最新の観てきた!クチコミ一覧

19841-19860件 / 183089件中
インク

インク

劇団俳優座

俳優座スタジオ(東京都)

2021/06/11 (金) ~ 2021/06/27 (日)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★★★

無謀なチャレンジにこぎ出すため仲間を集めていく冒険モノみたいな前半から、思わぬ事件への対応や目指すもののズレがしだいに可視化されていく後半。

戯曲の面白さを十二分に生かす演出とステージング、そして俳優陣の説得力。

3時間の長尺をたっぷり楽しんできた。

舞台「スマホを落としただけなのに」

舞台「スマホを落としただけなのに」

ニッポン放送/ニッポン放送プロジェクト

日本青年館ホール(東京都)

2021/06/09 (水) ~ 2021/06/14 (月)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★★

昨年観る予定だったが観られなくなり、今回ようやく拝見できた。

物語の面白さやキャラクターの魅力、映像を生かすメリハリの効いた演出、そしてこの真っ白な美術。扉座勢の御活躍も楽しくて充実の2時間10分でした。

滅多滅多

滅多滅多

柿喰う客

本多劇場(東京都)

2021/05/21 (金) ~ 2021/05/30 (日)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★★

B列なんだけど、劇場に行ってみたらA列は使用してないので実質最前列、しかもほぼセンター。この劇場でこんな席はめったにないのでワクワク……というか、こんな近くで柿を浴びるのはちょっと怖いかも、などと思ったり。

ループしグルーブする言葉・言葉・言葉。

一見バラバラに散りばめられた場面たちからしだいに浮かび上がる切なくも残酷な物語。赤と緑の照明を浴びた田中穂先さんの笑顔にゾクッとする。

帰りの電車の中でパンフレットを開き、キャラクターの役名を確認しつつ何度も舞台を反芻した。

容疑者Xの献身

容疑者Xの献身

ナッポス・ユナイテッド

THEATRE1010(東京都)

2021/05/28 (金) ~ 2021/05/30 (日)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★★★

鑑賞日2021/05/29 (土) 13:00

多田さんの湯川、筒井さんの石神、渡邊さんの花岡、それぞれ原作のイメージにあって魅力的だった。語りを使って原作の文体を生かす脚本が物語に説得力を与え、テンポよくまとめられた105分の中に登場人物たちの抱えてきた想いが細やかに描かれていた。

原作を読んでストーリーは知っていて、タイトルが最大のネタバレだろうとずっと思っていたけれど、まさにその献身が胸に響いてラスト近くで涙が滲んできた。上記以外のキャストもハマり役で、ことに柿喰う客の永島さんが演じた草薙刑事が好印象だった。

Smells Like Milky Skin【5月8日~5月11日公演中止】

Smells Like Milky Skin【5月8日~5月11日公演中止】

MCR

ザ・スズナリ(東京都)

2021/05/08 (土) ~ 2021/05/16 (日)公演終了

映像鑑賞

満足度★★★★★

予約した日が緊急事態宣言発令で公演中止となってしまい、上演された期間に観に行くのが難しかっため、配信で観た。

観終わって思った。私はやっぱりMCRが好きなのかもしれない……と。

相変わらず切実で胸が痛むけれど、予想より少し優しくて、登場人物たちがちょっとだけ大人で、それも含めて自分の気持ちにしっくり来た。

もちろん劇場で拝見したかったけど、せめて配信で観られてよかった。

ミュージカル『スリル・ミー』【4月25日(日)~5月2日(日)公演中止、大阪公演中止】

ミュージカル『スリル・ミー』【4月25日(日)~5月2日(日)公演中止、大阪公演中止】

ホリプロ

高崎芸術劇場スタジオシアター(群馬県)

2021/05/04 (火) ~ 2021/05/05 (水)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★★★

鑑賞日2021/05/04 (火) 16:30

自分にとって初のスリル・ミー。

東京公演は予約した回が中止となり、この日も急遽のキャストチェンジになる、という波瀾万丈な(?)観劇だったが、期待に違わぬ圧巻の舞台に満足。

トリプルコールで客席がひとつの生き物みたいに一斉に立ち上がり、続いて4度目のコールが起きた。

53歳の「私」が語る34年前の犯罪の顛末は、ヒリヒリするような緊張感で2人の若者のあやうい関係性を描き出す。ピアノの響きと2人の歌声が会場を満たし、物語の進行を固唾を飲んで見守る客席の集中が心地よい、充実の約100分でした。

愛、あるいは哀、それは相。

愛、あるいは哀、それは相。

TOKYOハンバーグ

座・高円寺1(東京都)

2021/06/13 (日) ~ 2021/06/20 (日)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★★★

#TOKYOハンバーグ
#愛、あるいは哀、それは相
#清水直子 さん、#北澤小枝子 さん、#吉本穂果 さんの母娘が素晴らしい。この一家を迎え入れる妹夫婦の #甲津拓平 さんと #橘麦 さんも流石。
珈琲が好きな人は香りがたまらないだろう。
「HOTくれ」が「ほっといてくれ」に脳内変換されて、彼の地の声が木霊しているように思えた。
ネット社会に溢れる情報、何かに忖度し偏るメディア報道。
何がホントなんですか⁉️
叫びとも思える声。
その人たちが知りたいことは…いま⁉️未来⁉️それとも過去の事実⁉️
毎年やってくるその日も、安全な(と思い込んでいる)場所で生きてきた者には、思い起こし思いを巡らせる日なのかもしれないけれど、そこに住む人や住んでいた人たちには変わらぬ同じ1日、日常なはず。
人を思いやることについて考え、大切な人に思いを巡らせる時間がそこにある。
席の間隔を空けた劇場で、味わっていただきたい。

ネタバレBOX

流れの良い戯曲だし、演出も丁寧でよかった。
避難者に対するイジメやバッシング、長女が帰郷する理由、ライターが一家を取材する理由あたりは、もう少し描いて欲しいところ。
先生の淫交疑惑の件とかはカットしてでも、その辺を加筆してもらいたいところ。
そして、ラストシーン。
あの瞬間を座席が震えるほどの轟音で再現する作品を幾つも観てきた。アレはやはり気持ち良くない。彼の地の人たちはどうなのだろうか⁉️あの地響きを感じながらあの音を耳にして終わることに、後味の悪さを感じるのはわたしだけだろうか。
サンソン 【4月28日~5月9日 / 5月21日~5月24日 公演中止】

サンソン 【4月28日~5月9日 / 5月21日~5月24日 公演中止】

キョードー東京

久留米シティプラザ (ザ・グランドホール)(福岡県)

2021/06/11 (金) ~ 2021/06/13 (日)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★★

 上演時間2時間の中に要点を絞った中島さんの脚本、と白井さんの演出。稲垣さん演じるサンソンの葛藤にも見入ってしまいました。

 

ネタバレBOX

フランス革命の裏で、実在の人物の死刑執行人サンソンの視点で語られていきます。

ルイ16世とマリー・アントワネットだけではなく、ふたりの死後の民衆側の議員らのギロチン刑、その後も続いた話、ナポレオンが皇帝になるまでの経過も語られていました。
 革命が成功した、では終わらない。
処刑執行人という職と人に対する偏見から始まり、身分問題差別からの不満不安、共通の敵(王侯貴族)に対する虐げられた人々の異様さ、少数派の意見は聞き入れてもらえない。
現代のいろんな事象を思いながら見ていました。
虹む街

虹む街

KAAT神奈川芸術劇場

KAAT神奈川芸術劇場・中スタジオ(神奈川県)

2021/06/06 (日) ~ 2021/06/20 (日)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★★

ネタばれ

ネタバレBOX

庭劇団ペニノの『虹む街』を観劇。

横浜・福富町の昭和の匂いが残る古い飲食店街。
コインランドリーを中心に、パブ、喫茶店、中華料理、マッサージ屋など様々な人種が行き交うが、土地開発の波に街は消えていくのである…。

この粗筋から察すると日本人と外国人が入り混じった人情ドラマを想像しそうだが、タニノタロウが手掛けると全くそうではなくなってしまう。登場人物たちは顔見知りなので、コインランドリーで誰かが洗濯を始めると皆が自分の洗濯物を入れて一緒に洗ってしまうほどだ。
そんな中、何かが展開するでもなく、無言劇の如く淡々と時が過ぎて行く。
我々は彼らの生活の様をただ見ているだけなのである。
こんな劇を観せられた観客はどうすれば良いのだろうか?
退屈?不快感?眠気?
それに陥ると誰もが『劇団庭ペニノ』の虜になってしまうのである。
鳴呼!! これこそが演劇の生の醍醐味なのである。
外の道

外の道

イキウメ

シアタートラム(東京都)

2021/05/28 (金) ~ 2021/06/20 (日)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★

他の方もコメントしてるが、いつものイキウメではない
いつもなら、オカルティックながらも次につながるストーリーが残されるのだが、今回はスピリチュアルなカンジで、救いがない

過去、似た感触の作品を思い返してみたが、2007年のヒステリア(同じトラム)かなあ、と。
フロイトとは比較難しいけど、抱え込んだ内面的精神世界という観点で類似してる気がする

イキウメ。次回作、どうなるのかな

バトルロイヤル公演第十三弾

バトルロイヤル公演第十三弾

ThreeQuarter

JOY JOY THEATRE(東京都)

2021/06/12 (土) ~ 2021/06/13 (日)公演終了

実演鑑賞

面白かったです。

ありがとうよありがとう 『リノリウム。』&『smile』

ありがとうよありがとう 『リノリウム。』&『smile』

AMITIE THEATER

シアターグリーン BOX in BOX THEATER(東京都)

2021/06/10 (木) ~ 2021/06/13 (日)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★★★

鑑賞日2021/06/13 (日) 13:00

座席B列13番

価格4,000円

舞台「smile」6/13 13:00の回を観劇
定時制高校を入学から卒業までの4年間を舞台としたアオハル作品で、観ていくうちに、お芝居の中に取り込まれ、溶け込んだ感じになり泣いたり、笑ったり、高校時代に舞い戻った感覚になり、素敵な舞台でした。また観たいな。
凛と灯のぶつかり、美紀と灯の盃の酌み交わしのシーンは泣けたなぁ

牛乳の唄

牛乳の唄

兎座

小劇場B1(東京都)

2021/06/02 (水) ~ 2021/06/06 (日)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★

6日、下北沢の小劇場B1で上演された兎座第3回公演『牛乳の歌』千穐楽を観た。これは、兎座のメンバーに知人の役者・古川奈苗がいた関係からであるが、同じメンバーでこの作品の作・演出を担当している藤原珠恵の他の作品も既に観た経験があり、親しみのある演劇ユニットという感じで劇場に出向いた。

舞台となっていたのは、かつて主宰者・姜京子(高乃麗)の娘・千賀子(松本みゆき)の人気もあって大所帯であったが、千賀子の喫煙発覚・退団で一気に人気がなくなり現在では団員数が5人になってしまった小劇場系の劇団・姜京子演劇研究所。タイトルの『牛乳の歌』と言うのは、この劇団の劇団歌のこと。
老い先長くない事を自覚した姜は、娘・千賀子に連絡を取り、千賀子の劇団復帰を兼ねた公演を計画する。しかも、その内容は千賀子が劇団を辞めるいきさつを描いた作品。その作品を通して、千賀子の良きライバルで今は劇団の看板女優である金本亜美(小林愛里)が実は千賀子の喫煙現場写真を撮ってマスコミに流したことをそれとなく描こうとしていたのであるが、実は千賀子はそのことを既に知った上で劇団を去っていたのであり(実は姜京子もそれに気づいていた)、一人亜美がそのことで心にわだかまりを感じていたのであった。結局、千賀子は劇団の説得に応じて復活を決意し練習に臨むのであるが、そこで亜美が事の真相を告白。千賀子は全て知っていたと逆に亜美をなぐさめ公演に向けて練習を進める。結果として、公演は姜京子が亡くなってからの上演となったけれど、劇団の後継者として千賀子は再び劇団の牽引者になり、みんなで『牛乳の歌』を歌っていく。

まぁ、粗筋はこんな感じだったかな。中心的な存在は上記の3人で、その周りを芸達者な役者達が劇団員や舞台監督などを演じて内容に膨らみを持たせていた。古川奈苗は前半では姜に怒られ泣いてばかり、後半では劇団員に演技を指導する立場になって怒ってばかりという正反対の面を見せ芸の広さを見せつけてくれたし、舞台監督役の剣持直明はひょうひょうとした役柄で劇全体に柔らかさを運んでいたのが印象的。

タイトルの『牛乳の歌』と劇本体の内容の関係性の付け方が希薄のように感じられたが、役者だけでなく、脚本・演出も回を重ねるごとに内容が深まってきていて、藤原珠恵の今後が期待された。
ちなみに、プログラムにある4コマ漫画は古川の作であろう。
次回公演も楽しみにしている。

だったらもう、どうにでもなれよ

だったらもう、どうにでもなれよ

知らない星

王子小劇場(東京都)

2021/06/10 (木) ~ 2021/06/13 (日)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★★★

とても面白かったです!当日パンフレットを見た時、登場人物の関係性を把握できるかな?と思いましたが、杞憂に終わりました。恋愛のもどかしさと、テンポの良いストーリーに、どんどん惹き込まれ、もやもやしながら(良い意味で)食い入るように見ていました。役者さん達は皆、それぞれの役柄を好演していて、非常に良かったです。恋をする須崎真緒さん(えりか役)の笑顔が可愛かったです!大満足の舞台でした!

バトルロイヤル公演第十三弾

バトルロイヤル公演第十三弾

ThreeQuarter

JOY JOY THEATRE(東京都)

2021/06/12 (土) ~ 2021/06/13 (日)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★★


 つかの採った創作方法がアテガキだったため、様々なヴァージョンが存在する今作だが、流石人気の作品だけあって脚本では登場人物それぞれのキャラが見事に立っている。雛チームの演技を拝見した。華4つ☆

ネタバレBOX

惜しむらくは序盤から中盤までの流れがイマイチだったことだ。つか演劇を演じるのは難しい。圧倒的な熱量とハイテンションでいやが上にも観客を巻き込めなければ、観客はその作品を全身全霊で受け取ることができないタイプの作品だからである。機関銃の弾のような勢いで飛び出す台詞、台詞に込められた被差別の意味と無念! そして極端なはにかみ屋だったつかの本当の優しさを隠す為の差別用語の多用。被差別者の行動は一般的に、差別者の側へ必死に同化しようとする。この努力は並大抵のものではない。殆ど命懸けのトライなのであるが、今作にもそのことが良く顕れている。このような本質をキチンと理解している演者4人の総てが中盤から俄然良くなった。エンジンが掛かったということなのだろう。ということは中盤迄は役に入り切れなかったということのように思われる。出の前に充分な柔軟体操とウォーミングアップをし、体の隅々迄血流を十全に通わせておきたい。身体で間を取れる位になると理想的だと思われる。当然、呼吸法も大切だ。また、木村伝兵衛がファーストシーンでグラスを煽るシーンは、スピード感を以て煽る感じを強く出すか、動作を遅くするなら唇の方を持ち上げつつあるグラスに寄せるようにして飲むかした方が呑んべえらしさが良く出るように思う。音響・照明を用いても良いから、兎に角ファーストシーンでイキナリ観客を劇の時空に取り込みたい。つかの作品には、そういう演出が活きるように思う。
2作品同時上演  「ずっ止まってる」/「ラブ・ストーリーは特戦隊」

2作品同時上演 「ずっ止まってる」/「ラブ・ストーリーは特戦隊」

room42

OFF OFFシアター(東京都)

2021/06/09 (水) ~ 2021/06/13 (日)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★★

鑑賞日2021/06/13 (日)

価格2,000円

『ラブ・ストーリーは特戦隊』13日12時開演回を拝見。
ヒーローものではあるんだが、正義の他に、社内恋愛や不倫や恩讐やら、いろんな要素が盛り沢山で、タイトルやあらすじから「まぁ、こういうもんかなぁ」と予想していたレベルを、はるかに超える、S級クラスの面白さだった90分。

なお、出演者6名中4人の顔と名前が一致する役者陣の中では、目を閉じると、マジンガーZの兜甲児(CV・石丸博也氏)が喋っているように錯覚させられた、伊与勢我無さんがとりわけ印象に残った。

ネタバレBOX

【配役】
陣内タカシ(ヒーロー課課長。年齢のためチカラが衰えつつあるヒーロー)
…伊与勢我無(いよせ・がむ)さん
槇原のり子(ヒーロー課のベテラン社員。実は陣内を慕っている)
…Q本かよさん(『りんごりらっぱんつ at 浮間ベース』のセルヴーズ役で知って以来、『滅びの国』等を経て、直近は2018の『みのほど』)
浅野ユウ(ヒーロー課の社員。実は保阪本部長と…)
…小島望さん(昨年1月の『ゼガヒデモ』以来!今日は”ナマ小島望”の演技を堪能させてもらいました)
マイケル富川(米国からのインターンというのは表向きで…)
…野村亮太さん(ストーリーを動かす便宜上とはいえ、「マイケル富川」のキャラ、ちょっと万能過ぎるというか、都合が良過ぎるかなぁと)
保阪ナオト(株式会社ジャスティス営業本部長。業績不振のヒーロー課を一発逆転させるような秘策を抱く。実は浅野ユウと…)
…栂村年宣(つがむら・としのぶ)さん
江口ヨウ(「特A級の実力を有するヒーロー兼ユーチューバー」は表向きの顔で、実は…)
…難波なうさん(『滅びの国』で見染めて以来、幾つかの出演舞台を経て、直近は2月の『ピーチオンザビーチノーエスケープ』。表情の変遷が記憶に残る女優さん)
外の道

外の道

イキウメ

シアタートラム(東京都)

2021/05/28 (金) ~ 2021/06/20 (日)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★★

海鳴りならぬ、空鳴りのする田舎町。UFOが接近したのではないかと思う程の異音、みんな反射的に空を見上げる。何十年振りに偶然再会した男女、安井順平氏と池谷のぶえさん。二人が語る近況と誰にも信じて貰えない本当の話。
本格的SFとして設定が面白い。ただ、後半池谷のぶえさんの話に移行してからが余り盛り上がらない。黒沢清の『回路』のように孤独に世界と戦っている哀川翔みたいな存在が欲しかった。

ネタバレBOX

思いっ切り黒沢清っぽい語り口から始まる。辺鄙な田舎にある小さな喫茶店のマスター(森下創氏)が手品に見せ掛けた超能力ショーを余興として公開しているセンス・オブ・ワンダー。物体の中に傷一つ付けずいとも容易く物体を挿入させてみせる。それを見た主人公(安井順平氏)はかつて遭遇した不思議な事件を思い起こす。与党の大物代議士がパーティーの最中、突然昏倒、脳内出血で亡くなるのだが、脳の中から割れたビール瓶の破片が出てくるのだ。外傷一つ無かった為その事実は伏せられたのだが、主人公はこのマスターの仕業だと確信する。マスターの帰り道を待ち伏せして超能力について問い詰める主人公。マスターは「自然の理に過ぎない」と答える。約束を破り他人にこの秘密を漏らした主人公はマスターによって脳に氷を挿入され、少しずつ見えるものが変わっていく。

マスターがマツモトクラブ的でカッコイイ。『スキャナーズ』っぽい描き方で現実に紛れ込んだ異邦人としての超能力者のリアリティー。彼が主人公で良かったんじゃないか。

池谷のぶえさんの話は、見知らぬ誰かから届いた宅配便の小包、品名には“無”。開けてみると何も無い。悪戯かと放置したが、数日中に漆黒の闇である“無”がどんどん家中を覆い始め遂には池谷のぶえさんも呑み込まれてしまう。日の出によって“無”から解放されたが全裸で遠くのマンションの屋上に立っていた。「こうして日が昇ることの方がよっぽど不思議だ」との名台詞有り。何とか帰宅してみると見たこともない自分の養子(大窪人衛氏)が“無”から創生されていた。

“無”に対抗するのが想像力であることがスティーブン・キングっぽくて良い。話のエッセンスが『ミスト』っぽいかも。

誤配を意図的に繰り返して宅配会社を馘首になる主人公。自然に在ることを肯定し始める(『森田療法』っぽい)。どんどん妻(豊田エリーさん)の顔が整形を疑う程に美しく見えてくる。入院を迫られて逆上し妻の浮気を告発するも、只の思い違いであること(しかも自分は知っていた)に愕然とする。
池谷のぶえさんは家中が真っ暗闇に包まれ、最早生活が出来ない。「何も見えないのではなく、“無”が見えるようになったんだ」との名台詞。突然存在し始めた養子は証明書の類がある為、誰も疑わず周囲に馴染んでいく。池谷のぶえさんは自分に関する証明書類を全て破り棄てる。

二人が真っ暗闇の“無”の中に飛び込んでいくのがラスト。

他にも認知症になり精神が十七歳の頃に逆行した池谷のぶえさんの母(清水緑さん)の姿が、養子の目には十七歳の少女に映るなど至る所に謎は散りばめられている。

が、全ては隠喩でも暗喩でもなくナニカの意思でもなく、解釈されるべき答えもない。ただ呈示しているだけであることが観客を不安と不快に陥れているのであろう。
恋愛日記’86春

恋愛日記’86春

キノG-7

THEATRE E9 KYOTO(京都府)

2021/06/08 (火) ~ 2021/06/13 (日)公演終了

満足度★★★★

ゲネはじめて体験。とても良かったです。流石といった感じ。

オイディプス/コロノスのオイディプス

オイディプス/コロノスのオイディプス

隣屋

こまばアゴラ劇場(東京都)

2021/06/03 (木) ~ 2021/06/08 (火)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★

■『オイディプス』『コロノスのオイディプス』両作鑑賞/各約60分■
戯曲をストレートには上演せず、要所要所を抜粋して映像と実演で見せていく、いわばリミックス演劇。客は会場内を移動し、同時多発的に展開される映像を自ら選んで視聴、実演中は各映像から音が失せ、みんなが上演を観るという趣向。
この種のリミックス演劇は、来場者全員が話の筋を知っているという前提で企画されるのだろうが、この種の公演を観るたびに思うのは、客を買いかぶり過ぎだということ。演劇好きだから『オイディプス』の筋は知っていたものの、『コロノスのオイディプス』のストーリーは知らなかったし、若い客の中には『オイディプス』の筋を知らない人もいたに違いなく、当日パンフにあらすじは書いてあるものの、開演までの短時間では筋を把握できなかった客もいたはずで、上記2演目は元ネタがメジャーでないと成立しないリミックスには不向きだと感じた次第。リミックスの素材にしていいのは桃太郎とサザエさんだけだと主張したい。
それ以前に、なぜ今『オイディプス』なのか、という上演動機が見えてこないのも気になった。当日パンフの挨拶文では「選択」という語がキーワードとして頻用され、人生は選択の連続だと主張。選択の連続から成る『オイディプス』の物語を取り上げた理由の示唆にも思えたが、選択の連続から成るのはすべての物語について言えること。『オイディプス』を取り上げた理由としては弱いと感じた。
また、コロナ禍に突入してから、私たちは日々選択させられている、と感じることが増えた、とあるが、行動が制限されて選択の余地が狭まった、というのが実相であって、選択させられている、というのとはまた別なんじゃないかと、素朴にそう思った。
実演パートはしっかり演出されていた。この精度で頭からお尻までちゃんと上演すればいいのに、と、これまた素朴にそう感じた。

ネタバレBOX

映像は両作で同一。できれば変えてほしかった。
終わりよければすべてよし【6月12日~6月13日公演中止】

終わりよければすべてよし【6月12日~6月13日公演中止】

彩の国さいたま芸術劇場

梅田芸術劇場シアター・ドラマシティ(大阪府)

2021/06/10 (木) ~ 2021/06/13 (日)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★★★

まさに「終わりよければすべてよし」。このシリーズに何度も出演されていた役者さんたちが今回の舞台にも立っておられ、最後に降りてきた蜷川さんの写真に胸がいっぱいになりました。石原さとみさんのオーラがすごくて、しばらく残像で生きていけそうなくらいです。一番最初に観たのが、20年前の唐沢寿明と大竹しのぶの「マクベス」、観劇にはまるきっかけになった作品の1つです。今後過去の作品もWOWOWなどで放送されたらいいなあと思います。

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