満足度★★★★
古典→折衷→現代
1番目:シンフォニックバレエ、あまり印象に残らない。2番目:音楽は白鳥そのもの、動きはコンテンポラリー。オズの魔法使いに対するウィキッドのように、物語の裏面から見るという面白さがある。どのような結末でもオディールにとってはハッピーエンドはないことに気づかされる。ふくらませて単独公演してほしい。3番目:完全にコンテンポラリー。このバレエ団がここまでコンテを踊るとは、ちょっと驚き。3作の中では一番好み。
満足度★★★
三者三様
バレエ団のメンバー2人とゲストの3人の女性振付家による作品3本立てで、それぞれ様式の異なる作品を訓練された身体のバレエダンサー達が
踊り分けていました。
髙部尚子『フラ*ワラ』
ベッリーニのオペラをアレンジした音楽を用いた、ストーリーのないシンフォニックバレエ作品でした。クラシックバレエ的な振付で衣装もいかにもバレエ的な華やかなもので、オーソドックスな印象でした。白い床にパステルカラーの衣装で明るい雰囲気でした。
バランシン作品のような音楽の構造に対応した振付ではないため、音楽がただのBGMになってしまっているように感じました。そもそもベッリーニの曲があまりモチーフを展開して行く構築的な作風ではないので、シンフォニックバレエ向きではないような気がします。
ダンス自体は悪くなかったのですが、現代においてこのような作品を作る意味が感じられませんでした。
日原永美子『オディールの涙』
『白鳥の湖』アナザーサイドといった趣の作品で、黒鳥オディールの側に立ってバレエの古典がモダンバレエの様式で描かれていました。
オディールはボブヘアにバーレスクダンサーのような衣装とコケティッシュなビジュアルで、親である悪魔に命令されて王子をそそのかすことに葛藤を覚えるという、魅力的なキャラクターに描かれていました。
アンサンブルは重心の低い動きや長い布の付いた衣装がアジア的雰囲気を出していて新鮮でした。照明や映像がとても凝っていて美しかったのですが、映像が多すぎると視線がダンサーに行かなくなってしまうと思いました。音響の処理が雑だったのが勿体なかったです。
木佐貫邦子『T-scab』
ゲスト振付家として作った作品ですが、バレエ団だからとバレエ的なテクニックを多用することはなく、いつも通りのコンテポラリーダンス作品になっていました。
他2作と異なり幕や壁を取り払いバックヤードが露にされた空間に、スタンドにセットされた照明が乱雑に並び、奥にずらっとダンサー達が並ぶ冒頭シーンが印象的でした。ビートの利いた音楽に乗せて踊る姿が格好良かったです。前半は刺激的でしたが、後半は繰り返しが多く少し間延びしているように思いました。
ポワントを用いず、裸足あるいはハイヒールだったのですが、やはりコンテンポラリー系のカンパニーとは体の使い方が異なり、バレエダンサーの精度の高さという良い点と、ラフさが表現できない悪い点の両方が見えて来る作品でした。コンテンポラリー系で常連の、スカンクさんの音楽と堂本敦子さんの衣装が素敵でした。