『オーファンズ』は日本でよく上演されているそうです。私は2000年に一度だけ拝見。言葉と人間関係をじっくり味わうことができました。じーんと体から湧き上がってくるように「いい戯曲だな~」と思えたのは、戯曲そのものの良さはもちろん、演技、演出で世界を緻密に作り上げてくださったからだと思います。
満足度★★★
疑似家族に赤い靴
孤児の兄弟と中年男。共同生活が始まってから変化する関係。
外の世界に興味はあるが病弱のため憧れだけで暮らす仔犬のような弟の行動と純粋さ、その弟に時には暴力的な愛情しか出来なかった兄の粗野で抑圧されたような日々、彼ら2人の場面では見ているうちに次第に心が傷む。
孤独の穴を埋めるように接し、孤児としての経験者として語る中年オヤジのハロルドが案外慈悲深い。
「父性」という資質を持った話と感じたが、以前だったらなかなか素直に行動には出来そうにないことも、今のイクメンと呼ばれる人たちなら抵抗なくやってのけそうで、その辺も日本人の意識が変わっているんだろうな、と話とは関係なく思ったりして。
谷さんの翻訳セリフも馴染みやすかった。
2時間ちょいの舞台なのに休憩が入るのは海外戯曲のお約束なのかな。
満足度★★★★★
見事な舞台だった
ライル・ケスラーの名作である。あとは舞台の三人が宮田慶子さん演出でどう、これをこなしていくか。
結論から言うと、想像以上に見事な舞台だった。特に、柳下大さんが非常によかったのではないか。パンフレットによると、この演目は、彼が宮田さんを口説いて実現させたという。その意気込みがびんびん伝わってきた。彼はもう、単なるイケメン俳優だけではない。一皮むけたのではないだろうか。
ハロルド役の高橋和也さんはさすがの貫禄だ。見ている方が引き込まれる演技を展開している。もう一人、病弱の弟役平埜生成さんも、しっかり存在感を示していた。柳下の豪快さに負けることなく、一歩一歩自立へと歩んでいく姿を見事に表現していた。
若い二人をして、これだけ完成度の高い舞台に仕上げた、宮田さんの腕前もお見事でした。
満足度★★★
母性は動かなかった
この作品には初めて出合った。とても良い脚本だと思う。が、出演者は孤独になれていない方たちなのか?表面的にはかなりの熱演に見える。しかし、この脚本に込められた想いや感情の揺れ、そういうものが芯まで体に入りきっていないようで・・・期待したほど心に響いてこなかった。もっとしっかり役が入っていたら、母心はあの子達を抱きしめてあげたいという衝動が湧き上がっていたのではないかと思うのだが・・・。母性は動かなかった。
満足度★★★
孤児の生き方!
宮田さん好きそうな戯曲で”教育”という視点から”ピグマリオン”を連想しました。
教育を受けていない、愛情を知らない、世間を知らない、人間を知らないということは、すべてにおいて”節度”がないとに繋がる。
節度がないということは人間としての理性がない感情的な動物ともいえる。
それを元孤児でシカゴのギャングの親分だったハロルドが二人の孤児に教えていく。
アフタートークの若い二人のトークは残念ながら、この芝居についての深い話ではなく、ただの雑談に終わった。やるからにはしっかりした司会者が必要で客が何を求めて残っているか汲み取るべきだ!