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5秒ぐらい死んでもいいかなって思った事がある

5秒ぐらい死んでもいいかなって思った事がある

劇団水中ランナー

小劇場 楽園(東京都)

2021/06/30 (水) ~ 2021/07/04 (日)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★★★

鑑賞日2021/07/02 (金) 19:00

100分。休憩なし。

バクで、あらんことを

バクで、あらんことを

くによし組

王子小劇場(東京都)

2021/06/30 (水) ~ 2021/07/04 (日)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★★

鑑賞日2021/07/02 (金) 16:00

Aチーム。80分。休憩なし。

夜会行

夜会行

鵺的(ぬえてき)

サンモールスタジオ(東京都)

2021/07/01 (木) ~ 2021/07/07 (水)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★★

鑑賞日2021/07/01 (木) 19:00

75分。休憩なし。

花のもとにて春死なん

花のもとにて春死なん

ピープルシアター

シアターX(東京都)

2021/06/30 (水) ~ 2021/07/04 (日)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★

『老いと哀しみのボレロ』みたいな感じ。『カッコーの巣の上で』の呆け老人ホーム・バージョンか。お漏らし、異常性欲、記憶障害、フラッシュ・バック・・・、兎に角リアルで気が滅入る。老いの醜さを面前に突き付けられていくような感じ。唐突に挿入される現代舞踊家仲野恵子さんの舞踏は子供が観たらかなりのトラウマになろう。ワンツーワークスの『死に顔ピース』の印象が強いみとべ千希己さん、タンゴ好きの元女優役を好演。セクシー担当の看護婦役、伊集院友美さんの見せ場も多い。二枚目蓉崇氏がひたすらギャグ担当で驚いた。

ネタバレBOX

目茶苦茶期待していただけにどうも違った。自分の感性が腐っているのかも知れないが、全くぴんと来なかった。ラスト、姥捨山法が施行され、80歳以上の老人は各地区の十代の子供達に生殺与奪権を握られることとなる。孫娘達がやって来て拳銃や丸太を使いゲーム感覚で皆を惨殺していく。喜劇にも悲劇にも振り切れていない消化不良のまま終わってしまった。
バクで、あらんことを

バクで、あらんことを

くによし組

王子小劇場(東京都)

2021/06/30 (水) ~ 2021/07/04 (日)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★★

【Bチーム】観劇

ネタバレBOX

身体の特徴を売りにしてきた俳優は、今後どうすべきか、また使う側もどう扱うべきかを問うた作品。

難しい問題ですが、個性なんだから否定することだけは避けたいと思います。
レイジーミッドナイト

レイジーミッドナイト

水木英昭プロデュース

紀伊國屋サザンシアター TAKASHIMAYA(東京都)

2021/06/30 (水) ~ 2021/07/04 (日)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★★

鑑賞日2021/07/02 (金) 14:00

ホンキートンクやSAMURAI挽歌のイメージが強い状態で見に行ったので、前半は漫才みたいなノリで、しかも、テレビ局という設定なので、いつもとは違う新機軸のように感じましたが、いつものアクションや殺陣もしっかり登場し、十分に堪能できるステージでした。

花のもとにて春死なん

花のもとにて春死なん

ピープルシアター

シアターX(東京都)

2021/06/30 (水) ~ 2021/07/04 (日)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★★★

 とある老人ホームに入居した老人たち。齢を重ねれば誰しもが避けられぬ老いた体を抱え家族と離れざるを得ぬ様々な状況を殆どの者が負って、ここで暮らす。

ネタバレBOX

医師・看護士の人数が充分では無い為、入居者の中から代表者や世話人が決められその任に当たっている。彼らの中には寄る年波にも関わらず自らの思惟‣思考を深化させることができずとどのつまり、老い乍ら性に吐け口を求める者、己の性向に身を委ねる者、認知症を患いながらもその事実を忘れ自分達が建てた家に戻りたがる者、自らの生きて来た職業や芸事への未練を断てない者、伴侶と一緒に入居したものの一方は病み、遂には絶命したにも関わらず、精神的苦痛故その事実を認められない者等々、が同じ屋根の下で暮らしているが、彼らの愉しみはタンゴ等のダンスを踊り、生きる実感を手にすることである。然し施設長は、ダンスを禁じてしまう。然しスタッフの数は少なく、老いたりと雖も数の上では収容されている老人の方が圧倒的に多い。そこで数を頼んで再びタンゴの宴が実行されるが、それも束の間、突如日本国では姥捨山法が可決され速やかに実行されることとなった。而も法の実行主体は、各地区の若者に決まった。若者達の判断次第で計画は余計者排除へ向かい役立たない者は抹殺の憂き目に遭うこととなった。舞台上で、銃殺、撲殺等が実行される。如何に舞台上の出来事とはいえ、音響や照明を伴い視覚的にも実見されるこの光景はインパクト充分である。殊に自分の拝見した回は年を召した方が多かったので老いの実感と共に相当のインパクトがあったと思われる。また実際の日本という国は国連に毎回指摘されているように人権感覚というものが極めて希薄な国である。殊に為政者のそれはどうしようもないレベルだ。この実態が民衆に日々経験されているだけに説得力がある。
 タイトルからは誰しもが西行の名歌を思い起こすであろう。老人たちの想いも同じである。せめて死ぬ時には華をその縁としたい。このような念は、憂き世を生きる総ての真っ当な者に共通する願いであろう。死ぬ際にすらそれが許されぬ国、それが現実の日本だ、ということにはしたくあるまい。
別役実短篇集  わたしはあなたを待っていました

別役実短篇集 わたしはあなたを待っていました

燐光群

ザ・スズナリ(東京都)

2021/06/25 (金) ~ 2021/07/11 (日)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★★★

「この道はいつか来た道」
 今回上演された4作品の中では最も遅い時期に原作者が書いた作品である。(華5つ☆)
 一応、誤解の無いように申し上げておくが、公演は2作品で1公演が基本形である。作品評を1作ずつ評価する為に、評者の判断でこのような形にしている、

ネタバレBOX

 別役作品の舞台美術としていつも登場すると思われている位頻繁に登場する(電信柱・ベンチ)以外に登場しているのは塵を入れる大型ポリバケツだ。而もこの単なる物としてのポリバケツが恰も人格を持つかのように扱われるシーンが多数在る。これだけでも異色な作品と言えるだろうが、出演する役者の力量で、単なる物が即ちヘーゲル流の即自体が当に何らかの主体性を具えた生き物、時に人格を具えた何かにすら見えてくるような作品である。
 燐光群の役者陣はどの方もレベルの高い演劇人だが、今作では円城寺さんの女子力が極めて高い色気を醸し出していた。原作者で高い能力をお持ちであった別役さんの作品の中でも女性に対する観方の転機となった作品なのかも知れない。宿無し男性に対する宿無し女性の感じる体臭に関する感覚等が台詞化されている点は、別役氏の持っていた女性に対する観察・認識フィードバックを忍ばせて興味深い。
HATTORI半蔵Ⅳ

HATTORI半蔵Ⅳ

SPIRAL CHARIOTS

六行会ホール(東京都)

2021/06/30 (水) ~ 2021/07/04 (日)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★★

 途中、10分の休憩を挟み170分程の尺である。殺陣は可成りスマートで、照明・音響とのコラボもグーだが、余りに整合的な分浅く感じる点もあった。役者の中には極めて優れた身体パフォーマンスを見せる者が何名か居て、旋風脚や回転回し蹴り等も見事である。

ネタバレBOX


 内容は観てのお楽しみだが、半蔵の家系もネット上の説明にある通り吉宗と4代目半蔵・伝生との駆け落ち以来老中職を解かれていた。この為今作が描くⅣ即ち60年後の幕末期6代目ハットリ半蔵・汎刃の代では彼も忍法を継承していたが、今は床屋を生業としていた。
 さて、幕末といえば勤王VS佐幕である。ここで佐幕派・飛竜革命開国軍VS勤王派・新選組が対峙する。双方の偵察・襲撃/防御合戦が繰り返される中、徳川将軍ケイキは、二階での異国風俗や、一階ではエレキ仕掛けのゲームマシンが置かれ洋食を嗜むことのできる店の常連となっている。実はこの店は飛竜革命開国軍の情報収集基地であり、当然の事ながら忍びが関わっている。新選組も目をつけた。更に史的に有名な池田屋騒動が、今作では新選組が返り討ちの憂き目を見るという設定になっており、その原因が飛竜革命開国軍に加勢していた忍びの術によるものだと判明した。近藤イサミは床屋となっていた半蔵に相談を持ち掛ける。ところでこの池田屋騒動の際、開国軍に味方していた“くノ一”は捕縛され投獄されてしまう。これを助けたのが床屋としては2代目の半蔵である。原因は彼らは互いに惹かれあっていた為である。ここから先はネタバレが酷くなってしまうので、ここ迄とする。後は観てのお楽しみだ。
夜会行

夜会行

鵺的(ぬえてき)

サンモールスタジオ(東京都)

2021/07/01 (木) ~ 2021/07/07 (水)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★★

本当に才能に溢れた人間はこの世にいるんだなあと思い知らされる舞台。これを観る事が出来ただけで当面自分の幸運に感謝。色んな若手女優に今作を観て貰いたい。アンテナがビリビリする筈。
サンモールスタジオの小さなステージで演ること、立地条件、全てが計算され尽くしている75分。
「神は細部に宿る」と云うが、音に徹底的に拘り抜いている。ベランダの掃き出し窓が開いていて風が静かに吹き込んでくる。レースのカーテンが優しく揺らめき、外の道路から街の音がずっと微かに聴こえている。客席からは見えない洗面所の音、携帯電話の声の音量、絶対にこうでなくてはならないであろう設計。

オープニング、福永マリカさんがベランダ越しに外をぼんやりと眺めている。笠島智さんはキッチンで料理の準備。
福永の誕生会に集まる友人達。コロナ禍のホーム・パーティーと云うことで、全員マスク姿のまま。五人の会話劇を表情はほぼ目だけという荒業で成立。実際にワインやビールを飲み、おつまみを食べ、とにかく部屋の美術から小物からリアリティーを徹底。彼女の部屋、今その場にいる感覚に陥る。

ほぼすっぴんの福永マリカさんの目の表情が猫の目の様にくるくる変わり釘付けになる。笠島智さんの凛とした立ち姿。奥野亮子さんとハマカワフミエさんの口論の見事さ。青山祥子(さちこ)さんの引きがあるキャラ。

複数の女性客の啜り泣く声や堪えきれない嗚咽、客席は段々と作品世界に取り込まれて行く。
ラスト・シーンの切なさ。ウォン・カーウァイの『ブエノスアイレス』を観賞した後の何とも言えない気分を久し振りに思い出した。

ネタバレBOX

社会に生活に自分達のアイデンティティーにさえ打ちのめされていく女性同性愛者達。

皆が帰り、笠島と、その家に同棲している福永だけが残される。「別れないよ」と笠島、黙ったままベランダの側に立つ福永。
少し暗転し、ライトが灯ると福永はいない。彼女が立っていたベランダの窓にクリップで挟まれたクレヨン画の笠島の似顔絵が。緑を背景に可愛らしく笑っている。福永は去っていったのだろうか、それとも今ここにいないだけなのだろうか。部屋に現れた笠島が絵を手に取り、奥の額縁に大切に飾る。愛おしそうに。

世界の果て、地球の反対側の地にて、時すら越えてあの時の気持ちだけが確かにここに存在している。『ブエノスアイレス』はそんな映画だった。
夜会行

夜会行

鵺的(ぬえてき)

サンモールスタジオ(東京都)

2021/07/01 (木) ~ 2021/07/07 (水)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★★★

鑑賞日2021/07/01 (木) 19:00

スゴイものを観た気がする。観るべし(前売券完売だが当日券で是非)!
 レズビアンの新田(笠島智)が恋人の笑里(福永マリカ)と住む部屋が舞台。笑里の誕生日を祝うためレズビアン仲間が集まる。遼子(奥野亮子)と廣川(ハマカワフミエ)が来るが、話題の中心は廣川の新しい恋人の理子(青山祥子)。集まった5人は取り留めのない話を続けるが、30分ほど経って新参者の理子の問題が話題になると…、という展開。スケールの大きな作劇が続いた鵺的だが、今回は小劇場ならではの会話劇を展開し、70分強の舞台は基本的にリアルタイムで進む。5人のキャラクターが際立っているし、力量ある魅力的な女優陣が演じることでそれはよりハッキリする。誰が言うことももっともで、誰が正しいと言うわけでもなく、それぞれの生き方は認められるべきだと思える。レズビアンの話と思っていると、もっと普遍的な人間の生き方の話になっているあたりが見事である。珠玉の台詞が並ぶ。
 こういう芝居が観たい。☆15くらい付けたい気になる。

花のもとにて春死なん

花のもとにて春死なん

ピープルシアター

シアターX(東京都)

2021/06/30 (水) ~ 2021/07/04 (日)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★★★

 現代社会の断面を切り取った問題作にして衝撃作。老人問題は、“人生100年時代”どころか「生きろ」ではなく「遺棄老」といった扱いである。
 戦後のベビーブームに生をうけ、増えた人口のままに数々の流行と需要を作り、高度成長期、バブルとその崩壊を経て良し悪しはあっても日本経済を支えてきた。一方で「一億総中流」といった意識、過当競争、過剰設備を残したこの世代が年老いた今、日本人の戦慄の未来、いや現在を描く。初演が1985年、なんという時代の先取りか(脚本の一部書き直し、配役は全員新規メンバー、演出も新たにしていると)。
 また、相手の気持や立場を考える、人間はひとりで生きているわけではないーこんなもっともらしい、そして きれいごとを言う典型的な日本人への自業自得(自立しない、他人任せ)ではないのかといった逆説的な問題意識も突き付けているようだ。
 日本の今、そして狂気の老後問題を感じたければ、この作品を観たまえ!と言いたくなる(年齢がそう言わせる)。
 物語のラストは、観客の受け止め方が異なるかもしれない。何もあそこまで描き切らずとも、観客に委ねてもと言った感想があるかも…。事実、自分も観劇直後はそんな思いもあったが、帰宅する頃にはあそこまで描くことで、より老人問題が鮮明に出来る。敢えて踏み込んだ領域とも言える。観応え十分。
(上演時間2時間 途中休憩なし)

ネタバレBOX

舞台は「こころの里 桜の杜むつみ苑」。低い段差、中央奥は演壇のような高さ。所々に萎れた草というシンプルなもの。中央上部に桜が見えるが、当初 桜の木という心象風景と思っていたが、それはこの老人ホームの飾り物。つまり偽りの桜。老人ホームにいる人々の何も「無い」という心象を表している。劇中「老人は夢、希望、欲を持ってはならない」と。ただ静かに時を過ぎるのを待つだけ。生き甲斐を持つことは許されない。死への旅路の準備期間なのだ。かと言って準備することは何もない。が突如、日本国に姥捨山法が施行され、救いのないラストシーンへ…。

冒頭、老人姿勢から直立しタンゴを踊るシーンから始まる。生き生きと踊る姿、しかし間もなく「静かに!」という看護師の一喝で沈鬱な状態へ逆戻り。物語はホームに入所している老人たち1人ひとりの生き様なりを切々、淡々と描く。戦災孤児、口減らしのために身売り、同性愛者(少数=弱者視点か)等の人生を次々に展開していく。同時に老人に見(看)られる健忘、妄想、せん妄、痴呆、排尿障害といった症状を非生産的に描き出す。
子供叱るないつか来た道、年寄笑うないつか行く道 といった言葉は空しいだけ。

この姥捨山法は、単なる老人排除(殺害)に止まらず、老人問題の根本を考えず安易な方法で解決しようとする。つまり現役世代の大人たちは思考停止、傍観し不作為を決め込む。そして実行部隊は子供(14~16歳くらい)に任せるという無責任さ。さらに法の但書きには、年収2億円以上あれば適用外という富裕層優遇措置、まさに現在の貧富格差への揶揄・批判。

登場人物は個性豊かな老人たちで、役者は猜疑、相愛、嫉妬のような感情を表しつつ、踊ることで生きているを体現している。その精神・肉体の表現力は素晴らしい。中でも、自分を絞殺してくれと頼む姉婆(前田真里衣サン)、それを何か(月の不思議な力)に憑りつかれたように実行するメリー老(片平光彦サン)の謂わば嘱託殺人(自殺ほう助?)の場面は圧巻。この場面で歌われる曲(あざみの歌)、哀愁溢れ実に印象的だ。
日本で“月”が登場する話は紫式部の「竹取物語」が筆頭に挙げられるだろう。周知の通り、竹取物語の末尾に登場するのが不老不死の薬である。月と不老不死は月が欠けていって死に、また満ちて生き返るため ごく自然に再生の象徴とされている。その月を敢えて用いることで老人問題(社会批判と死生観の両方)への鋭い切り込み材料にしている。見事な公演であった。
次回公演も楽しみにしております。
DOORS

DOORS

森崎事務所M&Oplays

世田谷パブリックシアター(東京都)

2021/05/16 (日) ~ 2021/05/30 (日)公演終了

映像鑑賞

満足度★★★★

倉持裕舞台はPPPPの晩年(?)の一作のみ、他は随分前になる新国立での「イロアセル」、今回と同じM&Oプロデュースの「磁場」、他にあっても一つ位か。「DOORS」配信有難く拝見した。

パラレルワールドの話。「イロアセル」もSF要素のある話だった気がするが、SFには思考実験の側面があり哲学的な作品が多いのは頷ける。透明人間やタイムマシンと来れば人の直接的な欲求や願望に直結するが、「同じだが微妙に違う」あちらの世界の話は必ずしもそうならない(設定も難しいがうまく整理されていた..元の世界の人物の関係性が微妙にずれながら成立している形が上手く描けている)。もっとも母の願望には直結していたが。。「惑星ソラリス」を幽かに連想させたのは、脳が勝手に感じ・思うことに人間は抗えない「中毒性」を匂わせている点。母はあちらの世界で生き直そうとした。不仲であった一人娘を置いて、であるが予想に反して・・娘は「向こうからやってきた」姿かたちの同じ母を「別の人間」と一発で見破り、当然の事として「本当の母」を探すこととなる。母(早霧せいな)への複雑な感情と欲求を滲みだす娘役・奈緒の演技はこの舞台に一本貫く軸を与えた。学校で異端児キャラの彼女を「いじめ」ている、付かず離れずの仲の女子(伊藤万理香)も憎さ余ってな心情を意地悪く愛らしく好演。彼女らの担任教師(田村たがめ)、その元夫で警察官(菅原永二)、近所の変な人(天文物理学にはまった引き籠り)(今野浩喜)が脇筋を盛り上げる。それぞれがパラレル(あちら側)でも登場し、たどった道が少しズレているが、そのズレが人格や関係まで変えており、「母」は荒んだ人生に見切りを付け「DOOR」を潜った先に平和を見る。
演劇的面白さはパラレルワールドでの少し(いや大分)異なる人格を演じる点。ただ、一つ難点は奈緒演じる娘が(衣裳で見分けが付かないというのもあるが)演じ分けが甘く「どっち?」と判りづらい所があり、脳ミソを駆使するが追いつけなかった。
(その主な原因は、優しい母の下でわがままに育ち、オーディションに受かって芸能界に入ろうとしている「向こうの娘」がその高慢さを発揮した後、奈緒は同じ目つきで「元の」娘を演じてしまっていた。切り替えが難しかったのだろうと想像したが、そのあとドアを焼くくだりも「どっち」かが判らず脳内は迷走した。)
新型コロナについて一切触れていないのが潔い。SFでも硬派。

HATTORI半蔵Ⅳ

HATTORI半蔵Ⅳ

SPIRAL CHARIOTS

六行会ホール(東京都)

2021/06/30 (水) ~ 2021/07/04 (日)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★★

チラシには「幕末の半蔵見参‼ 日本史オマージュストーリー!」という文字が並ぶ。この六行会ホールは品川区の財団設立。品川区立図書館が隣接しているが、その書架に「幕末♢明治の偉人たち」というパンフが置かれ、偶然にもこの公演に登場する人物が紹介されていた。そんな所縁の地で上演された公演の見所は、キャストの身体能力を駆使した演技(特に殺陣)、それを観(魅)せる舞台技術であろう。
キャストの熱と力の入った演技、スタッフの手際よい対応、そのサービス精神が公演全体を好印象にしている。
(上演時間2時間40分 途中休憩10分含む)

ネタバレBOX

舞台美術は段差を設け、中央に襖、左右対称に障子戸がある。絵柄は薄墨色の浮雲で、そこにプロジェクションマッピングでシーンに応じて背景を効果的に映し出す。また目つぶし照明、レーザービームなどの技術を駆使する。一方、音響も和/洋の楽器(尺八・三味線、ピアノ等)をこれまたシーンに応じて使い分けし、時にSEも交えて独特な音響効果を発揮する。この舞台技術が長尺の物語を飽きさせずに支えている。
また、殺陣と集団剣舞という観せ方の違い、和装の華やかで優雅なビジュアル、その観(魅)せる演出サービスの好感度も高い。

梗概…和の国“ジパング”、鎖国を続ける幕末時代。新たな時代=開国を目指す「飛竜革命開国軍」と幕府を存続=鎖国を守ろうとする「鎖国の虎・新選組」の争い。その争いに忍術が使われていたところから物語は始まる。代々幕府の要(老中)職に就きながら、訳あって今では市井の髪結い床(屋)になって平穏に暮らす服部半蔵親子。が、「開国軍」の中に忍術使いがいたことから争いの渦中へ。忍術は「印」を唱え敵の動きを操り、「解」を唱え術を解く。この時にレーザービームで「印」の結界を表し「解」で壊す(消滅)という視覚効果。同時にガラスが割れるような効果音で臨場感を表す。照明と音響の相乗効果ある舞台技術はなかなか迫力があった。物語は、同じ一族でありながら敵味方になった男(ハンバ)女(ツタエ)の宿命を、といった内容である。

劇中の台詞・・人生は「楽しく適当に生きるのが楽」VS「言われるまま、何も考えないのが楽」と言い合う将軍と側近の戯言。こんな無責任な為政者のもとでは安心・安全な暮らしは出来ない。さて、11代将軍ヨシノブは、公言の儀において、適任者がいれば誰が将軍職を担ってもよいと。一見、民主主義の発議のように思えるが、そこにはある思惑が…。同時に粛清⇒恐怖政治というどこかで聞いたようなシーンを放り込む。何となく現代を揶揄しているような…。

「楽市家」での洋食、タロット占い、スロットマシーンという遊び心満載のシーン。同時に物語における重要な位置、「開国軍」「新選組」の双方にとっての情報取集の場でもあるという物語性を引き出す。さらに開国後の”文明開化”の象徴としての未来像を描く。もっとも観劇している今(現代)だから解ることでもあるが。
公演全体の印象としては、前半の緩い笑いで引き込み、後半は物語性とスピード感ある展開で一気に観せる、といった硬軟あるもの。
そういえば、2人(ハンバとツタエ)の行く末はどうなったのであろうか?
次回公演も楽しみにしております。
HATTORI半蔵Ⅳ

HATTORI半蔵Ⅳ

SPIRAL CHARIOTS

六行会ホール(東京都)

2021/06/30 (水) ~ 2021/07/04 (日)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★★

面白かったです。人物関係が複雑で混乱した部分はありましたが、独自の世界観に溢れていて、見応えありました。主従関係、国への思い、資する人への思い、色々な事が詰め込まれていました。衣裳や殺陣も良く、皆、身体能力が高いと感じました。切なさの残るストーリーも素敵でした。満足でした!

HATTORI半蔵Ⅳ

HATTORI半蔵Ⅳ

SPIRAL CHARIOTS

六行会ホール(東京都)

2021/06/30 (水) ~ 2021/07/04 (日)公演終了

実演鑑賞

良い舞台だったと思います。

花のもとにて春死なん

花のもとにて春死なん

ピープルシアター

シアターX(東京都)

2021/06/30 (水) ~ 2021/07/04 (日)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★★★

期待以上の素晴らしい舞台でした。舞台が広く、ひとりひとりの役者さんの表情、仕草など、語っていない役者さんを観ても、工夫を凝らした演技をしていた。
題名から、踊るだけの、暗くて、狂ったような芝居を想像していたが、びっくりするくらい本格的な芝居だった。
森井睦さんて何者? ぐらいに考えていた初心者の私は、ひどく驚いた。
お芝居の神様みたいなかたなんですね。経歴を読んで、ウワーっとびっくり。
作品を観たら、もう感動で震えました。
叫びそうになるのをこらえるのに必死でした。
観ながら、老人たちの本音に耳を傾けると胸が苦しくて苦しくてたまらない...
笑えるところもあり、お腹を抱えて笑った。
社交ダンスを踊るのが大好きな私は、踊りたくてウズウズした。私はタンゴが特に大好きです。シャキとしたところがいい。
ラストは、ひどく残酷で、老人たちがかわいそうでたまらなかった。
すごい盛り上がり。最高でした。
森井睦さんの作品素晴らしいです。虜になりました。
こんな、本当に本格的で感動する舞台初めて観た。
これから又、出会えるだろうか?
又、この劇団の舞台、絶対観たい。

別役実短篇集  わたしはあなたを待っていました

別役実短篇集 わたしはあなたを待っていました

燐光群

ザ・スズナリ(東京都)

2021/06/25 (金) ~ 2021/07/11 (日)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★★

別日に両方を観劇。4作品全てが「別役戯曲的合格ライン」(個人的な基準だが)クリアでハッピー、とは行かなかったが..収穫はあった。2015年前後にあった別役フェスでは二、三の優れた舞台によってフェスの価値は否が応にも刻印されたが、一公演としての評価は難しい。なんて小賢しさを嫌うのも別役流に思われ、個々の舞台の見たままを書きゃいいんじゃね。とも思うが。
いずれ詳述してみたい。

ネタバレBOX

別役演劇には毒がある、というか、毒を見つけられる舞台でなければ、と思う。
「毒」と言ってみて今思い浮かべたのは上方落語の「寝床」の冒頭シーン。なぐさみに過ぎぬ超ド下手な浄瑠璃をなぜか語りたがる商家の旦那のもとへ、たった今町内の店々に会の案内をして回って戻ってきた手代の久七が、いかに旦那の機嫌を損ねずに「皆が皆今日は来られない」事情を伝えるかに腐心するという場面なのだが、旦那の突っ込みをかわして報告するも、本音が間欠泉のように噴き出しそうになる。要は「あんたの浄瑠璃など誰が聞くか」と、心は如実に揶揄している。能天気な旦那に、「真実」という毒を最後には浴びせる事になる。

禁忌への巧妙な接近と見える場面が、これに当る事がある。小市民的でありながら、剣呑な「真実」に言及したり寄って行き、それを小市民的慎重さで正当化する、といった技を、別役戯曲の「人物」はやってのける。不器用者代表のようでいて、実に技量のある人物たちなのだ。台詞にそれが表われている。何しろ別役実が書いた言葉なのだから、それがあり得るのである。
言動が顛倒し、意味がひっくり返っても、現実には存在し得ない人間を別役氏は書いてはいない(いやいや、存在しにくいのだが、存在するかのように演じ、舞台上には存在するかに見える事によって別役戯曲は底力を持つ...役者頼み、役者泣かせの書き手だと思う。。いやいや役者に与えるこの課題こそ別役にとっての「演劇」の核に迫るものになっている、と考えるしかない・・同義反復な事しか言ってないな)。

不器用代表を「演じる」場合に役者はその声や流麗な活舌を、ある形で駆使してそのキャラを演じる。その意味で手練の要素があり、演劇の約束事というか断るまでもない当然な事実だが、戯曲に書かれた潜在的「手練な人物」たちの、毒や皿を食らって来た人生の厚みや、弱さを克服しようと苦渋を敢えて舐めた来歴は、それ自体「絶妙な演技」を強く要求される経験に、重なる。役者の身体が戯曲に書かれた人生の毒を持て余すのでは、太刀打ちできないのではないか・・と考えるのである。
こういう考察は「今一つ」な舞台から導かれる事を大方が察してしまう所だろうが、書いてしまう。
真面目な話、「見たい」ものがある。端的に、コロナの空気に考えなく追従する凡人の言葉より、空気に斬り込める眼力を持つ者の言葉の方を聞きたいのは本音である。
世間的負け組であってもその中に「そうあるしかなかった」核を見出す時、ある意味での「勝ち」を見、その存在の中に真実がある事がその裏付けだ。演劇はそこに照明を当て、ドヤ顔をする。
別役氏の言葉を発する者は、発する言葉に値する人物として存在せねばならぬ、という至極当然の要求は、次の考えにも扉を開く。・・高潔な人物を演じるのも大変だが、付和雷同で思考力に劣る人物でありながら人生の矜持を持つ存在を演じるのも、至難。演劇が持つ包摂力に果たしてどちらがより貢献するか・・。
(次は別立てで4作個々の感想を書く...つもり。)
HATTORI半蔵Ⅳ

HATTORI半蔵Ⅳ

SPIRAL CHARIOTS

六行会ホール(東京都)

2021/06/30 (水) ~ 2021/07/04 (日)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★★★

今回も殺陣ありダンスありプロジェクションマッピングありで、ずいぶん進化したなと思いました。最初の頃の手作り感も好きですが。
いよいよ幕末を迎えてしまったHATTORI半蔵。今回で終わってしまうのでしょうか?
次回はいっそ近未来で忍術使って戦ってください。

HATTORI半蔵Ⅳ

HATTORI半蔵Ⅳ

SPIRAL CHARIOTS

六行会ホール(東京都)

2021/06/30 (水) ~ 2021/07/04 (日)公演終了

実演鑑賞

幕末の日本をモデルにした架空世界の話。
殺陣、アクション、ダンス、プロジェクションマッピング等を駆使したステージはひたすら派手で楽しい。特に殺陣は今まで見た舞台劇で一番かも。

ただ冗長な観は否めないかな。私が見た回は終了が9時半でした。
あと30~40分位短い方がテンポ良くなると思うのですが。

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