お伽の棺 公演情報 お伽の棺」の観てきた!クチコミ一覧

満足度の平均 3.5
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  • 実演鑑賞

    満足度★★★★

    そう言えば感想がまだだった。
    本公演、桟敷童子の二名には絶大な信頼を寄せているが、横内氏の知らない演目そして今回は(作ではなく)演出に起用された深井氏と、未知の領域である。が、結果は、良い出し物だった。
    この女の「正体」については最後まで(表向き素性が明かされた事になっているが)杳としている。二つの「解」があって良し、異端者差別への暗喩としても芝居は成立していた。鶴の恩返しに似た展開が、異国人の設定でなされるが、芝居の引力は「でも実は・・?」という謎めきである。その意味で掟に縛られた村の母息子、また長者の使いとの因習臭いやり取り、古めいた衣裳、装置が効果的。「実は」、がありそうなのである。ただその暗示がドラマの中で生きるには、異端を排斥した「捕り物」が終わったラスト、その後の顛末は一切語らせず、鶴の姿に戻り飛び去ったのでなくてはならなかったのでは・・と思う。従って、女が脱ぎ捨てた白い布に付いた血の色よりも、飛び去った事を暗示する真白が正解ではなかったか。血の汚しだけは最後気になった所であった。
    山道に倒れていた女を連れ帰り、人助けをした時点では無自覚であった息子の本音が、母の拒絶により形になる「おら女房が欲しいだ」の台詞に対し、「よそ者を入れてはならぬ」と追い出すよう言い含める母も、その理由が建前であり息子を奪われたくないのが本音とも見え、それ故か、息子の不納得を招く。あるいは然程に魔力を発する女が村での平穏な生活を脅かす事をガチに恐れたのか。。いずれとも取れるのだが、母が殺されるべくして殺された(事故であれ)事実として納得してしまう所がある。
    妖しの棲みそうな世界観が上手く表現され、好みであった。
    最後の最後に長者の使いに語らせる村の「真実」は、世に語られる「本当」「正直」の危うさを露呈させており実に巧い。実はこの真実が、正当とは言い難い身分差の絶対化によって生み出されている事には、たとえその解消が困難な今であっても、自覚的でありたいとは思う。悲劇はそこから生まれたのであるから。

  • 実演鑑賞

    満足度★★★

    二面の客席に挟まれた舞台。囲炉裏を中心にした板間。四隅の蝋燭に火を点ける。登場人物はちょっとアイヌっぽい出で立ちにも見える。引き戸の開け閉めの音を平台の側面に備え付けた小さな木のスライドの音で表現。機織りの音も算盤を使ったりの工夫。(鈴木めぐみさんの発案らしい)。全て役者達でこなす。

    『鶴の恩返し』の横内謙介流解釈。『いとしの儚』に感覚が似ている。肉欲と残酷で醜悪な暴力に塗り潰される無力な弱者が、この世のものとは思えない程美しい光景を垣間見る刹那。負の絵の具を塗りたくった先に見えた異形の曼荼羅。

    決して嘘をついてはならない掟がある貧しい寒村。稲葉能敬氏は雪道で行き倒れになった高橋紗良さんを見付け、家まで運ぶ。だが母である鈴木めぐみさんは「余所者は危険だから棄てて来い」と命ずる。稲葉氏は母の言いつけに逆らったことがなかった。ずっと女房が欲しかった稲葉氏、若い女を手放すことに苦悶するも母の剣幕に負け、女を連れて外へ。だがやはり連れ帰って来てしまう。

    稲葉能敬氏は性欲と村の掟と母からの支配に苦しみ悶える男。小心者で嘘をついた己の良心の呵責に苛まれ、そして何一つ出来ない。
    鈴木めぐみさんは息子を支配する母親像の権化。
    高橋紗良さんは適役だと思う。何者だかはっきりとしない陽炎、蝋燭の炎の揺らめき。
    北直樹氏は村の男で村一番の権力者の長者に織物を納めている。

    高橋紗良さんが織る見たこともない美しい真白な織物。降り積もった雪より白く、丹頂鶴のような艶やかさ。その白さに聖なるもの、尊きものまで感じさせる。
    ラストは鮮烈。
    是非観に行って頂きたい。

    ネタバレBOX

    鈴木めぐみさんが序盤で殺されるのは残念。もっと観たかった。性欲の高まりで衝動的に殺したように見えるのは残念。それが狙いなのかも知れないが。

    高橋紗良さんは異人だが、アイヌっぽくはない。樺太(サハリン)の少数民族ウィルタ(オロッコ)のイメージ。ニヴフ(ギリヤーク)ではないような。三日三晩徹夜で籠もり機織りを完成させるなど非人間的な面も感じさせる。

    この物語の核に村の掟の真の目的がある。長者から絶対的な信用を得て、年貢徴収を村人の自主管理に任せて貰うこと。納める年貢の量を少しでも減らして村人の取り分を増やさないことにはとても暮らしてはいけなかった。支配者を騙す為に善良な村人を演じる必要があったのだ。支配者から少しでも不審に思われてはならない。母殺しなんてあってはならない。全ては余所者の異人の仕業、退治するのだ!ただ愚直に村の掟を信奉していた稲葉氏は世界が崩れ落ちる様を見る。全ては嘘だった。

    演出の狙いに粗が見える。母子の愛、男女の愛を丁寧に描かないとラストは生きない。ちょっと違う気がした。ラスト前、天井から布が囲炉裏に落ちる。それが引き上げられて無惨に血塗られた反物、飛び去った白い鶴となるのだが、その仕掛けの仕込みを見せちゃ駄目だろう。勿体ないな、と思った。その美術は見事な物だっただけに。

    ツルミビタン=鶴身美反?
    エアコンの自動運転なのか、二度程作動音が始まったのが雰囲気を壊して残念。

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