とりあえず寝る女

箱庭円舞曲（東京都）

公演に携わっているメンバー：8人

団体紹介

あなたの日常に侵食したいのです。

例えば、個人と個人は、どれほどの言葉を尽くしても、どれほどの時間を共有しても、100％分かり合うことは出来ません。これは誰しもが認識している事実です。それでも人々は、誰かと理解し合うことを求めます。理解されることを望み、理解しようと努力します。全てを理解し合える日など、絶対にやってこないと直感的に気付いていながら。ここにこそ、希望があるのだと思います。ゴールには永遠に到達出来ない。だから、進むしかない。非常に絶望的な希望です。

現代日本では、誰しもが、それぞれ固有の生きにくさと息苦しさを抱えて生活しています。そんな絶望的な希望を抱えた誰かの日常を、俯瞰的な視点で捉え直し、物語という仕組みを借りて作品化しています。舞台上の出来事を覗き見て感じる可笑しみも哀しみも、何だか良く分からないけれど心がぐわんぐわんする感覚も全て、あなたが日常的に味わっている感覚に基いたものです。そして観劇後のふとした瞬間に、何気ないコミュニケーションが、少しばかり違うものに感じられるでしょう。

私たちは、たくさんの日本人の日常に侵食したいのです。
それぞれが、日常を意識的に捉え直すきっかけになりたいのです。
そうすればいつか、日本も少しは変わるんじゃないかと思うのです。

応募公演への意気込み

あなたの身近にもきっと居る、とりあえず寝る女。彼女がとりあえず寝てしまうことを、それは悪いことだと非難する権利はあなたにありますか？
私にはありません。だって、私だって寝たいもの。

そもそも、あなたのお父さんとお母さんがセックスしなければ、今あなたはここには居ないのです。その想像は必ずしも気持ちの良いものではありませんが、しかし厳然たる事実です。

そしてあなたは人生の三分の一の時間を、夢の中で過ごしています。個人差はあれど、人間の平均睡眠時間は大体このくらいらしいのです。

「寝る」ことは、人間一般において、日常の三分の一＋αを占めているんですね。それほど大きな配分を占めているにも関わらず、至極当然のこととして、人は寝る。何も考えず、寝る。「寝る」って、何だ。何なのだ。
そんなことを考え始めたら、どうやって寝ていたのかとんと思い出すことが出来なくなりまして、とりあえず寝ることにしました。起きられるかな。

ごくごく普通の家屋を舞台にした、母と姉妹と寝る話。
箱庭円舞曲　第十四楽章「とりあえず寝る女」
あなたと私が今、ここにいることの意味と意義を問い直す。
つまり、生きているとはどういうことなのかを捉え直す。
人生の三分の一と、人生の発端についての物語です。

将来のビジョン

2010年10月6日(水)～11(月･祝)、駅前劇場にて、
第十五楽章『気付かない奴は最強』を上演します。

最近、とみに思うのです。
人間として本当に強い人というのは、体力や筋力に自信のある人や、自分をしっかり持っていて精神的にタフな人などではなくて、物事に気付かない人の方なのではなかろうかと。僕らが日々思い悩むディスコミュニケーションや理不尽なコミュニケーションも、それが悩ましいことであると気付かなければ気になりませんし、理不尽だと感じなければ素通り出来てしまいます。これは、非常に強い。柳に風のごとく、痛みという痛み、苦しみという苦しみを受け流していきます。否、受け流してすらいないのかもしれません。そもそもそいつには、何も響かないのです。だって、気付かないから。何を言っても何をされても平気なのです。身体中の血が流れ落ちていても気付かないかもしれない。最早恐怖です。

そこまでは行かなくとも、周囲には「気付かない奴」がゴロゴロしていませんか？　そしてひょっとしたら、もしかしたらあなたも、気付かない奴かもしれません。自分で気付いていないだけで、他人からそういうレッテルを貼られてしまっている可能性はゼロではないんです。でも、それには永遠に気付けない。あなたは気付かない奴だもの。最強なんだもの。

かく言う僕も、最強なのかもしれないのです。どう頑張ったって、気付かないことには気付きようがありませんから。