最新の観てきた!クチコミ一覧

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加担者

加担者

オフィスコットーネ

駅前劇場(東京都)

2022/08/26 (金) ~ 2022/09/05 (月)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★★

昨年の「物理学者たち」で知った20世紀の劇作家ディレンマットの名を目にする機会が、今年6月新国立「貴婦人の来訪」、そして今作と(なぜか?)続く。
挑発的な、濃い戯曲で、科学者の倫理を問う今作と「物理学者たち」は共に寓意性が高いが、今作がよりグロテスクである。というのは、既に死んだ者が平然と’(時系列を無視して?)登場したりする事以外は「リアル」の範疇で、描き出されるのは(「物理学者たち」が不条理劇に近いのに対し)人間同士が日常の延長で関わる風景であったりする。
舞台となる「地下」の用途目的、状況(死体溶解装置が置かれている)自体が異常であり、(装置を作った)元科学者が日常を送る場であるという設定は、異常を意識する時間と、無意識化される時間とを作り出す。
現代の「異常さに慣れ切った」側面が凝縮されたとも言える場に高給と住処を宛がわれた彼は、最も観る者が感情移入する登場人物ではあるが、それが観る者の正常感覚を揺さぶる。
ドイツ語圏スイスのこの作家は上記「物理学者たち」で名声を手にし、本作の「大失敗」(Wikiより)で戯曲に手を出さなくなったとか。元々小説家、エッセイ作家でもある彼の戯曲は数は少ないがどれも20世紀的問題臭を強烈に放つ。ただ今作「加担者」は世紀を跨いで跋扈する「神から最も遠い」呪われた何かの影を突き出してくる。
話の展開は神経を石臼で挽くようだがどこか甘味で、人間(自分)への深い疑いと絶望を抱いたときに却って人間(自分)を愛おしくなるあの瞬間の記憶が掠める。

ネタバレBOX

メメントCの前回公演「わたしの心にそっとふれて」は認知症医療の実践家であった医師が自らの認知症に直面して苦悩し、家族との繋がりの中に辛うじて居場所を見出す物語であった。この中心人物を圧倒的な存在感で演じた外山誠二(後で思い出した)が、本舞台で「悪」の元締め役を演じたのだが・・。
自分が観た回では台詞が心許なく、そのせいかどうか、このボス役本来のありようとの距離を感じながら見ていた。
本作は、科学と倫理の根幹があやふやで正邪との境界すら霞んだ現代の、本来なら不安に満ちた状況とは裏腹に、物質的充足で日常の「生」が成立してしまう有りようを残酷な皮肉で抉り出す。
主人公である元研究者に死体溶解の仕事をオファーするボスは、倫理不在の象徴的存在であるが、この人物にもっと肉薄した「見え方」があったとすれば・・と考える。悪に染まる者の精神構造の「見えなさ」に当て嵌まるキャラクターを思い浮かべるのには、映画が手っ取り早く、「タクシードライバー」の主人公や「ゴッドファーザー」の人物たち(無論中心はマーロンブランド演ずるドン)、「ノーカントリー」の殺人鬼あたりに考察の手掛りも。。当人は優れて論理に従って「正しく」生きている、矛盾なく成立している姿。だから怖い。芝居の中で主人公はそれこそ平然と死体を処理し続ける身分となっているが、収入によって地位が決まるアメリカ社会で「教授」職でなくとも自分の科学的知見の活用により「金」を生んでいる状況に彼は満足する(しようとして成功している・・何しろ評価の証である収入が保障されている)。だが最後にその無防備さゆえにしっぺ返しを食う。
再度映画に戻れば、コーエン兄弟の「ミラーズ・クロッシング」では主人公のボス(アイルランド系)の対抗勢力であるイタリア人マフィアのボスが、自らの行動を律する論理(哲学)を折節に口にするのだが、この描写は中々実態に迫っているのではないか。悪は正当化し続けなければならない。舞台の方のボスもやたらと喋る。己の思考を全て辿り切らなければ済まないかのように。
舞台「ドロシー」

舞台「ドロシー」

ドロシー

草月ホール(東京都)

2022/08/31 (水) ~ 2022/09/09 (金)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★★

初日観劇。あらすじにある前半の謎解きから、後半の二転三転する展開に引き込まれました。いくつかの伏線はありましたが、なかなか読めなかったです。舞台は、ある一室でほぼ舞台上に役者さんは出ずっぱりなのでそれぞれの「推し」がいる方はより楽しめるかと思います。

ネタバレBOX

終盤のドロシー役の安西さんの多重人格者の演技はとても見応えがありました。
T Crossroad 短編戯曲祭<花鳥風月>夏

T Crossroad 短編戯曲祭<花鳥風月>夏

ティーファクトリー

雑遊(東京都)

2022/08/23 (火) ~ 2022/08/28 (日)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★

昨年初頭吉祥寺シアターで大々的に開催されていた短編戯曲祭は1プログラムだけ覗く事ができたが、多彩な戯曲と舞台はしっかりと作られており、コロナの1年を経て生み出した凝縮した何かに思えた(劇場の空気感も暗鬱な世情を投影して今と少し違ったのだろう)。さて、TFactoryのホームの感のある雑遊(ただし昔の地下劇場とは別物になってしまった)に場所を移し、春に1つ、今回の夏に1つ、足を運んたが、随分簡素になった。劇場の方は素舞台の黒い床に蓄光テープが貼られた粗末さは、以前せんがわ劇場で観た「厳しい」舞台が思い出された。照明でフォローできないのか、とか考えてしまった。中身が厳しいと舞台もみすぼらしく見えるのか、それとも使い方の問題か・・等。
戯曲が「悪い」とは言わないが、春はまだ川村氏の戯曲の一部粗読みを混ぜて3作あって1時間少々、しかし今回は20分程の抽象的な言葉が並んだ戯曲が2本、終演して時計を見たら45分だった。芝居は「長さ」ではないが一般論としては短ければ短いなりの内容だ。20分やそこらで言いたい事が「言い切れる」訳はなく。ダイアローグと違いモノローグは一人称で完結できる。近しい主体が対立でなく同意しつつ言葉を紡ぐのも同様。演劇では言葉の行方も観たいが人物の「反応」も見たい。私が観た回がそうだったのかも知れぬが、自分には物足りなかった。
若手劇作家志望を励ますスタンスででも見れば良いのか、どうなのか・・この短編集の位置づけが実はよく判っていなかった。コロナ禍下での演劇人の内的叫びを開陳するTFactory広場、な風に勝手に理解していたが、企画としても作品自体もヒントが少なすぎる。

毛皮のヴィーナス

毛皮のヴィーナス

世田谷パブリックシアター

シアタートラム(東京都)

2022/08/20 (土) ~ 2022/09/04 (日)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★★

男と女、演出家と女優という前者優位の社会関係を、マゾヒズムはひっくり返す。女主人に奴隷として使えることを喜びとする男。高岡早紀と溝端淳平がこれらの役割にのめりこみ、時に入れ替わりながら、支配と服従、上位と下位のパワーゲームを繰り広げる。二人のち密なやり取り、水面下の主導権争いから目の離せない、知的でスリリングでエンターテインメントの舞台だった。しかも意外に笑いが多かった。高岡の高飛車ぶりや、現代の蓮っ葉女と19世紀の高貴な女性を一人で演じ分ける落差、溝端の当惑ぶりが笑いのツボをくすぐる。アメリカの作者はコメディーと言っているらしいが、それが日本の舞台でも実現することは珍しい成果だ。

高岡早紀のまさに体を張った演技、コントラストと落差が素晴らしかった。溝端も後半のマゾぶりがなまめかしい。女性から男性への復讐劇なのか、あるいは男性が自らの妄想の罠に落ちた自業自得の劇なのか。あるいは女性賛美という美名の裏にマッチョイムズを隠した男性優位劇なのか。一筋縄ではいかない芝居である。

ネタバレBOX

中盤、演出家に「くず女」とコテンパンになじられた女優が、キレて二階の出口から帰ろうとする。演出家が一転、「悪かった」「いかないでくれ」と懇願し、「お願いしますは?」と上下関係を逆転させた女優。そして優位に立つや、19世紀の貴婦人になって語りだす瞬間の、高岡早紀の別人のような神々しさにはうっとりさせられた。「「男が奴隷として従うほど、女は男に支配されるの」

終盤、奴隷役(トーマス)だった男が、女主人役(ヴァンダ)に入れ替わる。ところが、次第に溝端の演じるヴァンダが、高岡の演じるトーマスにかしづき「正直で誠実で従順な妻にして」「あなたを痛めつけることだどんなにつらかったか」と、やはり奴隷になってしまう。この男女のジェンダーと支配関係が二転三転した末の倒錯と陶酔の世界は、おぞましくも甘美なものだった。
SHINE SHOW!

SHINE SHOW!

Aga-risk Entertainment

シアター・アルファ東京(東京都)

2022/08/31 (水) ~ 2022/09/04 (日)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★★★

鑑賞日2022/08/31 (水) 19:00

くせのある登場人物が作り出すゴタゴタや対立を、面白く止揚してしまうのが、この劇団の真骨頂だと思います。尽きぬアイデア。ちょっと長丁場だったけど。

ネタバレBOX

一番笑ったのが、窓際社員vs社長のラップ対決。ごま塩頭のおじいちゃんがラップがうまくて驚いたところに、対決させたことで相互理解や和解、リスペクトというアウフヘーベンまで生じてさらにビックリ。
毛皮のヴィーナス

毛皮のヴィーナス

世田谷パブリックシアター

シアタートラム(東京都)

2022/08/20 (土) ~ 2022/09/04 (日)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★★

ストーリーとしては思ったほど濃密さや深さや意外性は感じなかったが、二人の俳優の演技は見応えがある。

誰がために

誰がために

Lumeto

OFF OFFシアター(東京都)

2022/08/31 (水) ~ 2022/09/05 (月)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★

芝居であまりリアリティを求めるのは無粋なのはわかっているが、ストーリーがいろいろ不自然、というかちょっと無理があるかな・・・、と。

『Q』:A Night At The Kabuki【7月29日~31日公演中止】

『Q』:A Night At The Kabuki【7月29日~31日公演中止】

NODA・MAP

東京芸術劇場 プレイハウス(東京都)

2022/07/29 (金) ~ 2022/09/11 (日)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★★★

届かなかったろうみおからの手紙をじゅりえが読むシーンが胸にしみました。
あらゆる戦さがなくなりますように。

鬼崎叫子の数奇な一生

鬼崎叫子の数奇な一生

中野坂上デーモンズ

ザ・スズナリ(東京都)

2022/08/31 (水) ~ 2022/09/04 (日)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★

鑑賞日2022/08/31 (水)

価格4,000円

31日19時開演の初日舞台を拝見(107分)。

昨年1月の「で」以来の中野坂上デーモンズ、終演後、耳にした感想は、毎度のことながら賛否両論w
俺的には、観劇経験のあるらしい若い女性の「男のヒトが考えた理詰めの脚本だね〜」という意見に賛同。
まっ、観慣れてないと困惑する芝居だよなぁ。

なお「注:あらすじは全く変わることがあります」の注意書き通りでしたので、観劇の際は白紙で臨んでくださいw

世界は笑う【8月7日~8月11日昼まで公演中止】

世界は笑う【8月7日~8月11日昼まで公演中止】

Bunkamura

Bunkamuraシアターコクーン(東京都)

2022/08/07 (日) ~ 2022/08/28 (日)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★★★

鑑賞日2022/08/19 (金)

あ~面白かった。配役の妙というか、たっぷり楽しめた感でお腹いっぱい。でもまだ食べたかったな。確かに携帯電話の出てこないお芝居いいですね。一人で何役もやっているのに同じ人とは思えない、というか考える隙すらなくハラハラドキドキしながら笑って頑張れって思って時間が過ぎちゃって、まだ先も気になるけど…。良かった。

帰還不能点(8/17~8/21)、短編連続上演(8/25・26)、ガマ(8/29~9/4)

帰還不能点(8/17~8/21)、短編連続上演(8/25・26)、ガマ(8/29~9/4)

劇団チョコレートケーキ

東京芸術劇場 シアターイースト(東京都)

2022/08/17 (水) ~ 2022/09/04 (日)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★★★

鑑賞日2022/08/30 (火)

『ガマ』
それぞれの信じていることを崩すことは大変なことだと思う。ガマの中で出会った人々がそれぞれの思いを投げ苦しみもがくさまが哀しい。

帰還不能点(8/17~8/21)、短編連続上演(8/25・26)、ガマ(8/29~9/4)

帰還不能点(8/17~8/21)、短編連続上演(8/25・26)、ガマ(8/29~9/4)

劇団チョコレートケーキ

東京芸術劇場 シアターイースト(東京都)

2022/08/17 (水) ~ 2022/09/04 (日)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★★

鑑賞日2022/08/26 (金)

短篇二本立て
どちらも以前観劇しており、物語は知っていた。
今回はワークショップで鍛えられた若手が出演とのこと。
なんか良い。良かった。
どちらも泣いてしまった。何なのでしょう…

帰還不能点(8/17~8/21)、短編連続上演(8/25・26)、ガマ(8/29~9/4)

帰還不能点(8/17~8/21)、短編連続上演(8/25・26)、ガマ(8/29~9/4)

劇団チョコレートケーキ

東京芸術劇場 シアターイースト(東京都)

2022/08/17 (水) ~ 2022/09/04 (日)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★★

鑑賞日2022/08/18 (木)

『帰還不能点』再演までまだ間もない事から、かなり覚えていて、配信も観ていて、でも良いものは良い。それぞれの葛藤が手に取るようにわかり。今を考える。私たちにできる事は何なのかを。

毛皮のヴィーナス

毛皮のヴィーナス

世田谷パブリックシアター

シアタートラム(東京都)

2022/08/20 (土) ~ 2022/09/04 (日)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★★★

マゾヒズムの語源にもなったマゾッホの「毛皮のヴィーナス」を今、脚色上演をしようと女優オーディションをしている劇作家・演出者(溝畑淳平)のアトリエに、時間に遅れて、行儀の悪い女優(高岡早紀)が飛び込んできて、オーディションを受けさせろ、と強要する。
ここから1時間45分、現代の女優と劇作家が、19世紀末のマゾッホの描いた男女関係をどう理解して実践していくか、と言う二人芝居がスリリングに展開する。
アメリカの劇作家・デヴィッド・アイヴスの戯曲で、ほぼ、そのままポランスキーが映画にして既に公開されている。この日本版は、戯曲や映画が持っていた原作(マゾッホ)へのヨーロッパ・コンプレックスから離れて、マゾッホの小説、アイヴスの戯曲、それを立ち上げようとする女優と演出者のナマの男女、という複雑な三重構造の中に現代に生きる人間を描き出そうとする。よく出来ている。
冒頭、雷雨のなか、ぬれねずみで下品さ丸出しでやってくる女優が、衣装を用意してきたと言って、脱ぐ。下着はまるでサドマゾバーのウエイトレスのような黒のタイツの衣装。その上に十九世紀のフリルのついて純白の衣装を着て見せる(衣装・西原理恵)。これで、演出家も一本取られるわけだが、このあたりで、観客も降参する。
二転三転する展開は次第に、いつ、女は男へ鞭を振るうのだろうというクライマックスへの期待へと変わっていくが、そこは見てのお楽しみだろう。
高岡早紀は今までの見た舞台ではあまり印象に残ったことがなかったが、これは熱演。相手役の溝畑淳平も、いったん出たら出ずっぱりの長丁場を見事にこなす。さらにこの舞台は二階を組んだ装置(長田佳代子)、劇伴奏でなく音楽として芝居に噛んでいく音楽の国広和樹、さりげない照明(佐藤慶)のフォローなど、この劇場(トラム)がそのまま、現代の「毛皮のヴィーナス」になっている。演出は文学座の新星・五戸真理恵。新人ではないが、ここまでキャスト・スタフを(多分)おだてまくって芝居をまとめきれるところなかなかのタマで観客は今後に大いに期待する。客席完売だが立見席がある。昨日はそこも満杯で壁際の本当の立ち見客もかなりいた。しかし立ち見で観てもご損はない(オトナに限る)と思う本年屈指の舞台だった。

加担者

加担者

オフィスコットーネ

駅前劇場(東京都)

2022/08/26 (金) ~ 2022/09/05 (月)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★★

五十年も前に書かれたスイスのデュレンマットの日本初演が、まるで時局問題劇のように見えるのも演劇の面白いところだ。
世を捨てたかに見える化学者(小須田康人)がたまたま暗黒街の大ボス(外山誠二)と知り合いになり、化学の知識を生かして地下五階のラボで死体を溶解する仕事をはじめ、自らの生活を回復する。もちろん悪いヤツらは次々と警察(山本亨)や政治家にも手を伸ばして、化学者の知識を食い物にする。やがてそれは破局するが、ボスと科学者の間に女(月船さらら)も絡んで、大衆活劇的筋立てである。出演者たちがみな大衆演劇にも通じる分かりやすさに振り切って演じるので、テーマは明確である。それぞれのキャラクターも筋立ても通俗だが個性的で、駅前劇場としては長尺の2時間20分を飽きさせない。
母国ではデュレンマット作品としては不評で再演もしていないというのも肯けるが、そういうところがかえって、極東の国でリアリティを持つのも芝居ならでは。
今の日本の政治の裏筋をめぐる混乱も実のところはこんなものか、と連想させる面白さもあって久しぶりの直球時局劇になった。企画賞である。

伯爵のおるすばん

伯爵のおるすばん

Mrs.fictions

吉祥寺シアター(東京都)

2022/08/24 (水) ~ 2022/08/28 (日)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★★★

鑑賞日2022/08/25 (木) 19:00

 この『伯爵のおるすばん』という劇は、不老不死の男として歴史に名を残した稀代の詐欺師サンジェルマン伯爵に焦点を当てた、その謎めいた人生を解き明かす内容に胸がときめき、期待が膨らんだ。

 サンジェルマン伯爵が人々に300年以上生きてきたと言って回って信じ込ませ、金持ち連中から金をせしめていた詐欺師時代は、ほんの百年ほどの間だけというのは意外だった。
 その後、近世、近代、現代、近未来、それからずっと気の遠くなるような未来を経て、宇宙の全部が静かに終わりを迎える最後の瞬間までの間、永遠とも思えるような時間をずっと、何一つ成し遂げられず、惰眠と後悔にまみれて生きていた彼と、彼が愛した伯爵夫人、女子高生、男性、宇宙人、大人の女性など様々な人たちとのやり取りを通して、サンジェルマン伯爵にも独りよがりな面があったり、相手に弱い面を見られたくなくて、強がってみたり、長年一人で、寂しく孤独で不安な面があったり、不老不死な男だって、白髪が多少増えてきて、歳は確実に取っていたりとサンジェルマン伯爵の人間味が見て取れて、この劇を観て、サンジェルマン伯爵だって一人の人間なんだなぁと感慨深くなり、前よりも親しみを感じるようになった。
 最後の場面で、サンジェルマン伯爵と関わりを持った人たちが、伯爵を真ん中に一同に会すところには圧倒された。

 サンジェルマン伯爵役の人もそうだが、他の登場人物もとても個性的でアクが強く、面白かった。

TOU KYOU

TOU KYOU

Ahwooo

スタジオ空洞(東京都)

2022/08/26 (金) ~ 2022/08/28 (日)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★★

鑑賞日2022/08/26 (金) 16:00

ちょっとシュールな近未来SF風会話劇。
入った途端に面白いと思った「3D書き割り」な舞台美術が、本編の中心である「〇○○○」と通ずる感覚なのが秀逸かつ舞台演劇ならではの面白さ。

ネタバレBOX

いやホント、段ボールに絵を描いて組み立てたような、ある意味で舞台演劇ならではであり、それゆえ「アレはソレの表現なのね」というお約束の上で成り立っている装置が、劇中の中心となる「フェイク」と通ずる……というよりコンセプトが同じで、その相乗効果たるや!(絶賛気味)
 ハッピーサマーパーティー みんなでダンス!

ハッピーサマーパーティー みんなでダンス!

劇団こぐま座

博品館劇場(東京都)

2022/08/06 (土) ~ 2022/08/06 (土)公演終了

実演鑑賞

満足度★★

ストーリーや舞台演出がかなりタルく、シルバニアがちょっと好きくらいでは楽しめませんでした。
コアなファンの方々は年齢に関係なく楽しんでいるようでした。マニア向けのイベントだと思います。

銀河鉄道の夜

銀河鉄道の夜

東京演劇アンサンブル

池袋西口公園野外劇場 グローバルリング シアター(東京都)

2022/08/26 (金) ~ 2022/08/28 (日)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★★★

野外初の演劇鑑賞でした。
雨が止んで、本当に良かったです。
様々な演出で、大いに楽しむことができました。

ネタバレBOX

朗読,演劇,ミュージカル,音響,舞台の映像,花道での演出…花道での先端では、ダンスと噴水、飛んでくる鳥を捕まえるなど…多彩な要素が詰まっていて、銀河鉄道の夜を、色々な観点から楽しむことができました。
帰還不能点(8/17~8/21)、短編連続上演(8/25・26)、ガマ(8/29~9/4)

帰還不能点(8/17~8/21)、短編連続上演(8/25・26)、ガマ(8/29~9/4)

劇団チョコレートケーキ

東京芸術劇場 シアターイースト(東京都)

2022/08/17 (水) ~ 2022/09/04 (日)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★

『ガマ』
米軍戦史に「ありったけの地獄を一箇所にまとめた戦争」と記された沖縄戦。住民の4人に一人が死亡、おおよそ3ヶ月で県民12万人以上が亡くなった。
岡本喜八の名作『激動の昭和史 沖縄決戦』は映画館だけでも10回近く観ている。新藤兼人の脚本が淡々と事実を積み重ね地獄絵図を記す。しかもこの映画が公開された1971年、沖縄戦を体験した住民が岡本喜八に食って掛かったそうだ。「あの地獄をこんな生ぬるい映画にしやがって!」
余談だがスピルバーグは岡本喜八の大ファンで『シンドラーのリスト』にはこの映画のオマージュがある。(『プライベート・ライアン』にも『血と砂』のシーンがあったような気がするがもう忘れてしまった)。スピルバーグは来日する度に岡本家を訪ねて来たそうだ。昔、奥さんから直接聞いた。「皆、黒澤明監督の事しか記事にしないけど本当よ。」

今作はその黒澤明調に始まる。ガマ(防空壕として使われていた自然洞窟)に入ってくる3人。ひめゆり学徒隊の看護要員(清水緑さん)、鉄血勤皇隊の引率教師(西尾友樹氏)が担ぐのは崖から落ちて意識を失っている負傷した兵士(岡本篤氏)。ランプを灯すとうっすらと中の様子が見えてくる。この照明が絶品で、綿密に繊細に計算尽くされた技術。照明・松本大介氏の見事な手腕。『羅生門』のようなおどろおどろしさから物語は始まる。

この劇団は役者一人ひとりの厚みが売り。黒澤組や喜八組を観ているような感覚で、今回は誰が何の役なのか、登場すると三船敏郎や仲代達矢ばりにゾクゾクする。
この面子を前に堂々と主演を張った清水緑さんは末恐ろしい。

ドキュメンタリー映画『沖縄スパイ戦史』(三上智恵、大矢英代共同監督)も是非観て頂きたい。護郷隊も出てくる。

ネタバレBOX

黒澤明の『白痴』みたいに寓話的にやるのかと思っていたが段々と岡本喜八調に。
岡本喜八映画なら誰を配役するか、妄想して観ていた。

清水緑さん(丘ゆり子若しくは大谷直子)
西尾友樹氏(伊藤雄之助若しくは加山雄三)
岡本篤氏(中谷一郎)
青木柳葉魚〈ししゃも〉氏(佐藤允)
浅井伸治氏(寺田農若しくは砂塚秀夫)
大和田獏氏(常田富士男)

期待しすぎてしまったのか、個人的には不完全燃焼。後半になるにしたがってイマイチ腑に落ちない。
会話に使用する言葉の選び方に違和感。話す内容も今現在の日本人目線で話しているような遣り取りに感じられ、リアリティーがない。わざと意図的にやっているのかと穿って観てしまった。先に結論ありきで作ってしまったような妙な感触。自分の観方が悪いのかも知れない。
それでもこういう作品は絶対に作っていかなければならないし、自分も観ていかないといけない。

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