満足度★★★
安定の瀬戸山クオリティ
瀬戸山さんの作品はいつも観客に預けるところが大きい。
その大きい物を渡されたわたしは大概は途方に暮れるのです。
そして、今回も安定の瀬戸山クオリティでした。
元になった出来事は、そんな事あったっけくらいの記憶しかありません。
ただ、作品中に描かれた出来事は予想はしていてもやはり衝撃的でした。
ネットが普及する前は広く情報を集めるのは中々手間で、
大きな媒体を盲目的に信じていたように思います。
目の前に差し出されたものだけを信じていれば楽だけど、
それが信用できるかどうかは別問題だということ。
それを自分の中だけで納めるのではなく、批判や中傷を安易にできる環境も怖いなと思いました。
真実ではなく何を信じたいのかが重要なファクターになりつつあるんだなと。
個人的な事情で若干集中を欠いた観劇になってしまいましたが、
俳優陣は素晴らしい熱演でした。
ただし、劇場の座席の段差が少なく、
前の人の頭で座った場面が非常に観辛かったです。
パキスタン兵士とのエピソードが秀逸でしたが、
全体のどのくらいがフィクションなのか気になります。
満足度★★★★★
遅くなってごめんなさい
感想、ブログに書きました。http://ameblo.jp/kangeki-jyoshikai/entry-12059688748.html
満足度★★★★
再演
初演も観ている作品。一部重要なやりとりが英語に…リアリティはグッと増していたが、聞く事に結構チカラ使ってしまった。初演時は個人の悲劇を感じる部分が多かったけど、今作はそれもあって少し距離を取らされる演出からか社会の悲劇を感じて色々と考えさせられた。
満足度★★★★★
全てが高いクオリティ
アゴラ劇場にて 120分
地面に月が映っているように見える。
一見幻想的にも見えるシンプルな舞台装置には、よく見ると客席から見て右手にテント、左手にデスクと、
場面転換の多さが予想されるものが置いてある。
そして私は開演と同時に舞台上にくぎ付けになった。
目まぐるしく変わる場面、そしてそれをシンプルな明かりや役者の身体で見せていく構成。
演劇の楽しみというのはまさしくこういうものではないだろうか、というのが大きな感想である。
しかしそれだけでは120分も見せられるものではない。
とにかく演じている俳優陣が良かった。
そして瀬戸山美咲の切り取るメディアや社会の一部というのは、とても他人事とは思えないような臨場感を感じさせてくれる。
1991年に実際に起きたパキスタンでの邦人拉致、それに伴うマスメディアを、フリーライターである服部貴康を中心として描いた物語である。
ストーリーとしては拉致されてから解放までの経過と、その後のメディア対応や服部の葛藤を、現在と過去に分けて進めていく構成だ。
私は正直、社会情勢やメディアとはどういうものか、といった知識に疎い。しかしながら、メディアとは何か、どうあるべきなのかを考えさせられてしまう。
もちろんそこにはきっと私の知りえない環境や社会があり、理想論ばかり言えないのが現実なのだろう。それでも今の現状とどう向き合うべきなのか、社会とどう折り合いをつけていくべきなのか、といった身近な問題にまで落とし込んでくれるような舞台だった。
実際に取材されていないのに取材をしたかのように書き連ねる雑誌社。その影響で拉致解放後の服部達は、一方的な情報を得ただけの人間から多くの迫害を受ける。
実際に雑誌社に訂正文書の掲載を求めても訂正を認めない。そしてマスメディアに失望する友人、生活の中で自分を押し隠し雑誌社でのフリーカメラマンとして働く服部。
そこには、ジャーナリズム精神を言い訳に自身の生活を守るためだけに写真を撮り続ける現実がある。
きっとこういうことは実際にいくらでもある。どんな企業でも大なり小なりあることなのではないだろうか。そんなことを考えた。
上演中、何度も胸を掻きむしりたくなるような気持ちにさせられた。
それはジャーナリズムへの理想と現実、その中でも折り合いをつけられる者、去る者、割り切った考え方を出来る者、自分を偽れる者、多くの人間がおり、それを
演じる俳優陣が見事に演じ分けていたからではないだろうか。
本当に見事な舞台だと思った。是非こういう舞台が世に増えることを願ってやまない。
満足度★★★★
再演乾杯
同じくアゴラでの初演で、初ミナモザ観劇。2年振りの再演は、芝居として格段に良くなっていた。脚本は(恐らく、殆ど)変わっておらず、6人のキャストも初演と同じ。場面のピースがきめ細かに接続され、全体として芝居が熟成し、強くなったという感触だ。最後にホームでほとんど呟くように、離れた位置で言葉をかわす男女の間には、(敗北したにも関わらず)ステージを一段昇った人間の背中が見え、今回は心から応援したくなった。
満足度★★★★
彼らの敵
約2時間。面白かった。最初はソフトな燐光群という印象だったが一対一の対話バトルや敢えて作る日常の時間が豊かで、せりふ劇好きの私にストライク。弱くて不恰好な主人公に自分を投影できた。主役以外の俳優が、虫唾が走るほど恥ずかしい人や、心優しい良心の人を演じ分ける。そのおかげで、自分が甘んじる環境や戦争などの不可抗力で、私だって豹変するかもしれないと思えた。再演でブラッシュアップされたらしい。ありがたいことです。
満足度★★★★★
受ける側として
観客も受ける側。発することをどう受け止めるかは自由。なんだけどぉ~…。観劇後じわじわと色々な考えが蠢きはじめる。そんな作品だと思います。
満足度★★★★★
醍醐味
善悪を超えて人間の存在を考えるとき醸し出される空気。ずっしりと湿り気を帯びた静寂が共に過ごした時間の価値を証明していた。それにしても皆さんの演じ分けが見事。
満足度★★★★
前も見たけど
今回の方が動きがずっとスムーズになったような・・
事件のことに集中するだけじゃなく、
作者のたぶん好きな題材(泥臭くてガムシャラな男、狡い大人の男、誠実だが非力な男など)が十全に出たショーケース的な作品としての魅力がよく出ていると思う。
役者が目まぐるしく何役もやっているのも、
何気なく世界基準に合っている。
週間文春とんでもねぇ、だけじゃなく、マスコミなんてみんな元からこんなもんだ。
面白ければ良いんだよ。
そんな弱肉強食の、剣をペンに持ち替えただけのバトルフィールドでペンに負けてカメラを手に取ってアルゼンチンのサッカーよろしく「犬のように」走り回る男。
食うには困らないが、今よりずっと死に近かった国での夢のように美しかった風景が忘れられない。
それもまた男性的というべきなのか(苦笑
満足度★★★★
良作/約120分
あるカメラマンのジレンマを描いて秀逸。
見込んだ通り硬派な作品だが、砕けたシーンも挟んであり、硬軟が行き来する作風は主人公の揺れる心の反映にもなっていて、とても巧まれた一作でした。
カメラマン役の俳優の演技も見事で、劇の展開次第で軽重を演じ分けるあの名演抜きに本作は成り立ちえないと思った。
満足度★★★★★
ドキュメンタリー演劇っていい!
物事にはいくつもの真実がある。
リアル過ぎます。目前で、その事件がおこっていると錯覚してしまうような臨場感。客席から立ち上がって、違うんだ、おかしいだろ、なにやってんだ と飛び込んていきたくなる、そんな舞台でした。
みんなそこに生きている。こんな劇空間ってみたことない。
アイスコーヒーも蕎麦もすべて本物、観客を芝居の世界と冷めさせることのない仕掛け。
TV、映画では決して味わえない、今起こっている出来事を隠れて見ているようなワクワク感。汁をすする音も汗も飛んできました。
そこに存在している一人の人間として苦しみを共有し、胸が熱くなりました。
2年経っても色褪せないテーマ。再演でも役者の鮮度も落ちない、名作・名舞台でした。
満足度★★★★
見失った何かを見つけたい
何かを見失ってどうしていいのか、黙ってしまうような世の中で、瀬戸山さんの戯曲は、その何かを探すヒントをくれるようだ。
今回の舞台は、週刊誌メディアの「売らんかな」取材をテーマにしているが、少しの想像力を働かせれば、どんな仕事、生活でも人を傷つけなくてすむというささやかな「教訓」をさりげなく指し示してくれている。
そう、少しの想像力。それが僕たちが今、失っている何かなのではないか。