熱帯、オフィーリアの花環 公演情報 熱帯、オフィーリアの花環」の観てきた!クチコミ一覧

満足度の平均 2.0
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  • 満足度★★

    人間の描き方が浅薄
    劇団サーカス劇場は劇団地上3mmと合体し、2009年ピーチャム・カンパニーとして新たにスタートを切るそうです。
    駒場関係者を除けば、私ほど長く劇団サーカス劇場を観て来た者はいないという自負があるので、合体に当たり、あえて過去の観劇ノートから感想を書かせていただきたいと思います。消滅へのレクイエムというか(笑)。
    初期の「観て来た」が極端に少ないようなので、参考記録のひとつになれば
    と思うので。
    作者の清末浩平東大在学中の2002年に上演された『熱帯、雨の少女』は
    かつて清末氏自身が再演したいと願い、劇団員もぜひやりたいと言った
    作品なのだそうです。劇団員と言っても、森澤友一朗氏のことだと思うのですけど。それほど思い入れのあった作品らしいですが、再演の割りに
    まとまりが悪かった印象が強いです。
    正直言って「近代アジアの傷口を浮かび上がらせながら歴史を遡航する『ハムレット』は、日本人の暗い記憶を辿って、いかなる水源に行き着くのか。 日本と熱帯、戦後と戦中をつないで展開する、イメージの万華鏡」なんてものではなかったですね。。

    ネタバレBOX

    黒崎先生というのはサーカス劇場のお決まりの登場人物ですが、
    この作品では、黒田三郎という清末氏が気に入っている詩人がモデル
    になっています。
    史実の黒田三郎は東京帝国大学経済学部卒業し、南洋興発会社社員としてジャワに赴任、同地で敗戦を迎え、1946年(昭和21)帰国しました。この芝居では妻子を捨てて植民地時代のジャワに渡った黒田三郎が身分を隠して黒崎先生として生きており、日本に連れ帰ったステイという現地人少女を女優として育てているという設定。サクラは黒崎先生が自分の父、黒田三郎だと知って、その過去を問い詰めようと訪ねてくる。
    しかし、この芝居の最大の欠点は、なぜ黒田が妻子を捨てたかということが
    明かされず、「戦争はいけません。植民地は悪です」といった観念論を振りかざすだけに終わっていることでした。人間を描ききれていない。ステイを女優として育てるという必然性も感じられず、それは当時ステイを演じた女優への演出家の思い入れにしかわたしには思えませんでした。ステイに現地語を忘れさせようとする黒崎先生の執念も植民地への贖罪の念からなのか、自分の過去との決別を言いたいのか、よくわからない。
    南洋興発の社員を演じる役者が、劇場のオーディションを受けに来る芸人を
    演じているのだが、芝居を観ている限りでは、2役なのか、社員がわざと化けているのかわからず、寒いドタバタギャグだけが浮いていた。
    「ヤシ油の匂いが・・・」ということばの繰り返しが多く、休憩をはさんで約2時間、客がぐったりしていた姿だけが印象的だった。

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