グローバル・ベイビー・ファクトリー Global Baby Factory
劇団印象-indian elephant-(東京都)
公演に携わっているメンバー:10人
- 団体紹介
- “印象”と書いて“いんぞう”と読む、劇団印象-indian elephant-は、劇作家・演出家の鈴木アツトを中心に2003年に旗揚げ。
「遊びは国境を越える」という信念の元、“遊び”から生まれるイマジネーションによって、言葉や文化の壁を越えて楽しめる作品を創作し、観劇後、劇場を出た観客の生活や目に映る日常の景色の印象をガラッと変える舞台芸術の発信を目指している。
2010年より韓国演劇人との国際共同制作を開始。2012年、「匂衣~The blind and the dog~(以下、匂衣)」が、演戯団コリペの李潤澤氏の目に留まり、韓国・ドヨ創作スタジオで上演。同年7月、「匂衣」が密陽夏公演芸術祝祭、居昌国際演劇祭に招聘され、密陽、居昌で上演。9月には、「青鬼」がD.Festa(大学路小劇場祝祭)に招聘され、ソウルで上演。
また、「青鬼」が若手演出家コンクール2012にて優秀賞と観客賞を受賞。「グローバル・ベイビー・ファクトリー」が、第18回劇作家協会新人戯曲賞入選。
- 応募公演への意気込み
- 経済的に豊かな先進国の夫婦が、発展途上国の貧しい代理母に、自分たちの子供を産ませる代理出産ビジネス。これが今、インドで急成長を見せている。これは搾取だ、先進国の切実なる不妊の苦悩を、発展途上国の貧困によって解決するなんてとんでもない、そう切って捨てることは簡単だ。しかし、もし子を持つことを望み、その望みが叶えられないのが、あなた自身だったら、本当にこのビジネスを否定できるだろうか?
本作品の最もアピールできる点は、独創性である。社会問題を題材にべったりと描くと、日常的な普通の社会派になってしまうところを、いろんな角度から見られるように設計した。代理出産ビジネスをモチーフに、クライアントの日本人夫婦や、インド人代理母の視点だけではなく、ある時は、男性の精子、ある時は、女性の卵子、そしてある時は、着床した受精卵の視点から、母親とは何か?母性とは何か?をユーモラスに描いた。これは、演劇ファンだけではなく、普段、演劇に関心のない人にも、訴求できるスタイルであり、冴えている。その点が評価され、第18回劇作家協会新人戯曲賞に入選した。
もっとも大きな達成目標は、この公演が新聞の文化面ではなく、社会面で取り上げられるようなものにすることである。本作品は未上演作品であるが、戯曲が、第18回劇作家協会新人戯曲賞に入選したため、出版された。演劇界の中での成果は小さいながらも既に出していると自負している。上演を素晴らしいものにすることによって、さらなる演劇的成果を目指すのは当然として、もっと広く、社会に、国際的な代理出産ビジネスの問題を投げかけたいし、こういった社会の問題をより深く考え、みんなで共有するためには、演劇という手法がこんなにも有効な手段であるのだということを、広くアピールしたい。
- 将来のビジョン
- 劇団の「遊びは国境を越える」というポリシーを実践していく。また、言葉や文化の壁を越えて楽しめる作品を創作していく。すなわち、海外の演劇祭に招聘されることと、様々な国の演劇人との国際共同制作を積み重ねることが我々のステップアップだと考えている。また、そうした国際的な交流を通して、外から見た日本を強く意識した、作品を創作していく。
特にこれからはアジアとのつながりを意識して活動していきたい。これまでに、韓国の3つの演劇祭から招聘され、韓国との演劇交流の成果は大きく実を結び始めた。また2012年より、タイの演劇人プラディット・プラサートーン氏(野田秀樹の赤鬼タイヴァージョンの水銀役)の「Destination」を、主宰の鈴木アツトが演出するなど、タイとの演劇交流も目に見える形で動き始めた。”遊び”から生まれるイマジネーションの演劇を追い求める中で、身体性に重きを置いた作品が自然と生まれ、同じような演劇を追求する演劇人と出会い、それが結果的に「アジア」とつながっていく、という循環ができてきた。
今後3年のビジョンでは、韓国との交流を次のステップに進める。共同制作のテーマは、「戦争」や「歴史」など、腹を割らなきゃ共有できないものに挑戦していく。タイとの交流はまだ形成期であるため、作品を作りながら互いを知っていきたい。2014年10月に、代表作の「匂衣~The blind and the dog~」(初演時は韓国との国際共同制作)を、タイの俳優を招いて、再演する。