満足度★★★★★
ノスタルジー
松本哲也さんの作品からは、いつもノスタルジーの匂いがする。作家として向田邦子の、演出として久世光彦の醸し出す昭和の家族の匂いがする。可笑しくて切ない。そして全ての登場人物が、ダメ人間なのに愛おしい。高校中退のヤンチャ娘の小園茉奈さんのやさぐれ感がたまらなく可愛い。親に逆らう感じも、それでも母の愛に包み込まれちゃう感じも、みんな愛おしい。次にアイツと遭遇した時には、やっつけてしまう気がする。鍋にしちゃう気がする。
満足度★★★★
語り口の柔らかさ
ストーリー構成とセリフのバランスが絶妙。扱っている設定は、突飛なものではなく日常を切り取った様。そこに展開されるユーモアもエッジが効いているというより間とタイミングで笑えてしまう様に創られていた。全編宮崎弁での語り口の柔らかさがまた独特。
満足度★★★★★
心地よい笑い
特に大きな出来事や展開はない日常を切り取った物語だが
日常の中にある葛藤や笑いが上手く表現されていてニヤニヤしながら
笑えてとても良かった。
宮崎弁も言葉が分からない箇所あるが、不思議と意味は分かる。
観劇後とても心地よい気持ちになれた。
次回作も是非観たい。
満足度★★★★
楽しめました
久しぶりの小松台東の観劇。松本哲也氏のつくる話はホント面白く、身につまされますね。懐かしい宮崎弁でのセリフも粗野ながら心地よい。
満足度★★★★
初<小松台東>
三鷹市芸文の本年のネクスト・セレクションの2劇団目。松本氏作の舞台は1度観たが、小松台東の公演は初だった。「今」の「日本」のどっかで、起きてそうな現象を切り取った芝居。(宮崎弁だが、他の地方でも、関東圏でも都心でなければ、成立しそうではある。)
大きな事件はなく進行するので、現代口語演劇(静かな演劇)に属すると言えそうだが、「ああ」とか、「え、ああ、うん」と、言葉を濁す特徴は見られず、割とズバリと言葉を投げ合う。程よい省略があって、それが想像力を刺激し、後で謎解きがあり、次第に場の風景(過去あっての現在という風景)が、見えてくる。
その手法もうまいが、この芝居で徐々に際立って来る存在があり、これが芝居の中心テーマかも知れない、と思わせる存在なのだが、そこに最後は釘付けになった。この「痛い」人物の存在は、このドラマでの「問題」であり、半端なくどうしようも無い存在として、周囲も手厳しく難じる事によって、事実それが「問題である」ように、観客にも見えてくる。
青年団系の芝居なら、「色んな生き方があるんだし」と理解を示す人間が幾らか居て、一方に厳しい人が居てその対立によって「問題」の人物は救われる、となりそうだ。(両論併記に持ち込む事は、悪法を議論の俎上に上げる事をも許す意味で、注意すべき)
この芝居ではそれは許されず、「リアル」で逃げ場の無い中で「問題」はいよいよ「痛さ」を増して浮び上るばかりである。周囲が現実を見据えて必死に生きている中で、「彼」の痛さは少数派となっているが、実際には社会的な広がりを持つ。多くの「彼」が、特に都会には、悩ましく棲息している事だろう。
思うに・・この「問題」の処方箋として、芝居の中にも「もまれて来い!」と台詞があるが、これは例えば、経済的格差が放任され、戦争やテロの危険もあり、人権も狭められて行く社会が、この「問題」の解消に有効なのでは、という想像をよくしたものだ。「余計な事を考えてるヒマなんかない」状態が、処方箋だという訳だ。
しかしそこで思い出すのは、戦後間もない頃に起きた連続殺人事件や無差別殺人事件。物は無かったが希望に満ちた時代、といったイメージが、全てではなかったにしろ、相対的にあったのだろうと勝手な想像をしがちだが、意外にそうでないという事実。特に、差別は今とは比較にならない程あったし、人を鬱屈とさせる「問題」は、形を変えつつも日本という社会で継承されているのではないか・・。
芝居に戻れば、「もまれること」は確かに処方であるかも知れない、と我が身に引きつければ、納得する所はあるが、この「リアル」な芝居では、問題の「彼」は、恐らく本質的な部分は変わらないだろうと思わせる感触を残す。またその事を「微笑まし」く描いてもいない。程よく放置して終わる。
電気工事の詰め所に、出入りする「電工さん」、病気で一線を退く社長の娘達、近所の人が、それぞれにしっかりとキャラクターを背負って、濃く存在する。俳優の個人の力の賜物に違いないが、その事を忘れさせる舞台世界の構築が、嬉しい芝居である。
小さい頃、親類を訪ねて心地よいカルチュアショックを味わった宮崎弁にも、愛着を覚えた。
満足度★★★★★
この際、「デンギョー」の再演を
小松台東との出会いは 「デンギョー」
この「想いはブーン」で 奇しくも あの時の鮮烈を思い出す。
台本も売ってましたが たぶん文字からは こうは響かないでしょう。
この「ブーン」も再演に値する作品と思います。
満足度★★★★★
ストレートプレイ好き、演劇好きならば、観てほしい舞台
今、ストレートプレイの演劇で一番面白い戯曲を書いているのは、この小松台東の松本哲也さんではないかと思う。
この最近、小松台東以外にも戯曲を提供していて、非常に多作なのだが、どれも面白い。
今回の『想いはブーン』は、その中でも最高に面白い一作だ。
(ネタバレボックスに書いています)