CoRich舞台芸術アワード!2018

「奇行遊戯」への投票一覧

1-3件 / 3件中

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投票者 もらったコメント
jokermanjokerman(1327)

10位に投票

 2010年に初演したものを、若手公演として再演する。力作だった。中津留自身の経験も元にして、九州の田舎町での若者たちの厳しい暮らし等のエピソードが展開され、それが、2場では中国との対立やシーシェパードを思わせる団体との絡み合いに発展する、という、社会派に転じた頃のトラッシュの代表作という意気込みで書かれたらしい。この頃は、1場と2場の間にナレーションを字幕で見せつつ、大きく場面転換をする手法を取っていたが、それが久々に復活した。田舎町に突然現れた謎の女(藤堂海)やDV夫から逃げようとする璃子(堤千穂)を始めとして、登場人物が2場で変化するところは見応えがあると思う。
 初演は2時間50分だったが、今回は実測で2時間38分。やや短くなっていた。
 なお、会場に、初演で謎の女を演じた林田麻里(初舞台だったハズ)、璃子を演じた川崎初夏がいて、新旧女優陣の勢ぞろいとなった。

とちとち(1389)

1位に投票

3時間近い大作。面白すぎて最後まで集中力が全く途切れなかった。
モノローグだけで進む一部と二部の間の怒涛の展開が印象深い。

tottorytottory(2468)

10位に投票

2010年上演作の再演とは後で知った。
トラッシュお得意の二幕構成(後半が近未来。緊迫感ある音楽をバックに高速ナレーション+テロップが間を繋ぐ)が突如「復活」?(新作で)と思ったのはヌカ悦びだったが、久々にガッツリと構築されたトラッシュ舞台を観た。
この独自の二部構成舞台は、じっくり練り上げた戯曲である事が不可欠で、現在の中都留氏の多忙さでは当分お目にかかれないだろう・・とは今回の舞台を見ての実感でもあり、つまりよく出来た舞台だった。
「よく出来た」とは言葉足らずで、「呆気に取られた」という位が程度に即している場面は、漁村の人々の(九州弁を駆使した)口調とそれに伴った身体の動きや佇まい、台詞の展開の巧さ、自然さ。最近の中津留戯曲からは想像できない「心地よい」台詞劇の才能がそこにあった。むろん中津留氏独特の「事件性」のねじ込み、「対立」のねじ込みはあるが「リアル」に踏みとどまり、俳優の奮闘により醸成される温度とアトモスフィアが舞台を包んでいたのだ。
そんなことで中津留氏の「新境地?」と色めいたのだったが・・(しつこいか)。
もっとも、リアルとは言っても、二幕に入ると一幕で漁村の土臭い人間ドラマを演じた者らが一転垢抜けた東京人となり、マグロ養殖の大手企業の社長、妻、副社長、社長秘書、ボディガード、また交渉役として訪れる捕鯨反対ならぬマグロ漁反対の過激派組織の幹部などに「変貌」していたり、社長が政界の要人と会ったり、中国多国籍企業の特使の難しい申入れを国家間の外交政策(対日経済制裁の阻止)を条件に飲む事となったり・・・と「リアルの顔をした荒唐無稽」ぶりを存分に発揮しているのは「期待」通り?だ。
ドラマとして「展開優先」の憾みが残る一箇所が今も引っかかっているが、実に面白く、冒頭から通底するあるトーンが絶えず流れ、最後まで見せる。幾つかの重いテーマが錯綜し、正直前半の一幕だけで十分完成した一つの芝居だが、もう一くさり、ガッツリやっても、どうにか客をねじ伏せた。「疲れた!」とロビーに出たお客が(演出の知人らしい妙齢の女優が中津留氏らの居る場所で)言った一言が雄弁に語っていた。疲れる芝居であるのは確か。そして一見の価値あり。

「展開優先」が憾みの一箇所とは、第二部で社長が中国企業の交渉役から、我が一族のマグロ養殖業の原点である故郷の町と海を開発のための土地として提供を求めてきた際、日本政府の愚かな対中非寛容政策(選挙対策?)に対する中国側の報復を阻止するとの条件を付けてきた事で、パートナーが中国系であり良好な日中関係を望む社長がいきなり日本経済の未来を担って申し出を飲んでしまうくだり。ここを経なければ話が先へ進まないとは言え、二幕で皆が東京人になった不自然さよりも人物らしさに関わる部分で、私の感覚では唯一の欠陥。

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