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新作オペラ『地獄変』

新作オペラ『地獄変』

シアターX(カイ)

シアターX(東京都)

2022/09/23 (金) ~ 2022/09/25 (日)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★★★

 芥川の傑作を独自解釈と巧みなピアノ演奏、グレードの高い歌唱で表現。ベシミル! 本日(土)14時、明日14時の2回公演を残すのみ。昨日は満席であった。(追記2022.10.5)

ネタバレBOX

 芥川龍之介の原作をオペラ化し上演した今作、無論原作にはなく脚本化した入市翔氏が創作した文言がある。オペラとしての上演である以上、音曲に合わせ作品の本質を活かしつつ調整されている箇所があるのは当然だ。演出を安倍公房スタジオ出身で現在は主としてイタリアで活躍する井田邦明氏が担当し、イスラエルの鬼才・ロネン・シャピロ氏が作曲・演奏を担当した。因みに今回使われているピアノは通常のクラシックピアノを特別に調律し洋の東西及び中東の音階・音域迄表現しようと整えられたものでマルチカルチャーピアノと呼ばれるが、イラン・パぺも指摘する通りイスラエルのパレスチナ人ジェノサイドに対して平和を願いパレスチナ人と共に活動してもいるシャピラ氏自身が異文化との対話と協働とを目指す姿勢の表れと見ることができる。ピアノでシンセサイザーでは表すことのできないアラビアのマカーム(旋法の体系やシステムを意味する言葉)や日本のペンタトニック(日本の五音階で作られた音階のこと)を組み合わせた微分音音階を調律しているのが特徴だ。
 舞台上はホリゾント中央やや上方に表面に箔を張った大きな円形のオブジェ。出捌けはホリゾントの下手、上手の開口部。板中央に大小二段重ねの平台を置き上段には門が構えられている。尚平台、門共に表面は箔で覆われ大殿の豪壮な御殿にも、また燃え上がる牛車にもなる。更に手前の客席側には黒い大きな円形の表面に魂の形を薄く刷いたようなシートを床に置く。
 芥川の原作では、大殿に長年仕えた女官が地の文で事の成り行きを説明しており、その語りは、絵師・良秀の天才アーティストとしての表現への執着とアートがアーティストに対して要求するもの・こととのギャップを埋める為のありとあらゆる努力と犠牲、精神性の高さ故の非凡や一般人から見た奇行や言動が、俗人が真のアーティストに対抗する為に為す曲解や蔑み、不評等々に結実する様を曖昧な表現で示す。然し深読みすれば芥川による本音、実は単に事大主義に同調せぬ者への同調圧力でしかない極めて非主体的な日本人の特性がやんわりと表現されているだけの痛烈なアイロニーに他なるまい。一方、事大主義者が奉仕する者については、その非を非ならぬもの・ことへと曖昧化、転嫁することで権力者がその権力を己の立ち位置の優位性によって如何様にも行使し得、而もその倫理的・論理的責任をも問われること無く瞞着が露呈せぬよう糊塗している事も明らかだ。
 つまり今上演作では、日本人の特性を西欧的知性で分析した上で芥川が真に望んだであろうことを的確に表現して見せた。それは良秀が、自分は見た物でなければ描けないので牛車を燃やして欲しいと願う場面の台詞で「できれば位の高い女を(牛車に載せて)欲しい」と願うのに対し、大殿の応えは「気位の高い女を云々」であり、剰え傍の者共と薄ら笑いを交わしながら良秀に惨たらしく肉を焼き骨を焦がして死にゆく娘の有様を説き聞かせる。そして簾を下ろしていた牛車に火を掛ける直前、松明を掲げさせ肩をゆすり薄ら笑いつつ、燃え盛る火の車となる函の中に鉄の戒めを施され生きたまま焼かれる姿を見せた者こそ、類稀な子煩悩の父の目前で焼殺される最愛の娘であった! 而も大殿の台詞には、原作と似てはいるが異なる以下のような意味の台詞があった。「良秀は作品を描く為には弟子たちを怪鳥に襲わせ、鎖で縛め畜生にも劣る所業、これらの行いに対する懲罰として愛娘を生贄に捧げさせる」という社会的正義を装った政治的発言だが真実だろうか? 実は単に寵愛を位の低い良秀の娘に拒まれ意趣返しに己のサディズムを満足させようと舌なめずりし乍ら娘のみならず父・良秀をも地獄に突き落とす残虐非道な宴を催したのではないか? 然し良秀はこの艱難をそのアーティストとしての良心と作品を完成させることに賭けるエネルギーの凄まじさで屈服させた。芸術即ち精神の優位を示し俗物が構成している事大主義世間やヒエラルキーしか生み出すことの出来ぬ不完全でトータルバランスを欠いた俗世及び事大主義者の非人間的残虐性や奴隷根性、非主体性故の無責任と非合理性を残酷な迄に示した。これら俗世の住人に対し、良秀の娘に救われた恩に報い、燃え滾る牛車に飛び込んで娘の肩を抱くように焼け死んだ猿の行為は実に対照的ではないか?

コマギレ

コマギレ

ラビット番長

シアターグリーン BASE THEATER(東京都)

2022/09/22 (木) ~ 2022/09/25 (日)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★★★

将棋はほとんど知らない私だが、すごく楽しめた。
笑いあり、涙ありの物語。影絵のシーンは印象的だった。これを観てメキメキ将棋に興味が涌いた。
観てよかったー、と心から思った。
次のシリーズも観たい。
伊保さんの優しいお父さんの演技がよかった。

将棋のラベルのついたペットボトルのお茶が、スゴくおいしかった。
思い出に部屋に飾っておきます。

かもめ

かもめ

ハツビロコウ

小劇場B1(東京都)

2022/09/20 (火) ~ 2022/09/25 (日)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★★★

鐘下作品だけでなく古典・名作も手掛けるようになったハツビロコウの今作は「かもめ」。これまでイプセンや三好十郎等、硬軟で言えば「硬」に寄った印象ではあったのだが、(松田正隆作品をやった時はその印象を覆したが残念ながら未見)此度はチェーホフ。ところが開幕前、この希望の無い物語へ誘われようとしている間際に言い知れぬ不安が過ぎった。「与えられなかった」人間がそれゆえ希望を抱けず絶望に堕ちて行くという、身も蓋もない様を高みから愛でる作品(そうして辛うじて直視できる真実)を、己の事のように見せられる予感だ。冒頭の二人、甘く切なく甘味な恋の姿が「形」として(即ち本物と知れるように)描かれる。ハッとする。二人にとってのこの瞬間の「偽りの無さ」が、成る程全ての始まりであった。ハツビロコウの「かもめ」が始まった、と実感する。
かくして麻酔が効いた後の治療のように、ハツビロコウ版「かもめ」(今回はテキレジは少なめに思えた)の活写する酷薄な人間ドラマを、漏らさず味わい尽くす時間となった。
毎度ながら、どう手を入れたのか、と思う程に、戯曲の骨格がクリアに浮かび上がって来る。昨年川崎で観た秀逸な「かもめ」はまるで対照的、人物たちの滑稽な生き様を臆せずぶった切る喜劇的演出を極めた舞台であった。一方こちらはハツビロコウらしい「リアル」を掘り起こした言わば「悲劇」の舞台だが、人間の心の赤裸々なありようを透徹した時、そこに微かな救いが見える。「人間」という作品そのものの美が、チェーホフをして文字に起こさしめた。
最近読んだ「戯曲」に関する論考によると戯曲は大きく分けて「人や世界は変わり得る」と信じる思想に貫かれた戯曲と、「変り得ない」との世界観に基づく戯曲とがあると言い、前者=リアリズム演劇の典型としてイプセン以来の多くの演劇、後者にはギリシャ悲劇、そしてチェーホフが挙げられていた。
なるほど一つの穿った分析だが、困難を乗り越える物語の濃度を高めるのはその困難の大きさであり、現実の中にその困難というものはある。この現実の不条理により肉薄する事で、物語は使命の半分は終えている。より厳しい現実(の抉り方)が問題の所在をまずは明示したからだ。そう考えると、酷薄な現実の描写はたとえその事態の好転を記さなくとも、何らかの解決、和解の萌芽を観客は認めるも可能。チェーホフの長編作品にあるロシアの没落や時間の不可逆性への諦念は、人と世界の真実はこうだと突き放しているが観客は絶望して帰路につくわけではない。人生や社会について噛み締める。それはリアリズム演劇にないというものでもない。

パレードを待ちながら

パレードを待ちながら

演劇企画イロトリドリノハナ

テアトルBONBON(東京都)

2022/09/21 (水) ~ 2022/09/25 (日)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★★★

二日目ソワレ♪
ダブルキャストBの初日・・・♪
かなり落ち着いて見えるが、思っている事をズバッと言う・・・♪
パッと見ダブルキャストAの森下さんより年上に見えるが・・・年下だそうです・・・♪
本当に『あの女いくつなんだろうね』・・・(笑)♪

パレードを待ちながら

パレードを待ちながら

演劇企画イロトリドリノハナ

テアトルBONBON(東京都)

2022/09/21 (水) ~ 2022/09/25 (日)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★★★

二日目マチネ♪
話の流れが判ったので、個々に注目して観る・・・♪
かなり個性が強い婦人たちの布陣・・・♪
ちょっと気になった点・・・未亡人のマーガレットが指輪をしていないのは判るが・・・リーダーのジャネットが指輪をしていないのは何故だろう・・・めっちゃ気になります♪

『太鼓』

『太鼓』

劇団演奏舞台

九段下GEKIBA(演奏舞台アトリエ)(東京都)

2022/09/23 (金) ~ 2022/09/25 (日)公演終了

実演鑑賞

出演者4人、緊迫感溢れる舞台で、観応えがありました。
役者さん達の熱演に加え、迫力ある生演奏で、更に舞台を盛り上げていました。
危機迫った状態に置かれた少年の精神状態を考えると、胸が痛みました。
戦争について、改めて考えさせられました。良い舞台でした。

新訳「あわれ彼女は娼婦」ワークインプログレス

新訳「あわれ彼女は娼婦」ワークインプログレス

NICE STALKER

スタジオ空洞(東京都)

2022/09/21 (水) ~ 2022/09/25 (日)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★★★

行く前は、本当におもしろいのか心配したが、観たらとてもおもしろかった。
悲劇なのに、所々に詳しい解説が入りお腹を抱えて笑った。
演じている役者さんが本当に上手な演技で、ビックリした。

抜粋もよかったが、全部通したものが是非観たくなった。

音響さんたちが舞台の両側にいたが、正直、最初は舞台裏が見えてしまうので、少し失望した。
しかし、途中からもうそんなことは気にならないくらいおもしろかった。
劇場の大きさの都合上、たぶん仕方なったのだと思いました。

もう少し早くこの劇団さんに出会いたかった。
次回も行きたい。


新訳「あわれ彼女は娼婦」ワークインプログレス

新訳「あわれ彼女は娼婦」ワークインプログレス

NICE STALKER

スタジオ空洞(東京都)

2022/09/21 (水) ~ 2022/09/25 (日)公演終了

実演鑑賞

面白かったです。

プラズマ再臨

プラズマ再臨

無名劇団

萬劇場(東京都)

2022/09/14 (水) ~ 2022/09/18 (日)公演終了

映像鑑賞

満足度★★★★★

「愛」というものの困難さ、「自己愛」や「他者への愛」が交錯し、やがて自己を見つめる。若い俳優達が中心となり織りなす物語で、熱量と狂気が会場を包み込んでいました。
戯曲賞を取られたということで、ストーリーも破綻なく、傷ついたことのある者の心に確実に染み、素晴らしかったです。
関西の勢いを観ました。

そしてこのコロナ禍、大人数で東京入りして公演を打たれたこと。様々なリスクがありながら完遂されたこと、敬意を表します。お疲れ様でした。

パレードを待ちながら

パレードを待ちながら

演劇企画イロトリドリノハナ

テアトルBONBON(東京都)

2022/09/21 (水) ~ 2022/09/25 (日)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★★★

紛れもなく戦争を捉えた作品 でありながら戦闘シーンは一切なし。
描かれるはご近所同士で集まった国防婦人会の面々。
さぞかし連帯感ある女性達の集まりかと思いきや冒頭のダンスシーンでそうでもない事が直ぐに判明。
このダンスシーン、当然台詞は無いのだけれど登場人物達の個性や微妙な関係性が容易に見て取れて妙に面白い。

観進めていく程に彼女達のバックボーン(夫が出征しているとか志願中であるとか)が実に多様であり、それぞれの事情や思惑が絡み合って何かと摩擦が起きやすくなっているのだと徐々に理解。
前半ではそうした内情をひとつひとつ汲み取っていくのに必死だったけれど休憩を挟んでからの後半、それらを踏まえたうえでの展開にはグッと引き込まれ怒涛で駆け抜けていった感じ、そのあまりの体感時間の違いは驚くほど。
女性だけのキャスティングだからと言う勿かれ、華やかさやドロドロ、弱さも強さも全部入り混ざってめっちゃ女性を描いたドラマになっていました。

何と言っても個性のぶつかり合い
ダブルキャストの(息子の身を案じている)同じマーガレット役でも
田原みずほさんの場合はナチュラルに嫌味を滲み出しながら堅物そうでいて実はむっつり何とかの一面にニンマリ
森下知香さんの場合は辛口発言の連発、どこか引っ掻き回しを楽しんでいるふしがあるコミカルな策士といった感じで全然違った印象。
そこに絡む相手(シングルキャスト)の印象まで変わって見えるのだから実に面白い現象だと思いました。

かもめ

かもめ

ハツビロコウ

小劇場B1(東京都)

2022/09/20 (火) ~ 2022/09/25 (日)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★★★

国内外の古典作品の再発見に挑戦しているハツビロコウが名作「かもめ」を取り上げた
相変わらずスペースを上手く使い、ミニマムに近いが良く出来たセット
この劇団はL字型のどの席からでも良く鑑賞出来るよう、セットも演技も実によく考えられている
暗めの照明が素晴らしい
演技も表情の良いキャストが多く、特に草薙知史(トリゴーリン)と松本光生(ドールン)が気に入った
新垣亘平(コースチャ)は後半良かった
最後のピストル自殺のシーンの演出、照明は見事
アルカージナ(森郁月)はちょっと若いけど、トリゴーリンに迫っていくシーンはなかなか迫力あった
ニーナ(平子亜未)はちょっと変身ぶりが十分に伝わらなかった

このところ席数絞ってる公演もあるが、満席続きで嬉しい

フェザーズ~ショートストーリーズ~

フェザーズ~ショートストーリーズ~

feather stage

シアターKASSAI【閉館】(東京都)

2022/09/17 (土) ~ 2022/09/25 (日)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★★

鑑賞日2022/09/23 (金) 19:00

Bチーム観劇。
1時間以内に纏まったドタバタコメディ、面白かった。
ただ、次々と笑いどころがあり、所々もう少しセリフの間がある方が、
より面白くなりそうに感じた。

12人の淋しい親たち

12人の淋しい親たち

劇団時間制作

東京芸術劇場 シアターウエスト(東京都)

2022/09/22 (木) ~ 2022/10/02 (日)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★★★

12人ということは・・・

ネタバレBOX

と思っていたら、故障中のエアコン、ナイターに行きたい陪審員など「12人の怒れる男」を彷彿とさせる感じではありましたが「他人事」はいつしか「自分事」へとチラシにあったように、それぞれが置かれている状況によって被告とその夫に対する感じ方、考え方が違うのでした。
後半の圧倒的な展開に胸を突かれます。自分だったらどうしただろう。
『OH!Myゴ-スト』

『OH!Myゴ-スト』

東京ハイビーム

あうるすぽっと(東京都)

2022/08/31 (水) ~ 2022/09/04 (日)公演終了

実演鑑賞

満足度★★

テンポもよく話も非常に分かりやすかったのですが、
登場人物に感情移入ができませんでした。特に新聞記者の友達の悪びれない姿勢にはまったく共感できませんでした。
話の展開にもあまり波がなく盛り上がりに欠けた印象でした。
吉本新喜劇のように細かいことを気にせずにわちゃわちゃした楽しい雰囲気を楽しむ舞台だと思うのですが、少し自分には合いませんでした。
チケットプレゼントで鑑賞させて頂いたのにもかかわらずこのようなコメントで大変申し訳ございません。

新訳「あわれ彼女は娼婦」ワークインプログレス

新訳「あわれ彼女は娼婦」ワークインプログレス

NICE STALKER

スタジオ空洞(東京都)

2022/09/21 (水) ~ 2022/09/25 (日)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★

舞台装置などがなにもなく、ひこれは久々に外れを引いたと思ったら一人一人の演技力が高く度肝を抜かれた。
要所要所で解説が入り、古典があまり得意ではない自分にとってはありがたかった。
ただ上演時間の関係で省略されている部分があるせいか
登場人物の心情の変化が不可解な部分もあった
しかしこの劇団を知れてよかった

ネタバレBOX

一人一人の演技のうまさに度肝を抜かれた
要所要所で解説が入るので、古典があまり得意ではない自分にとっては見やすくてありがたかった。
上演時間の関係で省略されている部分があるせいか登場人物の心情の変化が不可解な部分もあった。
しかしこの劇団を知れてよかった
かもめ

かもめ

ハツビロコウ

小劇場B1(東京都)

2022/09/20 (火) ~ 2022/09/25 (日)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★★★

「私はかもめ、いえそうじゃない」舞台「楽屋」でしか聞いたことのなかったセリフはこのシーンだったんですね。ラストが衝撃的でした。

 蓼喰ふ虫

蓼喰ふ虫

TOKYO PLAYERS COLLECTION

OFF OFFシアター(東京都)

2022/09/21 (水) ~ 2022/09/26 (月)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★

自然な演技に引き込まれた
優柔不断な夫婦を中心に周りの人間関係を丁寧に描いていた
話に波はなく少し長いなとも思ったが、終始ALWAYS 三丁目の夕日(内容は全く違う)をみた時のようなその時代を知らなくても懐かしめる雰囲気を持った舞台だった

新訳「あわれ彼女は娼婦」ワークインプログレス

新訳「あわれ彼女は娼婦」ワークインプログレス

NICE STALKER

スタジオ空洞(東京都)

2022/09/21 (水) ~ 2022/09/25 (日)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★★

鑑賞日2022/09/22 (木) 19:30

 「あわれ彼女は娼婦」(原題「’Tis Pity She’s a Whore」)は、1630年頃にイギリスの劇作家ジョン・フォードによって書かれた古典作品であり、シェイクスピア等を輩出している「エリザベス朝演劇」の末期に上演された、ジョン・フォードの代表作であり、フォード版「ロミオとジュリエット」とも評されるその物語は、「近親相姦」という禁忌を犯したジョヴァンニとアナベラ兄妹の恋愛を軸に描かれる愛憎劇。今なお賛否分かれながら、世界中で上演され続けている「妹萌え」の問題作ということで、それをさらに、今時のライトノベルなどと紐付けつつ、劇の途中経過を見せてくれるというので、大いに期待して観に行ったが、良い意味で裏切った内容だった。

 実際には、ラノベと比較したりして本編が進行するわけではなく、格調高い小田島訳と比較してイトウシンタロウ台本だと時々ラノベに出てくる用語をかなり使いながら砕けた表現にして役者に台詞を言わせているところなど、捻りがあって面白かった。
 劇の途中経過を見せるというだけあって、劇の解説指南役である東京ドム子さんという役者が登場し、聞き手役のイグロヒデアキさんという役者との掛け合いをしながら、物語を進行させていくのだが、俳優が一人何役も兼ねることを自虐してみたり、翻訳·構成·演出のイトウシンタロウさんが自分たちが演じている斜め向かいにいて演り辛いことを軽くディスってみたり、第三者の立場であることを良いことに劇作家ジョン·フォードの戯曲「あわれ彼女は娼婦」に出てくる登場人物や時代背景、物語に勝手にケチをつけたり、批評したりと、テンポがよく軽快で、大いに笑えた。楽屋落ち的なネタも面白かった。
 ちょっとしたハプニングとして先輩劇団員が少し腹を立てて退場したりといったことや、劇作家のイトウシンタロウさんがダメ出しを求められて、ドギマギしているところなど、劇の途中経過を見せるという試みならではだと感じ、完成した劇とは違った面白さを感じた。
 しかし、こういうハプニングもあらかじめ計算し尽くした上での演出効果だとしたら、まさに観客は演出家の術中にはまらされたということで、これは凄いことだと感じた。

 個性豊かな登場人物たちと、それらを演じるクセが強く、アクが強すぎる俳優たちの熱演ぶり、特にヒポリタ役を演じたイグロヒデアキさんの見苦しい、それでいてなかなか終わらないヒポリタの最後の場面での演技が眼に焼き付き、大いに笑えた。
 また、馬鹿のベルゲットを演じる森耕作さんの、まるで本当に馬鹿なんじゃないかと思わせる演技に腹筋崩壊するぐらい爆笑しつつ、その徹底ぶりに感服した。

 ジョバンニが実の妹アナベラにキスを何回も迫る場面や、半裸の状態でアナベラに声をかけられ、何度も戻ってくるところなど、しつこい場面も多く、滑稽に見え、爆笑した。

新訳「あわれ彼女は娼婦」ワークインプログレス

新訳「あわれ彼女は娼婦」ワークインプログレス

NICE STALKER

スタジオ空洞(東京都)

2022/09/21 (水) ~ 2022/09/25 (日)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★★

原作は妹萌えというよりブラコンという認識。で、今回はもっと飛躍した新訳になるのかと思ったら、わりとオーソドックス。解説付きの上演といったカンジね。

新訳「あわれ彼女は娼婦」ワークインプログレス

新訳「あわれ彼女は娼婦」ワークインプログレス

NICE STALKER

スタジオ空洞(東京都)

2022/09/21 (水) ~ 2022/09/25 (日)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★

表層的には面白い。未見の演目のため、もともと どのような世界観なのか分からない。ただ令和の時代にあった言語感覚で「観やすい」古典として再構築という目的は達せられたかも知れない。
物語の端々に 当時の権威と尊厳の象徴であろう教会の失墜が見て取れる。その意味で、原作の世界観はもっと皮肉に満ちたものではないかと思ってしまう。
(上演時間1時間45分 途中休憩なし)

ネタバレBOX

ほぼ素舞台。1カ所に乱雑に置かれたジャバラパイプ、壁に黄色のラテン十字が斜めに塗られている。天井から色付裸電球が吊されているだけ。ラストは、傾いたラテン十字に照明が照らされ輝いて見えるのだが…。

物語は、ジョヴァンニ(兄)が神父に妹を愛してしまったことを告白したところから始まる。いったんは諦めるように説得するが、最後には妹アナベラとの恋を認めるような素振り。そして二人に情交の結果…。その結果に対する神父の後始末(対応)アドバイスが更なる悲劇を招く。悲劇の結末には枢機卿も為す術がない。教会…神父の導きによって愛情劇が愛憎劇へ変質?してしまう。そこに権威や既成の価値(芸術)の失墜、それに対する抵抗や失望が透けて見えた。ここが「ワークインプログレス」へのコメント。先読みすれば、現代日本との関係なんかが出てくるのか?
公演では、まずは物語性を意識したような観せ方だ。確かに現代でも衝撃(話題)性のある「近親相姦」という禁忌を犯した兄妹の恋愛を軸に展開する。「妹萌え」であり「兄恋慕」といった相思相愛、その面白場面を切り取りコンパクトにまとめ上げ、敢えてコメディタッチで面白可笑しく観せているようだ。

舞台回しであり神父、さらにアナベラの乳母・プターナ役を演じる東京ドム子さんが巧く立ち回る。彼女曰く、原作をそのまま上演すれば3時間半のところ、本公演では割愛をして分り易くしているという。用語や当時(1630年頃)の状況については、プロジェクターで補足説明する。さらに本番中にダメ出しを演出家に求めるなど、あの手この手で観客の関心を惹きつける。

台詞は、令和の時代感覚(翻訳・構成・演出)のイトウシンタロウ氏、一方 その対比として紹介されたのが小田島雄志氏の訳。劇中では、「身の上」か「身の下」かといった上品か下品(身振りを加え)といった括りであったが、「全編上演」時にはどうなるのか。ちなみに次回公演は「ロリコンとうさん」(2023年8月)らしいので、全編上演はまだ先のようだ。
次回公演、そして本公演の全編上演、どちらも楽しみにしております。

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