最新の観てきた!クチコミ一覧

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「5…」

「5…」

四分乃参企画

JOY JOY THEATRE(東京都)

2022/10/14 (金) ~ 2022/10/16 (日)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★★★

「ミモザ 蒲田行進曲」を観る。
小さな劇場、舞台装置もない、この小空間が開演と同時に別世界になる。まさに演劇の醍醐味。つかこうへいの代表作をつかテイストを壊さずに自分の劇団のものにしているところが凄い。
芝居が進行するに連れ、それぞれの役者がどんどん魅力的になっていく。ヒロインのの鈴木万理絵が殺陣も上手く魅力的だった。つか芝居のヒロインは一人で芝居を支えなくてはいけない場面が多いので大変だがしっかりと務めていた。

月は夜をゆく子のために

月は夜をゆく子のために

トランスレーション・マターズ

すみだパークシアター倉(東京都)

2022/10/08 (土) ~ 2022/10/19 (水)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★★★

殆ど予備知識なしで観に行き、罵倒しあう前半になんなんだ~と思いましたが、後半の展開にグっときましたね。

ビブリオライブ4

ビブリオライブ4

本気の本読み!ビブリオライブ

NOS Bar&Dining 恵比寿(東京都)

2022/10/15 (土) ~ 2022/10/16 (日)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★★

面白い、お薦め。
「普段はお客様に見せない本読みをお見せするチャレンジ企画。即興演劇もあり、まさに俳優を味わう一日!俳優の役に入る瞬間、鼓動とパッションを劇場では味わえない近さで感じてください」という謳い文句に誇張はない。

観た回は、本読み3作と即興劇1本であった。本読みは、全ての脚本が素晴らしく、役者は会話(サスペンス)劇、コメディ、心象劇といった雰囲気の異なる物語を見事に朗読していた。即興劇(エチュード)は、開演前に観客から「言葉=台詞」を書いてもらい、それを劇中で使用(喋る)する。台詞や動作などを役者が考えるのではなく、事前に最初と最後の台詞が設定されており、3分間の物語を創作する。その劇中で観客(自分)の言葉が使われる楽しみもある。

エチュードという言葉、演劇初心者には難しいが、藤田朋子さんが実に面白く しかも的確に説明していた。子供の頃の おままごと…ごっこ遊びのようなもの。子供自ら役割(お父さん役・お母さん役)を決め、食事・料理場面などを設定する。それを大人になって演劇として行うのが即興劇である。主宰の植松愛さんもこの説明に感心しており、これからは同じように説明したいと…。
(上演時間1時間30分)

ネタバレBOX

前に観(聴い)た時と本読みする場所が違う。店入口の反対、最奥の壁際に椅子を並べ役者は横一列に座る。その手前にテーブルとカウンターチェアが置かれており、出番の時に移動していた。今回は、本読みする場所が客席中央という、きわめて至近距離で役者の本読みを聞き観ることが出来た。

脚本は次の3作品。
「カレーかハヤシか」(作・ふじもり夏香)
休日の昼下がり、高坂家のダイニングテーブルに2人の女性、1人はこの家の妻・高坂涼子(藤田朋子サン)、もう1人は夫の部下・中川真奈美(小槙まこサン)である。夫は休日出勤で留守、そこに真奈美を招いた。穏やかな日常会話、そして恋バナに話が弾むが、いつの間にか夫の不倫に悩み困っている。そして不倫相手は…。毒入りは、カレーかハヤシか? その究極の選択を迫るサスペンス劇は緊張・緊迫感があって聞き入った。話す前に藤田さんが上着を脱ぎ、本番モードへ。因みに朗読後、いったん上着を着たが、即興劇が始まる時も上着を脱いでいたのが印象的であった。

「火事」(作・江島裕一郎)
燃え盛るマンション、鳴り響く火災報知器という設定。火事現場にいる男女3人。住人女(植松愛サン)が救助を求めて叫んでいる。2階の部屋に夫が…助けてください。その声に反応して相田(関幸治サン)という正義感の強い男が火の中へ飛び込む。その後、女性が実は夫は単身赴任でいないこと、そして別居して3年になることを告白する。さらに引っ越して ここには住んでいないと。聞き役の住人男(レノ聡サン)は呆れかえる。相田を呼び戻す住人男と女、そして戻ってきた相田からの告白に衝撃の事実が…。

「ミートソース・グラヴィティ」(作・小栗剛)
テーブルに置かれた小さな一皿にまつわる、壮大な恋の話。本読みが始まる前に、この作品の状況を植松愛さんが少し説明する。輪廻転生、同じ時代・時間の人生を生まれ変わりながら何回も繰り返す恋物語。クリスマス、働いているレストランに佇む直志(関幸治サン)、夫がいる恋人あかり(小槙まこサン)との痴話喧嘩。思わず目の前にいる彼女とは違う女性の名前を呼んでしまう。チヨ(森谷勇太サン)とは…。その悲しいまでの邂逅の繰り返しに泣ける。実際、森谷さんの目に涙。

通常 読みの段階では座ったまま行うが、力が入ったため、思わず立ち上がったと言う。例えば、藤田朋子さん演じる妻は、怒気表現において声色を変える。今回は自分の思いで判断したが、しかし本当にそのシーンなのかは演出家や物語の流れの中で確認しながら演じると話す。そんな裏話と演技過程が聞ける貴重な公演、堪能した。
また脚本は、違う作風を選び 観客を飽きさせないといったサービス、その本読みを素晴らしい話力・話術で聞かせる。

会場が飲食店〈NOS Bar&Dining 恵比寿〉であることから、一般の劇場と違って午前中と昼食時(ランチ営業はない)での上演になる。都合がつけば次回公演も観てみたい!楽しみにしております。
『雨の世界』

『雨の世界』

ウテン結構

サブテレニアン(東京都)

2022/10/14 (金) ~ 2022/10/18 (火)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★★★

鑑賞日2022/10/16 (日) 11:05

座席1列

価格3,200円

不穏な雰囲気で始まったのですが、今までと雰囲気が違っていて、普通の人達の話でしたが凄く面白かったです。
始まった瞬間から最後まで目が離せなずに瞬きをするのも惜しいほどのめり込んで観てしまいました。
今から次回作も楽しみで使用が無いです。

ネタバレBOX

雨女や雨男の話がとても面白かったです。
自分も結構雨男な方なので一層楽しんでしまいました。
『OH!Myゴ-スト』

『OH!Myゴ-スト』

東京ハイビーム

あうるすぽっと(東京都)

2022/08/31 (水) ~ 2022/09/04 (日)公演終了

実演鑑賞

満足度★★

うーーん、、終盤は良いし物語の冒頭はシチュエーションコメディのセオリーを踏んでるとは思うのだけど、、グダグダ感が強かったし、ここにそれいる?みたいなこともありましたし。あとテンポですかね。全体的に合わなかった。単に好みの問題です。
それでも良い話のところではちょっとうるっとしました。死んでしまったら終わりなのよ、生きてる人間がうまくいきますように。

碌な夜がいねえ

碌な夜がいねえ

みさくぼ

王子小劇場(東京都)

2022/10/15 (土) ~ 2022/10/24 (月)公演終了

実演鑑賞

満足度★★

鑑賞日2022/10/15 (土) 19:30

作・演出の大石晟雄による新ユニットの旗揚げ公演。不条理系?91分。
 夜の街の道路と覚しき所を通る、ユーチューバーの女とその先輩の男・夫婦・アパート持ちの男とその友人・夫婦と絡む酔っ払いの女、の4組が交互に現われて、とりとめもない会話を展開する。会話そのものは理解できるけど、脈絡・繋がりがなく不条理に展開される。基本的に上手(ロビー側)から下手(楽屋側)に登場人物が動くのを、「円形に使う」と言っているようだ。私のテイストではなかった。

空蝉

空蝉

あやめ十八番

東京芸術劇場 シアターウエスト(東京都)

2022/09/01 (木) ~ 2022/09/04 (日)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★★

あやめ十八番、初見。いつもこういう作品では無いそうでよかったのか悪かったのか分からないが、今回はエンタメということで大いに楽しませてもらった。
前半は楽しい歌唱シーンもありつつ世界観を飲み込ませてもらい、後半は落語の話を思い出させる進行で物語は進む。登場人物が多くてごちゃっとはしつつも、死んだ人間もあっちで元気にしているよとか、夭折した子も成長しているよとか、面白くするための話に救われる手合いもいっぱいいるだろうと思えた。

温室の前

温室の前

Lilas

RAFT(東京都)

2022/09/22 (木) ~ 2022/09/25 (日)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★★

初めての岸田國士戯曲でした。余韻がじんわりと長く残る。
二人きりの兄と妹、生きるのにじゅうぶんな金はある、病気がちだった身体が健康を得た、雑貨屋のような店をやり温室で植物が花をつけるのを楽しみにしながらそれでもどうにも閉塞的になるふたり。
そこへやってくる妹の同級生と兄の同級生。閉塞が終わったかのように見えたのは束の間、「やっぱりね」という展開に。

100年前に書かれた戯曲だけれど、なんというか「そういうとこやぞ」って言いたくなる登場人物をみてると人の営みは変わらないって思いますね。
控えめな照明と凝った美術、ちゃんと着替える登場人物。いろいろと好感を持ったお芝居でした。

笑顔の砦

笑顔の砦

庭劇団ペニノ

吉祥寺シアター(東京都)

2022/09/10 (土) ~ 2022/09/19 (月)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★★★

この規模だと最近は全席指定となるものだが珍しく全席自由で幸運にも最前列の中央付近で観劇。心に沁みる緒方晋さんの在り方が良い。時代錯誤的なところもあるけれど。
淡々と2つの部屋にある日常を追うことになる観客。なんとも不思議な観劇体験。
しょっぱなから食事の支度、ほんとうに食べている、ごはんを噴き出すシーンに一瞬はらはらしてしまいコロナ憎しの気持ちに。そういう雑音が心底いやになるほど素晴らしいお芝居。
生活感のある素晴らしく作り込まれた美術、それが2つあり、しかも片方は時間の経過とともに変化がある。観客はそれを観察するのも楽しみのひとつになるがしかしまあ、暗転の中でよくあれを毎回正しく設置できるものだと内心舌を巻く気持ち。
漁師たちの言葉が絶妙にバラバラなのも良い、ちゃんと配役表にその人の出身地が書いてあり、なんのつながりもなかった人たちが仕事を通じて仲間になったのだというのが分かる。良いなあ。
人にはそれぞれ背景があり、集ったり、別れたり。そういうものだと教えてくれる。

『地獄変』

『地獄変』

芸術家集団 式

シアター・バビロンの流れのほとりにて(東京都)

2022/10/15 (土) ~ 2022/10/17 (月)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★★★

お見事!! 身体表現、心地よい台詞、赤と黒の世界。上演時間70分とアナウンスされたのですが終わらないで欲しい、ずっとこの舞台を観ていたいと思いました。絵師の思いと重ねあうところですが、何度も何度も作り変えて練り上げた作品だと思いました。ブラボー

賊義賊 -Zokugizoku-

賊義賊 -Zokugizoku-

壱劇屋

シアターグリーン BIG TREE THEATER(東京都)

2022/09/21 (水) ~ 2022/09/27 (火)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★★★

ちゃんと台詞のあるお芝居も出来る人たちが、あえて台詞を排除して殺陣と表情とパフォーマンスで魅せてくれるシリーズ。観るほうは想像力をフル回転するからかものすごく作品に没入できる。あるシーンで涙があふれたし(お芝居であまり泣かないのだけれど)そのとき両隣の観客が手で口(マスク)を覆っていたの、「わかる」しかなかった。
シリーズはすでに大阪で上演済みながら、「賊義賊」は観ていなかったので楽しく拝見した。
主演・小玉百夏さんと竹村さんが旧知の仲なのは知っていたのでようやく主演で観られたのが観客としても嬉しいし梅棒の伊藤今人さんがご出演というのも個人的に胸アツ。
楽しかった!
次の「心踏音」は大阪で初演を観ているがとても良かったのでまた観られるのが嬉しい!観に行きます!

『地獄変』

『地獄変』

芸術家集団 式

シアター・バビロンの流れのほとりにて(東京都)

2022/10/15 (土) ~ 2022/10/17 (月)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★★★

素晴らしかったです。
炎に焼かれるところをどう表現するのか楽しみに行きました。
ウワー、と心の中で叫んでいました。
こういうふうに表現するのか、イヒョウをつかれビックリでした。
父親役の役者さんが見事でした。
娘役の役者さんも可愛かったです。

いびしない愛

いびしない愛

ばぶれるりぐる

こまばアゴラ劇場(東京都)

2022/10/13 (木) ~ 2022/10/17 (月)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★★

コロナ禍の真っ最中、不振にあえぐ高知県の小さな宗田節製造工場にある事務所。そこに泥棒が忍びこむことから始まる、居場所だとか生き方だとかの物語。
美術が素晴らしい。トタンの壁、建築がそこにある感じ。物語のキーになる扉、妙にリアリティあって好き笑。
皆さまのご感想手厳しいなあ。わたしは「何も事件が起こらない日常」こそが好きなものでこれくらいのゆったりさは全く問題なく楽しく観られました。
幡多弁は分かりませんが何を言ってるかはだいたい分かります。
(この作品、幡多弁の地元・高知県土佐清水市でも上演したというのがすごい)
ご出演者さん皆さま芝居巧者。出色は蟷螂襲さん、さすがの一言。
シリアスな場面と力を抜いて観られる場面、双方のバランスが良かったです。

ネタバレBOX

ローンを組むといい、っていうアドバイスにはまったく共感できません笑。
でもそれもまた、人生との向き合いかたのひとつなんだなあ。

終盤、よろさんを見るたびにびびってる諌山くんが面白かったです笑
物語の着地っていろいろあると思いますが、みんなうまくいくといいねっていう気持ちで見終われるのは嬉しい。こういう終わりにしてくれてありがとうございました。
足跡

足跡

さるしばい

萬劇場(東京都)

2022/10/06 (木) ~ 2022/10/16 (日)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★★

「約束は昔日」を拝見。

ネタバレBOX

 大向う受けを狙ってか脚本に陳腐な台詞が百回以上は繰り返されただろうか。これだけでげんなりしてしまった。舞台美術は結構作り込まれていて内容がタイムスリップを含む為、正面のカフェバーか何かを思わせる小じゃれた店の壁の煉瓦が一部剥がれているとか、洒落た照明器具が入口を照らすようになっているとかで良く雰囲気と物語の内容を暗示していたのに単調でバカバカしい繰り返しが多いばかりにこういったセンスの良さが減殺されてしまった感がある。余りに当たり前な表現は肝心な箇所で理想的には一度だけ用いて深みを持たせる方が好みである。
「5…」

「5…」

四分乃参企画

JOY JOY THEATRE(東京都)

2022/10/14 (金) ~ 2022/10/16 (日)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★★★

菜の花日記 飛龍伝
ワークショップの方がいきなり飛龍伝をするのはかなりハードルが高いんじゃない?と思ってましたが、飛龍伝の世界観はバッチリ見る事が出来ました。演技は荒削りな部分はありましたが、役の気持ちがしっかり伝わりました。
ミモザ 蒲田行進曲
演出、演技共に満点、めっちゃくちゃ面白い!

ビブリオライブ4

ビブリオライブ4

本気の本読み!ビブリオライブ

NOS Bar&Dining 恵比寿(東京都)

2022/10/15 (土) ~ 2022/10/16 (日)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★★★

今回2回目の参加でした。このライブは観劇ではなく参加と感じています。今回もとても面白かったです、複数回参加するともっと楽しそうですよね。続けてほしいと思います。次回も期待してますね。

ハッピーな泥棒が月を回す。

ハッピーな泥棒が月を回す。

空想実現集団TOY'sBOX

東京アポロシアター(東京都)

2022/10/13 (木) ~ 2022/10/16 (日)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★★

15日餅の回を拝見しました。なかなか面白い見せ方だったと思います。仮想と現実をイメージで繋げるとの前説も導入として良かったですね。短い時間にうまくまとまっていたと思います。次回も楽しみですね

『地獄変』

『地獄変』

芸術家集団 式

シアター・バビロンの流れのほとりにて(東京都)

2022/10/15 (土) ~ 2022/10/17 (月)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★★★

なかなか面白い内容でしたね。普通のお芝居とは少し表現方法が違っていて、新鮮でした。身体的に表現するお芝居も拝見したことありますが、そこにお芝居も取り込まれていて面白かったです。主人公の絵師の役者さんの演技はとても熱演でした。

「5…」

「5…」

四分乃参企画

JOY JOY THEATRE(東京都)

2022/10/14 (金) ~ 2022/10/16 (日)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★★

 ThreeQuarterのカウントダウン公演「5・・・」である。華4つ☆(少し追記10.17)

ネタバレBOX

 池田屋の階段落ちシーンで余りにも有名な作品から、大部屋のヤスが受け取る差出人不明(ミモザという名は冠してあるが筆跡も分からぬよう活字の切り貼りで記された)のファンレターを梃にしつつ、実行すれば死、良くても半身不随か植物人間という階段落ちに戦きつつも、銀ちゃんの為なら死をも厭わず、銀ちゃんの子を孕んだ小夏との結婚も呑んだヤスの一種の漢気と、照れ症そのものが人格化したような銀ちゃんの優しさと愛情表現の形、銀ちゃんを愛し乍ら、数々のリスクや不利を承知でいつも一緒に居て気遣ってくれるヤスにどんどん惹かれてゆく小夏の、逆子で臍の緒が首に絡まって辛いのにお腹を蹴る胎児を帝王切開や出血死の危険を顧みずに産もうと決意する女性の姿は例えようも無いほど美しい。
 つか自身の裸形が最も良く顕れた作品の一つであろう、今作の核を今作で表現した。スリクオのカウントダウンというのが寂しい。
 つかの裸形が最も良く顕れた作品の一つだと書いた。それには無論根拠がある。「銀ちゃんが逝く」で描かれた世界は今作と重なる台詞も多いが、在日朝鮮人や部落を含め実は差別が可成り色濃く反映された作品であった。衆知の如くつか自身在日出身である。実家が可成り豊かだったこともあり大学迄進んだものの在日であることに因って差別の経験を味わった友人・知人・親戚・縁者等も居たであろうことは想像に難くない。今作でも差別構造は端的に示されている。スターと大部屋役者との関係の中にである。そして今作のラストでミモザが誰だったかも明かされるのであるが、スターと大部屋俳優の逆転がここで為されていることの意味を考えるならば、つかの希いは明らかだ。死地に赴くヤスの小夏に対する告白内容のアンヴィヴァレントが小夏に対する止むに止まれぬ愛情の深まりと死によってしか差別構造に抗えないことの理不尽をいやが上にも表している。小夏もヤスの抱える難題に深く関わり更に愛をも育ててきたが故に、自らの命を賭けた出産に真っ向対峙し果たしたのだ。その覚悟をした女性の透明感を漂わせる美しさを、筆者は今作の白眉と観た。アンビヴァレンツな状況を演じたシーンでのヤスの引き締まった表情も見逃せない。
奇燃

奇燃

カリフォルニアロール

早稲田大学学生会館(東京都)

2022/10/14 (金) ~ 2022/10/16 (日)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★★★

 演技も学生さんの演技としてはかなり上手い。殊にリク役、閻魔役の殺陣での動きがグー。大人の役者が演じたら身体から滲むものが見えて更に深みが増すことは間違いない完成度の脚本でもある。

ネタバレBOX

 タイトルはキメラと読む。無論ギリシャ神話に登場するライオンの頭、蛇の尾、山羊の胴を持ち口から炎を吐く怪物の名であることは誰もが知っていよう。然し今作、これだけに留まらずもう少し捻りがある。寧ろ未だ遺伝についての科学的認識が充分でなかった頃世界中の科学者が双生児について一所懸命研究していたことは御存知だろうか? まあ、そっちも寄り添った話である。
 物語は彼岸と此岸の間に在る時空で展開する。即ち閻魔大王等が天界行き、地獄行き等の判断を下す場所と考えて貰えば良い。無論、人間界での死が前提となるが、三途の川を渡ってしまうか否かはキチンと判定しなければならない。例えば昏睡状態は、死に似ているが生命は未だ此岸にある。心肺停止でも蘇生するケースがあるがこの状態にある者の死と生の判定は実に困難と言わねばならぬ。何れにせよ、今作では閻魔大王の居るこの時空に他にも九体の各部署の長がおり所管の事案を担当しているという設定だ。その内閻魔は最も力のある存在ということである。事件は、盆の法要も終わり大忙しが一段落し多忙を極める閻魔が休養を取るのはこの時期しかないという理由で閻魔は自慢の養子・利八(愛称=リク)を代理に立て休暇を取った間に起こる。只でさえ多忙で人出不足とあって合理的判断を下すリクは、自分の最も力を注がねばならぬ職域を最優先で担当し生死の判定等はしっかりしていると見込んだ獄卒らに任せた。ところがこの任務を任された獄卒が蝶狂いだった為、偶々現れた蝶を追い新たにここへ来た海未(ウミ)の意識不明状態を死と判断しここ迄寄越してしまったのである。この大失態を埋めることのできるのは閻魔のみ。然し彼は休養の為遠くに居て直ぐには戻れない。本来ウミの意識は一晩明ければ回復するハズだったが予定はずれ込む。この事件が切っ掛けとなって第七御殿を差配している、慈愛遍く諸般の事情から名の分からぬ者がここに来て永久に輪廻転生のサイクルに乗れないことに胸を痛めてきた長・京極は今回閻魔の代理を務めているリクについても名が分からぬ為に転生できないことを哀しく思っていた為もあり子飼いの者ら・喪揺&徒然を使い自身は謹慎中である為開錠できない神域の鍵をウミに渡して開錠し閉じ込められていた名の無い者達総てを開放し反乱を起こした。無論、リク自身もこの問題に悩んでいて担当部署の第五御殿で働く百目鬼に精査を依頼している最中であった。百目鬼から誕生の秘密を知らされたリクと開錠したウミは反乱の最中に出会い互いの宿命を知ることになったが、喪揺、徒然及び反乱軍と戦うことになった。このことは休養中の閻魔にも知らされ閻魔は休暇を早めに切り上げ戻ることとなった。最後にどうなるか? ウミとリクの知った秘密とは何か? 二人の関係は? 事件はどう展開し、収束するのか? 等々は観てのお楽しみだが、舞台美術は一見シンプルだが、良く考えられ合理的な作りだし、音響、照明もグー。殺陣の動きも良い。脚本は論理的整合的であり、全体のバランスも良い。演出も賢い演出だ。ダンスシーンが一部にあるが、大抵の芝居でそのダンスに必然性が感じられないので嫌いな自分にもすんなり素直に受け入れられる必然性があって驚かされた。お勧めである。

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