満足度★★★
ソロダブルビル/約60分
Baobab主宰の北尾亘とメンバーの米田沙織が順にソロダンスを披露。
じつは本公演に先立ってこちらのほうも観てました。
なんでも、各自の世界観を尊重すべく互いの作品には一切口出ししなかったそうで、それぞれがそれぞれの舞踊世界を展開。
ツカミが強烈だったこともあり、どちらかと言うと私には北尾作品のほうが楽しめた。
満足度★★★★★
群舞によって都市に生きる人々を生々しく表現した素晴らしいダンス公演。劇伴音楽も◎。/約70分
都市部のマンションの各階、各部屋に住む住人達の生態をキャスト6人が群舞で表現。
ダンス公演は見慣れていないが、ここまでの表現がダンスには可能なのかと驚き入った。
群舞と言っても、一部の場面を除いて動きは揃っておらず、むしろ、てんでバラバラな動きを通して住人達の生活サイクルの違い、相互不干渉、といったものを表現している印象。
そこに家族世帯はなく、皆が単身者のように見えるのがいかにも都市部のマンションらしい。
客席から住人各自の暮らしぶりを一望のもとに眺めるのは、実際にはありえないスケルトンのマンションに暮らす彼らを少し離れた場所から観察しているかのようで、ずっと見続けるうち想起されるのは、当日パンフでも言及されていた蟻の巣穴キット。
樹脂が詰まった透明な板の中で蟻たちが樹脂に巣穴を掘り、巣穴を拠点に暮らす様子が一望できるあのキットを見ている気分にさせられながらも、しかし私には、キャストたちが蟻というよりゴキブリに見えた。
本作は床を這いずりながら身悶えるように踊るダンスが目立ち、粘着的に踊るその姿が逆境にもめげずしぶとく粘り強く生き続けるゴキブリを私に想起させたのだ。
しかし私はこれに打たれた。
ネタバレに記したアクションを色んなキャストが繰り返すことにより、本作は一方で死を強く想起させるが、まだ死なない者らは厳しく淋しく味気ない都市生活という逆境に耐えながら頑張って生きている。
私はそんなメッセージを本作から勝手に受け取り、大きく力づけられた次第。
生命力の乏しさをかねてから痛感している私だが、そんな私も神の目には、ゴキブリのようにしぶとく生きる野蛮な生き物に見えているのに違いない。
満足度★★★★★
D-incline projectとは?
Baobabの第二段階とでも位置づけられよう。第一段階で目指された身体のみならず人間を描くというテーゼから、身体性と抽象性に重点を移した創作になっている。