ふしぎな木の実の料理法~こそあどの森の物語~ 公演情報 ふしぎな木の実の料理法~こそあどの森の物語~」の観てきた!クチコミ一覧

満足度の平均 4.2
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  • 実演鑑賞

    満足度★★★★

    銅鑼の舞台は幾つか目にしていて、社会派なシリアス物から人情劇風のもの、SFチックなものと色々だが、そういう「想定」からは今度の舞台は随分外れていた。勿論良い意味で。架空の「森」という世界が、舞台装置、音楽そして役人物たちの演技によって破綻なく、醒めさせる事なく形作られていたのが、自分にとっての驚きであり発見。
    ただ例によって体調がやはり万全でなかったらしく、後方席で受け取る視覚・聴覚の刺激が導眠効果となり、途中幾つかの「訪問」場面が抜けた。最後も良い感じで終わっていて勿体なく思ったが、これを埋めるべく原作に当たり、舞台を想像で再現する楽しみが出来た(そう思う事にする)。
    アニバーサル公演で招聘しているらしい大澤遊演出の舞台も(中なか見れていないので)拝見できたが、演出の導きでもあの世界観を作り出す(というか破綻させない)演技を銅鑼役者がやれていた事が私の中での☆三つ。

  • 実演鑑賞

    満足度★★★★★

    鑑賞日2024/02/23 (金)

    シアターグリーンにて劇団銅鑼『ふしぎな木の実の料理法』を観劇。
    まるで絵本の中に入り込んだかのようなファンタジックな世界観。幼稚園児や小学生はもちろん、精神的にちょっと背伸びしたくなる中学生や高校生、さらには、働き盛りの20代30代40代50代、そして、60代70代80代のベテラン世代まで、まさにどの世代にも届き、誰もが純粋に楽しめる演劇というのはこういう作品を指すのだなと強く感じた時間となりました。いや、参りました。素晴らしい。童心に帰って夢中になって楽しませていただきました。
    創立50周年を迎えられた老舗の劇団とのことでしたが、個人的には今回が初見でした。こんな素敵な劇団が存在していたとは。新たな良質な劇団と出会えた喜びと同時に、自分自身の視野の狭さを痛感しました。まだ発掘出来ていないだけで、今回のような優良劇団はまだまだ多くありそうです。
    さて、今回のストーリーはふしぎな木の実を手にした主人公が、その料理法を教えてもらうべく、森の中に住む様々な人々と交流してコミュニティを築いていく物語。児童文芸賞などを受賞されたことがある児童文学が原作となっているだけあり、終始心が穏やかになるような好奇心にかられる内容でした。分かりやすく比較的シンプルなストーリーながらも、客席の大人たちが皆揃って舞台に引き込まれているように感じたのは、原作の秀逸さ、優れた舞台空間の創り方、キャストの皆様の技量の高さなどが相まって、各々がそれぞれ本の中に入り込んでいたからではないかと感じています。最後どのような展開が待っているのだろうかと、自然と前のめりになって楽しんでいる自分がいました。やはり原作が魅力的なのは間違いないです。また、台詞の一つ一つが非常に聞き取りやすいと感じたのも、評価を高めたポイントの一つです。声のボリューム、速さ、トーン、どれをとっても満点の出来。観劇した回ではちょうど手話によるサービスも実施されており、万人が楽しめる工夫が施されていた点も好印象でした。

  • 実演鑑賞

    満足度★★★★

    これは傑作だと思う。
    話のディテールがよく出来ているので「これオリジナルだったら脚本家は凄い才能だな」と思ったら世界的に評価されているベストセラーだそうだ。

    定年まで小学校の図工の先生をやりつつ、児童文学を書き続けた岡田淳氏。代表作『こそあどの森の物語』シリーズの第一作「ふしぎな木の実の料理法」は1994年に発表された。
    全十二巻の内の第一巻が今作。第六巻を劇団四季が『はじまりの樹の神話~こそあどの森の物語~』としてミュージカル化しているらしい。それも観てみたい。

    こそあどの森で暮らす様々な住人達の織り成す人間模様。白い大きなカーテンを使って場面転換を工夫。ミニチュアを活用して不思議な雰囲気のある奇妙な形の家々をイメージさせるアイディア。
    二人組の旅の笛吹き、ナルホドとマサカ(池上礼朗氏と早坂聡美さん)が奇妙な歌を歌いながらどこか遠くからやって来る。森に宅配便を運んで来たのは郵便配達員ドーモさん(深水裕子さん)。南の島にいる博物学者のバーバおばさん(声のみ・栗木純さん)からの荷物を、留守番中の少年スキッパー(齋藤千裕氏)に届けるのだ。気を付けて橋を渡っていたのだが、川に荷物を落として濡らしてしまう。ポットさん(佐藤響子さん)と一緒に謝りに。主人公スキッパーはコミュ障の引きこもり、空想癖のある対人恐怖症。家に籠もって読書や化石や貝を眺めるのが大好き。荷物を確認してみると、沢山の硬くて大きなポアポアの実が。だが肝心の同封されていた「木の実の料理法」が水に滲んで所々読めず、まるで虫食い問題に。ポアポアの実の料理法を求めて、スキッパーは家々を訪ねる羽目に。

    主演の齋藤千裕氏が素晴らしい。何か魅力がある。細かい表情や仕草一つ一つに意味をもたせている。繊細。
    深水裕子さんは松居直美っぽい。
    トマトさん役、亀岡幸大(ゆきひろ)氏も強烈。「ねえ、キスして···。」
    双子のアップル(福井夏紀さん)とレモン(佐藤凜さん)も『シャイニング』を思い起こさせるキャラ。

    妄想癖のスキッパーは人と接している間、悪い方悪い方に考えが転がり、不安神経症患者のようにパニックになる。その不安と妄想が精神病棟の地獄巡りのようにも思えて妙に面白い。深い人間洞察は宮沢賢治にも通ずる。ずっと子供相手の仕事をやって来た作家なだけに人間というものの本質を見据えている。嘘っぽくないところが凄い。観に来ていた小学生達も食い入るように楽しんでいた。

    是非観に行って頂きたい。

    ネタバレBOX

    ラスト、皆でポアポアの実のジャムをかき混ぜるのだが、トマトさんは「皆が今までで凄く楽しかったことや嬉しかったときのことを思い出しながら一回ずつかき混ぜて」と頼む。その想いがジャムに染み込むのだと。それを全員に三巡させ計三回ずつやらせる。スキッパーは色々と優しくされて胸が一杯になったことを思い返す。そして最後の一つに選んだのは「皆が家にやって来て凄く嬉しくて楽しくて、で皆が帰った後、一人でそれを思い返しながら自分だけの時間に浸ること」だった。そこが素晴らしい。ああ、この作家には嘘がないなと思った。

    アップルとレモンの狂いっぷりが凄い。キチガイの家に迷い込んだ恐怖。優しい素敵な話のようにみせて、結構恐ろしい。
  • 実演鑑賞

    満足度★★★★

    鑑賞日2024/02/21 (水) 19:00

    座席1階

    岡田淳氏による有名な絵本「ふしぎな木の実の料理法」を舞台化した。コロナ禍で延期になり、今回が再挑戦の舞台だ。

    子どもから大人まで楽しめる工夫が随所に。シンプルな演出だが、薄いカーテンヴェールをうまく使って降雪など季節を表現したり、積み木のような台を自在に動かして森の住人たちの家をデザインするなど舞台転換もスムーズだ。そして何よりも、俳優たちのせりふが明瞭かつ発声が大きくゆっくりで、とても聞きやすい。バリアフリー演劇を目指す銅鑼らしい舞台と言えよう。今日も医療的ケアが必要だと思われる客が車いすで舞台を見ていた。23,24両日は舞台手話通訳もつくという。

    絵本が専門の知人によると、原作にほぼ忠実で、絵本の世界観が再現されていたという。きっと、絵本を読んだことがある人もない人も、共通の視野を持って鑑賞後に話ができるだろう。「原作と雰囲気が違う」などとして、原作を知る人とそうでない人の話がかみ合わないということはよくある。銅鑼らしい丁寧な作りがそうした齟齬を排除していると思われる。

    もう一つ、この舞台の特長は俳優の性別を超えた配役がなされているという点だ。そうした配役を担う俳優は与えられた役を自分のものとしてしっかりこなしていて、まったく違和感を感じさせない。鍛えられた舞台だな、という印象だ。

    物語は、南の島から送られてきた不思議な木の実をどう調理するか、ひきこもりがちだった主人公が森の住人たちを訪ねていくうちに、明るさを取り戻していく。お互いを大切に思う気持ちが人を変えていくというストーリーは、本当にホッとする。

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