「流れる」と「光環(コロナ)」
劇団あはひ
東京芸術劇場 シアターイースト(東京都)
2022/04/03 (日) ~ 2022/04/10 (日)公演終了
実演鑑賞
満足度★★★
当初の「Letters」から改題された「光環(コロナ)」を拝見。ポーの『盗まれた手紙』が下敷きだというので、デュパンのあれかぁと、変に先入観を持っちゃったのは失敗だったかも。
LAST RENTAL VIDEO
!ll nut up fam
萬劇場(東京都)
2022/04/06 (水) ~ 2022/04/10 (日)公演終了
実演鑑賞
満足度★★★★★
鑑賞日2022/04/08 (金) 14:00
タイトルとあらすじ、そしてCoRichに載っていた画像を見た限りでは、落ち目の現代のレンタルビデオ屋を舞台として、そこに行き来する店員と個性的なお客さんたちが織り成す、バカバカしくも儚いシチュエーションコメディなのかと予想して、実際に観に行ってみたら私の予想を良い意味で裏切ってくれて、予想外の展開にただ、ただ、目を見張り、いつの間にか魅入っていた。
主人公たちは、レンタルビデオ店に並べられている借り手が現れるのを今かいまかと心待ちにして、ただそれだけが生き甲斐の擬人化されたレンタルDVDの作品たちという、同じ擬人化でも、かなりコアなところに目を向けて、そこに着眼点をおいて、そこを主体に話が始まっていく展開に、脚本家の眼の付け所が良いと思った。
擬人化されたレンタルDVDの作品たちに、それぞれに猛烈な個性や見せ場を持たせ、更に、レンタルDVDの作品たちのなかの一部のものがこのままここに居ても、お客さんも少ないし、ほとんど借りられないぐらいだったら、外の世界に飛び出そうと言って、飛び出していくもの、また一部のレンタルDVDの作品たちは他のDVDを殺していけば必然的に自分たちが選ばれるだろうという危険思想のもと、次々に狂気の行動に駆り立てられて、取り返しのつかない自体になっていくものたちなど、物語は一筋縄ではいかない、スリルとサスペンス、不安と恐怖、そしてかなりの笑える要素、シリアスなシーンであっても、急に笑いに持っていったりする強引さなども含め、劇の世界に圧倒され、時に緊張し、引き込まれた。
レンタルビデオ屋がサブスクなどに人気を奪われて、閉店に追い込まれていく現状、漫画や雑誌に、本などが矢継ぎ早に電子化されていくことを手をこまねいて見ているしかない現状、世の中は進化していくからそれも仕方のないことかもしれない。だが、そうやって人間が自分たちでせっかく創り出し、売って、買っていくモノをそう簡単に、無造作に手放したり、捨てたりすることが出来てしまう。これはあまりに俺たちモノを創り出し、市場に出回らせた人として、無責任なことじゃない。俺たちをどうするかをちゃんと考えてから、判断しろよというような、劇の最後のほうの場面で、レンタルDVD作品たちのうちのスパイ映画の主人公の吐く台詞には身をつまされる思いがして、思わず感涙してしまった。
レンタルDVDを借りに来るカップルの恋人役を演じる役者が、平常のキャラから急にドSになるあまりのキャラ変の変わりぶりように驚き、それをさり気なくやりきった俳優が見事だと感じた。また、レンタルDVDの作品たちのうちの頭脳明晰な探偵キャラを演じる役者が、豹変して狂気な殺人鬼に成り代わるまでのあまりの変化に、すごい意外性を感じ、良い意味で言葉を失い、我を忘れ、ただ、演技に魅入った。
貧乏物語
こまつ座
紀伊國屋サザンシアター TAKASHIMAYA(東京都)
2022/04/05 (火) ~ 2022/04/24 (日)公演終了
実演鑑賞
満足度★★★★★
鑑賞日2022/04/08 (金) 14:00
座席1階
河上肇の「貧乏物語」は社会福祉の教科書にも登場する、日本で本格的に貧困を取り上げた歴史的名著だ。社会福祉の教科書に出るのは、今も格差社会が広がっており、社会福祉に携わる者はこれが100年も前から日本に横たわる大きな課題であると知っておく必要があるからだ。こまつ座が24年も前にこれを舞台にしていたとは知らなかった。四半世紀を経ての再演を、新鮮な気持ちで見た。
今作「貧乏物語」の舞台では、筆者の河上肇は逮捕されていて家にいない。登場するのは河上の妻、二女を始め全員が女性だ。特高警察が河上を転向させようとあの手この手で圧力をかけてくる中で、河上の家で働く女中や、同様に当局からにらまれている新劇の女優などそれぞれ強い個性がある女性たちが織りなす多彩な会話劇が、この舞台の核心である。
今回、登場人物そのものではないかという配役の妙を称賛したい。特に、出戻ってくる女中で剛毅な性格の女性を演じた枝元萌と、当局の横やりで上演をつぶされ、初舞台が何度もフイになっている舞台俳優を演じた那須凛が見事である。青年座の那須は自分がイチオシの「横浜短編ホテル」にも出ていた(とパンフレットに書いてあった)。同じ青年座の松熊つる松も切れ味鋭い演技で客席の視線をくぎ付けにした。
タイトルを「貧乏物語」としている戯曲だが、牛鍋やウナギ飯なども登場して面白い。舞台はテンポよく進み、2時間の上演時間は客席の集中力の点からもちょうどいい。
そして何よりもロシアや中国での言論統制のニュースが席巻する今、言論や思想の自由を守り抜くことが、格差社会ではあるが自由な生活をとりあえず維持できる日本社会に不可欠であることを、今作は教えてくれる。
S高原から
青年団
こまばアゴラ劇場(東京都)
2022/04/01 (金) ~ 2022/04/24 (日)公演終了
実演鑑賞
満足度★★★★
鑑賞日2022/04/07 (木) 19:30
平田オリザ/青年団の代表作の1つ。高原のサナトリウムで療養する患者たちと、医師・看護師や見舞い客による会話劇。103分。
1999年に青年団で初演され、同劇団や他のユニットでも何回も上演されている作品で、私も何回か観たことがあるが、今の時期に上演されると、ちょっと違ったテイストになる。ちょっとしたセリフ回しや表情で、ああこうなんだろうなぁ、と予想される関係や感情が徐々に明らかになるという、極めて演劇的な舞台で、以前観たときよりも歳を取ったせいか、死を考えているようで避けてる患者たちの気持ちがよりよく分かるようになった気がする。
第73回「a・la・ALA・Live」
a・la・ALA・Live
座・高円寺2(東京都)
2022/04/07 (木) ~ 2022/04/07 (木)公演終了
実演鑑賞
満足度★★★★
芸達者な女性4人のバラエティーショー、大いに楽しめました。個人的には、パフォーマーではみまさんが、演目では講談が印象深かったですね。
LAST RENTAL VIDEO
!ll nut up fam
萬劇場(東京都)
2022/04/06 (水) ~ 2022/04/10 (日)公演終了
トリップ・オン・アンダーグラウンド
合同会社AIP
シアターKASSAI【閉館】(東京都)
2022/04/06 (水) ~ 2022/04/10 (日)公演終了
実演鑑賞
満足度★★★★★
鑑賞日2022/04/06 (水) 19:00
凄く面白かった
麻草郁さん脚本の「居酒屋タイムスリップ」はコメディと銘打ってますが、心にずんくる作品だったし
細川さん脚本の「コレスポンド」はハードボイルド的な良さとアメリカンな感じがあって凄く素敵な作品
ただ観劇慣れした人向けに印象を受けた
第73回「a・la・ALA・Live」
a・la・ALA・Live
座・高円寺2(東京都)
2022/04/07 (木) ~ 2022/04/07 (木)公演終了
LAST RENTAL VIDEO
!ll nut up fam
萬劇場(東京都)
2022/04/06 (水) ~ 2022/04/10 (日)公演終了
実演鑑賞
満足度★★★★
表層的には面白いが、主体がRENTAL VIDEOという”媒体”というところが難。これがVIDEOの作品そのものを捉えていれば、違った描き方になるだろう。
物語は、流行らないレンタルビデオ店に足繫く通うカップル、借りたVIDEOを楽しく鑑賞する光景。一方、閉店後に借りられなかったVIDEOの諦念、憤懣が漏れる。個性豊かに擬人化したビデオは作品イメージ、例えばミュージカル、極道、怪獣映画の衣装や雰囲気を醸し出す。そして呟く…RENTAL VIDEOは借りて観てもらえなければ意味がない、そこに存在意義があるという。VIDEO達がとった行動や行為が人間臭く変転していくが…。
終盤になると、”媒体”そのものが(価値ある)主体のような描き方に変わるが、本来は映画(作品)自体がメインになるのではないかと。物語として上手く流れていたのだろうか。ここで少し混乱(自分の思考力が硬化したか?)。
映画の歴史は100年以上で、いまだに多くはフィルム作品。しかしフィルム映画は、一般家庭での設備や取扱で鑑賞することが難しい。フィルムは、国立アーカイブ等で適切に管理し映画(作品)の保存に努めている。一方、デジタル化が進み、VIDEO媒体で家庭での映画鑑賞が容易になった。作品の選好によってレンタルされる頻度が異なるのは当たり前。終盤は、RENTAL VIDEO店の衰退を通じて 人間が製作した媒体(物質)の要・不要、もっと言えば文明批判に話が変容していく、と観せかけて…。
(上演時間2時間 途中休憩なし)
LAST RENTAL VIDEO
!ll nut up fam
萬劇場(東京都)
2022/04/06 (水) ~ 2022/04/10 (日)公演終了
広島ジャンゴ2022
Bunkamura
Bunkamuraシアターコクーン(東京都)
2022/04/05 (火) ~ 2022/04/30 (土)公演終了
実演鑑賞
満足度★★★★★
単純なコメディで終わらないところが良かった。
あらすじに書いてある鈴木亮平が馬になるという不思議な設定が違和感なく受け入れられたので良かった。
1幕は割と普通だったが、2幕から物語に引き込まれた。
「流れる」と「光環(コロナ)」
劇団あはひ
東京芸術劇場 シアターイースト(東京都)
2022/04/03 (日) ~ 2022/04/10 (日)公演終了
実演鑑賞
満足度★★★
『流れる』
高尚で難解なスカした会話の応酬で観に来たことを後悔させる、批評家狙いの張りぼて作品ではない。能の『隅田川』だとかほぼ一切関係ない。鈴木清順やキアロスタミ(『風が吹くまま』)、ATG映画なんかの手触り。奇妙だが心地良い世界。台詞が断トツに秀でている、ギャグ満載の絶妙な遣り取りの会話劇。
「ああ え? は そう はあ そうか」。
予備知識として『鉄腕アトム』の設定だけ知っておいた方が良い。科学省長官であり天才科学者の天馬博士の息子、飛雄が交通事故死。彼は息子そっくりのロボット、アトムを作るもやはり息子の代わりにはならず、ロボットサーカスに売り飛ばしてしまう。
松尾芭蕉役上村(かみむら)聡氏、鈴木浩介の雰囲気で何処かロンブーの淳っぽくも見える。目を大きく見開いて唖然とするアメリカンなリアクションに観客もどっと受ける。とにかく自然な口調がジャズのベースのよう。
河合曾良(そら)役中村亮太氏、その辺の大学生そのまんま。リアルで憎めないキャラ。
謎めいた女役鶴田理紗さん、乗船券の売り切れた渡し船に乗りたがる。何を思っているのか皆目見当が付かない。
天馬博士役踊り子ありさん、『どッきん☆どッきん☆メモリアルパレード』で演じた鮮烈なヒロインが記憶に新しい。会話の受けが見事。
アトム役古瀬リナオさん、148cm でまさに子供のよう。歩き方、動作、会話がロボットそのもので目を奪われる。この役は難しい。
話は旅に出ようと船を待つ芭蕉と曾良が喫煙所にいるとチケットを探す女が現れる。向こう岸では慰霊祭、船はなかなか出航しない。
かなり面白かったのでもう一本の『光環(コロナ)』も観たかった。何の先入観も持たず目の前の遣り取りを味わった方が楽しめる。取り留めのない会話と間だけでこの空間に魔法をかけてみせた。
第73回「a・la・ALA・Live」
a・la・ALA・Live
座・高円寺2(東京都)
2022/04/07 (木) ~ 2022/04/07 (木)公演終了
実演鑑賞
満足度★★★★★
これは芝居ではありません。様々なジャンルのパフォーマンスが一堂に会するアラカルト、大道芸です。色々な芸が、4人のパフォーマーよって演じられました。
・Spring has come・・荒山昌子《一人芝居》
・みま1・・みま《オペラ座の道化師》
・Dancing generation・・荒山昌子
・いま、~improvisation 女生徒~・・バーバラ村田とアラライズ《パントマイム》
<休憩>
・講談・・神田織音《講談》
・みま2・・みま
・Refresh season・・荒山昌子
・みま3・・みま
・Reborn・・荒山昌子
「みま」の3回のパフォーマンスに感動。曲目は、「乾杯の歌」『椿姫』より、「オー・ソレ・ミオ」、「夢やぶれて」『レ・ミゼラブル』より。「聖者の行進」、「トルコ行進曲」。「誰も寝てはならぬ」『トゥーランドット』より、「夜の女王のアリア」『魔笛』より。「乾杯の歌」の1人二重唱に驚き、「夢やぶれて」では自身の人生に重ね、持参の新聞紙を破きます。しかし、それはマジック、破れていない、「自分の夢」は破れていないのです。上手い! 難曲と言われる「誰も寝てはならぬ」、「夜の女王のアリア・復しゅうの心は地獄のように胸に燃え」、歌が巧いだけで無く、十分演技で笑わせるのでした。
第73回「a・la・ALA・Live」
a・la・ALA・Live
座・高円寺2(東京都)
2022/04/07 (木) ~ 2022/04/07 (木)公演終了
実演鑑賞
満足度★★★★
とても面白かったです。女性4人の全力のパフォーマンスでした。
一人芝居、講談、パントマイム、オペラ、色々なジャンルを観る事が出来て良かったです。
個人的には、オペラの「みまさん」が、話も面白く、歌声が素晴らしくて、とても印象的でした。
笑って笑って、楽しい時間を過ごせました!
紅の旗【終演しました】
Cheeky☆Queens
in→dependent theatre 2nd(大阪府)
2022/04/07 (木) ~ 2022/04/11 (月)公演終了
満足度★★★★
コロナの大変さを再確認。メンバーは全員泣いてた😭僕ももらい泣き。(ストーリーは泣けるものではない)殺陣好きには楽しめる。ストーリーもそれなりで、あれだけ大勢の役者が舞台に立つのは圧巻。楽しめました‼️
第73回「a・la・ALA・Live」
a・la・ALA・Live
座・高円寺2(東京都)
2022/04/07 (木) ~ 2022/04/07 (木)公演終了
実演鑑賞
満足度★★★★★
鑑賞日2022/04/07 (木) 19:00
4月7日(木)19:00開演のa·la ♪ALA ♪ Live あ·ら ♪ あら ♪ らいぶ 第七十三回 2022年という、言うなれば、現代版の寄席を座·高円寺2というところで観てきました。
ボヤき芸に、どう見ても若くはないのにキャピっとした感じを全面に押し出したイタさ全開の笑い、ネガティブで生真面目だが、どこかズレている女性と、ポジティブでハイテンションな女性という、全く性格が違う人物を一人で演じ分け、二人のキャラのあまりの違いを誇張しての笑いなど、休む間もなく笑えて、お腹がよじれるぐらい笑えて、日々のストレスも吹っ飛ぶぐらい面白く、飽きなかった。また、二人の全然性格の違うキャラクターを見事に演じ分けていて、感心してしまった。
第1部途中や、2部の最初や途中にところどころ出てくる《オペラ座の道化師》みまなる人物による、しつこい笑いや自虐ネタなどによる笑いで、徹底的に笑わせられつつ、いざオペラを歌い始めると、それが格段に上手過ぎて、心底聞き入ってしまい、その音階の使い方などの超絶技巧に感心してしまった。
第1部のトリを飾ったパントマイムと朗読を組み合わせたバーバラ村田と、それに音楽で協力する出演者3人とが見事に息があっていて、そのジャンルの違う人たちが共演すること、パントマイムと朗読、そしてダンスに音楽という組み合わせが次第にシンクロしていくことで、舞台上に現代アートパフォーマンスと言って良いものが出現し、思わず目を見張り、ただ、ただ、感嘆した。また、朗読しつつ、踊るバーバラ村田が、その踊りもさることながら、太宰治作『女生徒』の少女の悩みや葛藤、大胆な部分や儚さ、太宰作品特有の自分探し的なところや淡々とした独白、耽美な雰囲気などを声質に強弱をつけたり、表情や手足や肉体全体をダイナミックに動かしたりして、太宰独特な世界観を醸し出していて、思わず、魅入ってしまった。
第2部最初の講談も、女性の講談師だったが、マクラで、現代の仮想現実の話を導入したりしながら、明るく、面白く、話をしていて、講談を普段ほとんど観に行かない私でも講談の世界に入って行きやすく、親しみやすかった。本題の講談も、赤穂浪士のうちの一人に焦点を当てており、一見堅苦しい話になるかと思いきや、舟渡したちが女形の歌舞伎役者と勘違いして本物の赤穂浪士の侍にいちゃもん付けて、詫び証文まで書かせるという、肩の力を抜いて楽しめ、更に廻船問屋親方の娘で、荒くれな船頭衆を取りまとめるお市といい、腕っぷしも強く、歯に衣着せぬ物言いという女性がキャラが立っているうえ、格好良く、女性講談師のこ気味の良い江戸弁も癖になり、物語に自然と引き込まれた。
第73回「a・la・ALA・Live」
a・la・ALA・Live
座・高円寺2(東京都)
2022/04/07 (木) ~ 2022/04/07 (木)公演終了
実演鑑賞
満足度★★★★
今日観させてもらいました。もう70回位開催されてるライブらしくて、30回観てくれたお客様に感謝の記念品が渡されました。
良かったです。
初めてのライブでしたが、荒山さんは東洋館で結構観覧していましたね。神田織音さんは前から知ってたし、バーバラさんも存じていました。初めてみたみまさんがとても新鮮でした。本格的な発声でビックリしました。
有難うございました。
新パラシュート
平石耕一事務所
シアターX(東京都)
2022/04/07 (木) ~ 2022/04/10 (日)公演終了
実演鑑賞
満足度★★★★
九州北部(佐賀の武雄)の旧家の、戦争中から戦後10年までを描く。次男継男(三國志郎)の婚約者がグラマンの機銃掃射で死んだ、そのグラマンは撃墜され、パイロットはこの家の祖母(内田尋子)の尽力で殺さずに捕虜にした。長男は嫁を残して出征中。継男は徴兵拒否して出頭するが、軍部隊副官の叔父(桑島義明)の力で精神病とされ、特高(鈴木正昭)の監視下に。
深刻な話だが、芝居は明るい。女たちのおかげである。継男の怖いもの知らずの理想主義のせいもある。ただ戦争中なのに軍人や特高の威圧感がなさすぎる。スクリーンに切り取られた映画はいいが、客席と地続きの舞台で、戦争中の空間を現出させるのは難しい(それとも、戦争を特別視しすぎだろうか)。井上ひさし「きらめく星座」や宮本研「反応工程」の達成の貴重さがわかる。
二幕の戦後になると、この明るさが生きてくる。継男はいまや英雄になっておかしくないが、相変わらず、保守的な家のなかの異分子で「ふうけもん」「冷血動物」扱いされている。この異分子と、元軍人が同じ家でぶつかって、芝居の軸をつくる。低い声で重きをなす母(二瓶美江)もよかった。継男の隠れた地主意識を、理解者である元小作の加代子が、我慢しきれずにグサッと指摘して言い争いになるのもアルアルだ。
80分、休憩10分、60分の2時間半
2番目でもいいの♡
劇団ズッキュン娘
新国立劇場 小劇場 THE PIT(東京都)
2022/03/24 (木) ~ 2022/03/27 (日)公演終了
実演鑑賞
満足度★★★
鑑賞日2022/03/25 (金) 19:00
座席D1列05番
2014年の初演両キャスト、2015年の再演に続き通算4度目となるが待子が身勝手に感じられなかったのは改訂のためかこちらの意識が変わったためか?
クライマックスの論戦は妻・不倫相手としてのそれぞれの愛に説得力がありどちらも悪くないように感じてしまう。
そしてそれはつまり不倫をしたシゲちゃんが悪いということで、男性観客として居心地が悪いったら……(笑)
また、この会場・この料金ゆえのキャスト・衣装・装置・照明効果なども見事。ただ、小劇場系観客はもちろん、アイドル系出演者のファンにとっても8000円という価格はハードルが高かったようで空席が目についたのは残念。
いつかのっとかむ
パンデミック・デザイン
元映画館(東京都)
2022/04/07 (木) ~ 2022/04/17 (日)公演終了
実演鑑賞
満足度★★★★★
鑑賞日2022/04/07 (木) 14:00
座席1階
東京・三河島(荒川区)で約30年前に閉館した街の映画館がイベントスペースとして復活した、その名も「元映画館」。銀幕も映写室も客席の分厚い扉も当時のまま残されていて、改装ではこうした「遺産」を大切に生かしている。「いつかのっとかむ」はこの「元映画館」を最大限活用した、演劇と映画のハイブリット舞台だ。
観客はチケットを手に入れて開演前に並ぶのは他の公演と変わらない。ただ、開演時間が迫っても観客はなかなか中へ入れない。客席の扉の向こうから「ちょっとトラブルが起きまして」と説明がある。実は、この公演はこの場面から既に、始まっているのだ。
観客は、自主制作映画を見に来た観客として振る舞うことになる。振る舞う、と書いたのは観客として舞台に参加する形になるからだ。物語は、自主制作映画の上映会で、主催の女性「いつか」さんが現れないといってスタッフが慌てているところからスタート。この「いつか」という女性と友人たちの、小学校時代からのつながりや思い出の場面などを織り交ぜながら、「今を生きる瞬間」を味わい、思索する舞台となっている。
銀幕は上映会の映画が途中で止まってしまうところまで「映画館」として使われる。役者たちは客席の周りで動き、まさに「舞台」は目と鼻の先。小劇場は客席と舞台の距離が近いが、本作では舞台と客席の境目がないのだから、観客に間近で見つめられる役者側の緊張感が手に取るように分かる。
日野祥太によると、客席と舞台の境目をなくして演劇が「隣にある」空間を作るのがスタイルとのことで、これまでもカフェなどを会場に上演してきたという。「街は劇場だ」と言った演劇人はこれまでもいたと思うが、映画をテーマに元映画館という会場で演劇を上演するというアイデアはなかなかのものだ。このハイブリッド舞台の世界観に、客席は魅せられていく。
会場に張られた映画のポスターなど、「芸が細かい!」と感心するほどのアイテムが散りばめられている。そういう仕掛けを確認していくのも、この舞台の面白さだろう。また、別のチケットを買うことで、本作で途中で止まってしまって見られなくなった映画を最後まで鑑賞することができる。