最新の観てきた!クチコミ一覧

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『器』/『薬をもらいにいく薬』

『器』/『薬をもらいにいく薬』

いいへんじ

こまばアゴラ劇場(東京都)

2022/06/08 (水) ~ 2022/06/19 (日)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★

鑑賞日2022/06/16 (木) 19:30

『器』これも2度目の観劇で、私にフィットしないけど、とても深い作品ではある。(3分押し)105分。
 初回に観たとき、興味深く斬新だと思ったものの、全体が今一つフィットしなかった。もう一つの『薬…』がとても気に入った作品なので、もう1度観てみることにしたが、『器』が鬱を扱っていて、ややツライ作品だということがポイントだと思う。斬新な観点と緻密な構成の作品だが、『薬…』に見られる外向けに動くベクトルが少ないことが、私にフィットしていないのだと思う。

【公演中止・延期】熱海殺人事件~売春捜査官~

【公演中止・延期】熱海殺人事件~売春捜査官~

一般社団法人深海洋燈

新宿スターフィールド(東京都)

2022/02/18 (金) ~ 2022/02/27 (日)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★★

6月リベンジ公演。
本ステージの他に若手公演が3ステージあり、こちらを観た。主宰の申大樹がProjectNyxで「これがやりたかった事!」とばかりの舞台を傳田佳奈主演で打った演目、思い入れがあるのだろう。本ちゃんを観たかったが断念、せめて若者バージョンをと日曜夜に初の新宿スターフィールド(久々のタイニィアリス)に踏み入れた。若手は4名で演じ一役を申氏が務めるが、熱海殺人事件のボルテージはこれでなくては、という高レベル。ハイテンションかつスピーディに繰り出す台詞と立ち回りそのものに胸倉を揺さぶられて泣ける、というのがこの演目の持ち味である事を思い出した。
と同時に、私としては深海洋燈の「次」をチラ見しようとする。つかこうへい的「感動」の形を今回くっきりと見せられた事で、ある種の限界も見えた気がした。つか的感動の片鱗は扉座の舞台にもある。(かく自認する扉座の「つか演劇」要素が、今回の観劇で遅まきながら判った。ただ、これは今演る事による感じられ方なのかも知れぬ。)

キスより素敵な手を繋ごう

キスより素敵な手を繋ごう

ナイスコンプレックス

シアターサンモール(東京都)

2022/06/15 (水) ~ 2022/06/19 (日)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★★

2時間20分の長編で、ある愛の形の物語。主人公の妻の言動に賛否が分かれる内容で、私個人としては共感できず、モヤモヤ致しましたが、それだけ舞台に集中していた為とも思います。役者さんは皆熱演で、見応えがありましたが、全体的に叫ぶ感じの台詞が多く、やや一本調子のやりとりに感じてしまう部分もありました。以下、公演中なのでネタバレで。

ネタバレBOX

伏線は分かり易いので、序盤からある程度分かりますが、記憶障害の夫を騙しているように感じてしまい、また娘さんを若かりし頃の妻に見立てるのは、やりすぎなのではと感じました。下宿している作家の姉妹の形の方が自然ですね。(あえて対照的にしているのかもしれませんが。)
年齢の事を気にされておりましたが、夫自身が自分の顔を見れば気づいてしまうのでは・・・。
作中の童話劇、わりかし好きです(笑)
すべてセリフのはずだった

すべてセリフのはずだった

劇団フルタ丸

駅前劇場(東京都)

2022/06/15 (水) ~ 2022/06/19 (日)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★★★

鑑賞日2022/06/16 (木) 19:30

130分。休憩なし。

小刻みに戸惑う神様

小刻みに戸惑う神様

SPIRAL MOON

「劇」小劇場(東京都)

2022/06/15 (水) ~ 2022/06/19 (日)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★★★

お葬式の裏側の様子を暗くならず丁寧に描れていて、とても素敵でした。家族のお葬式を思い出しこんなふうに送ってあげたいなと思いました。時間がたつのがあっという間でした。おすすめします。

かきつばた、キス期すキス帰す、くさくさためほたる

かきつばた、キス期すキス帰す、くさくさためほたる

遊気舎

in→dependent theatre 1st(大阪府)

2022/06/16 (木) ~ 2022/06/19 (日)公演終了

満足度★★★

3つのストーリーが、この劇団らしさを出しながらスーと心地好く流れていく。多分悲しみ、やりきれなさ等々を抱えながら…。この3つのストーリーがシンクロし黒を象徴する何者かがとりまとめていく。もう少し何かを付け足せたら…

 “Na”

“Na”

PANCETTA

「劇」小劇場(東京都)

2022/03/10 (木) ~ 2022/03/13 (日)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★

「Na=名」をめぐる7本の短編からなる公演。

揃いの白いツナギ(無名性の象徴ですね)を着た4人の出演者が、劇中で名前(と人格が一致した)「人物」を演じることはほとんどありません。通し番号か、「王様」「先生」といった代替可能な役割で呼ばれることで起こる混乱や事件を扱った7つの小さな喜劇から、笑いはもちろん、ふんわりと人間関係の緊張や情が引き出され、最終的にはやはり「名」が保証する(人物としての)同一性に焦点があたる構成に唸らされました。

コントの集成といってもいい内容で、演技も戯画的なものですが、ダジャレのくだらなさ、身体をつかった表現での奮闘ぶりだけでなく、たとえば「王様ゲーム」で生み出された嫌な緊張感、失敗の末自分の「名前」を食べてしまうアオヤギさんの焦りなど、関係性によって生み出される感情にフォーカスしている点が、スマートでした。同じツナギを着た二人の演奏者の存在、使われ方も、単なるBGM係ではない意味と持っていたと思います。こうした感性は、たとえば今後、子供向けのコンテンツなどでもうまく生かせそうな可能性も感じました。

小刻みに戸惑う神様

小刻みに戸惑う神様

SPIRAL MOON

「劇」小劇場(東京都)

2022/06/15 (水) ~ 2022/06/19 (日)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★★★

今回もどのあたりが「小刻みに 戸惑う 神様」なのか分かりませんでしたが面白かったです。SPIRAL MOONでこんなに笑っていいの?と思うくらい笑ってしまいました。
しかし、え?あれ?デジャブ???いや、違うこれどこかで見たわ・・・と思って帰ってから検索したら見ていました。忘れっぽいので細かいところまでは思い出せないのが残念です。お葬式を明るく描いていて良かったですが、天寿を全うしたと思われるからだと。
夏です。劇場が寒くなる季節です。役者さんは涼しい方がいいと思いますが、用意して行った上着もストールも使っても寒かったです。座席の位置によるのかもしれませんが。

ネタバレBOX

私も早くに亡くなった人はその年齢のままで向こうで待っていてくれるような気がしているのですが、神様になる人もいるとは思いませんでした。
夏至の侍

夏至の侍

劇団桟敷童子

すみだパークシアター倉(東京都)

2022/06/07 (火) ~ 2022/06/19 (日)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★★★

それこそ三年毎に何度でも観続けたいと思っているほど炭鉱三部作が大好きであるのだが、“静”の部分というか、凛としたどこか品格のようなものが感じられた本作。クライマックスでは、今後夢に出てきそうな素敵なシーンのオンパレード。素晴らしい舞台です!!

小刻みに戸惑う神様

小刻みに戸惑う神様

SPIRAL MOON

「劇」小劇場(東京都)

2022/06/15 (水) ~ 2022/06/19 (日)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★★★

かなり昔の映画[お葬式 ]を思い出しました。
暗いお話を想像していましたが、笑いあり、人情ありの楽しいお芝居でした。

ネタバレになるので書けないのですが、ワーって言う感じの素敵なアイディアというか工夫がされていて、そこの部分が個人的にいいなあと思いました。

一番嬉しかったのは、劇団さん特製の非売品のバックのお土産でした。
可愛いいバックです。
以前より大きいサイズになっていました。
どこの劇団探してもこのサービスはないのでスゴいです。

小刻みに戸惑う神様

小刻みに戸惑う神様

SPIRAL MOON

「劇」小劇場(東京都)

2022/06/15 (水) ~ 2022/06/19 (日)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★★★

この頃ボケが始まったのか、観ている途中でこの演目、3年前にジャブジャブサーキットのこまばアゴラ劇場公演で観たのを思い出した。今回のバージョンも負けず劣らず良かったですね。つい最近家族の葬式を行ったばかりで、特に身に沁みました。

夏至の侍

夏至の侍

劇団桟敷童子

すみだパークシアター倉(東京都)

2022/06/07 (火) ~ 2022/06/19 (日)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★★★

鑑賞日2022/06/08 (水) 14:00

(うっすらと内容に触れているので念のためにネタバレBOXへ)

ネタバレBOX

ハードな悲劇が得意(?)な桟敷童子、今回は珍しくソフトランディング?
美しいラストも複数に解釈できるが悲劇側に受け取っても救いがある感じ。
終盤の台風の場面で音無さんが表現した「母の愛」がそちらに導いたのかも?
そこに時代の流れから終わりゆくものの切なさが漂い「あぁ、これもやっぱり桟敷童子だな」な感じ。
瀬沼さんのことを何も知らない

瀬沼さんのことを何も知らない

ライオン・パーマ

シアターKASSAI【閉館】(東京都)

2022/06/08 (水) ~ 2022/06/12 (日)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★★★

下北沢での公演が中止になり、やっと観られた。台詞の面白さや間の取り方など相変わらずのライオンパーマらしさ。メロンパンなどお約束の笑いだが、やっぱり笑いを誘う。個人名のタイトルがそのまま役名というのは、なるほどだった。そして今回、明らかに深化した作品に仕上がっていたのはライオンパーマの進化の証だと思った。コロナ禍にめげず、劇団の神化を期待‼️

オロイカソング

オロイカソング

理性的な変人たち

アトリエ第Q藝術(東京都)

2022/03/23 (水) ~ 2022/03/27 (日)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★

亡くなった姉の子を育てた祖母、シングルマザーとして奮闘する母、性暴力事件をきっかけに溝が生まれてしまった双子。女性だけの三世代の家庭を舞台に、性暴力が残し続ける傷、その深さにいかに向き合い、寄り添うかが描かれます。当事者の哀しみ痛みだけでなく、周囲の戸惑いや過ちも静かに見つめ、解きほぐしていく手つき、プロセスが印象的な作品でした。

とりわけ、音信不通となった姉・倫子(西岡未央)と、その心を追って旅することになる妹・結子(滝沢花野)の関係は、少女期の二人のアンサンブルの良さも手伝って、直接の被害者ではない(と思っている)人間が、どのように、性暴力や差別と向き合っていくかというヒントを示しているようにも思えました。

ネタバレBOX

会場の割には、やや声を張った芝居が多く、そのことが演じるキャラクターを「典型」に見せてしまうところはもったいなかったなと感じています。また、母、祖母の世代が何を感じ、考えていたのかはそれほど語られず、双子だけでない家族(母から娘)の肖像はやや薄いように感じました。ただ、二人のキャラクターをそれぞれが生きた時代の肖像としてとらえ、想像を膨らますことはできましたし、それもこの物語の背景には欠かせないものだったと振り返っています。
残火

残火

廃墟文藝部

愛知県芸術劇場 小ホール(愛知県)

2022/05/20 (金) ~ 2022/05/22 (日)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★

「平成」にフォーカスしながら、いつか訪れる東海地震への漠たる不安を抱える少年と阪神淡路大震災で生き残った少女との出会いと、20年強にわたる交流を描くドラマ。
両親と片腕をなくし、深い悲しみ、トラウマを抱えながらも生きるヒロイン「火花」の強さ、美しさが際立つ舞台でした。後に東日本大震災に遭遇することになる友人「歩鳥」も交えた日々の風景に、語り手の少年(後の青年)の持つ「カメラ」の視点が持ち込まれるのも(ベタだともいえますが)効果的だったと思います。
3つの震災を並列にしそれぞれを主要な登場人物が経験するという筋立ては、(「平成」がそうした災害と共にあったという見立てにはうなづく部分もありつつ)図式が過ぎるとも感じましたが、俳優たちが発する今を生きていることの迷いや輝きが、その作為の跡を薄くし、ドラマをうまくドライブさせてもいました。

ネタバレBOX

それだけに終盤、架空の「東海地震」が多くの犠牲者を伴う形で起こり、ヒロインに死をもたらすという展開には非常に驚き、考えさせられました。「平成」を象るものを明確にし、ここまでに少しずつ積み重ねてきた生の喜び、強さを、逆照射するためだとしても、これは悪しきセンセーショナリズムなのではないか。2つの震災を、そのトラウマも含めて描いてきた時間はなんだったのか。疑問が残りました。
9人の迷える沖縄人

9人の迷える沖縄人

劇艶おとな団

那覇文化芸術劇場なはーと・小劇場(沖縄県)

2022/05/13 (金) ~ 2022/05/14 (土)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★★★

まずチラシやタイトルロゴが洒落ていて「おっ」と目を惹かれました。そこに9人、いるんですね。そして「9人」という人々がそれぞれ『有識者』『本土人』などのあるカテゴリーを背負っているのですが、それが、物語のための設定になりすぎず、そこに生きる一人ひとりの人間の存在として立ち上げられていました。それは取り上げたテーマの切実さでもあり、演劇への信頼と積み重ねがあるからではないかなと感じました。

ネタバレBOX

舞台は、1972年の本土復帰目前に集められた人々……を演じる現代の演劇の稽古場、です。この劇中劇の差がそれほどなく、物語としてはわかりづらいといえばそうなのですが、私はポジティブに受け取りました。1972年の9人の迷う声は、過去のものではありませんし、色褪せてはいけない。現代の自分達にとってもリアルな日常なのだ……という意志だと思えました。2つの時代がまざっていく感覚は、切実さでもありました。そう感じたのは、私の子どもの頃の沖縄での戦争研修にはじまり、その後何度か基地問題などに関わった実体験が呼び起こされたからかもしれません。とすると、観劇した人の沖縄との関係によって、感じたことや見える景色が違ってくるのかもしれない……他の人の感想がとても気になるなと思いながら客席に座っていました。
また、「役を演じているシーン(劇中劇=1972年)」と「演じていないシーン(現代)」が入り混じっていくことで、演劇(非日常)と演劇以外(日常)の境界が曖昧になります。それは、沖縄のなかでさまざまな演劇活動をする俳優達が集った今舞台において、「演劇ってけっこう身近だよ」「演劇を好きになってほしいな」というアプローチにも感じられました。沖縄で活動する9人の沖縄演劇人たちによる、演劇熱に満ちた作品だと思います。

復帰にまつわる情報量が多く混乱するところもありますし、構成としても「学び」感があります。けれども、息を抜ける工夫も散りばめられていました。スクリーンとイラストを用いるシーンでは客席からリラックスした笑いが起こり、深刻な話が続く中でちょっと離れた場所で太極拳(?)をする復帰論者(犬養憲子さん)は空気をまろやかにしていました。宮城元流能史之会の宇座仁一さん(文化人役)が踊るシーンは劇中において大きく空気を変え、それまで作品を覆っていた「言葉」とは違う手段で沖縄の歴史や文化を舞台上に出現させる印象的な時間でした。
また、地元で上演したからでしょうか、上演中に客席から「へえ~!」「あれってこうだよね!」など気負いないポジティブな声が聞こえてきたのも印象的でした。

ドラマティックな音楽や照明など、基本的には賑やかな舞台のなかで、音はせずに存在する扇風機がいいですね。風が吹き続けますように。

終演後、個人的に沖縄の味や踊りを楽しみ、またひめゆり平和祈念資料館や平和記念公園をまわりました。これまで何度か訪れた沖縄が、また違ったふうに見えました。劇場に入る前と出た後では世界が変わっている。それが身に染みた観劇でした。
これまで沖縄以外で上演されたこともあるそうですが、今後も再演していくにあたっては、県外の人に向けた「作品+沖縄の〇〇」のパックやツアーなどもあると、演劇と生活と自分の生活以外の現実が地続きになっていくのではないかな、それができる強度のある作品だなと思いました……と勝手な願望と妄想が膨らんでしまうほど、沖縄で観られて良かったです。
透き間

透き間

サファリ・P

東京芸術劇場 シアターイースト(東京都)

2022/03/11 (金) ~ 2022/03/13 (日)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★

観劇前の第一印象は「難しい企画だな」というものでした。アルバニアの実際にあった“復讐の掟”を題材にした小説『砕かれた四月』と、コソボ紛争経験者との対話と、作者の祖父という個人的な要素をひとつの作品で同時に登場させようというのですから。現実に存在する他者の痛みと作り手個人の痛みを作品において繋げれば、「相手の痛みを奪っていないか」「芸術のもとに搾取していないか」という問いかけがうまれます。この時に、いかに題材となる他者を尊重し誠実であるか、あるいは自分の物語として最後まで覚悟を持ち切って創作を走り切るか……。いずれにしろ素朴ではいられない、と私は思っています。
というところで観始めた今作ですが……

ネタバレBOX

せりふのほぼないフィジカルな表現のため、上演からはそれらがなんの要素から立ち上がったものかは明言されません。当日パンフレットの<場面構成>を読むと、基本的には『砕かれた四月』を踏襲しているよう。そうした表現と構成の選択は、上演にあたって非常に良かったと思います。観客の想像力によって、ある地域のある大きな流れのなかに存在する問いが、徐々に私たち多くの人間が抱えているはずの課題や、(おそらくはからずも)現代の社会情勢と重なっていく。後半、妻(佐々木ヤス子さん)が、ほかの人びとに飲み込まれるような動きの時は胸が苦しくなりました。せりふを極力廃したことも功を奏していました。

冒頭、舞台上に敷かれた台の隙間から出てくる手が非常に美しかったです。一気に引き込まれました。その後の台の下での動きなど、シンプルながら分断と連なりを感じさせる空間の使い方も興味深かったです。ただ後半につれ、私の作品背景(アルバニア等)への無知さゆえかもしれませんが、なぜこの場面でその身体表現をもちいたのかわからなくなるシーンも、正直ありました。

当日パンフレットが上演に深く触れ、あまりにも充実していたため(作成、本当にお疲れ様です…!!)、その存在に気づかず受け取りそびれた人が数名いたようなのはもったいないなと感じました。コロナ禍において、たとえば手渡しできないなど劇場のルールなどもあるのかなと思うのですが、もうすこし目に付く形で当日パンフレットをもらう/もらわないの選択ができるといいなと思います。

20世紀初頭のアルバニア地域での価値観や文化背景について、私は深く知りません。そこに生きた登場人物たちにとって、慣習や起こる出来事はどういう意味を持っていたのか……。作品に入り込むほどに、その地で実際に命を奪われた/奪った人々・遺された人々の思いを想像しきれないということに直面します。最初に「痛み」について書きましたが、「痛み」「傷」「暴力」などは背景が変われば、当人にとって意味や正当性が変わる可能性があるものだということをあらためて忘れないようにしようと思いました。
ふすまとぐち

ふすまとぐち

ホエイ

こまばアゴラ劇場(東京都)

2022/05/27 (金) ~ 2022/06/05 (日)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★

テキストと空間の立ち上げ方に巧緻さが光る、ホエイの代表作となり得る一作。

ネタバレBOX

 姑による嫁に対する「いびり」とその結果の嫁の押し入れへの引きこもりが表出する家庭内の歪みを、時にコミカルに時に不条理に描く。温かい言葉はほとんどなく、互いに対する不寛容だけが込められているが、津軽弁のリズミカルなやりとりによって本来そこにある陰湿さがなくなっている。テキストは「嫁いびり」を通り越して家庭内暴力にまで展開する粘着と苛烈さを、しかしそれらを感じさせずにエンタメとして展開しており、山田百治のバランス感覚に脱帽した。
 そのバランスは俳優の演技にも見て取れる。山田が演じる老婆、中田麦平が演じる小学生男子は、もうほとんど本人であり老婆や小学生に見えるかというと怪しいのだが、それゆえに滑稽さと嫌悪感を抱かせるのに十分な効果がある。特に印象に残ったのは成田沙織の演じる小姑である。嫁や自分の娘に寄り添うように見せながら実は誰よりも自分本位である、その図々しい様を見事に演じ切っていた。
 嫁が引きこもっていた押し入れがやがて姑が寝たきりになるベッドとなる構造は見事であり、また単なる復讐劇にしない結末は観客に思考の余韻を与える。他方で、テーマとなるその押入れの「ふすま」を最後まで見たかったという欲望もなくはない。また、コミカルに振ったためか、いまひとつ感情的に動かされる部分が少なかったのは(恐らく意図的だろうが)やや物足りなさを感じた。とはいえ、テキストと空間の構成、演出の合致は見事であり、本作はホエイの代表作となり得るだろう。
ふすまとぐち

ふすまとぐち

ホエイ

こまばアゴラ劇場(東京都)

2022/05/27 (金) ~ 2022/06/05 (日)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★★

ほぼ全編津軽弁によるドタバタ家庭劇。上演前にプロデューサーによる簡単な津軽弁講座があり、(結局わからない部分は思っていた以上にありつつも)楽しく観劇できました。
いじわるばあさんを思わせる姑・キヨ(山田百次)と必要な家事以外の時間は押し入れに閉じこもって暮らす嫁・桜子(三上晴佳)の嫁姑戦争を軸にした物語は、過剰な事件も交えつつ、終始ハイテンションな演技で進行します。ですが、実のところこの物語の背景にあるものはむしろ、重苦しく苦い現実ではないでしょうか。

非正規の仕事しかない長男・トモノリ(中田麦平)しかり、出戻りの娘・幸子(成田沙織)しかり、キヨの支配するこの家から自立すべきだと知ってはいても、すぐにそれを実行できるような状況にはないようで、だからこそなんとなくキヨの支配に従っています。一方、敵対しているはずの嫁姑の関係には、キヨが嫁に悩みを共有する「親族」なる怪しい団体と引き合わせようとしたり、桜子がキヨの嫌う虫をハサミで撃退したり、急病の気配にいち早く気付いたりと、緩やかな絆を伺わせる面もあります。二人は共に孤独を抱えながら「家庭」を支える役目を負う仲間でもあるのです。

ネタバレBOX

桜子が閉じこもり、時折内側から抵抗の意を示すために「ドンッ」と叩く押し入れは、終盤キヨの療養するベッドとして使われます。この押し入れが、この家族の心臓部なのではないか、逃れたくても逃れられない「家族」を象徴し、つなぐものではないかと想像すると、この劇の空間設計のダイナミズムに驚くと同時に、日本(のとりわけ地方)を覆いつづける生活の不安と、「家族/親族」の呪縛のリアルな重みに思いを馳せずにはいられませんでした。
『器』/『薬をもらいにいく薬』

『器』/『薬をもらいにいく薬』

いいへんじ

こまばアゴラ劇場(東京都)

2022/06/08 (水) ~ 2022/06/19 (日)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★★★

鑑賞日2022/06/15 (水) 19:30

『薬をもらいにいく薬』先日観て、あまりにも良いので再度の観劇。やはりいい!(6分押し)104分。
 不安障害を抱える女性(タナカエミ)がバイト仲間の男(遠藤雄斗)とカレシの出迎えに羽田まで行こうとする…、な話。選ばれた台詞での緻密な戯曲、丁寧な演出、それを出現させる役者陣、と、2度観て実に良く出来た芝居だなと思った。女性役のタナカエミの表情が場面に応じて変化する様子に改めて感激し、軸になる2人以外の3人のシーンが補完するものにも気づいて、実に深い作品だと思った。
 もう1回くらい観に行きたいけど、チケットがないみたい(;/_;)。それと9時を回って終演する舞台で6分押して何も言わないのは、やめてほしい。

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