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伯爵のおるすばん

伯爵のおるすばん

Mrs.fictions

吉祥寺シアター(東京都)

2022/08/24 (水) ~ 2022/08/28 (日)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★★


Mrs.fictionsはあまりなじみのない小劇団だが、春にアゴラでみた「花柄八景」は今年の小劇場ベストテンにはきっと入るに違いない良い出来で、今回の「伯爵のおるすばん」も、劇団の看板演目で3演目と言うので期待して見に行った。劇場もアゴラからは格(客席数)上げで吉祥寺シアターだ。
Mrs.fictionsという小洒落れたネーミングの劇団も、作・演出の中島康太もこの二作以外は知らないし、今までのほとんど活躍の跡を知らない。たとえば、春に初めて見たMotextraの須貝英は少し調べたら、経歴が分かったが、この作家は今の段階では、ネットを検索した程度では出身・経歴が全然わからない。中島を軸に俳優数人の劇団らしく、今までも、多くの出演者はエイベックスの劇団4ドル50セントから借りている。今回は、さらに数人の客演があって出演者が12名。小屋に合わせてスケールアップしている。2時間20分と長い。
作・演出中島康太は、本も舞台面も細かく丁寧で、今の若者劇団にありがちの乱暴なところや、品のないところがない。大人のタッチなのだ。二作に共通しているのは、各エピソードは格段に面白いのに、劇の骨組みが弱いことだ。ちょっと素人っぽい匂いもする。
今回のテーマは、「不老不死は果たして人間にとって幸せなのか?」
作風はファンタジー志向と言うか、見た2つの作品とも舞台設定は未来に飛ぶ。「伯爵のおるすばん」は5つの時代のエピソードからできていて、始まりは1722年、次第に現代に近くなり、時代を超えて、最後には地球滅亡の日に至る。その間、56億年の物語が不死の定めのある伯爵(前田雄雅)と共に語られる。
それぞれの時代のエピソードは仕込みがあって面白いが、「花柄」のような具体性を欠くので、変化に乏しくなる。花柄が、落語の師匠に軸を置いてブレないが、こちらのブルボン伯爵は国籍も明確ではなく一貫性も見えないし、女性である。観客にとって具体的につかみにくい。ファンタジーはキャラクターものでもあるので、この「伯爵」の設定が苦しい。時代が変わるにつれて、存在そのものが具体性を欠くようになって、伯爵役の前田雄雅も戸惑っているようにも見えた。ファンタジーをうまく使って現代劇を作ったのはイキウメだが、こちらも芯の構造がしっかりしていると面白いファンタジー世界になったのにと残念。だが、今の劇界を見渡してこういう作風の作者が少ないだけに貴重な存在だ。
吉祥寺シアターはアゴラよりは一回り大きい小屋だが、見た回は3分に2くらいの入り。しかし、もうこのクラスの劇場での上演は出来るレベルは達成している。しっかり足場を固めて、次は1公演・公演数15を目指して、ユニークな舞台を見せてほしい。期待している。それにしても、この作者、どこから出てきたのだろう?

ネタバレBOX

ヴァンフル―さんの4コマ漫画の連作、と言う批評はうまく言い当てていると思いました。
伯爵のおるすばん

伯爵のおるすばん

Mrs.fictions

吉祥寺シアター(東京都)

2022/08/24 (水) ~ 2022/08/28 (日)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★★★

めっちゃ良かったです!
不老不死の伯爵が愛くるしくて切なくて。長めの上演時間もあっという間。釘付けでした。衣装も舞台美術も見事!演者も芸達者達!
良い時間をありがとうございました。

ごみ溜めの中のジュリエッタ

ごみ溜めの中のジュリエッタ

骸骨ストリッパー

武蔵野芸能劇場 小劇場(東京都)

2022/08/26 (金) ~ 2022/09/04 (日)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★★★

今日観てきたのは、表バージョン。
コメディ、ダンス、唄、テクノロジー、恋愛、諍い、家族愛。これでもかって云うぐらい色々な要素の詰まったストーリー展開を只々楽しんでいる内に、あっという間に2時間の上演時間が過ぎた感じ。
ロミオとジュリエットから500年後の設定なので無理なく話に入っていけた。
羽柴なつみさん演じるジュリエッタ(アンドロイド)が可憐だったなぁ。

トロイ戦争は起こらない

トロイ戦争は起こらない

人間劇場

シアター風姿花伝(東京都)

2022/08/24 (水) ~ 2022/08/28 (日)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★★

劇作家ジャン・ジロドゥが、ギリシャ神話のトロイ戦争と戯曲執筆当時1935年の第二次世界大戦前後を重ね合わせて描いた戯曲。戯曲(内容的に)は力強いが、演出は独特な雰囲気を漂わせていた。叙事詩のような描き方は、物語のテーマともいえる「望まぬ戦争に向かっていく人間たち」という重厚 骨太作品を、観(魅)せる作品として観客に寄り添わせようとしているみたいだ。
演出の立本夏山さんが当日パンフに「3000年前にも戦争があって、100年前にも戦争があって、今も戦争がある。歴史的に見れば人間は戦争を繰り返しています。なぜ戦争は起こるのでしょうか?」と記している。さて、現在「ウクライナから平和を叫ぶ」というドキュメンタリー映画が上映されている。そのキャッチコピーは「21世紀になっても人は戦争がしたいのです」…辛辣である。
(上演時間2時間45分 途中休憩10分含む)

ネタバレBOX

舞台美術は、大きさの違う平台を組み合わせ、中央奥に太針金を曲げ組(編)み込んだようなゲート状。上手にも幾何学的な針金オブジェ、奥には階段がある。一見「トロイ戦争」という時代を感じさせない現代アートの中にいるようだ。トロイ戦争を題材にしているが、「人間劇場版音楽劇として現代に蘇らす」そして「時代を超えて、戦争とは何か、人間とは何かを問いかける」と謳っていることから、敢えて 物語の背景を作り込まないようにしているようだ。とは言え、キャストの衣装はトロイ・ギリシャ風である。

トロイ戦争は、ヘクトールやアキレウスといった勇者やトロイの木馬で有名である。物語は休憩を挟んでの二部構成。第一部は、トロイ戦争が起こる前の束の間の平和をどう捉えるか、といった人間の思いの違いを描く。特に男と女の意識の違いを詩の一節を準えつつ語る。第二部は、トロイの王子パリス(石川朝日サン)がギリシャの絶世の美女エレーヌ(田村彩絵サン)を誘拐したことでトロイは再び戦争の危機を迎える。エレーヌの魅惑的な容姿こそが平和の象徴という王、元老そして学者たちは、色々な理屈をつけて彼女の返還を拒もうとするが…。
全編を通じて、平和を守ろうと奔走するのが、トロイの王子エクトール(脇田康弘サン)である。彼は度重なる戦争で人の死を見てきた。その悲しみ虚しさは終盤近くになって語られる。ラストは、軍人による平和協定を壊すシビリアンコントロールの暴走、戦争とは人間の愚かさ そのものを提示する。

脚本(内容的に)は、考えさせるシーンが多く、語られる言葉(長台詞)は珠玉で記憶に留めておきたい。特に第一部の 戦争は「男」を勇者として称える場と考える男の立場、一方、平和は男も女も関係なく生きるに通じると考える女の立場が叙情的に描かれる。エクトールの妻アンドロマック(桑原なぉサン)は妊娠しており、生を愛しんでいる。
第二部は美女エレーヌに翻弄される人々の滑稽さが浮かび上がる。公演では端的に「男と女の立場」の違いで描いているが、性差だけではなく色々な立場や考え方の人々の違いを尊重することが重要なのは明らか。勿論、多数意見だけではなく少数意見、その少数の男の考えと行動がエクトールであり、ぶれない信念が物語の救いであろう。

演出は、「劇中歌を新たに創作し、音楽劇として蘇らせている」が謳い文句である。歌はアカペラ、そして鳥や獣の鳴き声などの擬声音。さらにパーカッション(楽器)を多用し情景や状況を描き出す、その「音」に拘りをもたせた公演である。演技はメインの役柄+コロスを担う。そして男と女に限らず、男同士、女同士でも体や腕を絡み合わせるようなムーヴメントが妖しく蠢く。勿論、男女の絡みは愛情表現、男同士は争い、女同士は語らいといった違いはあるものの、視覚的にはその身体の動きを追ってしまう。面白い演出と思うが、他方、小道具はビニール傘(骨)のようなものを利用した剣や王冠等の装飾品、その見た目に違和感を覚えるのだが…。
次回公演も楽しみにしております。
トロイ戦争は起こらない

トロイ戦争は起こらない

人間劇場

シアター風姿花伝(東京都)

2022/08/24 (水) ~ 2022/08/28 (日)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★

四季でも演っていないジロドゥを音楽劇でと言う事で、かなり期待していたのだが・・・かなりの肩透かしだった♪

伯爵のおるすばん

伯爵のおるすばん

Mrs.fictions

吉祥寺シアター(東京都)

2022/08/24 (水) ~ 2022/08/28 (日)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★★★

今まで見た小劇場の舞台の中でもトップ5には最低でも入るぐらい印象に残る素晴らしい劇でした。
よく練られた脚本に何度も笑い、舞台のセットのマッチや俳優さんたちの演技に魅了しました。
今回、3度目の上演ということですが、再演になるのがわかる気がします。
帰りの物販コーナーで初演と再演のDVDが販売していたので思わず初演を買ってみましたが
次回もし、再演があったら今回のか、2回目の再演のDVDを購入してみようかな。

伯爵のおるすばん

伯爵のおるすばん

Mrs.fictions

吉祥寺シアター(東京都)

2022/08/24 (水) ~ 2022/08/28 (日)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★★★

鑑賞日2022/08/26 (金) 19:00

2013年に初演、2019年に再演された作品の再々演だが初見。とても面白い。観るべし。133分。
 何故か不老不死になった「伯爵」の18世紀から始まって5つの時代を描く。本劇団独特の言葉遣いで笑わされるのだが、途中からとても悲しい物語だと分かり、どうなるんだろうか、という気持ちで観た。前作『花柄八景』とも通じるテーマで、同劇団らしい題材だと思う。エンディングは少しホッとするのだが、そこで流れた小泉今日子の「丘を越えて」でちょっと泣いてしまった(^_^;)。伯爵を演じた前田悠雅はほぼ出突っ張りで頑張っているが、全時代で登場する岡田帆乃佳がいい仕事をしている。

伯爵のおるすばん

伯爵のおるすばん

Mrs.fictions

吉祥寺シアター(東京都)

2022/08/24 (水) ~ 2022/08/28 (日)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★★★

とても面白かったです。少し長めの公演時間でしたが気になることもなく物語りに引き込まれました。伯爵を演じてる女優さんの演技もとても素晴らしかった。淡々とお話しされてるようで、感情が溢れるような演技は、他の皆さんの演技も含めて本当に見ごたえがありました。
内容もほんと良かった。笑いもちりばめられていながら、物語の真はしっかり通ってる。口コミでかかれてる皆さんが何度も再演を見たくなる理由が納得でした。

銀河鉄道の夜

銀河鉄道の夜

東京演劇アンサンブル

池袋西口公園野外劇場 グローバルリング シアター(東京都)

2022/08/26 (金) ~ 2022/08/28 (日)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★★

『銀河鉄道の夜』と謳われれば兎に角観たくなるもので、「現代劇センター真夏座」の文京シビックホール公演も行った。(初期形のブルカニロ博士オチ〈夢オチ〉で驚いた)。
今回は野外ということで滅茶苦茶期待。ステージから花道が伸びセンターステージもある。後方の櫓も張り巡らされたピアノ線も活躍。壁に投影される映像のレベルが高くセンスよく美しい。作品の視覚化に役立つ。楽曲の質も素晴らしく、歌と踊りのシーンは矢鱈と盛り上がる。

ジョバンニ役の山﨑智子さんはJITTERIN'JINNのヴォーカル・春川玲子似。歌が上手い。
カムパネルラ役は永野愛理さん、綺麗。
語り手は奈須弘子さん、牛乳屋も兼ねる。
ザネリは永濱渉氏、余り出番がなかった。
さそりは青柳万智子さん、かなりの見せ場が。
他のキャラクターは古代ギリシア劇のコロスのように仮面を付けた複数の者達が演じ、影となって作品を彩る。
鳥捕りのエピソードにかなり力を入れていた。

リンゴのエピソードの時にマイク(PA?)トラブルが起こり、その後音声が乱れてしまう。非常に残念なアクシデント。

想像力の果てしない旅に出る少年の一夜。

ネタバレBOX

骨だけの魚やプリオシン海岸で“未来の化石”を発掘する博士達、寺山修司っぽい。さそりの舞で噴水が噴き出す演出。
ラストはあっさりカムパネルラが消え、父親が別れを歌う。不思議な終わり方。

鳥捕りは未来のジョバンニなのかも知れない。
追憶のアリラン(8/18~8/26)、無畏(8/24~8/27)

追憶のアリラン(8/18~8/26)、無畏(8/24~8/27)

劇団チョコレートケーキ

東京芸術劇場 シアターウエスト(東京都)

2022/08/18 (木) ~ 2022/08/27 (土)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★★★

鑑賞日2022/08/24 (水) 14:00

【無畏】
南京事件の責任を問われ東京裁判の被告となった陸軍大将とその日本人弁護士を中心に描く。
自分の与り知らぬことであっても配下の者が行ったことは自分の責任として対処する司令官……どこぞの政治屋センセイ方と真逆なのは初演時も感じたが昨今の情勢からより皮肉に感じられるのがまた何と言おうか。
また、ラストの弁護士の台詞、脚本の古川さんの想いそのままではないか?とも思った。

舞台「宿題の杜」

舞台「宿題の杜」

NAYUTA

STUDIOユーキース(東京都)

2022/08/20 (土) ~ 2022/08/28 (日)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★★★

鑑賞日2022/08/26 (金) 15:00

コミカルな部分もあるが、真面目な教育論も随所で展開。小さな劇場で、役者との距離がものすごく近く、臨場感が超抜群。

トロイ戦争は起こらない

トロイ戦争は起こらない

人間劇場

シアター風姿花伝(東京都)

2022/08/24 (水) ~ 2022/08/28 (日)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★★★

トロイと、その時代の雰囲気が楽しめる、観応えのある作品でした。
役者さん達は皆、長い台詞をこなし、喜怒哀楽の表現や、怪しく美しい動きが独特で見入ってしまいました。
音楽は、役者さん達が楽器や声で奏でていて、独特な世界を醸し出していました。
このトロイ戦争だけではなく、様々な戦争を起こす原因や人について、考えさせられました。
素晴らしい舞台でした。

帰還不能点(8/17~8/21)、短編連続上演(8/25・26)、ガマ(8/29~9/4)

帰還不能点(8/17~8/21)、短編連続上演(8/25・26)、ガマ(8/29~9/4)

劇団チョコレートケーキ

東京芸術劇場 シアターイースト(東京都)

2022/08/17 (水) ~ 2022/09/04 (日)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★★

鑑賞日2022/08/26 (金) 14:00

短編集2本立てを観劇。
改めて戦争を思い起こす機会になりました。
期待していた中野さんの立ち振る舞いをはじめ、出演されている演者のそれぞれの気持ちを感じられて良かった。

ニュー・イリュージョン

ニュー・イリュージョン

チェルフィッチュ

王子小劇場(東京都)

2022/08/21 (日) ~ 2022/08/28 (日)公演終了

実演鑑賞

満足度★★

鑑賞日2022/08/25 (木) 18:00

有名な劇団だが私とは相性が悪く、本作もフィットしなかった。62分。
 「映像演劇」というものにチャレンジているそうで、縦約3.5m×横約2mの2枚のスクリーンを2mほど間を空けて置いてあるところに、演劇の映像を写す形での上演。主に男優と女優が1人ずつ出てきて(ほかにギター/ベース演奏者が1人)、物語を語り出す。セットを片付けた劇場で、昨日までそこで上演されていた芝居の話…、という展開。演劇は観客の想像で補うもの、という主張には同意するが、展開されるゆっくりなテンポの動きとセリフ回しがちょっと…。
 映像を演劇と思えるかというのは重要な問題で、私は「生身」が演劇だと思っている(したがって、配信という形の演劇は観ない)ので、かなり違和感がある。

帰還不能点(8/17~8/21)、短編連続上演(8/25・26)、ガマ(8/29~9/4)

帰還不能点(8/17~8/21)、短編連続上演(8/25・26)、ガマ(8/29~9/4)

劇団チョコレートケーキ

東京芸術劇場 シアターイースト(東京都)

2022/08/17 (水) ~ 2022/09/04 (日)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★

『○六○○猶二人生存ス』(マルロクマルマルナオフタリセイゾンス)
45分。ろ組。
黒木博司大尉は今井公平氏、樋口孝大尉は宮崎柊太氏、後藤俊康整備員は谷口継夏氏。
魚雷を自ら操縦して敵艦に特攻する人間魚雷兵器「回天」。1944年9月6日、訓練開始初日に黒木大尉と樋口大尉の乗る「回天」は荒波に呑まれて海底に突き刺さる。

休憩10分。

『その頬、熱線に焼かれ』
65分。ろ組。
1955年、「原爆乙女」と称された25名の被爆女性がニューヨークの病院に招かれ、ケロイド治療を受ける。しかし麻酔事故の為、手術中に一人が亡くなってしまう。遺されたメンバーの様々な葛藤。ケロイドの特殊メイク(梅沢壮一氏)が見事で凝っている。

ネタバレBOX

①酸素が無くなるまで二人は、この事故を只の犬死にではなく明治の英雄・佐久間勉(つとむ)大尉のように後進に寄与する有意義な報告をし、戦意高揚の旗印とならんとす。生き残った後藤整備員はこの国の戦争は一人でも多くが死ぬように導かれていく、と嘆く。
②本宮真緒さんのメイクは凄い迫力。谷川清夏(きよか)さんも印象に残った。何と言っても中野亜美さんの存在感に驚く。死ぬのはむごく生き残ることも辛い。

男達は美しき死を願い、女達はそれでもしぶとく生きていく。
矢張りこの作家は短編向きではない。
トロイ戦争は起こらない

トロイ戦争は起こらない

人間劇場

シアター風姿花伝(東京都)

2022/08/24 (水) ~ 2022/08/28 (日)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★★★

トロイの王様、妃、プリンスなどトロイの雰囲気がとても素敵で、それに音楽劇が加わり、私的にはドップリ楽しめた。
エレーヌ役の女性が出てくるのを今か今かと待ちわびた。
絶世の美女だというので。確かに魅力的な綺麗な人で、怪しい雰囲気もあり、引き込まれました。
メインの人たちが演じている間、それ以外の人たちもひとりひとり大切にうなり声をあげたり、からだ全体で演じていて、両方を満喫できるのはスゴかったです。
本格的なお芝居で、とても素晴らしくて、大満足でした。

トロイ戦争は起こらない

トロイ戦争は起こらない

人間劇場

シアター風姿花伝(東京都)

2022/08/24 (水) ~ 2022/08/28 (日)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★★★

 ラスト「トロイの詩人は死んだ」云々でホメーロスの「イーリアス」を予言している点の何とも言えない痛烈は流石にジロドゥと言った所。

ネタバレBOX

 板上は可成り特徴的な舞台美術で占められている。針金を用いて作られた門や、ハッキリ使用目的の分からない巨きな構築物、椅子の足の間に組まれた鋭角的で銀色に光る構造は、たくさんの刃物が、その、本来空洞であるべき空間を敵意で満たしているようであり、更に下手客席側にも殆ど無意味な針金の構築物、その上手客席側には上部円盤の縁に取り付けられた針金が廃墟の跡に吹く風に空しく回転するが如く物語の合間に回転する装置。板上の他の造作は基本的に平台を組み合わせて作られているが、これらの組み合わせ方は全体に不安定感を煽るように構成されている点も見逃せない。更に出捌けには通常の舞台ホリゾント方向の出捌けと共に客席通路が出捌け用に用いられ、トロイサイドとギリシャサイドをほぼ2分割している。
 原作はジロドゥが祖国フランスが第2次世界大戦に傾いてゆく1935年に、約3000年前に起こった‟トロイ戦争“をテーマに書いた戯曲である。誰も望まぬ戦争が何故起こって来、今もまた繰り返されるのか? との問いが今作の提起する問題であるが、原作者の苦渋とアイロニーに満ちた今作の白眉は、矢張り二場でギリシャ側の使者・オイアックスが登場して以降の展開であろう。無論、オイアックスは次に登場する真打・オデュセウスの前座に過ぎないが、この道化の奇抜な言動の効果なしにオデュセウスの言動の真価はここ迄効果的には描けなかったと観るべきであろう。戦争の門が閉じられるとその表には平和の象徴、オリーブの葉が鏤められている点だけを見ても、戦争の愚かさと狂気は誰の目にも明らかであり、殊にその真の姿を知る者は、誰一人として開戦を望まぬにも拘わらず、人は戦争をことある毎にし続けてきた。この愚行を齎すのみならず、更に悪いことには繰り返し続けることの馬鹿らしさを真正面から捉えようとした、これこそ本来的な不条理劇の傑作というべき作品であろう。
 さて、先に挙げた今作の白眉は、言う迄も無くヘクトール(作中ではフランス語発音はHを発音しないのでエクトール)とオデュセウスの戦争を回避する為の討議のシーンである。充分注力して今作の台詞の醍醐味を堪能して貰いたい。
追憶のアリラン(8/18~8/26)、無畏(8/24~8/27)

追憶のアリラン(8/18~8/26)、無畏(8/24~8/27)

劇団チョコレートケーキ

東京芸術劇場 シアターウエスト(東京都)

2022/08/18 (木) ~ 2022/08/27 (土)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★★

『無畏』
初演を駅前劇場でフェイスシールド汗ダラダラで観劇。その時は「ここまでやるか」と作家の覚悟に畏れ入る。ちょっと前だったらこの内容はヤバかった。1998年、横浜黄金町のシネマベティでジョン・ウー製作の『南京1937』の上映中、右翼が乱入してスクリーンを切り裂いた。兎に角この手のネタはあれやこれやで潰される。面倒を厭う企業はタブー化して問題を更に深刻にする。ネット全盛の時代、情報はダダ漏れ、隠蔽して封印してしまえば国民は騙されるなんて最早無理。ちょっと知性があれば南京で皇軍が何をしたか?なんてすぐに分かる。
2度目の今回、「作品として随分よく出来ているな」と感心。判り易く丁寧、無駄な遣り取りを削ぎ落としている。初演から弄ったのかは不明だが、かなり観易い。簡潔に松井石根陸軍大将・上海派遣軍司令官の南京大虐殺に至るまでの罪を暴き出している。
大量の書籍が机や床に三箇所山積み、椅子の上に積み上げられた書籍も二箇所配置。ただそれだけの簡素な舞台美術だが非常に効果的。
何故、日本軍は掠奪強姦虐殺放火を大陸中で繰り返したのか?
当時の兵士達が全てを告白するドキュメンタリー映画、『日本鬼子』(リーベン・クイズ)も観て欲しい。

ネタバレBOX

西尾友樹氏が冷徹冷酷に林竜三氏を徹底的に追い詰めるクライマックス。暗闇の中、眼鏡のフレームだけがギラリと光るシーンが印象的。西尾氏はこういう役が本当に似合う。松井石根を抱きかかえてぶん投げる。幼児のように惨めに床に転がされる松井。本当なら三船敏郎のような体格だった方がこの効果は生きた気がする。
興亜観音に参りに行く西尾氏の姿で終わる。

松井石根の私設秘書役の渡邊りょう氏がいい味。こういう日本人が一般的だろう。
伯爵のおるすばん

伯爵のおるすばん

Mrs.fictions

吉祥寺シアター(東京都)

2022/08/24 (水) ~ 2022/08/28 (日)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★★★

実に壮大で悲哀で愛すべき物語でした。伯爵の膨大な時間の中で、その刹那を生きる人達との関わりが愛しくて切なかったです。相変わらず言葉選びが秀逸で笑いもあり、悲しくなり過ぎない所も良いですね。三回目の上演との事で、初めて観ましたが、とても大好きな舞台です。

魔と怨の伝説

魔と怨の伝説

劇団1980

シアターX(東京都)

2022/08/17 (水) ~ 2022/08/21 (日)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★★

そうだ藤田傳・・・今回のは初見だがずっと前に1、2作お目にかかった事がありこういうタッチだった。戯曲としての完成度はぶっちゃけた話、高くない。というか戯曲という形を取った詩と言った方が良い。人物は役を与えられているが多くの場合コロス的に立ち回る。そう見えるのは台詞総体が一つの詩でありモノローグであるからだ、と思う。
だがそれは芝居を観終えて、咀嚼しようと思いを巡らして思い当たる事で。。役者は十分に魅力的に演じ、切り取った場面の視覚的・聴覚的な「完成度」は高く「ドラマ」の展開への期待は高まる。が、ドラマとしての完結は見ない。
この作家の筆致は歴史的な事件・事象を舐め、思わせぶりな台詞をフックに観客に岩山を登らせ、作者の世界観、眼差しを共有させるのだが、事件や事象を一望できる山頂には着かない。これは「歴史」に依拠した作風のためだ、と理解する。
歴史という下地のあるカンバスに、上塗りしていく手法が、つまり下地とのコラボがうまく結実すれば作品としての美を放つが、今作は下地が何であるかは不明。戦後日本の事件に横たわる病理を取り上げた(又は具体的な事件を念頭にした)感触は残すのであるが(永山則夫が浮かぶ)、作者としてはそれが下地となり得ると想定したのだろう。最初に示されるフィクションとしての「事件」は、観客の関心をその先へと引っ張るが、事件の犯人(主人公とも言える)がそうする必然性に辿り着いた実感がない(あるいは描き切れてない)。
事件そしてその謎解きという典型的なミステリーの形を持つ今作のラスト、個別具体の事件の種明かしが訪れる事はない。社会背景、生育過程の風景から、事件の原因を推定せよ、で一個の人生を描いたと言えるだろうか。
書かれた時期には作品の背景として想像し得たものがあった、のかも知れないが。。

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