此処より先へ 公演情報 此処より先へ」の観てきた!クチコミ一覧

満足度の平均 4.2
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  • 満足度★★★★★

    感動しました
    私たちが避けて通れない老々介護の厳しい状況は、悲劇に到った事件報道を通じて日頃から心を痛めていましたが、そのテーマを中心に上演されたことは、もはや非共同体化した社会に文化芸術面から警鐘を鳴らすという観点で、本当に意義深いことと思います。
    このお芝居では、役者さんの力強い演技の中で、夫婦の距離感がうまく演じられていたと感じました。感動しました。

  • 満足度★★★

    興味深いテーマ
    明日はわが身!そう、介護はもはや避けては通れない問題になっている。いま若くても、確実に老いはくるのだ。それだけに今回の舞台、とくに妻役の女優さんの鬼気迫る演技は見事であった、というか鳥肌が立つほど怖かった。

    今回初めて見せてもらった劇団だが、考えさせられる内容、そしてそれに応えるだけの力作であったのは事実。その出来は楽勝で平均点以上だった。それだけに客席に空きが目立ったことは惜しい。たしかに、ちょっとばかり重すぎて好みが分かれる舞台ではあったが・・・・。避けたくなるテーマだが、直視しなければいけないのも事実だ。これからも、頑張って欲しい。

  • 満足度★★★★

    成行ミチ子さんの演技に、鳥肌。
    数知れぬ浮気の後に、脳疾患で植物状態になった男と、妻の物語。
    妻は、夫が浮気をしている間中、じっと我慢し続けた。いつか自分の下に帰ってくると。。。
    夫の病気によって、妻にとって待ちに待った二人の時間が戻ってくる。その環境に至福を感じつる妻であったが、やがて気づく。二人の関係はこれで行き止まりだと。
    妻は、「此処より先へ行きたい(関係を再構築したい)」と、夫を絞め殺す。自分も心中を図り、黄泉の国で新しい関係を築く予定であったのだ。
    しかし、妻は死に切れず、夫のいる夢と現を行きかう。
    果たして、妻は死に、夫と新しい関係を気づけるのか?

    夫は黄泉の国では、病気以前に戻ったかのように、傍若無人に振る舞い、決して妻を顧みない。黄泉の世界でも、二人は結ばれることはなかったのである。
    しかし、傍若無人な振る舞いは、夫の屈折した愛の表現方法であるのだ。自分と同じ世界に妻を来させない(死なせない)ための。

    介護疲れによる無理心中というテーマであるが、その描かれ方は決して平坦ではない。夫婦のあまりに屈折した愛の形が示される。

    13号地は初見であったが、転位・21出身の加藤さん、成行さんの二人舞台ということで、たいへん期待していた。
    その期待にたがわぬ名演技をお二人の俳優さんが見せてくれた。
    特に、成行さんの演技には、恐ろしささえ感じた。

    テーマ的に、受け付けない人もあろうかと思うが、私には実りある舞台となった。
    ただ、惜しむらくは、観客が驚くほど少なかったことである(私を含めて15名ほど)。
    なぜ、これほどの舞台を見せる劇団なのに、もったいない。

  • 満足度★★★★★

    二人のキャストの力量でひっぱる!
    ひじょうに深い、本当に素晴らしい演技でした。
    かつての夫は妻を省みぬ放蕩生活に明け暮れ妻に母を求め、一方で夫の体が不自由になったことでやっと夫を独占できたというねじれた愛の物語。
    どちらの愛も偏屈のようだがそこには究極の愛が潜んでいるという秀作でした。
    ☆終演後、ビールと焼酎、つまみのサービスがあります。飲める方はサイコーです。暑い夏にビールはいかがぁ?飲み放題!(^0^)

    以下はネタばれBOXにて。。

    ネタバレBOX

    妻の視点で物語を追っていくとひじょうに解りやすい。妻はだめっぽい男が案外好きなのかもしれない。なぜなら、たぶん彼女も弱いのだ。

    放蕩三昧を繰り返した夫が5年前に倒れ動けなくなる。相談員や介護師が心配して援助しようとしたが妻はその全てを断る。自分一人で夫の介護をしたかったのだ。二人っきりで静かに穏やかに暮らし続けたいと願う。この部分で妻の夫に対する愛情がひしひしと感じられる。
    そう思った。そう思い続けて3~4年経った頃、彼女はふと気が付いた。「此処より先には何があるの?行き止まりだわ、かずちゃん(夫)と一緒に此処より先に行きたい。」と心中をする。

    やがて妻だけ助かり、夫は死んでしまう。妻は夫の後を追い死のうとするがそこで妻は夢の中で夫の姿をみる。ここから妻の幻想の世界と現実の世界を彷徨う物語。

    夫は介護する妻の前で浮気相手の「さちこはどうしてる?」と訊ねる。
    「かなえは?ゆきちゃんは?」と。
    ここでの夫の心理は妻にしっかり甘え、夫の中での妻の存在は消え、妻を母としてみているのが解る。
    妻はそんな夫の言葉を聞いて悲しくなり、「私の気持ちを考えた事があるの?」と責める。しかし夫は「お前の気持ちなんて考えたことはない。」とあくまでも強気で傲慢ささえも覗かせる。夫は弱い人なのだ。

    現実世界の妻は「こうやって私が居るからこの人は生きながらえることが出来る。」と動けなくなった夫を独占したことで満足する。そうして、「夫を介護する事が楽しくて楽しくて仕方がない。」と言い放つ。介護を通じて少しずつ夫に復讐をしているのだ。
    夫の口に食べ物を運ぶ時、「そうそう、じょうず上手!」と夫の瞳を覗き込む。その瞳には無念とか、後悔とか、失意とかが見えて、この時点で妻は夫のプライドをも崩す。しかし、夫の瞳の奥の行き止まりに醜い私が映っていることも承知する。夫を憎みながらもその裏返しには夫への愛が潜み、だからこそ夫が死んだ今、後を追おうとする。

    しかし、幻想の中の夫は妻を死なせないとする。それは三途の川を渡るとき、阿波踊りを上手に踊れないと渡れない、という刷り込みを妻にする。そして妻に何年かかっても完璧に踊れるようになるまで渡るな!と言い渡す。

    阿波踊りのシーン、妻が夫を絞め殺すシーン、それはなんともグロテスクなフォルムだ。妻の夫も見えない何かに繋がれて、どちらも相手から逃げられない。絡まって痩せこけて疲れきり、それでも強欲に求め合う。二人の輪郭がどんどん緩んで正体のわからない重みだけがゆっくり増してゆく。
    こうして夫は阿波踊りを踊りながら去っていき、妻は「かずちゃーーーーん!!!」と叫ぶ。

    ひじょうに壮絶な物語です。妻役の成行ミチ子は相変わらずの熱演でした。夫役の加藤一也は勉強したのでしょうね、車椅子に乗った表情、口の結び方など細かい部分まで表現し秀技です。この物語は観る方によっては評価は割れるかもしれない。それほどドロドロと深層心理に迫った本です。
    しかし、ワタクシはひじょうに秀作と思っています。二人芝居でこれだけのものを魅せられるのは「13号地」以外、考えられないからです。



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