『逆さまの日記』『ベイカーストリートの犬』 公演情報 『逆さまの日記』『ベイカーストリートの犬』」の観てきた!クチコミ一覧

満足度の平均 3.3
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  • 実演鑑賞

    満足度★★★★

    鑑賞日2025/01/13 (月) 13:00

    フライヤー、当日パンフ、そして2時間40分(途中休憩10分)という尺、
    すごい力作だということがビシビシ伝わって来る舞台。
    完璧なタイミングで入る生演奏のBGMが美しい。

    ネタバレBOX

    下手側に演奏者のスペース、少し離して上手にはダビンチの絵画「最後の晩餐」
    を思わせる長テーブルが伸びている。
    長いクロスを外すと、このテーブルはいくつかのブロックに分解され
    それを組み合わせることで、農園主の屋敷内食堂や書斎、庭や屋敷外等に場面が変わる。

    農園主殺人事件を解決するのは、引退したシャーロックホームズだ。
    だがすべて解決した後で、犯人として自殺した弟の残した事件の記録
    「逆さまの日記」を手に、双子の姉はホームズにもちかける。
    「時系列が逆に書かれたこの「逆さまの日記」の通りに、
    結果からさかのぼってもう一度事件を検証してみよう」と・・・。
    そしてラスト、とんでもない事実が明らかになり、全てがひっくり返る。
    これまでの景色ががらりと変わって見える構成だ。

    ”原案”としてコナン・ドイルの「ボスコム渓谷の惨劇」、
    江戸川乱歩の「探偵小説の謎」、そして
    Inspired by ピエール・バイヤールの「アクロイドを殺したのはだれか」
    と当日パンフにある。

    なかなか凝ったアイデア、しかも時間を少しずつ遡るという構成に
    観客は、時刻表示の映像の助けを借りつつ一生懸命アリバイを頭に入れる感じ。
    他の人は余裕で理解できたかもしれないが、私は結構大変でした・・・。
    例えば2時間ドラマでよくやる”捜査本部のホワイトボードで表にする”ような
    途中何かまとめがあったらもっと解りやすいと思った。(変な例ですみません)

    これで終わりかと拍手したら続きがあったという、そこがこの作品の最大の見どころ。
    一件落着と見せて驚きのどんでん返しで意外な結末を迎える。

    シャーロック・ホームズファンとしては大変面白く観た。
    ちなみに江戸川乱歩の「探偵小説の謎」を初めて知って青空文庫で読んだら
    これが面白くて止まらない。
    探偵小説におけるトリックの分析・分類が解りやすくまとめられていて一気に読んだ。
    1956年頃の物らしいが江戸川乱歩の”緻密な頭脳の凄さを改めて思い知った。
    ピエール・バイヤールは精神分析家であり、大学の仏文教授。
    アガサ・クリスティーやコナン・ドイルの作品を読みこんでトリックの穴を見つけ出し
    「真の犯人はこいつだ!」と原作の結末をひっくり返す作品を書いた人。
    これら癖強めの材料を駆使して脚本を書いた石川湖太朗さん、大変な努力をされたと思う。
    何処から書き始めたのだろう?と思わせる。

    キャラ設定に役者陣がはまって、人物像がくっきりしているのが良い。
    緊張した場面の中で、時折警部が放つ力の抜けた台詞には客席から笑いが起こる。
    ホームズ役、誰だろうと思ったら伊逹暁さんだった。
    原作の気難しいホームズとは違ってちょっと明るいが、伊達さんにはとても合って魅力的。

    2時間40分がもう少しコンパクトになったら、客はもっと集中して犯人捜しを楽しめる。
    例えば歌は客入れと終わりだけにして、劇中はBGMだけにするとか、
    逆さまでなくストレートな時系列で展開するとか、何か良い方法があればと感じた。

    この時代設定と世界観、癖になりそうで素敵だ。
    ぜひまたミステリーとか精神分析系とか、ひねりの効いた作品を見せて下さい!


  • 実演鑑賞

    満足度★★★

    鑑賞日2025/01/12 (日) 18:00

    価格5,500円

    『逆さまの日記』観劇
    最後の晩餐のことはよくわからないものの、推理から導き出された流れはいいな、序盤の回収もしている感じがあって
    前半の進み方が今ひとつ入り込めなかったけれど、はじめに相関図みておくと良いかもしれない。余計な想像しなくて済むので。

    エックスの方で全席自由、早いものガチをうたっていたきがするけど、実際は空いてる席に誘導される。正直あまり気分の良いものではない。であれば指定席にしたほうが良いですよ。
    並んでいるときから観劇は始まっているので。

  • 実演鑑賞

    満足度★★★

    ミステリの元祖の古典二作の連続上演。パスカヴィルの犬を下敷きにした「ベイカーストリートの犬」は結構複雑な家族関係がイングランドの沼地を背景に崩壊していく因縁話である。原作は19世紀に書かれていて英国怪談(ホラー)の原型らしく、その後も同じような物語ではパルコ劇場で大ヒットした「ウーマン・イン・ブラック」があるし、「ブラッケン・ムーア」も似た世界である。底なし沼に異形に犬の咆哮が響いたり、田舎貴族の巨万の相続話とか、都会から殺人犯の脱走犯が現われたり登場人物も事件も盛り沢山だ。
    あまり経験がない若い劇団なのに、と言う危惧は当たって、注文の多い公演である。脚本は。原作をなるべく生かした上にもう一ひねりという壮図は良いが、どこも行き届いていない。小劇場で2時間45分(休憩10分)は台詞に続く台詞で十人あまりの登場人物を説明する。しかも事件は原作から随分沢山とっていて動きのあるシーンが多い。しかし舞台は駅前劇場の低い天井で奥の詰まった舞台である。切り出し風の装置でロンドンのベイカーストリートも田舎の沼地も貴族の館も全シーンを始末する工夫は、条件を見ればよくできたとは言えるのだが、なぜ、変形の斜めに舞台を曲げて組んだのか解らない。音楽をナマバンドでやるのは劇団の主張らしく今回も金管を軸に4人のバンドは入り、女優が歌ったりもするが浮いている。
    俳優も一本調子にならないように構成演出も工夫しなければ。舞台進行だけで手一杯である。趣向も拡げるだけで絞らないと恐怖も、サスペンスも深まらない。
    コロナでほぼ忘れられていたミステリ劇が次々復活上演され、若い作家でもこの作家や須貝英がとりくんでいる。本格系のミステリは閉鎖された世界だから、作り物の面白さの実験には良い素材であるが、二人とも原作からとりすぎである。三島は乱歩の「黒蜥蜴」でとったのは人物名と場所だけで台詞も中身もろくにとっていない。思い切って自己流に今の時代にあわせて作り替えなければ若さが生きていない。満席ではあったがうぬぼれてはいけない。もう一つ、この舞台は2.5と演劇との分かれ目に立っている。観客は、この物語に初めて接するようだ。結構熱心に話で見ている。若い男女の良い客層である。ここを、演劇の客にするか、2.5の一時的な「推し」で終わらせるかは、ここからほんの少し、どちらへ進むかにかかっている。折角の才能が演劇に向かうように期待もしたい。


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