GIFT 公演情報 GIFT」の観てきた!クチコミ一覧

満足度の平均 3.3
1-3件 / 3件中
  • 実演鑑賞

    満足度★★★

    ネタバレ

    ネタバレBOX

    metro『GIFT』を観劇。

    あらすじ:
    女優・星影は戦争の夢をたびたび見る。
    枯れてしまっている才能を認識しての現実逃避の夢なのか?
    時代を跨いで、様々な人物を演じている中、才能は神様から貰ったただのGIFTに過ぎなかったのか…。

    感想:
    早川雪洲、太宰治、ブルース・ウェインなど時代と場所を飛び越えながら、女優・星影は旅をしているのだが、「何の脈略があるのだ?」と毒づきながらも、唐十郎とスタニフラフスキーの演劇論が始まった瞬間、「なんて面白いのだ!」と思わず声を上げてしまったのだ。彼らを演じた俳優が汗と怒号を上げて、観客席に迫ってくるのだ。
    本来は女優・星影の旅を楽しむのが見所で、演劇論で喜んでいるようでは観客失格なのだが、年配客が多いせいか?あの時代の知っているのは、どうやら私だけではないようだ。
    『夢の遊眠社』『第三舞台』『第三エロチカ』『3○○○』などが疾走していた80年代小劇場から現在の『青年団』『城山羊の会』まで、今作のような作劇は貴重で、もう誰も作れないだろうとも思っていたら、暗く、狭く、見ずらい地下劇場で細々と作っている劇作家がいたのが驚きで、観る価値十分ありと言っても良いだろう。
    女優・星影を見ているとタイトルは『GIFT』ではなく『GIFTED』にしてくれれば、「彼女の苦悩の旅に一緒に寄り添えたのになぁ〜」と思っただけに残念だった。
  • 実演鑑賞

    満足度★★★★

    鑑賞日2025/02/28 (金) 14:00

    旗揚げからずっと観ているのだが、久々のmetro。アングラだ!111分。
     4年ほど「修行」していたという月船さらら久々のmetroだが、細かく区切った物語それぞれが、繋がるというより、全体としてある感触を持たせるように作られている。「Gift」は「才能」の意味だけど、俳優をする才能、を題材にしつつ、月船の存在を描いているようだ。それにしても月船の佇まいは美しい。久々に見たマメ山田が健在なのも嬉しい。

  • 実演鑑賞

    満足度★★★

    才能とは何か?役者とは何か?悩める女優にスタニスラフスキーと唐十一郎が御教授してやろう。
    太宰治の『斜陽』をまぶして悩める人間の行き先を指し示す。この世界に生きゆく意味はある。

    月船さららさんがエロエロ。スタイル抜群でいろんな衣装で登場。もうそれだけで詰め掛けたおっさん共はほぼほぼ満足。妙に密度の濃い観客席。
    渡邊りょう氏はいいねえ。この地下世界に水が合っている。最初からここに居たようにすいすい泳ぎまくる。

    「私には、行くところがあるの」
    「私ね、革命家になるの」

    内容は若松プロの大和屋竺作品みたいな自主映画。映画を撮るには予算がない連中は小劇場で(脳内)撮って出ししかない。金が無いなら惜しみなく才能を注ぎ込め。そんなもの只だ。観た後に客に残る感覚は同じもの。要は突き付けること。
    日活社長・堀久作が観たならば、「解らない映画を作って貰っては困る」と即解雇されるであろう作品。それでこそ創るべき価値、観に行く価値がある。
    是非観に行って頂きたい。

    ネタバレBOX

    盲目の女(月船さららさん)が木の棒を杖代わりに歩いて来る。空襲だろうか、倒壊した瓦礫の山。手探りで柱に辿り着くと各面に木の人形を三体吊るす。そして人形に五寸釘を石で打ち込む。「終われ!終われ!終われ!」。そこに現れた銃を構えた兵士(影山翔一氏)。女が落とした煙草を拾って銜える。そして女の胸ぐらを掴んで脅すと背を向け地蔵に向かって放尿。女は隙を見て掴んだ石で兵士の後頭部を殴りつけ、掛けられていたストラップで首を全力で絞める。倒れる兵士。銃を奪って引き金を引く。銃声。また人形に五寸釘を打ち始める。「終われ!終われ!終われ!」。

    それはスター女優、星影(月船さららさん)のよく見る夢。垣乃花(渡邊りょう氏)という男が精神科医宜しく分析する。垣乃花の話し振りはまるでメフィストフェレスだが「悪魔程下品ではない」とうそぶく。女優を辞めようと考えている星影。理由もなく天より与えられたGIFT(才能)は理由もなく空になってしまった。
    垣乃花は地蔵菩薩(マメ豆田さん)を見せる。釈尊が入滅し56億7000万年後に弥勒菩薩が降臨することになっているが、それ迄の無仏時代の間、衆生を救済する誓願を立てたという。実は地蔵菩薩と閻魔は一心同体。地獄の責苦を与えつつ、救済を続ける永久機関。戦前の日本から岡田嘉子と杉本良吉と共にソ連へと。そして演劇革命家メイエルホリドから師である晩年のスタニスラフスキーのもとへ。今、目の前に立つ地蔵菩薩の背には確かにスタニスラフスキーのサインが彫られている。

    そして現れる御大スタニスラフスキー(影山翔一氏)。
    リアルな演劇を求めた劇作家チェーホフと演出家スタニスラフスキー。表示の芸術(役を演じる)と体験の芸術(役になりきる)の違いとその統合を説き、「役を生きる芸術」スタニスラフスキー・システムを構築。

    戦後、GHQによる農地改革が行われ、青森県の大地主だった実家が荒廃していく様を見た太宰治、「これは(チェーホフの)『桜の園』そのものだ」と受け止め『斜陽』を執筆。

    『斜陽』に描かれる没落貴族のかず子(月船さららさん)とその弟で薬物中毒の直治(渡邊りょう氏)。見つけた蛇の卵を庭で十ばかり燃やしたこと。それ以来母親らしき女蛇がじっと一家を眺めているような気がしていること。

    唐十郎の弟を自称する唐十一郎(影山翔一氏)が地獄の説明を始める。アングラ=アンダーグラウンド(地底)、掘った先にあるのは地獄。「地獄は実在する」と綴った男もいた。

    バットマン=ブルース・ウェイン(渡邊りょう氏)とキャットウーマン=セリーナ・カイル(月船さららさん)のシーンは作家がどうしてもやりたかったのだろうか?

    「(この社会が何の為にあるのか)教えてあげますわ、女がよい子を生むためです。」

    冒頭のシーンは晩年の橋本忍脚本作、『愛の陽炎』のオマージュかと思って興奮した。演劇で『幻の湖』をやる気か?
    文句を言うなら長過ぎるのと会場の温度設定が暑すぎるのが残念。眠気と戦う観客達。『斜陽』パートが素晴らしかっただけに、坂口安吾の『青鬼の褌を洗う女』テイストでこれをメインにすべき。『斜陽』を演じながら「演じるとは何なのか?」に葛藤する女優の精神の地獄巡りの方が観客にとって解り易い。

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