満足度★★
観客の視線の先にあるもの
広い講堂の中を、体育館のように使い、役者も観客も動いていく。「美術館鑑賞のような・・・」という説明もうなずける。「どこが一番観やすい位置ですか?」なんて開演前に聞く必要はないわけです(笑)。
ライトの設計ということで、旧帝国ホテルのラウンジに似た造りも見てとれ、個人的にも興味深い会場でした。
観客が席にすわって舞台を凝視する一般の演劇と違い、俳優も複数の場所で演じており、自由に動き回る観客たちの視線が別の視線を誘導していく偶発的面白さがある。
ある意味、観客参加型、体験演劇というべきか。
上演時間1時間弱。表現方法としては面白いと思ったが、前衛アートと同様、はっきりした形がないので、演劇を観たという印象とは少し違う。
演劇を実際にやっている人たちはもっと感じ方が違うと思うし、より深く楽しめるのかもしれない。
中学の社会科の授業で憲法前文を暗記させられ、大学でも「日本国憲法」の授業を選択して受けたのだが、「日本国憲法」を実感する内容とは言い難かった。
満足度★★★
声の力
学校の講堂(フランク・ロイド・ライト設計の丁寧な作りの名建築です)で5人の役者が日本国憲法の文章を喋り、観客はそれを自由に動き回って聞くという、実験的な作品でした。
ジョン・ケージのハプニング作品みたいに別々の場所でお互いに無関係な出来事が生じていて、観る人によって全く異なる経験をする、開かれた作品だったと思います。1時間弱かけて静(沈黙)から動(歌、手拍子)へ推移して行く様子が日常的な時間感覚と全く違っていて、不思議な感じでした。もっと長い時間体験してみたかったです(上演時間は1時間弱でした)。
説明にある「日本国憲法と自殺問題を観客自身が当事者として体験する試み」という風には感じませんでしたが、ささやき声にも満たない声から、朗々とした歌声まで、言葉ではなく、声そのものの存在感を強く感じさせてくれました。
いわゆる「演劇」とは全く異なる作品ですが、音楽的を聴くように鑑賞すると楽しめると思います。
『自殺対策基本法』も観に行こうと思います。