いつかの森へ 公演情報 いつかの森へ」の観てきた!クチコミ一覧

満足度の平均 4.0
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  • 満足度★★★

    繰り返される過ち
    複雑な事情を持った家族を中心とした物語で、同じような過ちをしてしまう人間の弱さが丁寧に描かれていました。
    トラウマから精神を病んだ人の描写が絶妙で、ちょっとした言動から痛々しさを感じさせ、印象に残りました。
    重苦しいエピソードが続き、陰欝な雰囲気が支配的なのですが、希望が見えて来る終わり方で、後味が良かったです。

    役者の演技が落ち着いていて、良かったです。出番は少なかったのですが、大家さん役の抑えていながらも存在感のある演技が素敵でした。

  • 満足度★★★★

    いつか、きっと!
    深い、深い、森の中、木漏れ日を目指して歩いても、歩いても、生い茂る樹木の暗闇。やっと、たどり着けると思ったら、蜃気楼のように、儚く・・・又、絡み続ける樹木、でも歩き続ければ、新しい展望が開けるはずと思えました。

    ネタバレBOX

    知らないほうが、幸せだと思っていたり、知らなくても、大した事が無いと思っていてが、知ってしまうと、とても大事だったり、必要だったり、、、封印していた記憶の鮮明さに、驚かされたり、支えられたり、、、複雑な家族関係や、逃れたいけど、逃れきれない人間関係の中、それでも、繋がり続ければ、何かが開かれる喜びもあることを、信じたいと思える作品でした。

    初見だったのですが、繊細な作品と魅力的な役者さんで、楽しめました。
    是川役(前田昌明さん) 松島役(小松幸作さん)のベテランならではの、深い味わいのある演技が、特に印象的でした。


  • 満足度★★★★★

    しくしくと泣かされる
    毎回のことだが、海市工房の芝居はしっとりと優しいながらも人間の奥にしまい込んだ誰にも触れさせたくない感受性をつんつんと尖った破片で突かれるような感覚になる。人は何のために生まれてきたのか、どこに向かって歩いていくのか、人と繋がりあうとはどういうことなのか、時にはいつかの森に逃げ込んでしまいたくもなる・・。そんな迷ってしまった私を誰か迎えに来てくれるでしょうか?そういった心理を追求した作品だった。

    以下はネタばれBOXにて。。

    ネタバレBOX

    三人の兄弟の母親・加代子は幼児誘拐殺人容疑がかかったが、証拠不十分のために釈放された限りなく黒に近い女だった。その娘・珠恵と次女の麻子、長男の圭太郎を残したまま、家を出て行った加代子は孤独な中、ついに亡くなった。ある日、死亡通知でそのことを知らされた圭太郎は母の記憶を紐解きながら、同時に珠恵と麻子にとっても苦い過去が炙り出される。

    現在、父親の跡を次いで美容院を経営する珠恵はそんな母親の過去に翻弄されながらも母が殺したかもしれない子の兄・松島修一との不倫にも悩む。

    一方で麻子も訳あり不倫をしながらも珠恵の子として育てられた自分の子・花と不倫相手の男との三人の家族を作ろうともがく。自分は誰にも繋がってないという不安から家族を欲しがる麻子だった。

    もう一方で娘を亡くしたクリーニング屋の妻は娘は生きてるものと思い込み未だに狂ったままだ。美容院の大家は放火を繰り返し時々呆ける。

    ここに登場する人たち全てがぐるぐると同じところを回っているだけの迷える子羊だ。珠恵を愛してしまった修一も自分の家族を捨てて珠恵の元へ来るという。これを阻止する珠恵。「僕たちの人生は何だったんでしょうね、何のために生まれてきたのでしょう?」と苦悩しながらも訴える修一。物語は珠恵を軸に傷ついたそれぞれの人たちの弱みに染み入るように優しく接する人間の本質を描く。

    時には秘密の森に逃げ込んでこの世で起こっている混沌を浄化させるように描きながらも人間の怖さとやさしさを表現した海市の世界はやはり泣ける秀作だった。

    特に珠恵と次女の麻子を対比させる性格設定、圭太郎の静かなる芯の強さ、花の悩める女子高校生の設定も絶妙だった。キャラクターの立ち上がりも確かな地盤があり登場人物の幅広い年齢も老若男女が受け入れられる要素かと思う。

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