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彼女を笑う人がいても

彼女を笑う人がいても

世田谷パブリックシアター

世田谷パブリックシアター(東京都)

2021/12/04 (土) ~ 2021/12/18 (土)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★★



樺美智子か!!
同世代に生きて、その後も生き延び、今も生きるものにとってはいわく言い難い存在。それがこのドラマのヒロイン・彼女(木下晴香)だ。その言い難い個人の言説を言えば際限がなくなる。見たものに絞る。
ようやくこのヒロインを舞台に上げられるようになった。大逆事件から「美しきものの伝説」まで約六十年。こちらもちょうど六十年。直接向き合うには、そういう年月が必要な「事実に基ずく」素材である。
舞台は60年安保の国会抗議デモで亡くなった樺美智子を取材していた記者と、東北震災を取材していたその記者の孫にあたる記者(瀬戸康史・二役)の長い年月の複眼の視点から二つの事件が描かれる。一つは政治、一つは天災だから、作者が「事件」を描こうとしているのではないことは察しられる。事実、舞台では時代の流れを大きく変える事件をマスメディアがどう取り上げ、どう報じたか、という事がドラマチックに描かれる。大きな産業組織の中のメディアと、そこで生活を立てていく記者個人、具体的には、経営側の主幹(大鷹明良)と記者の対立、合理化と配転される記者、それがデモ全体の主張と個人、という構図にも重なってくる。テーマはメディアが報じる大きな事件とその中の小さな個人という事に絞られているようにも見えるが、それは、もちろん、この舞台を作った人たちのトリックだろう。
そのメディアに関するテーマは、内容的には既に言われていることも多く、少し辛く言えば記者がタクシー運転手になっていたり、企業記事に配転されたりというストーリーは平板でもある。
やはりこの劇の軸は樺美智子を陰の主役に据えたことだろう。そのドラマについては一時間45分の舞台の中でもあまり触れられていない。しかし、このドラマに描かれた60年安保も東北大震災の事後処理も、日本社会の病癖に深くかかわっていて(もちろん大逆事件も)演劇のみならず、われわれが常に考えなければならないことである。その第一歩として、このドラマはあまり一方的な情報に左右されず、しかし主張を持った素材をうまくアレンジしている。それがかなり難しいことだというのも、同時代人としてはよくわかる。
数年前、気鋭の劇作家・古川健が「60sエレジー」という作品を書いた。あまり評判にならなかったが、60年安保と集団就職を絡ませた優れた舞台だった(この作品でも、警官隊は農民の出稼ぎ、樺は東京市民と一言触れているが)。
これからも、この素材は扱われ続けると思うが、一言言えば、このタイトル「彼女を笑う人がいても」は、考えすぎだろう。同時代人の一人である者にはまったく馴染めない。正直言えば嫌な感じだ。しかし、歳の流れというのはそういうものでもあろう。


#北区の熱海「熱海殺人事件」「売春捜査官」

#北区の熱海「熱海殺人事件」「売春捜査官」

★☆北区AKT STAGE

北とぴあ ペガサスホール(東京都)

2021/12/14 (火) ~ 2021/12/19 (日)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★★★

鑑賞日2021/12/16 (木) 14:00

価格2,500円

毎回熱海殺人事件を観ています。今年は笑える場面があったので、初めて観る人も楽しめる舞台だと思います。

ネタバレBOX

前の席に座ると、お花が飛んで来るかも 今回は役者さん達が歌って踊ってのパフォーマンスにびっくりでした。
Mo’xtra Archive『912・3R/3C・ス』

Mo’xtra Archive『912・3R/3C・ス』

monophonic orchestra

APOCシアター(東京都)

2021/12/15 (水) ~ 2021/12/20 (月)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★★★

#リバース、リバース、リバース!
#寺田華佳 さん
#小口ふみか さん
#橘花梨 さん
#橋爪未萠里 さん
#浅野千鶴 さん
2回目。初日には、登場した小口さんといきなり目が合う席に座っていて、自分の引きの強さを感じたわけだけれど、今回はとあるシーンで橘花梨さんの正面を狙ってみた。ビンゴ。射抜かれた。

あのシーンで、小口ふみかさんがイヤホンで聴いているのが久保田早紀『異邦人』なのがシュールで悶絶する。そういう仕掛けが堪らない。
展開を知って観ると、俳優さんたちが敷いた表情の伏線にゾクゾクする。『うわぁ、ココでそんな顔をしていたのか!』にたくさん出会える。

遠慮せずに2回目、ご覧ください。

眠れぬ姫は夢を見る

眠れぬ姫は夢を見る

サヨナラワーク

劇場HOPE(東京都)

2021/12/15 (水) ~ 2021/12/26 (日)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★

眠れぬ姫はどんな夢を見たでしょうか。

ネタバレBOX

本当の「もあ」、そして、「ふたば」の存在の意味について、最後に核心に迫るのですが、理解が難しかったです。回想していく展開はそれぞれの場面が異なるのですが、やや同様のトーンで単調にも感じられたのです。舞台セットや役者の衣装が際立ったものではなくシンプルに感じられたからかもしれません。白いスニーカの役者が多かったことが気になりました。飲食物を扱うシーンが実物のものでないので、臨場感がわかなかったので残念です。
海王星

海王星

パルコ・プロデュース

PARCO劇場(東京都)

2021/12/06 (月) ~ 2021/12/30 (木)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★

鑑賞日2021/12/17 (金) 12:00

寺山修司が天井桟敷結成以前に書いた未上演の戯曲が初公演、だそうだが、筋の分かる寺山は初めて、な気がする。70分(休20分)80分強。
 猛夫(山田裕貴)は父を難破で亡くすが、父と結婚する予定だった魔子(松雪泰子)と出会い恋に落ちる。ところが父・彌平(ユースケ・サンタマリア)は実は生きていて…、な物語。時間軸も空間軸も飛ぶことがなく、素直に展開されるあたりは寺山っぽくないが、「祝祭」感は寺山らしくもある。音楽劇として構成されているので長くなるのはしょうがないが、物語にヒネリは少ない。
 オープニングで、声だけで分かる中尾ミエの歌唱で始まるところに貫禄を感じる。ただし、ここと2幕のオープニングだけというのは勿体ない。そばかす役の清水くるみと那美役の伊原六花に新鮮味を感じるが、役を逆にしてもいいのではないかと思った。

あの部屋が燃えろ

あの部屋が燃えろ

MCR

OFF OFFシアター(東京都)

2021/12/15 (水) ~ 2021/12/19 (日)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★★

鑑賞日2021/12/16 (木) 19:30

2014年に上演された作品の再演だが、初演は見てない。MCR節満載で、面白悲しい。観るべし。100分。
 とある安アパートの1室。隣の住人やらヤクザやらが出入りする部屋で起こるさまざまな出来事。かつて作・演出の櫻井が住んでた部屋がモデルらしいが、それを振り返って描かれる世界は、貧しいながらも元気、だけではなく、貧しいが故の悲しさ、も描いてて、笑わせてもらって寂しい気分にもしてくれる。それでも終演後のカーテンコールで見せた櫻井の笑いにホッとする。

眠れぬ姫は夢を見る

眠れぬ姫は夢を見る

サヨナラワーク

劇場HOPE(東京都)

2021/12/15 (水) ~ 2021/12/26 (日)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★★★

綺麗な舞台でした!

眠れぬ姫は夢を見る

眠れぬ姫は夢を見る

サヨナラワーク

劇場HOPE(東京都)

2021/12/15 (水) ~ 2021/12/26 (日)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★★

照明がとても綺麗だし、役者さんひとりひとりの表情が、生き生きしていて、とてもよかった。
少女マンガを観ているような、良い雰囲気!!!
人は誰でも、もうひとりの自分がいるのかもしれない...
夢のなかにいるような、雰囲気が妙によかった!!!

眠れぬ姫は夢を見る

眠れぬ姫は夢を見る

サヨナラワーク

劇場HOPE(東京都)

2021/12/15 (水) ~ 2021/12/26 (日)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★★

 出演は8名、全員女優さん。

ネタバレBOX

 地下アイドルグループの群像劇。舞台美術がグー。通常の板の中に正方形を45度の角度で嵌め込み手前のコーナー部分を削いで奥の2面を基底に壁を立ち上げてある。大小の矩形を貼って凹凸を付けた壁面手前には箱馬が3つずつベンチのように並べてある。無論、物語の展開に応じ、最初ベンチのように並べられた箱馬はばらされ様々に再構成されて色々な様態を表す。正方形を変容させた主舞台や箱馬は総て白。これはプロジェクト・マッピングを効果的に用いる為の条件だろう。色彩や文様が映されるが、単に文様として美しいというより、アイドル達の変容する心理や心の揺らぎを表象していると観るべきだろう。また女優達の衣装はライトカラーのものが多く、柔らかな感性や傷つき易さを表象していると思われる。
 物語はグループ結成辺りから人気トップの優羽に憧れ自分を変えたいとの希いから応募し入団した萌愛を中心に展開する。メインストリームは、メディアで取り上げられた襲撃事件と1年後の解散、襲撃事件被害者・萌愛の怪我と怪我回復後のトラウマに因る引き籠りを重石とし、弱小TV局アナウンサー故同時に記者・カメとしても働きつつ、事件を取材し報ずる(奈月)の報道を食い入るように見つめていた怪我の癒えた萌愛がそのトラウマの為「死んだふり」をし続け、遂には奈月への人格転移を引き起こし乍らも執拗に事件の分析に挑み最期には自己を取り戻し、解散十年後に約束された1回だけの復活ショーに至るまでの経緯約10年を描く。この過程で「私は貝になりたい」について触れるが、ちょっと鼻白んだ。「私は貝になりたい」が描いた作品の内実にあった深く極めて社会的な視座と今作の描いた分断された世界及び世界観では次元が異なると感じたからである。「私は貝になりたい」を持ってくるならその背景としてブルデューの描いた「世界の悲惨」(全3巻・1巻500頁以上)程度の社会観は背景に描き込まれ観客に感じさせなければなるまい。因みにブルデューは余りに極端な悲惨はこの本に敢えて載せておらず、それだけに単にフランス一国の問題としてではなく他の多くの国に当て嵌まる事例とその深刻さが如実に描かれている。このブルデューの世界観と対比される形で分断された孤独な世界が描かれていたなら素晴らしい作品になったと思うがこの点が惜しまれる。制作さんからのメール対応が非常に良かった点も評価したい。制作さんへの高い評価を加えて☆は4つとするが、脚本は☆3つ。
掌サイズのファンタジー

掌サイズのファンタジー

backseatplayer

シアターグリーン BASE THEATER(東京都)

2021/12/15 (水) ~ 2021/12/19 (日)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★★

面白い! 30歳独身男、今までと これからの人生を考える。
いつか来た道だが、大人になったらそんな事も忘れてしまう、人間関係の機微。それが家族ともなれば、それなりに煩わしくもあり、疎ましく感じることもある。今の思いをしっかり伝えることの大切さ、それを少し斜めから切り込んだ世界観。その世界を覗いてみれば、生きるために必要な事が笑いの中に散りばめられている。祖父、父親、息子という男三世代が贈るヒューマンコメディ…ラスト、ポケットの中を探った手を開いてみれば、そこには掌サイズ(いっぱい)の幸せがある。
(上演時間1時間45分 途中休憩なし)

ネタバレBOX

舞台美術は、少し高い平台が正面にあり、その上に黒板がある。板には色違いの箱馬が8つあるが、状況に応じて置く位置を変える。場面転換後、客席寄り中央にタバコ1箱(銘柄White iLL)が置かれ1本飛び出ている(チラシの図柄)。

主人公・落合楽空(藤代海サン)は、シンガーソングライターになるのが夢だが、30歳になった今ではバイトに明け暮れ、夢が萎みかけている。そんな時、父・秀樹(剣持直明サン)から亡くなった祖父・士郎(冨田浩児サン)の家を売却するので、片付けを手伝うよう電話がくる。祖父の家にあった先のタバコを吸った。気が付いたら この世とあの世の狭間の世界にいた。その世界の違いは衣装の別で表す。狭間世界は、上下ブルーデニム地の作業着みたい。ここにいるのは夢半ば、やり残して死んだ者ばかり、いつの日か生まれ変わった時に同じ轍を踏まないようにと…。何故か士郎と祖母・千鶴(真野未華サン)が若かりし頃の姿で出迎える。さらに存命だったはずの秀樹まで居る。これは夢か現実か判然とせず混乱する楽空に向かって、お前はまだ生きている。ただ生きていく上で必要な事を学ばせる。同時に疎遠だった父との蟠りの解消も果たす、という教訓臭と親子愛を描いた人情劇。

教わったのは「自由」「自信」「勇気」の3つ。夫々の必要性について、楽空に体験・事例研修させるといった観せ方。規制が作られた理由・原因を知り、その上で不必要な規制(精神的な束縛)からの解放。いつの間にか夢は萎み失いそうになるが、出来ると信じること。最後に誰に何を言われようとやり遂げる強い意志と勇気。楽(ラク)をすることが夢や幸せではない。自分らしさ、やりたい事が出来ることが楽(たの)しい人生。同じ「楽」でも意味合いが違う。父から、そんな願いを込めて名付けた名前「楽空」(実際は士郎が命名)であることを知らされる。藤代サンと剣持サンの気まずい父・子関係が実にリアル。特に 2人が同じ状況(車中)で夫々の立場から描いた場面は、そぅそぅと頷いてしまう。

箱馬は教室における座席であり、そこへの上り下りが躍動感を生み、理屈っぽくなりそうな会話に変化を付ける。駆け回る、囃し立てるといった姿は、小中学生の教室を連想させる。自分が子供の頃に思い描いた夢、親は足元を見つめた現実話、そこに親子のギャツプが生じるが、自分が親になったらいつの間にか同じような説得口調になっている。世代を超えての堂々巡りは、時に親子の確執を生む悲劇になる。公演では現実(理屈)の世界を少し離れた場所から眺める、そんな曖昧(ファンタジー?)さでテーマを浮き彫りにする巧さ。
次回公演も楽しみにしております。
女中たちの犯罪劇場

女中たちの犯罪劇場

遊戯三昧

in→dependent theatre 2nd(大阪府)

2021/12/18 (土) ~ 2021/12/19 (日)公演終了

満足度★★★

うーん😔表現が独特すぎて、万人向けとは…。皆さんの意見を聞いてみたい。戯曲を勉強しておいた方が良いかも…

徒花に水やり

徒花に水やり

千葉雅子×土田英生 舞台製作事業

ザ・スズナリ(東京都)

2021/12/15 (水) ~ 2021/12/19 (日)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★★★

鑑賞日2021/12/16 (木) 19:00

圧巻の会話劇。台詞に引っ張られてストーリーが転がる、観ている私の感情も動く、という感覚を楽しんだ。登場人物がみな生き生きとキャラを生きている。役者の力量を感じさせる舞台。

ネタバレBOX

昭和な感じのリビング。
ヤクザの組長だった父親がはめられて殺されたあと、残された4人の子供たちのうち、
一人は養子に出される。
親代わりとなった長女(千葉雅子)、3回結婚・離婚を繰り返しスナックをやっている
次女(桑原裕子)、単純でちょっと足りないヤクザな長男(土田英生)。
この3人が、養子に出されていた妹が東京から来るのを待っている。
わくわくソワソワして、楽しみでならない3人。
その妹(田中美里)は、輝くような笑顔でやって来る
しかも結婚を考えている相手の男(岩松了)を連れて来た。
その男こそ、父親をはめた張本人だとも知らずに・・・。

兄弟それぞれのキャラが立っていて素晴らしい。
特に次女と長男のやり取りが秀逸。
台詞のひと言一言に、性格と来し方が現れているような、吟味された言葉。
桑原さんが繰り出す間とテンポが素晴らしくて引き込まれた。

ラストのオチがちょっと軽すぎてカクンと来てしまったが
”家族の絆”を描くのを妨げるものではない。
人生はまさに徒花に水をやるようなものだなあとしみじみ思った。



海王星

海王星

パルコ・プロデュース

PARCO劇場(東京都)

2021/12/06 (月) ~ 2021/12/30 (木)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★★

邦美「こんなことになるなんて・・・」って、おばちゃんはきっとそうなると思っていましたよ。そうならなかったら良かったのに。
山田君が見れたので★四つにしてしまうけど・・・(あくまで私の満足度なので)祝祭劇ってこうなの?

ネタバレBOX

祝ってお祭りなんだから、楽しいお芝居なんだと思っていました。普通に考えたら、えええーーーって思うような結末でも、めでたく楽しく大団円を迎えるのかと思っていたのに、猛夫が死んで、しかもあれで終わりなんて納得できない。
そういえば以前「祝祭音楽劇 トゥーランドット」にも騙され(?)たんでした。
猛夫(山田君)は誤って毒を飲んで死んでしまいますが、目が見開かれたままなんです。それがずっと続くので、魔子〜(松雪さん)目を閉じてあげてよ〜とお願いしたくなったほどでした。目が乾いたり、痛くなったりしないのか心配です。
Mo’xtra Archive『912・3R/3C・ス』

Mo’xtra Archive『912・3R/3C・ス』

monophonic orchestra

APOCシアター(東京都)

2021/12/15 (水) ~ 2021/12/20 (月)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★★★

#カラオケの夜
#佐藤みゆき さん
#森崎健康 さん
夫婦だから全てを曝け出せるのか、夫婦だからこそ気を遣って言えないのか……答えの出ない永遠の難問。良い関係を築いたり保ったりするために努力すること。それは無理をすることになるのか。確かに夫婦には何らかの覚悟のようなものは必要だと思う。「夫婦なんて所詮は他人」とはよく耳にする。でもそれは、分かり合えないことを何かのせいにして蔑ろにしたり諦めたりしている言い訳と言えなくもない。我が妻も、何度か伝えても変わらない……変えようとしないことは幾つもあって……もう仕方ない…と諦めている部分は確かにある。きっとその逆でワタシにも妻にとって許し難いことがあるだろう。性格、育った環境、染み付いたモノは簡単には変えられない。もし同棲をしていたなら、果たして結婚に至っただろうか。その時間に、曝け出すか気を遣うか、許せるのか冷めるのか……。かつて、そんなことを考えたのを思い出す。
子は鎹。この二人の7年の時間にコウノトリが天使を運んできたなら違う時間が訪れただろう。我が家の双子の娘が春に家を出て、夫婦だけになった後のことを考えると少し怖い。
音楽の力は本当に凄い。音楽は人生に寄り添い、彩り、その時間の価値を高めてくれる。メロディーに乗せたら言えることがあったり、誰かの歌詞に代弁させて思いを伝えたり……最強のアイテム。だから、大切な時間や思い出にこびり付いて剥がすことができずに苦しむことだってある。イントロを聴くだけで一瞬にしてその時が蘇って、嬉しかったり苦しかったり悲しかったりする。
音楽の力をよく知っているであろう佐藤みゆきさんがこの作品を演じられるのを観られて、本当によかった。歌もよかった。
森崎健康さんは、以前から味のある素敵な俳優さんだったけれど、いやぁ〜惚れ惚れする。
この二人の未来を、2時間半の帰路でずっと考えていた。きっと新しい人生を応援し合うのだろう。それでも、かつて志したあの仕事に対して「今からだって遅くない」と思える二人なのだから、人生を共にやり直したってイイ。その可能性を残してくれた須貝英さんの優しさに感謝して床に就こう。

■おまけ■
結婚式の入場BGMに大好きなビートルズの『IN MY LIFE』をタック&パティという夫婦デュオのカヴァーで使った。その一週間後にブルーノート東京で行われた彼らのライブに出かけ、1stステージを終えた二人に声をかけると楽屋に招かれた。式のことを伝えると、2ndステージで予定になかったその曲を「二人の為に」と紹介して歌ってくれた。素敵な夫婦だった。
https://youtu.be/WB6eHS8Bwos

Mo’xtra Archive『912・3R/3C・ス』

Mo’xtra Archive『912・3R/3C・ス』

monophonic orchestra

APOCシアター(東京都)

2021/12/15 (水) ~ 2021/12/20 (月)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★★★

鑑賞日2021/12/17 (金) 14:00

「サイクルサークルクロニクル」を観劇。
時間の扱い方の表現が面白かった。
Extra Stageの鍜治本さんと中野さんの「最愛/Everything I Own」も素敵な世界観で良かったです。

vitalsigns

vitalsigns

パラドックス定数

サンモールスタジオ(東京都)

2021/12/17 (金) ~ 2021/12/28 (火)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★★

鑑賞日2021/12/17 (金) 19:00

とても濃厚な会話劇を楽しむことができました。
自分と異なるモノへの嫌悪、違和感との向き合い方を思い起こしました。
多種多様な世界になりますように。

鈍色(ニビイロ)のヘルメット -20歳の闘争-

鈍色(ニビイロ)のヘルメット -20歳の闘争-

KUROGOKU

中板橋 新生館スタジオ(東京都)

2021/12/15 (水) ~ 2021/12/19 (日)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★★★

鑑賞日2021/12/17 (金) 14:00

安田講堂ものの中でも、一番カワイイ部類の作品でした。といっても、あの頃の熱、過激さが失われていたわけではありません。フェミニズム視点から見たというのが新機軸です。最後の、全共闘の敗色が濃くなり、めちゃくちゃになった部屋に主人公がたたずむシーンは、昔の映画で薬師丸ひろ子が機関銃をぶっぱなした後の「カ・イ・カ・ン」と重なって見えました。冬休みに、自宅からは行きにくい会場まではるばる足を運んだ甲斐がありました。ブラボー。

『水』/『青いポスト』

『水』/『青いポスト』

アマヤドリ

新宿シアタートップス(東京都)

2021/12/16 (木) ~ 2021/12/26 (日)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★

『水』

開幕すると所謂“演劇”がスタートして、集団で台詞を合唱斉唱重唱輪唱していく自分の嫌いなタイプの語り口。「これが2時間20分続くのか」と気が滅入るものの、いざ物語の中に投げ込まれると話自体が面白くて世界に没入出来る。ただ暖房が効き過ぎで、周囲は結構居眠りしていた。

物語の原型はボリス・ヴィアンの『日々の泡』(邦題『うたかたの日々』)。妙な現実感を組み込んだ大人の為の童話(寓話?)のテイストは『劇団おぼんろ』の感覚にも似て。

初めにこの話がハッピーエンドであることが観客に明かされ、ハッピーエンドのちょっと前の様子も見せてくれる。それがどう見てもハッピーエンドには成り得そうにない光景でこれが蒔いた一粒目の種。ヒバリのバニラの無惨な死の光景も前もって語られる。これが二粒目の種。

細かい台詞や動きも完璧に計算され尽くしていて、相当な稽古量が透けて見える。演出家の完璧に構築された設計図があり、役者皆が一人ひとり自然に輝くようにデザインされている。
ヒロイン役一之瀬花音(かのん)さんは吉高由里子にちょっと似ているような可愛らしさ。ヒロインの旦那役・阪本健大(けんた)氏は岡田圭右似でえらく格好良く、強い存在感で目を離せない。ヒロインの母親役の右手愛美(うてまなみ)さんは韓国映画の女優みたいな派手な美人。夏に『歴史法廷の中に生きる我々のための小噺集』で観た、医者役の木村聡太氏はスタイルの良さから記憶に残る。ヒバリ役冨永さくらさんはバレリーナのようにステージ中を軽やかに跳ね回り、その余韻が木霊し影が残像となって消えていく。

序盤に蒔かれた二粒の種が約束通り芽吹くとき、無力さに打ちのめされるだけのこの物語に果たして光は射すのだろうか?

ネタバレBOX

話は難病モノで、一之瀬花音さんが結婚式の夜、奇病に冒されてしまう。このまま病気が進行したら肉体が湖になってしまうので、それを抑える為「海老の尻尾」を摂り、水は一日小さじ2杯まで。旦那の阪本健大氏は「ゲロ掃き屋」で、電線に籠を引っ掛けてロープウェイ代わりに移動し、深夜のゲロを掃除し続けている。二人の出会いの切っ掛けを作った斎藤拓海氏はDH(公務員である国家公認犯罪者)。彼の恋人の徳倉マドカさんはお笑いコンビ・チタンカーメンズの大ファン。そのチタンカーメンズがネタで提案したDHシステム(国が管理出来る犯罪者を養成し、国の管理の下、マッチポンプとしての犯罪を犯すこと)。これが評価採用され、チタンカーメンズの二人は大臣の座を与えられている。
斎藤は恋人の気持ちをチタンカーメンズから逸らす為、暗殺を企てる。友人の阪本が代わりにそれを実行に移すが、殺さずにコンビの一人をホトトギスに変えて拐う。逃亡する阪本は逃げ延びた先のマンションで、「叢雲(むらくも)屋」になる。「月に叢雲、花に風」(良いものに限って必ず邪魔が入る)から意味を採り、人が死ぬ前日に家族にそれを伝えに行く仕事。その職業故、妻が明日死ぬことを知った。

一之瀬花音さんは子供の頃、母親とボートに乗っていて誤って湖の中に落ちてしまう。何処までも沈んでいき、遠くなっていく水面。母親の右手愛美さんは娘を助ける行動が何故かどうしても取れない。空を見上げると、娘が見ているであろう光景に自らを重ねてしまう。遠く空の青さを眺め、沈んでいく自分。近くの青年が飛び込んで助けてくれたのだが、母と娘は決定的な心の傷を負う。母は病み、家に閉じ籠もり、食事も摂らなくなる。この件の母娘の対話シーンが絶品で右手愛美さんの見せ場。この作品の一つの核である。

そしてラスト、妻は死んで湖になった。旦那はその湖にマンションから飛び込む。彼女との二人だけの秘密の合図、水面に咲く蓮の花になった手を繋ぎ、何処までも沈んでいく。何処までも水に溶けていく。何処までもそして何処までも。

「···とさ。」と話を締め括る松尾理代さん。
最後に流れるのは大槻ケンヂの『オンリー・ユー』(田口トモロヲ率いるパンクバンド『ばちかぶり』の代表曲のカバー)。ちょっと意外な選曲。

会場で配布された小角(こかど)まやさんのイラスト人物相関図が秀逸。他の劇団も真似て欲しい。
「紅一点」

「紅一点」

演劇ユニット「みそじん」

ステージカフェ下北沢亭(東京都)

2021/12/15 (水) ~ 2021/12/19 (日)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★★★

3部構成、全てのパートに代表の大石ともこさんが別役で出演されていましたが、コレ事前に知っていなければ全く別々の女優さんだと信じ込んでしまうくらいに、演じ分けが見事。
芸人 柳原可奈子さんが様々な女性になり切った面白味に通じているかも。などと思いつつ、その完成度、女優としてのポテンシャルがめちゃ高い。
「紅天女」を演じたわけではないけれど、まさに「ともこ・・・恐ろしい子」といった感じ。

マンション3室で繰り広げられる3種の人間模様。
もう自分もおじさん、おばさんかなぁを意識しだす年代には、琴線をくすぐられまくるであろうニュアンスの嵐。
ヘンテコな状況にしろ、修羅場にしろ、いつの間にか場面をめちゃ面白い空気に変えてしまうコンビネーションの良さ。
これが今回限りの座組である事が非常に勿体無くて、それ故そんな巡り合わせがこの上なく贅沢に思える舞台でした。

笑いだけでなく熱い女優魂も伝わってきて・・・何というか、感動した。
「ガラスの仮面」を引き合いに出したのは満更でもない、と思えてくるのでした。

『水』/『青いポスト』

『水』/『青いポスト』

アマヤドリ

新宿シアタートップス(東京都)

2021/12/16 (木) ~ 2021/12/26 (日)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★★★

鑑賞日2021/12/17 (金)

価格3,500円

『青いポスト』17日19時半開演回(139分)を拝見。

2017年の初演舞台を観ているのに…
ストーリー、大方覚えていたのに…
初演の王子小劇場より、はるかに客席から間近な新宿シアタートップスの舞台のせいか、伝わってくる熱量が半端なく、とりわけ、ラストの群舞⁈には震える程、感動した。

ネタバレBOX

【配役】
ハンナ(妹。意外にも悪人選挙・予備選挙1位)…相葉るかさん
ゆき(姉。予備選挙1位の本命だったはずが僅差の2位)…相葉りこさん
ミーア(”消された”らしい姉妹の親の妹。姉妹の育ての親)…一川幸恵さん
ヤヨイ(ミーアの姉)…中村早香(なかむら・さやか)さん(舞台と客席とのつなぎ役も兼務)
リオ(双子姉妹の文通相手。アン、ロアとは友人関係)…榊菜津美さん
エリカ(リオの妹。双子姉妹と同級生。悪人選挙・管理員会の委員)…村山恵美さん
刈谷(悪人選挙・管理員会の委員。匿名作家)…菊地音々子さん
サリ(悪人選挙・管理員会の委員。スーの後輩)…星野李奈さん
スー(悪人選挙・管理員会の委員。ユキの店で働いていた)…佐藤美輝さん
ロア(悪人選挙・管理員会の委員長。町長の娘。アンとはパートナー)…さんなぎさん
アン(郵便屋さんの管理職。娘がいる)…大塚由祈子さん
パム(郵便屋さんの新人。容量が悪く、お人好し)…ばばゆりなさん

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