満足度★★★
細かな人物描写
開演前、どこに字幕が出るのかときょろきょろしていたのですが・・・まさか障子にでるとは・・・普段字幕というと、舞台左右に出る電光掲示板でしか見たことがなかったので驚きで新鮮でした。
それぞれが同じ人間なのに、生まれてきた土地や身分の違い、日本人に殺されたもの、朝鮮人に殺されたもの、国に殺されたもの、そしてそれはそれぞれが持っている、家・家族・恋人を守りたいという思いのすれ違いから生まれる力がこうも人間を突き動かすのかと思いました。雨の一瞬前、曇り空に人は何を思うのでしょうか。沢山の思いが渦巻いた戦争という曇り空とそこから生まれる雨の一滴ずつが、一人一人の人生になってやがて大きな水溜りを作るという意味のような気がしてなりません。
作品そのものが答えだ
韓国人俳優を招いて、1945年3月10日の直前の日々を描く。
しかしそれは歴史の概説でもなければ、作者が自らの世界観を展開する場でもない。
特設サイトでの作者の言葉が集約的である。
“どうしても何処へもいかないというか、答えを出すのは出来るけど、答えを出すのは嘘っぽいと思うからね、”
本当に特異な点を描く集団による、誰しもが知る時代を舞台設定にした、特異な描き方の作品だと言えるだろう。
しかし結局は、以下の一語に尽きるのか。
“演劇は人間を描く芸術ですから。”