私は太田、広島の川 公演情報 私は太田、広島の川」の観てきた!クチコミ一覧

満足度の平均 3.0
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  • 満足度★★★

    川は流れていく。しかし、川には記憶が残る
    広島の原爆投下を中心にその前後を見せていく。

    ネタバレBOX

    タイトル通りに、「太田川」が主人公の物語。

    原爆投下を物語の中心に据え、その前後を太田川が見せていく。

    舞台の上には、原爆ドームを思わせる骨組みがある。
    開演前には、川のせせらぎのSEが聞こえる。

    太田川を中心とした物語ではあるが、原爆投下の意思決定をしたホワイトハウスとB29の発進基地でもあったテニアンも描かれる。

    広島では、姉と弟の物語が太田川を挟んで語られる。
    8月6日に交わる、太田川と姉と弟。
    短いが、苦しいほど、切ないエピソードだ。
    彼らのそれまでの暮らしが丹念に描かれているわれではないが、それを思い起こさせるようなエピソードだった。

    そのとき、太田川がどうなったのかは考えたこともなかった。
    一瞬にして熱湯となり、そして蒸発していく。

    海の向こうでのエピソードは、ホワイトハウスで大統領と科学顧問のやり取りがある。
    ルーズベルト大統領は、使用を躊躇する。
    しかし、とにかく、開発して、それを使ってみたい科学顧問とのやり取り。
    科学顧問は、政治的なことは……と言いながらも、大統領が提案した無人島での使用することで日本に対してアピールすることには、反対する。「街」に、「人」に使ってみたいのだろう。
    そして、ルーズベルトの後のトルーマンが使用を決定する。

    しかし、これとテニアンのエピソードは本当に必要だったのだろうか。疑問に思う。
    なんとなくこのシーンは、歯切れが悪い。

    「躊躇した大統領」ということを伝えたかったのか、「戦争を終わらせるため」という言い訳的な、政治との関係を入れたかったのかはわからないが。

    太田川が主人公であるのだから、そこに集中すべきではなかったのか。
    優雅に流れていく太田川が、その瞬間に熱により蒸発し、そして、元の川に戻っていく。
    川は流れていく。しかし、川には記憶が残る。

    本作は、ジャン・ポール・アレーグルの作品で、翻訳と演出は、岡田正子さん。
    岡田正子さんは、「1948年文化学院卒」とあるから、お幾つなのだろうか。
    ロビーにいらした。

    太田川の表現にはダンスを加え、シーンのつながりもきれいだ。
    若々しさを感じる演出だった。

    原爆は、悪いものである、という気持ちは伝わったか、使ってしまったことへの、言及がない。
    淡々としているような感じさえする。

    つまり、「太田川」という人ではないものが主人公であることから、出来事を俯瞰しているような、外から見ているような感覚がするのだ。

    それは戯曲の狙いなのだろうが、もっと揺さぶってほしかったというのが本音だ。
    太田川に焦点を絞って。

    ルーズベルト役だった西本裕行さんが、公演の直前にお亡くなりになった。
    「ムーミン」でスナフキンの声をしていた方だ。
    代役を立てずに、ルーズベルトの座る車椅子だけが舞台の上にあった。
    ご冥福をお祈りします。

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