(「まくっていた」、という表現が事実に近い・・と私は知り得た事実から判断している。)
     そんな事で、今回の芝居の「東京裁判」が描いた史実とその視点をそのまま受け入れてしまっては困る、という思いはある、ものの、実に面白く見れる作品であることは確かで、これだけの筆力があれば、日本にとって今は「不都合な真実」とされている事実も織り込んで、骨太な作品が書けるのではないか・・ 主義主張の違い?と言われれば黙るしかないが、正直な所である。
  • 満足度★★★★

    普通席より観劇
    3年前は傍聴席、今回は普通席から観劇。
    夏場に野木さんが脚本を書いた青年座の「外交官」を見ていたせいか、その世界も思い出した。5人の役者によるシリアスで直球の討論が繰り広げる中、時に笑って考えてつい泣けてしまう。
    口コミ効果なのか、はたまた劇場が閉館になるためからか、場内は満員。
    役柄の年代が役者の年齢的に近づいてきたキャスト、部屋を照らす灯り、効果音もないのに、いつにも増して迫力と熱気を感じました。

  • 満足度★★★★★

    見事な裁判劇
    青年座の「外交官」を見てから、野木萌葱さんのファンになった。この「東京裁判」は絶対に見たいと思っていた。なんと年末押し迫ってまでやっている。しかも、パラドックス定数が劇団化したときに「東京裁判」を上演したその、東京・王子の小劇場で。その小劇場は年内で閉館という。これはもう、絶対に行くしかない。

    会場は若い観客で超満員だった。ものすごい熱気の中繰り広げられた会話劇は、A級戦犯たちを弁護する5人の男たち。右上の裁判官に向かい、正面の検察官に向かい、男たちは奮闘する。戦勝国の論理で裁かれる敗戦国の政治指導者たち。私は個人的には、国家を破滅に導いた指導者たちはそれ相応の責任を取るべきだと思っているが、この弁護の男たちは、それぞれ個人的に様々な物語を抱えていて、それが、この裁判劇を奥深いものにした。

    この脚本は見事だ。それを演じきった5人の俳優にも拍手を送りたい。

  • 満足度★★★★★

    善き芝居を観た。
    善き芝居を観た。

    今年最後に、本当に観れて、良かった。

    ただ、涙が流れたのは、台詞の向こう側の光景や、心情を自分の中ではあるが

    増幅された瞬間があったからだろう。




    膨大な会話劇の中の台詞に、心が飛ぶ。




    『1946年東京、市ヶ谷。
    極東国際軍事裁判所本法廷』




    この5人の弁護人たちの

    会話劇が、なんとも、静かではあるが

    時に、熱く時が進む。




    法を守るべき、それは至極正論。

    しかしながら、あの時代に、本当に

    「法」の正義は存在したのだろうか?




    多勢に無勢、日本は、どう、

    「戦う」のか?




    本当に観ながら、専門的な事も

    勿論出てきますが

    息をつくのも憚れるような「傍聴」している観客も背筋が伸びるような

    空間の中、

    時折、「くすっ」と息つく場面もあって、

    野木さんの書くホンは、他にない感じだなといつも思う。




    ごりごりに硬派かと思うと

    少し、お茶目なところもあって

    この匙加減が、たまらなく素敵である。




    *野木さんの前説・後説が観劇の楽しみのひとつでもある*







    劇中

    鵜沢 総明(西原誠吾さん)が「日本人、沢山死んじゃいましたからね」って

    言う台詞が、普通に、普通に、言うんですけど

    私の今日のスイッチがそこだったみたいで

    そこで「ぷちっ」と入ってしまった。

    体験した事のない戦争中の様々な人々の死の悲しさや、悔しさ、を

    増幅させていった。

    「感情」では「法」は遂行出来ない。




    私の安っぽいヒューマニズムがそうさせてしまったのか。

    涙が出てしまう。




    柳瀬 秋午(今里真さん)の最後の方での台詞も

    もう、涙が出てしまってしょうがない。

    押さえて、押さえて、

    問う台詞に、もう、無理だった。




    この芝居ではこの5人の登場人物それぞれの

    「キモチ」を、ある意味プロフェッショナルの姿に置き換えて

    観る事が出来る。

    ただ、「仕事」としてではなく諸外国を相手に戦う

    「日本人」としての「キモチ」をなんとしてでも

    遂行するための熱い1時間40分だった。

    あっという間の時間だった。







    観劇を強くお薦めします。

    私は今年最後の観劇がこの芝居出逢った事、

    幸せだと思います。











    台本購入

    そして、先行の特典のチョコレート。

    Wミーイングだった・・。

  • 満足度★★★★★

    責任と罪
    一度は観たいと思っていた劇団と「東京裁判」今回、初見です。
    重厚なドラマでありながら「皮肉」がユーモアとなり面白く観劇。
    ラスト近く「柳瀬」の絞り出す様な「言葉」は胸に迫る。
    役者の力量に魅了される。

    ネタバレBOX

    「普通席」階段を降りたら左側の席が観やすいかと思います。

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