教会のみえる川辺で 公演情報 教会のみえる川辺で」の観てきた!クチコミ一覧

満足度の平均 4.0
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  • 満足度★★★★

    初見の劇団だったけれど
    素晴らしい舞台でした。
    何よりキャストの安定感のある演技力がいい。

    人間が自分の人生をどこか誤って落ちていくさまの結末はお見事!

    以下はネタばれBOXにて。。

    ネタバレBOX


    ホテル「リバーハウス」のオーナーとその姉の二人が喪服を着て話し合う場面から芝居は始まる。この二人の話の内容が「100万回生きた猫」だったり、「愛する人を失って川辺で泣いてる鬼」の話だったりと、優しく私の耳元でくるくると廻って流れるように入ってくる。二人の声がいい。その穏やかな話し振りから、まさかこんな結末が訪れようとは夢にも想像していなかった。

    全ては3年前、「リバーハウス」に北村博之がずぶ濡れになってやって来たことから始まる。ホテルのオーナー・麻衣子は彼に会った途端、衝撃を覚えるほどの一目ぼれをしたのだった。しかし彼には他言できない過去があった。麻衣子は彼の素性も解らぬまま、夫婦のように過ごしていたが、ある日スーパーの息子・光雄が写した博之と「リバーハウス」の写真が入選し、雑誌に取り上げられたことから、生活は一変する。「リバーハウス」には博之の過去の知り合いが訪ねて来たり無言電話がかかって来るようになる。彼らの証言から博之の過去が徐々に明らかになっていくが、その内容は人殺しだったり、無理心中だったり、強盗だったりと犯した罪は麻衣子が想像もしなかったことだった。

    一方で麻衣子の姉と岡原は「リバーハウス」で密会して不倫をする。そして「リバーハウス」の宿泊客・栗山未央はホストに入れあげてホストが常日頃から不満に思っていた社長を殺してしまう。物語はどこかうっ血した心の闇を表現しながらもキャストのキャラ立てのせいだろうか?おどろおどろした感は感じられない。屈折した精神を跳ね飛ばすかのような明るさにも似た演じ方が絶妙だった。

    やがて博之は心中して逝ってしまった凛子への想いを回想シーンでぶつける。あの淡くて儚い美しい恋物語を。凛子を苦しめた自分。家族を愛せなかった自分。人を裏切った自分。それらは、おふくろが言った言葉、100万回生きた猫のように、「死んでも死んでもまた生き返るから、この世の一つ一つは大した事ない。」という教えがあった。そうして博之は頭を銃で撃って自害してしまう。これで彼はやっとこの世で生きる辛さから開放されたようにも思えたし、良心の呵責から自害したのかも知れない。

    残った麻衣子は泣くのだった。「前から解ってたの。いつかどこかへ行ってしまう。ただ、気が付かないふりをしてただけ。」こうして愛する人を失った麻衣子は教会の見える川辺で泣いたのでした。あの鬼のように泣いたのでした。

    芝居の冒頭からの伏線がここで繋がり、また同じように姉妹の会話で幕を閉じる。姉妹はあの頃、鬼だと思っていたけれど、良く観ると実は彼女らのお父さんだった。妻を失って泣いて泣いて川辺に蹲って泣いているお父さんだった。

    全てはホテル「リバーハウス」で起こった物語。生まれてきた意味を考えるとき、それぞれの人生は容赦なく蠢く。

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