幕末・明治・高橋お伝 公演情報 幕末・明治・高橋お伝」の観てきた!クチコミ一覧

満足度の平均 5.0
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  • 満足度★★★★★

    一人の男によって流されたお伝
    とにかく正統なお芝居。役者の面々も、かなりの年配の方から若い方までを起用し、その年代の情景を綿密に表現していました。ひじょうに素晴らしい!

    以下はネタばれBOXにて。。

    ネタバレBOX

    世間からは明治の毒婦とか人食いお伝とか呼ばれていた高橋お伝だったが、事実は病気の夫の為に外に出て働くようになる。そこで出会った後藤吉蔵にまんまと騙されて、吉蔵の情婦だった腹違いの姉とお伝の夫を殺されてしまう。更に騙されて借金まで抱えさせられたお伝は睡眠薬を飲まされ、吉蔵に強姦されてしまう。

    「女の一人や二人、虫けらみてえなもんだ!」と再度、強姦されそうになったお伝は吉蔵を刺し殺してしまい、お縄になるのだった。

    取調べ室では、一人の判事がお伝が殺人を犯したまでの罪の理由を証明できていたが、その判事の妻の悪行によって証拠の品を握りつぶされてしまう。結果、絞首刑にさせられてしまうという、悲哀不運の物語だ。

    世間というのは一度悪いレッテルを貼られると、同じ方向に人は動き追従する。お伝という世間が創ってしまった虚像の物語。


    小説を芝居にするとき、原作から脚本を起こして原作を批判するところから出発していると思う。題材やテーマはいいのだけれど、芝居的な空気が足りない。だから、そこを批判して変えていく。出来上がった脚本を、今度は監督の立場から批判して変え、補う。練りあがると今度は演出で手を加えたり、入れ替えたりして・・、こうやって何段階かの批判作業を経て舞台になるわけだ。

    勿論、小説と芝居は根本的に表現形態が異なるから、まったく同じように創る事は不可能だが、この舞台は作品の本質は損なわれる事無く、原作の空気感を舞台いっぱいに上手く再現していたと思う。

    スリの大親分の気風の良さやものいい、判事のなんとも切ない表情など、舞台人の貫禄を見せつけた納得のいく舞台だった。

    軽いはっちゃけた舞台もいいけど、正統派の舞台をみると、憧れに近い気持ちを抱く。



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