最新の観てきた!クチコミ一覧

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魔笛

魔笛

東京二期会

東京文化会館 大ホール(東京都)

2021/09/08 (水) ~ 2021/09/12 (日)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★★★

序曲の目撃で、主人公の男が、自宅の子どもたちのやっていたゲームの世界に入ってしまう。魔笛の本編は、そのゲームの中の冒険になる。舞台は、斜めにおかれた大きな四角い箱のような形。背後の壁を手前と奥と二重にして、手前の壁を半開きにしたり全部閉じたりして奥行きに変化が出る。手前と奥にさまざまな映像を映し出して、視覚的にわかりやすく変化に富んだ部隊だっった。
歌手も良かった。夜の女王高橋維もコロラトゥーラが絶品。パミーナ盛田麻央が、愛を得られないと思って嘆くアリアが今回、特に胸にしみた。パパゲーノ役の近藤圭の緩急自在なコミカルさも良かった。
厳粛なザラストロの音楽から、「パパパの二重唱」まで音楽的にも非常に多彩で、聞かせどころがたっぷり。改めて名作だと再認識した

ネタバレBOX

最後は、タミーノ、パミーナの結婚が祝福されると、それが現代に戻るきっかけに。二人は家庭の夫と妻になり、子どもたちと高齢の父(弁者と同じ)に囲まれた平穏な家庭に戻る。一瞬で現代に戻る、短時間のラストだが気持ちいい結末だった。
醉いどれ天使【9月3日~9月4日公演中止】

醉いどれ天使【9月3日~9月4日公演中止】

明治座 / 新歌舞伎座

明治座(東京都)

2021/09/03 (金) ~ 2021/09/20 (月)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★★

桐谷健太の詩情と影のあるヤクザ松永役が光った。冒頭から詩のような、松永の手記が劇中リフレインされる。「夜に隠れ、朝を恐れ、昼を恥じて…」「故郷が思い出される…コンコンと咳をする母、妹の上着の赤…、」。戦場から復員しても居場所を失い、闇屋のヤクザとして勢力を伸ばしながらも、そんな生き方を恥じている純情さと、帰りたくても帰れない望郷の思い。原作の映画には松永の過去は何も描かれなかった。今回の舞台は、飲み屋の女将を松永の幼馴染に変えて、松永の人物像を陰影あるものに膨らました。

それ以外、映画のストーリーはほぼ変えず、黒澤映画へのリスペクトが感じられた。女子高生やヤクザの親父も早くだがきちんと出てきて、いいアクセントになる。泥水を飲む子供を真田が叱るシーンも割愛していなかった。主要キャストは豪華で、それぞれに存在感がある。昔の女ミヨ(田畑智子)を連れ戻しに来た岡田(高嶋政宏)に、ミヨが自ら出ていって拒み、医者の真田(高橋克典)と松永が土下座して、帰ってくれと懇願する場面。映画だと、ミヨは家の奥に隠れたままで、真田だけが対応するのだが、演劇としてはバアや(梅沢昌代)まで出て、迫力あるシーンを作っていた。

回り舞台にセットを作って、真田医院、ダンスホール、闇市、情婦の部屋等々を効果的に転換。このセットも良くできていた。床の傾斜をつけることで、客席から見て、人物の上下の位置で互いの関係がわかりやすくなると、演出の三池崇史がプログラムで喋っていた。中央上部に渡り廊下のような橋があって、回り舞台の上面を俯瞰的に使っているのも感心した。上面の奥の傾斜が、最後に物干し場になる。

ネタバレBOX

屋根上の物干し場で松永が死ぬシーン。映画を踏襲していた。さらにその前に、真田が洗濯物を見て、松永に「幸せってのはああ言うもんだ。大人も子供も一緒に暮らしている」という。これで、松永の死の切なさが一層ました。
物理学者たち

物理学者たち

ワタナベエンターテインメント

本多劇場(東京都)

2021/09/19 (日) ~ 2021/09/26 (日)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★★

会場へ入るとロビーがどことなく簡素。「ご自由にお取り下さい」という無料リーフレットを探すと事務用長テーブルにB4紙2つ折りの当パンがまた質素(桟敷童子のみたく)。座席に近い入口から入ろうと裏手に回ると案内スタッフがおらず「コロナ対応で裏口は閉じたのか?」という状態(そうではなかった)。
芝居が始まると序盤に登場した草刈民代の台詞が時折覚束なく「おや?」と思う。そこでふと「今日はプレビューだから?」との考えが過ぎった。以前観たプロデュース公演のプレビューが(結果的に準備が十全でないというのでなく)わざわざ1ランク落とし、スタッフの客対応も素っ気なかったのを思い出した。今公演がそうだったわけではなく実際には「差」もないのかも知れないが、「引き算された分を足すとどうなる」等と脳内で考えを巡らした程に、特に前半は混迷し、乗れないものがあった。
幕間を挟んでから俄然巻き返して天晴であった芝居は確かにあったが何だったか・・さほど気落ちせず休憩時間を休み、迎えた後半は目が覚め、戯曲の「狙い」的な所がいくらか見えてきた。といっても変わり種な戯曲には違わぬ。ノゾエ氏演出舞台と言えば新国立の「ピーター&ザ・スターキャッチャー」(ラストで萎んだ感はあったが)が秀逸で腕は確かだと知れるが、書き手・演出家としての「傾向と対策」は未だ不明。それでも料理人・ノゾエ氏を引き当てた素材というのが何故か腑に落ちる作品。シュールさは前半の「死」の扱いと言いイヨネスコを連想させるが、要は叛逆、アナキズム、よりソフトに言えばはぐらかし、へそ曲がりな志向。

感じた難点は、配役。チラシの俳優陣を見て観劇を決めた客も多いだろうが、川上友里子を除く女優陣(瀬戸さおり、吉本菜穂子、草刈民代)のキャスティングは果たしてどうだったか・・。小柄で容姿端麗の瀬戸、声に特徴あり倒錯の域を表現できる吉本、すっくと立つ肢体こそ見たい草刈が、わざわざその長所を封印したような役柄である事により、元々異種な戯曲の「読み違え」「迷子」を誘引したようにも思う。
まあしかしそれより何より、事挙げすべきは戯曲という事になるのだろうが、今ひとつ物語を追えていない。終わってみれば事象じたいはシンプルではあるが事象を語る口調、含みは感受しきれない。
誤読の一つは、ステージを占める直方体の共有スペース(居間であり休憩室であり食堂のような)には左右の壁と正面の三方に三人の科学者を名乗る入院患者の居室のドアが付いているが、大きく立派なので居室には見えず(特に正面は廊下に通じるのだと終盤まで思っていた)、意図としては三名の科学者に集約される話である事が前半の段階では判りづらく、象徴的に扉をデーンと据えたのかも知れないが、では居室以外の場所へ通じる通路はと言えば壁が人一人通れる格子になっていて、どこからでも出入り出来る仕様になっている。三人以外の存在の性質を三人と区別するのにグッドなアイデアとも思うが、幻想ではなく実際に起きている事象であるので、例えば扉に名札でも貼っておけば「居室」だという事が最初に判る。芝居の見方=ルールは早々に告知するのが良く、適度な謎で引っ張り後で解く手法はここではそぐわなく思う。また、看護婦役、刑事の部下役、主役の一人メビウス(と名乗る患者)の息子ら役などを兼ねてコロス的なグループとした感じだが、メビウスの妻(川上)や刑事(坪倉)、あと確か看護婦長(草刈)が他を兼ねない配役である事の意味はあるか、なども。本作はこの「豪華な」出演陣に適した素材だったのかどうか。この発掘戯曲は無名でも剛腕な役者、ぶっ飛んだ役者を使って下剋上を挑むような素材ではないか。ただ、全体に漂うシュールな感じ(ノゾエ氏の色?)の中で、メビウスや三科学者が倫理と科学についての真っ当な議論を真顔でやってみせるなどシニカルで押せないものがある。水に浮いてしまう油の処理法は難しい。作者がミステリー作家であった事を考え合わせると、どんでん返しの後付けの政治論争で、政治論争の手段としてのミステリアスプレイではなさそうだ。とすると味付けの位置に当る論争は当時の世相の反映であり、もし今これをやるなら、「人類が踏み込んではいけない領域」とは生命科学だったりコロナ禍を引き起こした自然破壊だったりするのかも・・。(まあそれだとインパクトには欠くが)

オペラ『さよなら、ドン・キホーテ!』

オペラ『さよなら、ドン・キホーテ!』

オペラシアターこんにゃく座

吉祥寺シアター(東京都)

2021/09/18 (土) ~ 2021/09/26 (日)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★★★

ドイツ軍占領下の、多様な人々の動きに、LGBTの問題も絡めた、非常に見応えある「ドン・キホーテ」だった。ピアノの伴奏(服部真理子)がずっとつくが、音楽と場面の演技が、歌わないところでもよく噛み合っていた。ドイツ軍占領下のフランスが舞台で、ドンキホーテになりたい不登校の女の子ベルが主人公だと、見ているとわかってくる(一幕1場)。ベルは夜中、ロシナンテとサンチョの2頭の馬を連れて冒険の旅に出ようとしていると、逃げてきたユダヤ人少女サラを匿うことに(2場)。翌朝、呼びに来た女教師オードリーを、牧場の手伝いの青年、びっこのルイの助けで追っ払い、ベルとサラは「冒険の旅」を歌い、みんなを巻き込む(3場)。

二幕、2時間35分(休憩15分こみ)

Wキャストのうち青組を拝見。ベル役の沖まどかが、小さな体でエネルギッシュに動き回り、舞台を引っ張って、存在感抜群だった。サラ役飯野薫は可憐。オードリー役梅村博美はお硬い女教師が、二幕になると、キビキビした色気のあるダンスで魅せた。道化役のサンチョ冨山直人は絶品で、徴用に出されるのをごねるところは大いに笑わせた。相手やくロシナンテ大石哲史も、うらぶれたが誠実で人情ある老馬の風情がよく出ていた。

ネタバレBOX

二幕では、祭りのダンスパーティーからドイツ軍のレジスタンス狩り(一場)。サンチョを徴用に出す騒動から、ベルが不登校になったのはアウティングのせいというサラへの告白。オードリーのドイツ軍将校の女だった過去(2場)。学校に行くことを決意したベル、迎えに来たオードリーしかしドイツ軍が来て、ルイの密告でサラの存在がばれてしまう‥。悲しみを抑えながら、ベルが自分なりの冒険を歌うフィナーレへ。
雨

こまつ座

世田谷パブリックシアター(東京都)

2021/09/18 (土) ~ 2021/09/26 (日)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★★★

最後のどんでん返しが鮮やかな井上ひさしの代表作の一つ。主役の山西淳が素晴らしい。江戸のコジキから、山形の大旦那になりすまし、時には一人二役も声色でやってのける。笑いから悲劇まで、感情の微妙な振幅も自在に表現。さらに標準語から方言までを使いこなして、言葉の劇でもある本作をしっかり支えていた。

主なキャストで13人、加えて村人・女中などのアンサンブル12人、総勢25人という大きな規模に驚いた。パーカッションの生演奏もあり、大変贅沢な芝居。先ぶとで上部が少し曲がった(五寸釘を模した)柱を軸にした回り舞台が、シンプルだが、傾斜場や、段差ある座敷などを表裏に配して、全11場の多様な場面をよく表していた。紅屋の、紅花を大きく描いた背景は、ほかは全てくすんでいただけに、特に際立っていた。

冒頭の久保酎吉の、人形を使った背負われ役も絶品。最初は二人だとばかり思った。そのほか、名前は書かないが、芸達者揃いで、贅沢といえば、これが最大の贅沢だった。

鉄屑拾いのトクが大旦那にうまく成りすませるかどうか、という一本筋で観客をずっと引っ張っていく。そのスリリングは差し詰め「太陽がいっぱい」のよう。トクがで突っ張りであるように、全く副筋に遊んだりはしない。でも、旦那の女房のおたか(倉科カナ)との寝間の場面が、「えつものように」というおたかの催促ひとつで、右往左往するトクに笑いが起きる。天狗に詳しい儒者(土谷佑壱)の人間離れした演技も面白い。

底辺から這い上がる男の一代記としても、中央と地方の対立としても、欲(権勢)に目がくらんだ人間の愚かさとしても、権力と民衆の双方の非情さとしても、実に多くの問題を孕んでいる芝居だった。

ネタバレBOX

最後、舞台奥に広がる一面の黄色い紅花畑が鮮やかだった。そこに村人たちが立つ姿で、トクを殺したのが、ただ一部の藩の上層や商人だけではなく、民衆の支持があることを示していた。
川岡が来ないZ!!

川岡が来ないZ!!

スズキプロジェクトバージョンファイブ

テアトルBONBON(東京都)

2021/09/15 (水) ~ 2021/09/26 (日)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★★

本当に川岡来なかったー!
クスッと笑えるシーンがたくさんあって楽しめました。

好きで嫌いな珈琲と煙草

好きで嫌いな珈琲と煙草

ふれいやプロジェクト

アトリエファンファーレ高円寺(東京都)

2021/09/15 (水) ~ 2021/09/19 (日)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★★

コロナ禍では劇団も飲食店も大変だ。とてもリアリティーのある話で、役者さんたちの熱演と相まって、グッときました。

FINAL QUEENS [ファイナルクイーンズ]

FINAL QUEENS [ファイナルクイーンズ]

Superb Sick Squad

千本桜ホール(東京都)

2021/09/22 (水) ~ 2021/09/26 (日)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★★

女性10人による熱演、キレのあるダンス、とても楽しめました。
入ってすぐ、舞台の飾り付けに目を奪われました。そして、かかっていたミュージックにも...
受付の女性がとても感じがよかった。とても元気で。受付がいいと、お芝居も気分よく観れる。
感染症対策が徹底していた。ビックリするくらい。安心して観れてよかった。

風の市

風の市

激団リジョロ

サンモールスタジオ(東京都)

2021/09/23 (木) ~ 2021/09/26 (日)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★★

鑑賞日2021/09/23 (木)

価格3,800円

23日18時開演回(120分)を拝見。

(1948年以降に日本で生まれた新井家の子供達の、今の様子から推測して)1970年前後?の大阪の下町。
娘5人・息子2人の在日の新井家に、ある日突然飛び込んで来た粗暴な男・ソンジンが巻き起こす、昭和のホームコメディー風ドタバタ劇(何かにつけて、長机の座卓で家族や来客が揃って団らんするさまは、まさに”昭和”だなぁと遠い目)。
だが、次第に(たとえ、物語の背景にある「済州島四・三事件(1948年)」を知らなくても)客席に、新井家の人々やソンジン、文野洋代の血の源流である、済州島の惨劇が伝わるにつれ、最後には、この”望郷と家族(一族)の絆の物語”が胸に響いて来たんじゃないだろうか。
近頃、トンとお目にかかったことのない、ごっつい歯応えの120分だった。

ネタバレBOX

【配役】
秀行(新井家末弟)…久井正樹さん
文野洋代(ソンジンが一目惚れ)…貴玖代さん
ソンジン…金光仁三さん
英子(新井家長女)…星野桃子さん
輝子(新井家二女)…福田桂子さん
順子(新井家三女)…こんどうひろこさん
秀明(新井家長男)…齋藤このむさん
清子(新井家四女)…兒林美沙紀さん
鈴子(新井家五女)…斉藤未来さん
堀口刑事…是近敦之さん
豊田刑事…中鶴間大陽さん
康順仙(カンスンソン)…松本まどかさん
洪育姫(ホンユッキ)…徳丸舞香さん
金村…金哲義さん
安田…上田裕之さん
春花(チュンファ)…きのさん
哲学者の午睡

哲学者の午睡

空間旅団

Route Theater/ルートシアター(東京都)

2021/09/17 (金) ~ 2021/09/20 (月)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★★

哲学とプロレスの時空を超えたコラボ、なかなかに楽しめました。役者さんたちの熱演に感激。

川岡が来ないZ!!

川岡が来ないZ!!

スズキプロジェクトバージョンファイブ

テアトルBONBON(東京都)

2021/09/15 (水) ~ 2021/09/26 (日)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★★

これは面白い。どんな状況でもとにかくなんとかする。濃いキャラたちの奮闘に感激です。しかしながら、川岡、実はそうだったのか。

ホシノヒト

ホシノヒト

演劇企画アクタージュ

シアターグリーン BASE THEATER(東京都)

2021/09/23 (木) ~ 2021/09/26 (日)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★★

本日拝見しました。内容はあると言えばあるような内容でしたが、役者さんの演技もとてもよく、内容も分かりやすくて、楽しめました。内容のせいですが少ししつこいかなあという感じはしましたが、よくまとまっていて面白かったです。次も期待ですね

ファクトチェック

ファクトチェック

秋田雨雀・土方与志記念 青年劇場

紀伊國屋ホール(東京都)

2021/09/17 (金) ~ 2021/09/26 (日)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★★★

鑑賞日2021/09/23 (木) 13:30

座席1階

中津留ワールド炸裂、といった3時間であった。15分の休憩を挟むが、長く感じられない迫真の舞台だった。

物語はある新聞社の政治部に、社会部の特ダネ記者だったアグレッシブな男が異動してくるところから始まる。現政権(自民党と菅内閣を風刺してある)の一方的で民の声を聴かない政治を、その政治の中枢に食い込んで変えてやろう、という男だ。彼は官房長官会見(当時、まだ菅氏は官房長官だった)に後輩記者を黙らせて割り込み、さっそく官房長官に質問を連発する。官邸の会見は報道官が仕切っていて、官邸クラブの加盟社が優遇されるようなところがある。この会社は加盟社なのだが、再質問なし、というルールを無視して質問を連発する。
もちろん、公式の記者会見なのだから、記者クラブの内輪のルールなど取材には関係ない。だが、日ごろルールをぶち壊すような記者はいないから、官邸サイドににらまれることになるかと思ったら、なぜか、官房長官が気に入って特定の記者だけの懇談に来ないかと誘う。

メディアは権力の監視が役割である。ウオッチドッグ(番犬)と呼ばれ、政権が怪しい方向に行くときに激しく吠えて警鐘を鳴らすのが役割である。この主人公の記者もまさに、このジャーナリズムの本質を行く男だったのだが、中津留ワールドのおもしろいところで、この男が官邸側のうまい取り込み(ここはネタバレするので書かないが)で外堀を埋められ、結局政権の首がすっ飛ぶような隠された議事録の部分を報じないという選択に追い込まれるのだ。

核心となる議事録のネタが、東京電力福島第一原発の事故による汚染水放出に関連したものであり、総理の前任者(安倍さんである)が東京五輪招致に際してアンダーコントロールと言ったことで官僚の仕事が捻じ曲げられていくところがあってとても興味深い。これは安倍前首相が「私の妻がかかわっていたら国会議員も辞める」と答弁したモリカケ問題の裏映しであるからだ。担当の官僚が自殺する(舞台では事件に巻き込まれたとにおわせるくだりもあるが)ところも、赤木さんの自殺をトレースしているようで、リアリティーが増してくる。

政治部の記者がここまで腐っているか、と言われると「実際はここまでひどくはないだろう」とは思う。しかし、結果的に政権のやりたい放題を許しているわけだから、「番犬」の仕事を果たしているとは残念ながら言えないだろう。

現実の政治やメディアの報道ぶりを想起しながら、エンターテイメントとしても十分に面白い、楽しめる舞台である。厳しい中津留ワールドに全力で応えようとした青年劇場の意気込みも感じる。
ただ、取材相手(家族にもだが)に対して怒鳴るような主人公の口調がとても気になった。芝居であるからある程度は仕方ないとは言えるが、取材相手をやり込めるようなやり方をする人は優秀な記者とはいえないからだ。この人は何を熱くなっているんだろうか、と私は冷めてしまった。それを割り引いても、この舞台はお勧めだ。

THE SHOW MUST GO ON

THE SHOW MUST GO ON

加藤健一事務所

京都府立府民ホールアルティ(京都府)

2021/09/18 (土) ~ 2021/09/18 (土)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★★★

9月12日に終わるはずだった京都府4度目の緊急事態宣言が月末まで延長されて開催が危ぶまれたが、アルティも腹を決めたようで、無事公演された。1時開演と6時開演の2公演のマチネを鑑賞。

さて、今回の上演作品は1906年生まれ(1984年没)のアメリカ人の劇作家ジョン・マーレイ(John Murray)と1900年生まれ(1985年没)の同じくアメリカ人の劇作家で、作詞家、脚本家でもあったアレン・ボレッツ(Allen Boretz)の共同執筆作品。1937年5月にニューヨーク、ブロードウェイ(Broadway, New York)のコート劇場(Cort Theatre)で初演され、翌年7月まで61週、500公演を記録した。1953年の再演ではジャック・レモン(Jack Lemmon)が若き作家のレオ・デーヴィス(Leo Davis)を演じた。

1938年には当時人気喜劇スターだったチコ(Chico)、ハーボ(Harpo)、グルーチョ(Groucho)のマルクス兄弟(Marx Brothers)の主演で映画化され、さらに1944年にはフランク・シナトラ(Frank Sinatra)主演で芸人ホテル(Step Lively)としてもミュージカル映画化され、アカデミー賞の美術賞にノミネートされた。

日本では1994年に加藤健一事務所で「It's SHOW TIME!」のタイトルで上演。演出が綾田敏樹で、出演は加藤さんのほか、坂口芳貞、市川勇、大島宇三郎、松本きょうじ、酒井敏也、六角精児、大久保了など。酒井さんが作家のレオ役だそうで、六角さんはワグナーだろうか? また、2004年にはテアトル・エコーでも上演されている。酒井洋子の訳・演出で、安原義人がゴードンを演じた。今は亡き納谷悟朗に熊倉一雄も出演している。

京都アルティで公演された前2作品は共に第2次世界大戦下の英国の話だったが、今回は第2次世界大戦直前のアメリカ、ブロードウェイが舞台。1929年の世界大恐慌から立ち直れず、生活は貧しく、先行きの見えない灰色の時代に、なんとか新作の上演を成功させたいプロデューサーや演出家たちが、溜りに溜まったつけで追い出されそうなホテルで、あの手この手でピンチを切り抜ける話。この作品は、前2作品と違って、最初から最後まで大笑いさせてくれる。

加藤さんが演じるのはプロデューサーのゴードン・ミラー(Gordon Miller)。女優の渡辺えりと23年連れあった後2019年に離婚した土屋良太演じる演出家のハリー・ビニオン(Harry Binelli)と劇団ハイリンドの伊原農演ずる舞台監督フェーカー・イングランド(Faker Englund)、さらに藤井隆を彷彿とさせる劇団スタジオライフ所属の千葉健玖演ずる劇作家のレオ・デーヴィスも無理やり加えられ、4人で元ずうとるびの新井康弘演じるホテル監察官のグレゴリー・ワグナー(Wagner)をムチャクチャ云いながら騙しきるのは見もの。間に挟まれた劇団ワンツーワークスの奥村洋治演じるゴードンの義兄のホテル支配人のジョゼフ・グリブル(Joseph Gribble)はさあ大変。

劇団の花形女優のクリスティン・マーロウ(Christine Marlowe)を演じる加藤健一事務所ではお馴染みの加藤忍と、ホテルの秘書で劇作家のレオに一目惚れするヒルダ・マニー(Hilda Manney)を演じる岡﨑加奈が花を添える。

また、長く声優として活躍し続けている辻親八が、ロシア人ウェイターのサーシャル・スミス(Sasha Smirnoff)、グラス医師(Dr. Glass)、ブレーク上院議員(Senator Blake)の3役を務め、Pカンパニー代表を務める林次樹が代理人のサイモン・ジェイキンス(Simon Jenkins)、取り立て屋のティモシー・ホガース(Timothy Hogarth)と不渡り手形を届けに来た銀行員を演じる。

休憩までが45分、15分の休憩後は終演まで1時間15分の実質2時間の芝居だが、一番最初にウェイターのサーシャがゴードンに自分を出演させてくれと売り込む場面から、最後にブレーク上院議員が救いの神になるところまで、のべつ幕無し笑わせてくれる。新井さんの騙されっぷりは見ものの一つ。

終演後は15分開けて京都公演でしかやらないと云うアフタートーク。今回も舞台上で行われたが、このスタイル、ロビーでやるのに比べると俳優さん達と身近に接せないが、落ち着いて座って聞くことが出来るのはメリットだな。今回は加藤さんに加えて新井さんと岡﨑さんの3人が30分、いろいろなお話をしてくださって楽しかった。

この京都公演に関しては、アルティではよく音楽のライブも行われると云う話から、新井さんが次はミュージックプレーヤーとして来たいですと云われていたが、あとで調べたら去年(2020年)にずうとるびって再結成されて、この7月には新曲もリリースされてるんだ。懐かしいわ。1974年デビュー、1982年解散か。私は広島から京都の時期で、大学から新人の頃。もし本当にやるなら見てもいいかな ^_^

そう云えば、これまでのアフタートークの司会はいつも京都労演の土屋安見さんだったが、今回はなぜかは分からないがアルティ館長の雨宮章さんが挨拶の後に引き続き務められた。雨宮さん、低音のすごくいい声で、もちろん演劇のこともよくご存じで、業界上がりの方かと思ってたら、元々は中学校の社会の先生で、30歳から府庁の職員だったのね。ただ、文化畑が長く、現在はアルティだけでなく文化芸術会館の館長も務められてるとのこと。いろんな方がおられるのね、京都府庁。

アフタートーク含めてちょうど3時間ほどで、4時過ぎに終了。さて、加藤さんの京都公演、今年はもう1回来て下さるそうで、次回は12月の「叔母との旅」。4人で24人の登場人物を演じるロードムービーだそうで、楽しみ!

以上

ホシノヒト

ホシノヒト

演劇企画アクタージュ

シアターグリーン BASE THEATER(東京都)

2021/09/23 (木) ~ 2021/09/26 (日)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★★★

とても期待していきました。期待以上でした。
未来と過去を往き来するファンタジーでした。場面が往き来する時の点滅する光、効果音
が神秘的に使われ、不思議な雰囲気がよく出ていました。
個人的には、サスペンス風でもあり、家族の愛情が表現されていて、とても癒され満足しました。
とても素晴らしいお芝居だった。
受付の女性にとても親切にしていただきました。ありがとうございました。
髪の長い、声が少し低い方で、お芝居のなかにも出演されていました。
主催者の男性も熱心にお客さんを誘導されていて、とても感じがよかった。
とても気分よく観れました。

3Cs 2021 Tokyo: 変異する舞台芸術

3Cs 2021 Tokyo: 変異する舞台芸術

karakoa

北千住BUoY(東京都)

2021/09/23 (木) ~ 2021/09/26 (日)公演終了

映像鑑賞

満足度★★★

有観客公演の予定が、直前になってオンライン開催に変更。初日のライブ配信で『名取川(東京ver.)』を鑑賞。自分の名もなかなか覚えられないほど物覚えの悪い僧が登場する狂言をモチーフに、「円盤に乗る派」のカゲヤマ気象台と日和下駄に、ダンサーの山口静がコラボする30分。アバター(なのか?)による序盤は、正直まったくノレなかったが、後半で山口静が登場するあたりから急に緊張感が。

ネタバレBOX

山口静のあのセリフはどういうこと?と思いながら見ていたが、終演後のトーク映像での本人のコメントに納得。
夏の砂の上

夏の砂の上

ハツビロコウ

「劇」小劇場(東京都)

2021/09/21 (火) ~ 2021/09/26 (日)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★★

鑑賞日2021/09/22 (水) 19:00

125分。休憩なし。

WILD THINGS

WILD THINGS

ルサンチカ

スタジオ「HIKARI」(神奈川県)

2021/09/19 (日) ~ 2021/09/24 (金)公演終了

実演鑑賞

満足度★★

鑑賞日2021/09/21 (火) 18:00

60分。休憩なし。

『アドリブ・オン・ザ・ウォーター』『品川野放図』

『アドリブ・オン・ザ・ウォーター』『品川野放図』

品川親不知

ウッディシアター中目黒(東京都)

2021/09/21 (火) ~ 2021/09/26 (日)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★

親友である2人の芝居。呼吸はバッチリあっているな、と思う。
好青年で雰囲気がいい。
部屋をシェアする漫才は、おもしろかった。何度も笑ってしまった。
周りの人は、ユーチューバーのネタで爆笑していた。
個人的には、少し早口になり、聞き取りにくかった。もう少しゆっくりハッキリ話すと、もっと笑いが取れたように思う。
教師ネタの時は、ゆっくりハッキリで聴きやすかった。
山田遊さん、今、学校へ行き、映画の勉強中とのこと。
これから、大きく成長される気がします。
今後の成長が観たいです。頑張ってください。
相方の桂輔さん、関西からご苦労様です。

夏の砂の上

夏の砂の上

ハツビロコウ

「劇」小劇場(東京都)

2021/09/21 (火) ~ 2021/09/26 (日)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★★★

素晴らしい公演でした。
何が素晴らしかったか、のひとつとして普通こんなに淡々とした序盤であれば退屈を危惧してしまうところ、それがもう全くの逆。
赤子が見るもの見るものを猛烈に吸収していくかのように、彼等の置かれた状況、人柄や心のひだまでもが確実に深く染み入ってくるのですからもうたまりません。
程なく劇中と交流したくなるくらい彼等は身近な存在になっていき
流れてゆく日々、自然と生まれてくる興奮感がとても心地良かったです。

渇ききった夏の長崎、全編を通して水不足の状態。
不幸な出来事も多いし、全くもって冴えない生活風景ではあるけれど、それでも人は決して枯れはしない。
痛いけれど、生きていく事をとても愛おしく感じずにはいられなかった。


事前に記載されていた旗森さんのレビューを拝読し観る前の参考にさせて頂きました、
ありがとうございます。
確かに台詞が通ってこなければキツイですし伝わるものも伝わりませんね。
私が観た回にはしっかり届いていたので意識的に良くなっていたとも思えますし、もしかするとですが一部通りにくい座席のラインがあるのかもしれません。

本当に良く出来た脚本ゆえ今後、他所で公演される事もきっとあるでしょう
それであっても私にとって本公演が唯一無二の原型版として刻み込まれて大満足です。

ネタバレBOX

完全にネタバレです。


気持ち寄り添う身としては、あの日、主人公の言動に一抹の不安がよぎったんだよな~・・・案の定、あ~もう最悪。
伏線というやつかもしれませんが、注意したかった、どうにも悔しい。
あの時ニヤニヤ話を聞いていただけの奥さんが無性に腹立たしい。
姪っ子の厄介な青さが切なく、彼女に振り回されっぱなしの彼氏も何というか若い。
思い返せば持田さんの就職祝いが今になって泣けてくる。
陣野さんと奥さんはその後、別々の道で幸せになったのだろうか。
姪っ子のお母さん、お土産のアンパン買ってこんのか~い。
そして貴女は何処に向おうとしているのか・・・
あ~もう井戸端会議みたいに喋り倒したい。

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