最新の観てきた!クチコミ一覧

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朗読劇、余炎

朗読劇、余炎

三度目の思春期

マホラ食堂(小田急線経堂駅南口徒歩5分) 2階客席(東京都)

2024/09/27 (金) ~ 2024/09/29 (日)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★★★

鑑賞日2024/09/27 (金) 14:00

6月の悲喜交交による「古民家上演版」を経ての朗読版。朗読劇だけに3人の登場人物に加えてト書き担当がいるので情景を思い浮かべたり上演版を思い出したり。
朝ドラをBSで一度観てから地上波を字幕・副音声で観るσ(^-^) にはピッタリ、的な。(笑)
そして会場が食堂の2階テーブル席で演者もテーブルを前に並んで座るカタチだけに台本を手に持つ「一般的な朗読劇」と違って木製の書見台に台本を置くという演出がまた別なオモムキでステキ。演者が劇中の衣装だったり当日パンフレットが劇中の俳句誌を模しているのも〇。
そうして語られる内容が「戦意高揚に文学(を筆頭とした芸術)が使われる時代が二度とあってはならない」なのは秀逸。(10年前に書かれた作品とのことだけれども)

Flower

Flower

兎団

中野スタジオあくとれ(東京都)

2024/10/10 (木) ~ 2024/10/14 (月)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★

現代と過去(戦国時代)を往還する というよりは綯交ぜの混沌とした物語。解ったようで実は理解が追い付かない独特の世界観だが、飽きることなく観ることは出来る。この団体 気になっていたので観に行ったが 満席いや増席するほど盛況。開場前から並んでいる人が多く、コアなファンに支えられているといった印象だ。

心の在り様は、時代が違っても…例えば 花にも色々あり 一輪でも存在感ある大輪を咲かせるものもあれば、人知れず野に咲く花もある。それを戦国武将の生き様に準えて描く。もっとも戦国時代と言っても柴田勝家とお市(織田信長の妹)が北ノ庄城で自害するところから大坂夏の陣(主人公 真田幸村が討死)迄を駆け足で描いている。そのため ある程度知られた出来事(史実)を掻い摘んで紡いでいることから、全体的に粗くなっていることは否めない。ちなみに、お市の娘 茶々(後の淀殿)を戦国時代に生きた女性の代表格のように描く。冒頭 お市の最期のシーン、たとえ女性であっても自立することが大切、そんな旨の台詞が現代へのエールに思える。

「兎団式、何でもありの一大絵巻」という謳い文句、個々の武将の心情の深堀というよりは、エピソード等を誇張することで興味を惹く。そしてその時代をどう生き抜くか、その生き様が華々しかろうが 枯淡や簡素であろうが<どう生きるか>が重要だと。これが現代(シーン)の悩める中年男へのメッセージに繋がる。

一見 雑然とした描き方のようだが、史実としての物語は流れており 観せる工夫として歌やダンス、そして衣裳やメイクといったビジュアルで魅せている。勿論 効果的な音響音楽や照明の諧調によって印象付け、それら舞台技術が物語をしっかり支えている。
(上演時間2時間 休憩なし) 

ネタバレBOX

暗幕で囲い 上手 下手に非対称の黒い階段状の段差、入口近くにある置台に黒電話。至る所に切り絵が貼り飾られているだけのシンプルさ。戦国時代という乱世の光景(殺陣・アクション等)を描くためにスペースを確保しているのかと思ったが、それほど激しい動きはない。動作には、パントマイムで観せる場面も多くある。

物語は、現代の名無し男が、車で東京(江戸)に向かうシーンから始まる。名無し男は、架空の電話相談へ掛けるが、その相談事が曖昧というか要領を得ない。高校を卒業して15年、何の変哲もない生活を続け このままで良いのか自問自答している。何の不自由もなく大きな悩み事もない。漠然と生き甲斐のようなものに憧れているよう。

戦国時代の武将は日々生きるか死ぬか、家名の存続と家臣の生命と生活を抱えている。主人公は真田幸村、父 昌幸と上田城にて関ケ原の合戦に馳せ参じる徳川秀忠の大軍を少数精鋭で足止めて、知略・勇猛を世に知らしめた。勿論真田十勇士といった魅力ある人物が登場する話もある。戦国時代の終焉となる大坂の陣(冬と夏)の活躍を描いており、そこでは勝ち目がない豊臣方に味方している。そこに戦国の世を、そして武将としてどう生き死ぬかといった生き様を見せる。

現代の平凡なサラリーマンと戦国時代の勇将を比較するような描き方、そこに人それぞれの考え方や生き方を投影する。ちなみに大坂の陣では、後藤又兵衛・木村重成といった歴史好きには馴染みの人物も登場するが、真田幸村に比べると華がない(語弊があるかもしれないが)。そこに歴史に埋もれそうな人物をも照らし出す。戦国という刹那的な時代を取り上げながら、ダンスや生歌という魅せる演出で盛り上げる。そこに 独特の世界観の演出する巧さを感じる。
次回公演も楽しみにしております。
いのうえ歌舞伎≪黒≫BLACK『乱鶯 みだれうぐいす』

いのうえ歌舞伎≪黒≫BLACK『乱鶯 みだれうぐいす』

劇団☆新感線

新橋演舞場(東京都)

2016/03/05 (土) ~ 2016/04/01 (金)公演終了

映像鑑賞

満足度★★★★★

ゲキシネ 2024年10月10日18時20分〜 ブルク13
ここで終わっちゃうのーーー!!
と、今回も思った。2016年に見ているのに、ちゃんと観てきた!も書いているにもかかわらず、カケラも覚えていなかった。観ていればそのうち思い出すだろうと思っていたけどまるで思い出しもしなかった。舞台を見る視点(座席の問題)があまりに違うせいだろうか。
しかしおかげで最後までドキドキハラハラ、手に汗握って観てしまった。

ピローマン

ピローマン

新国立劇場

新国立劇場 小劇場 THE PIT(東京都)

2024/10/03 (木) ~ 2024/10/27 (日)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★★★

圧巻と言っていい内容。まず本が凄い。ちょっと変わった作劇と思うが、よくこんな物語を構想してここまで書き込めたものだ。終始緊張感が途切れない。
各俳優がまた凄い。登場人物同士の対峙がいくつもあり大量の台詞がバンバン発せられ強めの演技が付けられているが、見事に演じられている。それにしても成河氏は凄い俳優だ。こんな演劇はなかなか観たことがない。

憧憬の記憶

憧憬の記憶

劇団水中ランナー

ザ・ポケット(東京都)

2024/10/09 (水) ~ 2024/10/13 (日)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★★★

人情味あふれる役者の演技と、しっかりと作り込まれた舞台セットによって、話の中にすっかり吸い込まれました。

ネタバレBOX

「憧憬の記憶」の意味がしみじみと心にしみました。登場人物がみな、いい個性、味が出ていて、ひきつけられるのです。舞台の奥行きと幅を縦横無尽に使った展開はよかったです。登場人物が多いので少し理解するまで戸惑いましたが、少しづつ、それぞれがつながっていき、全体としてつながっていくように感じるのは爽快でした。劇団が再演を目指していた「憧憬の記憶」がどんな話なのか、期待に胸がふくらみ、とても興味深かったです。
ぶっ壊したい世界

ぶっ壊したい世界

劇団TEAM-ODAC

俳優座劇場(東京都)

2024/10/02 (水) ~ 2024/10/06 (日)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★★

頑なに悲観主義を貫く主人公を軸に様々なエピソードが加わり、それらもまたヘビーな環境ばかりではあるのだけれど、随所に笑いが仕込まれているおかげでかなり観やすく楽しめる公演になっていました

色んな人生のピースで惹きつけ、終盤に向けてそのピース達がやや強引な話にはめ込まれていった感は否めなかったものの、理屈抜きで言うと目の前の出来事に息を呑んだり、腹立たしかったり、思わず笑ってしまったり
演技と観客の呼吸というか波長みたいなものがピッタリ合っていたのでしょう
客電が点き、扉が開けられ、アナウンスが流れてこようとも一向に拍手の鳴り止む気配が無い初日の回でした

憧憬の記憶

憧憬の記憶

劇団水中ランナー

ザ・ポケット(東京都)

2024/10/09 (水) ~ 2024/10/13 (日)公演終了

実演鑑賞

しみじみと、心に沁みました。

兄妹どんぶり

兄妹どんぶり

劇団道学先生

新宿シアタートップス(東京都)

2024/10/09 (水) ~ 2024/10/15 (火)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★★★

これは良い
かなりお薦め

兄妹どんぶり

兄妹どんぶり

劇団道学先生

新宿シアタートップス(東京都)

2024/10/09 (水) ~ 2024/10/15 (火)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★★★

鑑賞日2024/10/10 (木) 14:00

座席1階

登場人物それぞれがもれなく個性豊かで、一人ひとりに物語がある見事な群像劇。これが作者の中島淳彦の真骨頂なのだろう。そして、歌唱シーンが多いなかで、出演者たちのさすがと思わせる歌の切れ味。シンガーとして活躍する宏菜は文句なしだが、それ以外の出演者の歌唱もとてもよかった。さらに、面白さが途切れることのない演出。これも、青山勝の真骨頂なのでしょう。楽しみにして劇場に来た価値があった。とても満足!

舞台は美空ひばりが生きていた昭和の時代、東京の下町にある居酒屋。主人はレコード会社の金を使い込んでヒットメーカーの立場を棒に振った元プロデューサー(佐藤達)。趣味で始めたような店を、しっかり者の妻(かんのひとみ)が切り盛りしている。そこに、大阪から上京してきた演歌歌手志望の若い女性(宏菜)と義理の兄(佐藤銀平)が「働かせてほしい」と乱入してくる。その直後には女性の姉(山像かおり)もさらに乱入。話は序盤から大変な騒ぎとなる。

複数盛り込まれた、宏菜の演歌歌唱は見事だった。そして、今作が舞台初出演とは思えない落ち着いた演技は次につながりそうだ。そして今作では、かんのひとみが頼りないだんなをしかり飛ばしたり、泥酔したり、多彩な演技を見せてくれる。特に泥酔シーンは恐るべき色気が漂い、迫力があった。
昭和の人情豊かな戯曲は数あれど、中島淳彦ならではの味わいはやはり格別。自分にとって、終幕後に「もう一度見たい」と思わせる舞台は数少ない。今作はその一つとなりそうだ。

燃ゆる暗闇にて

燃ゆる暗闇にて

avex live creative

サンシャイン劇場(東京都)

2024/10/05 (土) ~ 2024/10/13 (日)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★

若い出演者たちの熱演は悪くはなかったのだが、やたらと歌うシーンの多いメインキャスト二人の歌がまだまだ勉強不足という印象。キャラ的には多分大変合っていると思うのだけに残念。女の子たちの歌は声も出ているし、表現力もあったと思う。設定は盲学校だが、舞台上の動きから、それを感じづらかった。

現代韓国演劇2作品上演「最後の面会」「少年Bが住む家」

現代韓国演劇2作品上演「最後の面会」「少年Bが住む家」

名取事務所

小劇場B1(東京都)

2024/10/04 (金) ~ 2024/10/20 (日)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★

『少年Bが住む家』

ある韓国の田舎町、自動車修理店を営む家。母親(鬼頭典子さん)、父親(横山祥二氏)、20歳の息子デファン(八頭司悠友〈やとうじゆうすけ〉氏)が朝食を囲んでいる。変に気遣った妙な雰囲気。向かいの家に引っ越して来た妊婦の奥さん(横幕和美さん)が挨拶に訪れると、慌ててデファンは屋根裏に隠れる。奥さんの職業は講師で父母教育のワークショップの勧誘をする。家族がより良く在る為にはそれぞれの役割を改めて学ぶ教育こそが必要だと。その話に目の色を変えて食いつく母親。胡散臭く思う父親は話を打ち切って帰らせる。ソウルに暮らす28歳の娘ユナ(森川由樹さん)から電話、「サプライズがあるの!」と。帰郷して来るらしい。

韓国のチープな歌謡曲が場面転換ごとに流れる。日本だと昭和50年代位の雰囲気。

少年凶悪犯罪を犯した息子を持つ家庭。地元では白眼視され陰口を叩かれているが父親は意地でも引っ越さなかった。被害者遺族に謝罪したいものの面会を拒否されてそのままに。

鬼頭典子さんは流石の芝居。かんのひとみさんとがっぷり四つで絡ませた芝居なんか観てみたい。
猫背でおどおどした吃りのデファン役、八頭司悠友氏は元弾丸ジャッキーのオラキオっぽい。
横山祥二氏もリアル。生活に疲れ果てた悲愴感。
森川由樹さんは韓国人女性っぽい。パックのシーンが良い。
横幕和美さんは有能なコメディリリーフ。
厳しく冷徹な保護観察官役の藤田一真氏は松岡修造と秋山成勲のブレンド。実にいいムードを作っていた。
少年B役の中田翔真氏は衝撃的なシーンを刻み付ける。デイヴィッド・リンチ作品やラース・フォン・トリアーの『ハウス・ジャック・ビルト』を連想させる狂気。

是非観に行って頂きたい。

ネタバレBOX

作者はイ・ボラム。T-ARAにチョン・ボラムという娘がいて、Bo-Ramという名前は出生当時ヒットしていた『ランボー/怒りの脱出』(Rambo)から父親が名付けたと昔聞いた。他にもボラムという名前はよく見るのでそれか本当だったら凄い話。

14歳、中学生の時に同級生をリンチ殺人したデファン。穴に死体遺棄して少年院に懲役7年。模範囚として一年半早く仮釈放、自動車修理店を営む実家に戻る。毎週保護観察官(藤田一真氏)が面談に来る。父親は自分の仕事を手伝わせて一人前の修理工にしようとする。母親は息子がこんな事件を起こしたのは自分の育て方に責任があったのだとずっと自身を責め続けている。姉は被害者家族が済州(チェジュ)島で暮らすことをFacebookで知り、謝罪の機会を設けようと考える。デファンは事件当時の自分、少年B(中田翔真氏)の幻影に今も悩まされている。少年Bは親友を殺めたデファンを許さない。死んで詫びるしかないと責め立てる。自殺以外に罪を償う方法はない、と。到頭デファンは首を吊る。

詳細がハッキリしないリンチ殺人。仲間達のルールでは家族の話が御法度だった。家族(ヒューマニズム)への愛憎がより残虐な行為を生む。強く在る為には弱い奴を残酷に踏み躙らなくてはならない。ヒューマニズムを克服せねば。

保護観察官の語る、旧約聖書の「ヤコブの相撲」のエピソード。双子の兄を裏切り故郷を捨て社会的成功を収めたヤコブ。数十年後、兄に謝罪して和解する為に故郷へと戻る旅につく。苛まれる罪の意識の恐怖に怯えながら。夜、川の畔で眠っていると突然神の使いに襲われる。夜明けまで一晩中格闘したヤコブは決して諦めず負けなかった。神の使いは「お前の名前は今日からイスラエル(神と闘う者)だ」と天啓を授ける。
ここでの「神」とはどうしようもない「宿命」のことだろう。自分ではどうにも出来ない運命を「これこそが自分の人生である」と受け入れて生きること。それが「神と闘う者」の意味なのだろう。

筋肉少女帯の『戦え!何を!?人生を!』が脳裏に流れ出す。人を殺して服役していた男が出所。絶望の果てにふと灯りが点くように気付く。この全ては自分に与えられた運命だ。何も選びようがなかった。これこそが自分に与えられた役割だ。否も応もなく世界でただ一つ、これが俺の人生だ。自分に割り当てられた宿命を受け入れた時、人は心から自由になる。やるべきことが見える。

デファンは死にきれず病院に担ぎ込まれる。退院後、被害者遺族に謝罪に行きたいと家族に告げる。ただの自己満足か?遺族の心は癒えないよ。それでもデファンは謝罪したいと言う。許されない罪を許して貰おうとは思わない。ただページをめくらなくてはいけない。

いろいろ考えさせられる作品であったことは間違いない。だが作品の完成度としては疑問が残る。それぞれの役に対する役者の作り込みが凄いのだが何か作品全体としてはバラバラに見えてしまう。皆独り芝居で勝手に自分語りをしているような。最高の食材を用意したのだがただ鍋に突っ込んでごった煮にしてしまったような勿体無さ。何か最後までこの家族の物語にのめり込めなかった。一つ一つのエピソードがバラバラにばら撒かれているような。
憧憬の記憶

憧憬の記憶

劇団水中ランナー

ザ・ポケット(東京都)

2024/10/09 (水) ~ 2024/10/13 (日)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★★★

㊗10周年記念 面白い、お薦め。
親と子、兄弟姉妹、夫婦、恋人などのありふれた関係、そして これまた何処にでもありそうな事を点描して、家族や仲間といった大きな輪の中に滋味ある物語を紡ぐ。そこには 現実は厳しいが、それでも人に寄り添い、助け 助けられといった優しい信頼関係が描かれている。物語は大きな事件も事故も起きない、ごく普通の日常が淡々と過ぎていく。しかし点描している事は、1つ1つが身近に起こる内容で他人ごとではない。だからこそ観客の共感と納得を得ており、クライマックスでは場内に啜り泣きが…。さすが 劇団水中ランナー、笑い泣きといった感情を揺さぶるのが実に上手い。秀作だ。

少しネタバレするが、舞台セットがしっかり作り込まれ、物語の情景や状況が瞬時に解る。この家(自宅)は、劇団稽古場兼事務所にもなっており、そこに出入りする人々(劇団員等)と家族の心温まる話。タイトル「憧憬の記憶」は、登場人物一人ひとりの想いに繋がり、テーマそのものになっているよう。そして役者陣の熱演が この物語を支えているといっても過言ではない。それだけ性格や役割をしっかり表(体)現している。
(上演時間1時間50分 休憩なし) 

ネタバレBOX

舞台美術は劇団稽古場兼伊原家居間。本当にそこで稽古や生活をしているような作り込み。正面にソファ、テーブル、上手下手に棚。特に下手のTVは重要。稽古場を思わせるのは正面に過去公演のポスターや北原白秋50音(発声練習用か)が貼られている。

伊原家は父と子(兄弟姉妹)の5人家族、母は亡い。物語は、次女が家を出ている兄と姉に父が認知症になったことを告げる電話から始まる。末弟は知的障碍者で施設に通所している。開始早々 家族が抱える問題を投げかける。そして長男が家を出た理由、嫁に行った長女が出戻ってきた理由など、次々に謎めいた問題が…。そして次女は同居している父や弟の面倒を見、また劇団員であることから その運営に腐心している。さらに自分の恋愛のこともあり心休まる時がない。

特別な事情ではなく、どこの家庭でも起こり得る出来事。その身近な問題を点描しながら、いかに寄り添い見守ることが出来るか。観劇経験が多い少ないに関わらず、解り易い内容になっている。そして心魂揺さぶる泣き、心底優しくなれる笑い、その感情移入させる表現が実に巧い。当日パンフにある「生きている人は生きている人を救う」というテーマがしっかり伝わる。

父の呟き、記憶が無くなることへの寂しさ怖れ、その哀愁ともいえる姿や言葉が心に沁みる。また台詞のない知的障碍者 啓太のリアルさ。物語は この弱き者2人を中心に描き、 家族の今後を優しく見詰めているよう。さて 再演があるかもしれないが…長男が高校生の時に母が亡くなり、その時 劇団で上演していた演目が「憧憬の記憶」。父は、母の手術そして死より劇団公演を優先した。それに対する反発から家を出た。今その父が…。
次回公演も楽しみにしております。
ハムレットのための特別席

ハムレットのための特別席

座キューピーマジック

「劇」小劇場(東京都)

2023/05/31 (水) ~ 2023/06/04 (日)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★★★

感想文『Vol.75 ハムレットのための特別席』
https://gen11.blog.ss-blog.jp/2023-06-08

黒いスーツのサンタクロース

黒いスーツのサンタクロース

座キューピーマジック

「劇」小劇場(東京都)

2023/12/13 (水) ~ 2023/12/17 (日)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★★★

感想文『Vol.76 黒いスーツのサンタクロース』
https://gen11.blog.ss-blog.jp/2023-12-23

僕と私の遠い橋【東京公演】

僕と私の遠い橋【東京公演】

玉造小劇店

シアター711(東京都)

2024/10/08 (火) ~ 2024/10/14 (月)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★★★

一人称の芝居
一人称?観ればわかります
お薦め

アンティゴネアノニマス‐サブスタンス/浄化する帝国

アンティゴネアノニマス‐サブスタンス/浄化する帝国

お布団

アトリエ春風舎(東京都)

2024/10/04 (金) ~ 2024/10/14 (月)公演終了

実演鑑賞

紀元前に書かれた戯曲、そして第二次大戦後にブレヒトが改作した戯曲、そして2016年にお布団の得地弘基によって書かれた戯曲と、長きに渡り紡がれ続ける『アンティゴネ』の物語ーーと言えるかもしれない。近年の演劇界では、こういう「時間軸を超えて複数作家によって描かれた一作」の上演も見かけられる。これもまた、演劇の魅力と言えるかも。

ギリシャ悲劇の『アンティゴネ』を基点に、20世紀、そして21世紀へと受け継がれた、暴力、そして戦争について。

ネタバレBOX

劇中に登場する、とある姉妹が受ける暴力と、その背景にある権力情勢、更に戦争など、直接的な描き方で「人が人へ与える暴力性」を描いている…と感じました。裏を返せば、その暴力から離れる為には?について想像する機会に繋がるかもしれません。劇の内容自体は残忍さが含まれたシーンもあるけれど、見え方は割とドライで、客観的とも言えます。ゲームや音楽など、現代的なモチーフを取り入れたシーンも多く、古代ギリシャから令和の日本まで、長い時間軸を繋げて融合する創作に見えました。
道化師の森

道化師の森

座キューピーマジック

「劇」小劇場(東京都)

2024/05/29 (水) ~ 2024/06/02 (日)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★★★

感想文『Vol.77 道化師の森 座キューピーマジック』
https://gen11.blog.ss-blog.jp/2024-06-03

兄妹どんぶり

兄妹どんぶり

劇団道学先生

新宿シアタートップス(東京都)

2024/10/09 (水) ~ 2024/10/15 (火)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★★★

この手のコメディは下手な人たちがやるとつまらなくてイライラさせられるが、さすがここのプロデュースは違う。面白いだけでなく、各俳優の技量、演出、台本、いずれも高水準のプロの仕事に感嘆させられる。

ピローマン

ピローマン

新国立劇場

新国立劇場 小劇場 THE PIT(東京都)

2024/10/03 (木) ~ 2024/10/27 (日)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★★★

鑑賞日2024/10/09 (水) 14:00

175分。休憩15分を含む。

THE STUBBORNS

THE STUBBORNS

THE ROB CARLTON

三鷹市芸術文化センター 星のホール(東京都)

2024/10/04 (金) ~ 2024/10/14 (月)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★★

ネタバレ

ネタバレBOX

THE ROB CARLTON 18F『ザ・スタボーンズ』を観劇。

三鷹市立芸術文化センターの期待の若手劇団シリーズ。
絶対に面白くないと確信を持ったので、情報を一切得ずに観たのだったが…。

第一部:とある外国の伝統的な建物で、バッソ、ドルベルト、ファロニアが大事な会議を行おうとしている。彼らは将来有望な企業家であり、政治家で、野心満々だ。彼らの共通言語は日本語で、辿々しいながらも言葉を操る事が出来るようだ。
いざ話し合いが始まるが、言葉の意味の取り違えで、会話は混乱に混乱を極め、大事な会議どころではなく、「我々は一体全体何を話しているのだ?」というカオス状態になってしまう。
第二部:その30年後、彼らは社会的地位を得て立派になり、改めて同じ会議室で懐かしみながら当時の思い出話しをするが、各々の曖昧な記憶違いでまたもや混乱に混乱を極め、「我々は一体全体何を話しているのだ?」と同じようなカオス状態が起きてしまう。
第三部:その各々の記憶違いを基に、当時と同じ物語を再現してみると、「一体全体何が起きていたのかが分からない」というカオスにすらならない状態になってしまうのであった。

『日本語の意味の取り違え』『曖昧な記憶』だけをテーマに、人間の混乱の様子を描いている。
たったこれだけのテーマだけで、こんなに面白い会話劇を成立させてしまう戯曲力と演出力に圧倒される。
もう面白いのなんのって、興奮しまくりであった。
追っかけ劇団決定である。
今年のNo.1の予感がする。
お勧めである。

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