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ニューオーダー
かもめマシーン(東京都)
公演に携わっているメンバー:5人
- 団体紹介
- かもめマシーンは2007年に設立された団体です。これまで、福島第一原子力発電所から20kmの場所で行った『福島でゴドーを待ちながら』、震災の1カ月前を扱った『パブリックイメージリミテッド』など、社会の状況に反応するための作品を創作してきました。
ただし、この社会「について」の作品を創作したいのかというと、そうではありません。あくまでも、私たちの立脚点は、個人に軸を置いています。
「個人」に対して、社会は深い関わりを持っています。私たちが無自覚に行っているような「個人的」な行動もまた、社会の影響を受けながら行われているのではないでしょうか。例えば、この19世紀に生まれた「社会」という単語ひとつとっても、受け取る「個人」によって、それぞれ微妙に意味や内包するイメージは変わります。言語は、個人的なものでありながら、社会的なものでもあります。社会と個人という安易な二項対立ではなく、また、個人の殻に閉じこもるのでもなく、現代社会に生きる人間を描いています。
- 応募公演への意気込み
- 本作は、「住む」ことについての作品です。
東日本大震災以降、どこに「住む」かが前景化したのではないかと考えています。この3年間で、少なくない数の人が、移住を選択しました。また、実際に移住をしなかったにせよ、「どこに住むか」「どこに暮らすのか」ということについて、意識的にならざるを得なかった人は多いのではないでしょうか。私自身、(故郷でもない)東京に住み続けながら、はたしてこのままここに住み続けていいのかという迷いはまだ消えていません。この迷いから、本作の構想はスタートしました。
本作では、人々にとって移動拠点となる「夜行バスのターミナル」を舞台に設定し、そこにやってきた一人の女性を主人公にしています。ただし、俳優は、誰も彼女を直接演じることはありません。俳優には、彼女の行動、思考、言葉など、それぞれに役割を与えられ、言葉を語っていくことで、彼女と彼女を取り巻く環境という風景を生み出します。なぜ、この方法論を用いるのかといえば、1人の人間を周囲の観客が理解するためには、1人の俳優がそれを演じるだけでは足りないのではないかと考えるからです。
- 将来のビジョン
- まず、短期的な(数年以内の)目標としては、舞台の様式を確立させ、それを洗練させること。作品を方法論として深化させていきたいと考えています。そのためには、これまで自分たちが行ってきた新作至上主義に対して、少し距離を取る必要があります。国内外、東京以外の地域で発表を重ねることを視野に入れ、そのための金銭的な問題もクリアしていかなければなりません。
また長期的には、「演劇」というものが、とても優れたメディアであることを、広く発信していきたいと考えています。それが、人間が生きる上で必要なものであるということを示していかなければ、演劇は他のメディアよりもアクセシビリティが低い、ほとんど趣味的なメディアでになってしまうのではないでしょうか。
そうではない演劇の特性を示していかなければなりません。例えば、昨年フィールドワークに訪れたバリ島では、共同体のアイデンティティを守るために、あるいは「聖水」を作り出すために演劇は使われていました。もちろん、日本とは事情が異なるので、それをそのままインストールするのは無理があります(日本に聖水はあまり必要ではありません)。しかし、現在考えられている以上に、豊かで広い世界であることを示していけば、演劇は、より魅力的で可能性の溢れるメディアになっていくのではないでしょうか。
公演に携わっているメンバー(5)