満足度★★★★
果たして本当の自分とは
それぞれの人格・個性をあらわす「箱」。
誰もが「箱」を持っているらしいが、誰もが「箱」が見えるわけではないらしい。
また、「箱」が見える人間は、自分と同じ「箱」を探して、その箱をつぶすと、「箱」が見えない生活に戻れるという。
『もしあなたは「箱」が見えたときに、その「箱」をどう扱いますか?』
と脚本家は問いかけてくる。
「箱」の存在に気づいた人間はいやでも、自分自身と向かい合わざるを得ない。
自分と同じ「箱」を持ったもう一人の自分は、自分の分身、つまり、鏡なのである。
その鏡を通じて、自分が感じている自分と、他人が感じている自分は、必ずしも一致しないことに気づかされる。
「箱」は決して、故意につぶそうとしてつぶせるものではなく、もう一人の自分と向かい合うことで、自分自身を受け入れ、かつ、もうその「箱」を必要としないことではじめて、「箱」は自然に消滅するのである。
果たして、自分は同じシチュエーションに置かれたときに、どのように、対応するだろうか???
と考えさせられた。
役者が開演から終演までずっと舞台の四方に、箱を積み上げるという演出も新鮮であった。
特異なシチュエーションションを使いながら、「自分の内面をみつめる機会を提供する」というオーソドックスな主題を扱う脚本家の力量に、感嘆させられた。
作風が独特なため、誰もが楽しめるとは言いがたいが、私には楽しめる舞台であった。