満足度★★★★
濃密な時間
アンナとカレーニン、ヴロンスキーの三角関係に焦点を当てて、トルストイの長大な原作からシンプルに、想像した以上にスピーディに迫力をもって展開。アンナとカレーニン夫妻の踊りは二人の関係が表面的で不自然さを表現するために逆に技巧的で難しいのだと推察。チラシにデザインされていた写真は、夫婦の「愛のない夫婦関係」を描いていたのだと戦慄した。一方アンナとズロンスキーの踊りは伸びやかさな自然な美しさを感じる。
三人の主役と同じかそれ以上に群舞が迫力ある踊りを見せてくれて素晴らしかった。華やかな舞踏会、酔っ払った仕官たちの踊り、最後の機関車を表現する踊り。情景描写と心理描写交互に肌理細やかに表現されていました。濃密な面白い舞台でした。
満足度★★★
テンポ良く描かれる、ある女の孤立
トルストイの小説を読んだことがないので、どこまで原作に忠実かはわかりませんが、三角関係の末に自殺する女性をチャイコフスキーの管弦楽曲に乗せて描いた、分かり易くてダイナミックな振付が印象的な作品でした。
暗い中、汽車のおもちゃで遊ぶ子供がスポットライトで照らされて始まり、舞台奥にアールデコ的な鉄橋と駅舎にあるようなアーチ状の窓があるセットの中で、アンナとその夫カレーニン、不倫相手のヴロンスキーの3人の関係がテンポ良く展開し、アンナが鉄橋から汽車が迫り来る線路に身を投げて死ぬまでが描かれていました。
第2幕の冒頭の酔っぱらった兵士達の群舞がユーモラスで、全体的に重い雰囲気が支配的な作品の中で良いアクセントになっていました。
『悲愴』の第3楽章に合わせて踊る舞踏会のシーンでは早いテンポで複雑なフォーメーションが展開し、その中で孤立を感じていくアンナの様子が描かれていて印象的でした。
終盤では阿片を吸って錯乱するアンナの様子が全裸(に見える衣装)とバレエ的でない振付と不気味な電子音楽で表現されていましたが、その部分だけが古臭い前衛芸術みたいなテイストで違和感がありました。
クライマックスのシーンはメカニカルな動きの群舞とインダストリアルな音楽で緊張感がありましたが、アンナが橋に現れてから飛び下りるまでがあっさり過ぎて、もう少しタメが欲しかったです。
アンナを演じた厚木三杏さんは大人の女性を感じさせるキリッとした雰囲気が素晴らしかったです。
カレーニンを演じた山本隆之さんは片手で持ち上げたり、倒立状態の相手を支えたりするアクロバティックなリフトを危なげなく決めていて良かったです。
ヴロンスキーを演じた貝川鐡夫さんは少々キレが悪くもっさりとしていて、アンナがカレーニンを捨ててヴロンスキーに惹かれて行くことに説得力が感じられず、残念でした。
満足度★★★★
厚木三杏!
いいダンサーなのにファンタジーがどうもしっくりこず気になっていたが、このようなはまり役があるとは嬉しい。心理劇では日本屈指ではなかろうか。また、カンパニーにもあっている感じ。コールドに欲張りな注文を付けると、アレグロをもっとさりげなく踊ると振付のかっこよさがでると思う。