最新の観てきた!クチコミ一覧

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阿呆ノ記

阿呆ノ記

劇団桟敷童子

すみだパークシアター倉(東京都)

2024/06/04 (火) ~ 2024/06/16 (日)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★

九州の山奥にある阿呆村。そこでは捨て子や孤児、罪人の遺児等を古来より寺で養う風習があった。そして自然災害や疫病、飢饉・干ばつでの祈祷、建造物建立の安全の祈願の折りに阿呆丸と呼ばれたその子供達を各地に連れて行く。人柱や生贄、人身御供として天に捧げた。明治になって刑法が整備され、この風習は禁止される。解放された阿呆丸達は死に場所を探して山奥を彷徨っているという。この設定だけで凄まじく面白い。

昭和12年、日中戦争の激化から軍国主義に滑り落ちていく時代。村人は鉄道工事に駆り出され、山は切り崩されていく。代々猟師の一族である、音無美紀子さん、その息子である鉄砲衆頭・三村晃弘氏、孫である加村啓(ひろ)氏の物語。子を産んですぐ亡くなった妻を今も愛し続けている三村氏。そんな息子の嫁として隣村から大手忍さんを貰ってくる音無さん。勝手なことをされて怒る三村氏だったが・・・。

MVPは女頭目・音無美紀子さん。文句なしの素晴らしい存在感。
ヒロインの大手忍さんも魅力的、永遠の少女性。もう少しガタイがガッチリしていた方が作品的には合ったかも知れないが。
もう一人の主人公、加村啓氏も印象的。劇団Q+の『マミーブルー』も覚えてる。寺山修司系の森田剛っぼい感じ。アングラ・イケメン。

神社のおみくじのように赤い紐が無数に木々に縛り付けられている舞台美術。
ドイツのモーゼル(マウザー)銃、Gew(ゲヴェーア)98のフォルムが作品の文鎮と構える。
桟敷童子フォークロアのアーキタイプを見せつけるかのような作品世界。常連客はいろんな既視感にとらわれる筈。
好きか嫌いかと聞かれたら、大好き。
是非観に行って頂きたい。

ネタバレBOX

作中、一番興奮したのが阿呆丸の三人が素顔をさらしたシーン。板垣桃子さんだったのか!今回出ないんだな、と思っていたら実はファースト・シーンから出ていた。

何処かにいるのかいないのか、阿呆丸へのお供えとして砕いた根っ子を丸めて作る不味い饅頭。包んでそこらに赤い紐で吊るす風習。舞台美術の正体はこれだった。余りに不味い為、動物達も食べない。こんなものを食おうとするのはそれこそ人間ぐらいだ。

戦争を広義の生贄と捉える発想が面白い。常に誰かの犠牲でこの世は成り立っている。死ぬ機を逃した阿呆丸共よ、生きて生きて生きて自分の役目を見付けて果たすのだ。死ぬにも役割がある。果たさずして死ぬことなど許されない。

※ホンは継ぎ接ぎだらけでどうにも不格好。大手忍さんが登場するまでは茫洋、ぼんやりとした作品世界。後半は女性版『獣唄』のようにも思える展開。だが雑すぎる。いや、いろいろと今作は凄く好きなだけに勿体無い。本当は全く演劇観ない奴に「これ、絶対観てくれ!」と伝えたい気持ち。でもこのままじゃ何か薦め辛い。マニアがニヤリではなく、圧倒的に開かれた作品であって欲しい。この劇団はマジで観劇一発目にふさわしい存在。老若男女、そして外人にも伝わる破壊力を秘めている。だからこそ脚本の細部を詰めて欲しい。とんでもない傑作にならないと今作はおかしいネタ。とにかく勿体無い。
こどもの一生

こどもの一生

あるいはエナメルの目をもつ乙女

王子小劇場(東京都)

2024/05/15 (水) ~ 2024/05/19 (日)公演終了

映像鑑賞

満足度★★★★

配信映像で鑑賞。観たかった中島らもの本戯曲をやっと拝めた。
蓋を開けると、凡そ元脚本から想像のつかないようなメタル調の設えで、音楽、踊り、衣裳、演技のタイプも、グロい方に寄っている。が、これはこれで本バージョンの色が貫徹され、成立。
一方自分が感じたいと思っていた作家の作風は俳優が喋るテキストから汲み取っていた。
「こどもの世界」の描写が秀逸。これは中島らもの引出しだなと感じさせる。
色々とチクリやってる台詞がちりばめられていて気がするが、芝居の作り的にはそこはさらっとさり気なく流してる感じ。

正直な感想は、もっと普通にというか、人間のリアルな佇まいを提示し、その口からあの台詞たちが吐かれるのを見たかった。その方が面白いに決まってる。本舞台の演技とは比較にならない緻密な演技にはなるが、彼らも役者の本領をそのように発揮したかったのでは?(演出ディスりになってしまうが。)

泥人魚

泥人魚

劇団唐組

花園神社(東京都)

2024/05/05 (日) ~ 2024/06/09 (日)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★★

この日は別の芝居を観た後、思いの外短い芝居だったので「この足で花園間に合うんじゃね?」 と電車を調べたら19時10分前には行ける。恐らく当日券は出すだろう(一応劇団電話に電話するも出ず)と踏んでちょうど大雨の降る中を「ちょっとドラマチックだな」と悦に入りながら向かった。
そう言えば唐組を観始めた頃もあったな、と久々の立見を覚悟して受付窓口で当日券購入。テントの最後尾の出入口はどうやら今回役者は使わないようだ。その少し前あたりに小劇場演劇の重鎮さんが丸椅子に座り、芝居を見ながらやたらと笑っていた。他にも何人か演劇人が居たな。。
という訳で、コクーンや梁山泊でも(確か)観たこの有明海ギロチン堤防を題材にした演目を、改めて味わい直す事に。

お祭り好きだった唐十郎を弔うかのように?テント内は熱気でにぎわい、舞台共々笑いが絶えず。一方自分は改めてこの戯曲の言葉を割と冷静に追いかけていた。
「ほっぺ」と言ってるのか「ほうべ」と言ってるのか、本戯曲の幾つかのキーになるワードの一つは最後まで不明のままだったり、ガンさんと二郎とヤスミともう一人の女性の関係も結局のところ、これだけ耳をそばだてて聴いても分からずじまい。以前観た時の印象と同じくであるが、台詞で状況を説明する分量がえらく大きいのが本作の特徴だ。湯たんぽを作っているトタン板の工場を舞台に、遠く離れた有明海での事が(なぜ皆ここに集まって来てるんだか分からないが)延々と語られるのである。この「言葉で状況や情景を説明する」比重は元々唐作品には多いとは言え、本作は中々の比重なのである。
この作品は人間の無策で無思慮の産物のようなあのギロチン堤防が人間と「人魚(のような存在)」に象徴される生物、その両者の関係に悲しい物語を引き起こす、という大括りの構図を感じさせるが、唐流の幻想譚は本作に限っては、現実を抜け出た先の彼岸を像として結晶しない。幻想が幻想の世界のままに終わる(自分の連想力が及ばないとも言える)。自分の中で「ギロチンは怪しからん」と結論を持っているからだろうか・・。現実において目を見開く事を要請されるより、幻想の中に眠る以外ない、となる。
てな事言ってもテント公演の主眼はお祭りなのである。掛け声が飛び、拍手と笑いが起き、爽快な気分で劇場を去る。それでいいと言われればその通り。状況劇場によく同行した劇評家扇田昭彦氏が亡くなった時唐十郎が訪れ「また楽しいことやろう」と死に顔に囁いたのだとか。楽しんだ者勝ちだ、ってのは強いメッセージだ。

スマイル フォーエバー

スマイル フォーエバー

熱海五郎一座

新橋演舞場(東京都)

2024/06/02 (日) ~ 2024/06/27 (木)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★★

鑑賞日2024/06/03 (月) 13:30

座席1階

公演中に87歳になる伊東四朗が登場。NHKドラマ「老害の人」でも見事な主役を務めた印象が強く、そのレジェンドを生で見るだけでも行く価値があるのかも。三宅裕司が若手に見えてしまい、いつもと違う熱海五郎一座を楽しめる。

サブタイトルに「魔法」とあるが、舞台美術など「ハリーポッター」のパクリというのがまず、目を引く。前段から魔法学校のシーンが登場するが、一座のやや高齢の役者たち(渡辺正行や小倉久寛ら)が学ぶのは「定時制」となっていて、これが秀逸なパクリなのである。では、校長先生はダンブルドアかというと、これが若い女性なのだが、せりふの端々に昭和でないとわからない単語が登場し、若返りの魔法を自らかけているという落ちも強烈だ。
ゲストの松下由樹は都知事の役。役名からして小池百合子のパクリであるのは一見で分かるが、都知事室のツタンカーメンの飾りは何だ。これは小池知事の「カイロ大学卒業疑惑」を笑っているというのも一発で分かる。この舞台で笑い所の数は星の数だが、一番笑えるのは小池知事を揶揄したギャグであるのは間違いない。現実世界では都知事選も近い。はたして本島に出馬するのか。最後の方は、松下由樹が小池百合子に見えてくる。ここはさすがの名女優と言わざるを得ない。

主役の伊東四朗は冒頭から登場し、いつものゆっくりとした調子で立ち回る。突然黙ってしまうところが何度もあるが、これはせりふが飛んだのか、あるいはそういう台本なのかは見ていても分からない。仮に飛んだということだったとしたら、周囲の役者が絶妙にカバーしているからである。喜劇のレジェンドへのリスペクトがあふれている。
老齢をギャグにしたところはあまりなくて、そこは少しホッとしてみていたら、後段でちょっと驚かされる場面もある。本人がどう思っているのかは分からないが、死ぬ瞬間まで喜劇役者でいるぞという決意表明にも見えた。

昨日が初日。千秋楽は今月27日で連日のように公演がある。この長丁場をレジェンドが無事に駆け抜けていくのかどうか。お体を大切に、頑張ってください。

破壊された女

破壊された女

お布団

サブテレニアン(東京都)

2024/05/23 (木) ~ 2024/06/02 (日)公演終了

実演鑑賞

俳優による一人芝居のWキャスト公演。出演俳優によって観客の印象が結構変わる作品では…と思います。残念ながら僕はA公演のみ観劇。初演は2019年で5年ぶりの再演、とのこと。

一人の「女」が、見聞きしたこと、体験したこと、自身のこと、頭の中に流れる感情、などを交えて語る、「現在の社会」と「破壊」について。空気感は徹底的にドライ、そして、虚無と絶望に溢れている。ブラックボックスのコンパクトな空間で、俳優一人、映像、照明というシンプルな構成。そこに圧縮されていたのは、今日の日本が抱える「停滞」だと感じた。

ネタバレBOX

まず、空気感がとても好きです。虚無、そして絶望。真面目に、全うに生きていたらこうなりますよ…という、社会に対する諦念。個人的見解も含むが、現代日本人として共感できる空気が場内にあった。このドライな視点、社会や作品の見つめ方が、いかにも演出家っぽいし、得地弘基さんらしいテキストだと思う。その上で、社会や現代に関する怒りの感情が、爆発するでもなく、他者に差し水されるでもなく、自分の中で暴発するでもなく、ひたすら自然鎮火に近い形で消えていく様が、とてもはかなく、複数の感情が心に浮かんだ。
ピテカントロプス・エレクトス

ピテカントロプス・エレクトス

劇団あはひ

東京芸術劇場 シアターイースト(東京都)

2024/05/24 (金) ~ 2024/06/02 (日)公演終了

実演鑑賞

会場に入ると、アクティングエリアの中央に穴(奈落)が開いていて、その四方をカラーコーンで囲っている。客席はその穴から距離をとり四方に設置され、穴を取り囲むような状況に。ゴリラっぽい着ぐるみを着た人が場内にいるが、作品タイトルから演出の一部と想像。この穴がタイムホールのように時間を繋ぐ存在となっており、穴を通して前時代(と言っても何万年単位だけれど)の「祖先」と対話する。類人猿からヒトへの時間を辿りつつ、その進化の過程から「知的生命における、生物的、あるいは社会的進化とは?」を見つめ直す…ような作品に、僕には見えました。

ネタバレBOX

穴を中心に、時間軸が「層」になっているイメージ。舞台上(地表?)が現在として、その上下が未来/過去。時間軸や時代を超えた対話に、その時代ごとの価値観やギャップが反映されて興味深いのは、歴史ドキュメンタリーや歴史ものの創作物が証明しているところ。物語は終盤で急展開し、2024年現在の社会批判を色濃く見せます。そこが団体が力を入れて創作したポイントであることは理解でき、その内容の是非は観客個々人によって異なるでしょう。

ただ、視覚的な意味で、今作に惹かれたか? と問われたら、僕は首を横に振ります。音声ドラマでもある程度成立してしまう?と思えるほど、視覚的な意味は少なかったと思う。穴のアイディアなど、創意工夫していることは理解できますし、テキストは鋭いものが多かった。それだけに、視覚的な意味合いでも観客を魅了して欲しかった。音声ドラマ、あるいは朗読劇のように、視覚情報を限定してしまった方が、より想像力が働く内容だと感じました。
ライカムで待っとく

ライカムで待っとく

KAAT神奈川芸術劇場

KAAT神奈川芸術劇場・中スタジオ(神奈川県)

2024/05/24 (金) ~ 2024/06/02 (日)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★★★

観劇直前にキャストが初演と変わっている事に気づいた。演出、脚本と長塚氏の対談がKAATサイトにあってながら見をしたが「若干、俳優が変った事で台詞を変えた」「装置も微妙な所で変わってる」、と言っていた。
初演は下手側中段あたりから観た記憶。今回は最前列ど真ん中。(実は少し前完売だったので当日一か八かで・・と考えていたら、楽前日昼夜とも空席が出ていた。)
観始めると、風景が違う。劇の感触も違う。まず亀田佳明が中山裕一郎に。このドラマの中心的な「目」である記者の存在が、コメディ色を帯びて安心させる亀田氏が、どちらかと言えば朴訥なキャラにシフト。(亀田氏は新国立「デカローグ」1~10話に通しで出演する唯一の俳優のため元々無理であった由。)
変更になったもう一名が、沖縄に飛んだのっけに乗るタクシーの運転手(劇中では「事件」の主要登場人物の一人に)。初演では30代の飄々とした風情の役者で、この芝居のナゾめきの空気を担ってもおり、とりわけ最初のタクシー場面では客(記者)を翻弄する振る舞いで笑いどころ多め、劇の始まりの緊張を解き、沖縄場面(過去と現在、あるいはどっち付かずとある)の風景と観客はニュートラルに対面する事となった、と思うのだが、今回は笑い処は一つあるものの他はそこはかとじんわり、といった程度(つまり弾け方が押さえられていた)。
そのせいなのか、あるいは二度目の観劇だったり見る角度だったりなのか、話の筋を時折「同じだ」と確認できた以外は、別物を観る感覚であった。

と、どうしても比較して観る事になるが、沖縄を訪れた記者とその妻と子どもの話(実は妻方の祖父が亡くなった事で帰郷し、夫の方は別口からの依頼があって取材に訪れた)と、記者が取材する事となった事件にまつわる過去のドラマが交互に進み、最後に「死者たちとの対話」と「過去の時空に紛れ込んだ」とも判然としない異空間が作られ、強烈な言葉が吐かれるのであるが、この最終場面になって漸く、私としては劇に追い付いた。
もっと正確に言えば、そこまでの「見え方」が随分と変わっていて、初演以上に直截に「怨嗟」や「沖縄問題」的な証言が届いて来ることに戸惑っていた。恐らく、タクシー運転手であり「事件」の当事者の役が25歳と若く、生硬に寄った演技の質感によるものだろう。(作者は対談の中で、この俳優同士の空気感なら、もっと踏み込んだ言葉を吐くだろうと思えたりした所を、変えたと言っていた。)
そして初演のやや無責任雑誌記者のキャラを通してコメディ感覚で事態を眺めさせていた亀田佳明バージョンとは異なり、場面の直接的な情報伝達によって「見えてきた」情報もあった(これは二度目というのが大きいかもだが)。そしてコメディ調のヴェールによって流れていた台詞の細部に引っ掛かり、意味を読み取ろうとするセンサーも働いた。
従って、「見やすさ」とは裏腹に、事象が苦いまま粒立って迫って来る(私はこの感触は田中麻衣子演出の技量によるもの、と思う所が過去にもあったのだが、もし「敢えて」なのだとすれば、基本的に異化効果を好む演出なのかも知れない)。ギザギザと不快な感触さえ伴って風景が象られると、初演ではギターをかき鳴らす異化効果が、今回は屋上屋を重ねるようであったのは、私としては少々残念(勿体なかった)。
この「飲み込みにくさ」、そして朴訥感のある記者の捉え処のなさが、最後に効いた。(そして亀田氏バージョンでは最後にその味が出なかったな、と初演で微かに感じた事も思い出した。)
それは、イノセントな、所謂罪意識の無い平均的日本人の感性が、痛烈な皮肉で語られた沖縄の亡霊たちの言葉を、受け止める佇まいに凝縮されている。その言葉らを自分の「大切な存在」を人質に取られた今やっと、「聞く」体勢に「させられた」彼は、せめて記者の使命感に支えられてと言いたい所だが、戸惑いながらどうにか目を見開き、対峙できて(させられて)いる。その姿に、本土人である自分が重なるのである。

破壊された女

破壊された女

お布団

サブテレニアン(東京都)

2024/05/23 (木) ~ 2024/06/02 (日)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★★

鑑賞日2024/05/27 (月) 14:00

女優の一人語りによる「或る女」の顛末。そうして語られるのはいかにも「イマの世界」。5年前の初演時に昨今の情勢(?)をここまで言い当てるとは「予言の書」か?(驚)
また、時々あった語りの合間に日常的な受け答えの台詞が差し挟まれるのを面白いと思っていたが、アフタートークで作・演出の得地弘基氏から「種明かし」があって大いに納得。

第壱部「綺譚 逢浄土桜心中」第弐部「DREAM-NeoJapanesque」

第壱部「綺譚 逢浄土桜心中」第弐部「DREAM-NeoJapanesque」

想組〜こころぐみ〜

小劇場メルシアーク神楽坂(東京都)

2024/06/01 (土) ~ 2024/06/02 (日)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★★

鑑賞日2024/06/01 (土) 13:00

第5回公演となっているが、拠点を福岡から東京に移した矢先にコロナ禍に見舞われて活動ができず、東京での公演はこれが最初だという

主宰の大和零河という名前、どっかで見たと考え続けていたのだが、舞台を観て思い出した。BMI25オーバー達が踊って痩せようという1日限定の発表会イベント「脂肪遊戯」の振付担当者としてカーテンコールで紹介されたのだった。

劇+レビュー・ショーという宝塚のような構成。

第一部は歌舞伎の名作「桜姫東文章」をベースにした「綺譚 逢浄土桜心中」。CoRichの「観たい!」で浄瑠璃風と書いているメンバーもいたが、四代目鶴屋南北などの作によるれっきとした歌舞伎である。
驚いたのはこの複雑な筋立ての物語を桜姫・権助・清玄という3人の登場人物だけで、しかも75分という時間のわかりやすい作品に仕立て上げていたこと。衣装も素晴らしく、台詞廻しも宝塚調。殊に権助役の仲井和るながいい。昨年2月に木ノ下歌舞伎が上演した「桜姫東文章」よりもずっと良かった。木ノ下歌舞伎のチケットは7千円もしたのに、こちらはレビュー・ショー付きでその半額だ。

ただ残念だったのは劇中で始終デジカメのシャッター音が響いていたこと。スタッフとしてのカメラウーマンは4列目(最後列)の通路脇に陣取っていたが、静かな場面でもお構いなしにシャッターをきっている。こんな狭い空間だと事前にわかっていたはず。どうしてシャッター音のしないカメラを用意しなかったのか。もしくはゲネプロの時に撮影するとか、客の集中力を途切れさせない方法はいくらでもあるだろうに。

第2部は第1部の3人にさらに3人が加わっての1時間のレビュー・ショー。
ステージが小さいことも影響はしていると思えるものの、新たに加わった3人の技術的レベルはいまひとつの感もあり。
殊にさくらはちょっとヒロスエっぽい感じで、メイク次第で美女にもイケメンにもなりそうで、スタイルもよく、足もよく上がるのだが、振付を覚えていない風な自信なさげな様子が散見されたのが残念。
東京バレエ団の元芸術監督のK氏が福岡のバレエ団の指導に招かれて生徒たちのレッスンをする場に、私はK氏のお招きで拝見したことがある。その時驚いたのは、K氏はバレエシューズを履かない素足で爪先立ち(足の指の腹で立つのではなく、まさしく爪先で立って)苦も無くスピンを連続してみせたのだが、その折にK氏が生徒たちに最後に言った言葉を記しておきたい。「自信を持ちなさい。自信のないものを観せるのはお客さんに対して失礼だし、観せられるお客さんが可哀そうだ。」

ライカムで待っとく

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KAAT神奈川芸術劇場

KAAT神奈川芸術劇場・中スタジオ(神奈川県)

2024/05/24 (金) ~ 2024/06/02 (日)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★★★

初演の時は劇場が遠いのでパスして、後で後悔した。今回は是が非でもと、早めに予約して臨んだ。
初演後の『悲劇喜劇』に戯曲が載って読んだはずなのだが、1964年の米兵殺傷事件の容疑者の経験に迷い込む話という記憶が全然なかった。
俳優たちは、現代の本土のライターとその妻は、いわば事件を目撃するコロスのようなものであって、その周囲の沖縄の人たちが真の主役。現代のタクシー運転手と、妻の祖父で写真館主人の佐久本寛二を演じる佐久本宝の弾けた演技がよかった。重いテーマだからと言って沈むことなく、明るい舞台にしていたと思う。現代のユタ?のおばあと、60年前の飲み屋のおかみを演じたあめくみちこも自然なコミカルさがいい。横浜の若い女性伊礼ちえ(蔵下穂波)の、「基地県なのに、神奈川の人は反対などと騒いだりしない、大人ださー。だからここが好きなの」と、神奈川をいじる皮肉が嫌味でないのも、素直な演技のおかげだろう。

回り舞台と、周囲のたくさんの空の段ボール箱をうまく使い、テンポの速い場面展開だった。

ネタバレBOX

さすが沖縄の若い劇作家である。沖縄からの告発の声に、本土の我々では言えない鋭さがある。
沖縄の戦争や基地被害を目の当たりにして、本土人に「寄り添ってください。今までもそうしたように寄り添ってくれればいいんです」とは、きついアイロニーである。

ライター・浅野夫婦の一人娘ちえみがライカムで行方不明になる。もう一人、伊礼ちえも。うろたえる夫婦に、ウチナーンチュたちは「どちらか一人は見つからない。それがここの決まりです」と残酷な覚悟を迫るが、夫婦はとても受け入れられない。これが本土が沖縄に押し付けている「決り」なのだと、観客に突き付けられて、胸に刺さった。観客も背負う問題だと訴えるように、一瞬客席の電気も明るくなった。
戯曲でもこの場面は何となく覚えている。この最後の印象が強くて、その前を忘れてしまったようだ
デンギョー!

デンギョー!

小松台東

三鷹市芸術文化センター 星のホール(東京都)

2024/05/31 (金) ~ 2024/06/09 (日)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★★

「待ちわびている社長の不在」

 ある電気工務店の詰所の人間模様が、現代における会社のあり方を浮かび上がらせる2013年初演の三演である。

ネタバレBOX

 宮崎県の片田舎にある電気工務店「宮崎電業」は社長の森が入院してからというもの社内にほころびが生じ始めていた。電工出身の叩き上げである営業部長の鈴木達郎(瓜生和成)は、東京の銀行から呼び寄せた執行役員の阿部光男(尾方宣久)を紹介するが、電工の職員たちからはよそ者扱いされてしまう。現場主任の甲斐嵩(五十嵐明)は電工一筋の職人肌で、同期の鈴木ら上層部が勝手に物事を進めることに不信感を抱いていた。この紹介の場面で鈴木が電工たちの前で数回「おはようございます」を繰り返す場面が、上層部と現場組の溝を浮かび上がらせる。

 時間を見つけて詰所に趣く阿部に、電工たちは少しずつ心を開き始める。若手の戸高大輔(関口アナン)は学生時代からの付き合いの妻と結婚を決め家を買ったばかり、上昇志向が強く「電工では終わりません」と決意を述べる。戸高と同期の岩切修(吉田電話)はところどころ抜けた性格で皆に怒られてばかりのようだが、底抜けに明るいムードメーカーである。社員たちの口から語られるのは不在である社長の存在の大きさである。事務員の安田小春(竹原千恵)は社長の斡旋で電工の安田学(松本哲也)と結ばれることになった。下請会社の田原電気から出向している田原秀樹(佐藤達)は親子二代で仕事を受けており、新人の関和也(土屋翔)の教育係でもある。社長が贔屓にしていたスナックを営んでいた女性の娘である壱岐幸恵(平田舞)は、グレかけていたところを半ば強引に拾われ真っ当な勤め人になった。皆が待ちわびていた社長の突然の死を鈴木が告げると、電工たちはある意外な行動を起こすことを決める。

 皆が話題にする不在の人物が大きな存在を占める本作を観ていて、私は三島由紀夫の『サド侯爵夫人』を想起した。『サド』が浮き彫りにしたのは絢爛な王政からフランス革命勃発による貴族の危機だったが、本作ではいっときは栄華を極めた人格者によるワンマン経営が衰退する過程である。経営者が変わるだけで社内の雰囲気がガラリと変わったり、外部から呼び寄せた人材に敵対する様がとてもリアルで共感を覚えた観客は少なくなかったのではないだろうか。電材屋の米良産業から営業に来ている綟川剛(依田啓嗣)が当初チャラチャラした長髪の青年で甲斐にドヤサれていたが、ケンタッキーの差し入れを頻繁に持っていくようになってから打ち解け、甲斐と朝まで飲んだ翌朝は短髪にするなど、世代間対立と和解を描くことにも成功していた。

 登場人物も皆魅力的であり、人間の二面性を描くことに成功していた。事実上のトップとして会社を引っ張っていかねばならない営業部長の鈴木のぎこちない身のこなし、終始座ったままの目に双肩にかかったプレッシャーを垣間見る思いがした。他方で彼はフィリピンパブで知り合った女性と再婚を決めたり、そのことをバツイチの甲斐やいい歳をして独身の長友浩二(今村裕次郎)に自慢したり、そこから長友と田原、壱岐の三角関係を描くなど、よくも悪くも公私混同甚だしい職場ならではの特徴を生かした作劇が秀逸であった。

 本作初演の11年前から社会状況は変化し企業コンプライアンスやハラスメントに対する世間の目は一層厳しくなった。社員のプライベートの詮索や恫喝まがいの叱責といった描写に違和感を覚える観客に向けたアナウンスはあってもよかったかもしれない。むしろ私は時代設定が2024年へ変更されたこの三演を観ていてもあまり違和感を抱かなかったことに軽い戦慄を覚えた。やがてラストシーンで社長の葬儀を終えた翌朝に皆でにこやかにラジオ体操を終え、真顔に戻り仕事モードへと切り替えようとするときの表情の変化で頂点に達した。それはケン・ローチ監督の『家族を想うとき』を観た時にも感じた、なにがあっても、どんなことがあっても翌朝は仕事に向かわなければならないという労働者の性に胸が押しつぶされる思いがしたからに他ならない。
熱海殺人事件 売春捜査官

熱海殺人事件 売春捜査官

クリームソーダのさくらんぼ企画

アートスタジオ(明治大学猿楽町第2校舎1F) (東京都)

2024/06/01 (土) ~ 2024/06/02 (日)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★★★

ど迫力の演技とアクションに圧倒されました。とても大学生とは思えない演技。
一人二役の演技もさる事ながら変わり身もさすがですね。

泥人魚

泥人魚

劇団唐組

花園神社(東京都)

2024/05/05 (日) ~ 2024/06/09 (日)公演終了

実演鑑賞

満足度★★

台詞に緩急が無く、捲し立てているだけで言葉がほとんど届かなかったしつまらなかった!
役者さんがヘタに見える演出だったと思う。
唐十郎は俺には分からない。
テントならではの雰囲気やギミックは好きだった。

service day

service day

劇団スクランブル

小劇場 楽園(東京都)

2024/05/29 (水) ~ 2024/06/02 (日)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★★

いつもより笑いが少なめだったような。個性的な登場人物ばかりなのでもっと振り切った演技でも良かったかも。
唯一残念だったのはキャンセル待ちで購入したのだが開演5分前でも入れず、雨の中外で待たされたこと。結局開演時間も10分ほど遅れていたし。
見る前からテンションが下がってしまい残念。

(株)デスゲーム工務店

(株)デスゲーム工務店

電動夏子安置システム

赤坂RED/THEATER(東京都)

2024/05/29 (水) ~ 2024/06/02 (日)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★★

物語を感じるより状況を楽しむ舞台。
交錯するデスゲーム、ゲームの本質にはほぼほぼ無関係な人達が繰り広げるある種トンチンカンな行動がじんわり笑いを誘う。
ゲームのスタートとラストの展開にはやや違和感を感じるも、全体通して面白かった。

ライカムで待っとく

ライカムで待っとく

KAAT神奈川芸術劇場

KAAT神奈川芸術劇場・中スタジオ(神奈川県)

2024/05/24 (金) ~ 2024/06/02 (日)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★★

諦め、傍観、寄り添うってなんだろ?偽善?
我々の幸せは誰かの犠牲の上に成り立っていて、しかしその犠牲は誰にも認識されない。
静かな芝居がそれらを重く受け止めさせる。
自らを見つめ直す良い舞台だった。

柿喰う客新作本公演 2024『殺文句』

柿喰う客新作本公演 2024『殺文句』

柿喰う客

本多劇場(東京都)

2024/05/24 (金) ~ 2024/06/02 (日)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★★

「なぜ今このテーマを?」というクエスチョンがありつつも、ストーリーはスッと入ってきた。が、それって表層なんだよな…深層の理解は難しいな…という感想。
とはいえ、特有の超絶滑舌からくる疾走感、意識が飛んだような目の演技などなど、作品の持つ世界観を存分に楽しんだ。

今作、結構ダンスシーンがあった。
それほど見ているわけではないが、新しい柿という印象。
特に赤繋ぎのダンスシーンが好き。

下…というかドギツイというか…
蔑視とはニュアンスは少し違うかもしれないが、そこに若干の危うさは感じた。
当然、意図してのことだとは思うが。

MANICAL

MANICAL

劇団くるめるシアター

早稲田大学学生会館(東京都)

2024/05/24 (金) ~ 2024/05/26 (日)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★

強烈な既視感。いわば学園ドラマ全部入り的な。
故にシンプルで分かりやすくとても観やすい作品だった。 新歓だからかなぁ…
ストーリーにもう少しひねりが欲しかったのと心情の変化が唐突な感じでもう少し丁寧に描かれると没入できたかも。

最初の二十面相

最初の二十面相

劇団身体ゲンゴロウ

北千住BUoY(東京都)

2024/05/23 (木) ~ 2024/05/26 (日)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★

タイトル、そういうことか。
結構重たい話だったが、いい意味で淡々としていてスッと入ってきた。
死ぬことと生きることは相反しているけど実はイコールなんだと、そんな感じ。
なかなか良かったと思うがラストの台詞が聞き取りにくかったのが少し残念。

略式:ハワイ

略式:ハワイ

劇団スポーツ

OFF OFFシアター(東京都)

2024/05/15 (水) ~ 2024/05/19 (日)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★★★

前半のタイムリープが緻密な上にシチュエーションコメディ的な行き違いから来る笑いもふんだんにあり楽しい。おしるこは少しくどかったけど
本当に戻るべき時点に気づいたあたりからは、もう苦く辛く切なくて胸が詰まる思いで観てた。
とても面白かったし、声が良いね。

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