燐光のイルカたち
劇団青年座
ザ・ポケット(東京都)
2022/09/23 (金) ~ 2022/10/02 (日)公演終了
実演鑑賞
満足度★★★★
壁と軍隊によって閉じ込められた人々の、鬱屈が丹念に描かれていく。それは夫婦げんかやシナリオ作家の夢など、どこにでもあるような暮らしなのだが、鬱屈を抑えきれなくなったとき、思いもかけない事態が起こる。その事後を生きる男の目から、過去が振り返られていく。関西弁のノリと明るさと、壁が醸す不穏な空気、今はなぜ弟も父母もいないのかという謎がないまざって、目の離せない緊張感のある舞台だった。ラストの展開の落差は、一つのカタルシスを生んだ。
真守(まもる、松田周)と妻の一恵(三枝玲奈)と、北から越境してきた凛(古谷陸)の現在に、真守の過去がフラッシュバックしていく。過去から現在への転換には、機銃掃射とハードロックの大音響に、3人の北軍兵士が店を襲うシーンが挿入される。過去はまだ真守の父母と弟との4人暮らし。弟のひかる(君澤透)は映画が好きでシナリオ作家志望。父健人(松川真也)は大工なのに、穴掘りのような仕事しかさせてもらえず、いつも不機嫌。母京子(野々村のん)は畑でキャベツを育ている。店の窓からは、立ちふさがるように灰色の壁が建っているのが見える。
家族を時折訪れる、父の友人の丈二(横堀悦夫)。「追悼デモ」の記録映像をとっているが、南のテロリストとも関係があることがわかってくる。
あの壁は何を象徴しているのか。ベルリンの壁か、南北朝鮮か。向こう側の北軍の兵士が南側をも監視しているところを見ると、イスラエルとパレスチナの関係が一番近いようだ。そう思っていると、あの事件を思させる展開になる。
八月のモンスター
甲斐ファクトリー
オメガ東京(東京都)
2022/09/28 (水) ~ 2022/10/02 (日)公演終了
実演鑑賞
満足度★★★★★
すごい!凄い!
以前、池袋で観た初演を大幅に改訂した内容は、その凄さをパワーアップして眼前に突き付けられた。
とにかく脚本が面白すぎる!縦横に張られた伏線が後半、次々と「えっ、そうきたか」と心を震わせながら気が付いたら泣いていた。
いつもそうだが、この劇団の役者は熱演で、好感が持てる。
悲しい話を美しく仕上げていく演出も良い。
ネタバレになるので、これ以上は書けないがリピート券があるそうなので、もう一度観に行こうと思う。
久しぶりに観た傑作!!
クロミネンス・クロニクル2
桜餅総本舗
キーノートシアター(東京都)
2022/09/28 (水) ~ 2022/10/02 (日)公演終了
賊義賊 -Zokugizoku-
壱劇屋
シアターグリーン BIG TREE THEATER(東京都)
2022/09/21 (水) ~ 2022/09/27 (火)公演終了
実演鑑賞
満足度★★★★★
鑑賞日2022/09/27 (火) 16:00
価格6円
セリフがないことへの不安感があったが、そんな感情はあっという間に消え去る舞台だった。
役者さんの表情や動きで感情が伝わる、今まで見た事のない作品で感動した。言葉の通じない場所でも通用すると思う。想像力もフル活用し、笑って泣いて、楽しめる。大団円で収まらず因果応報という所も描かれてる。本当に面白かった。
色んな所に胸を躍らせるシーンを詰め込んでくる壱劇屋さん。一度見たらファンになる。
世界が朝を知ろうとも
劇団papercraft
すみだパークギャラリーささや(東京都)
2022/09/28 (水) ~ 2022/10/02 (日)公演終了
実演鑑賞
満足度★★★
Aチーム
存在意義を喪失すると、その人は“虫”になってしまう世界。カフカの『変身』なんかを連想し、頭の中にはスターリンの『虫』なんかが流れてくる。
「虫になったらよろしく」
A 葛堂(かどう)里奈さんの独り芝居。小4の時、保健室で先生が気付くと虫(コオロギ)になっていた。パニックで踏み潰してしまったトラウマ。「虫になんかなってたまるか」と生きてきたつもりだったが・・・。篠原涼子に小雪を混ぜて不幸にした感じの雰囲気、熟練した技術。彼女はラブホに向かっている。
B 女子大生2人がラブホで秘密の作業。お互い四年で進路もちらつく。井上向日葵さんと清田みくりさん。
C 久々に訪れたラブホで深刻な痴話喧嘩。前田悠雅さんと緒形りょう氏。前田悠雅さんはハーフっぽい。木の実ナナの若い頃を感じさせる。
ギターをぶら下げて突然登場する紫野さんがカッコイイ。これならもうずっと部屋の片隅でギターを弄っていた方が良い。
ちなみに『前田悠雅バースデーイベント2022』会場・渋谷DESEO mini 2022/10/23(日)のチケットは絶賛発売中。
12人の淋しい親たち
劇団時間制作
東京芸術劇場 シアターウエスト(東京都)
2022/09/22 (木) ~ 2022/10/02 (日)公演終了
実演鑑賞
満足度★★★
台本にもっとリアリティが欲しいと感じてしまうのだが・・・。
陪審員物は、あんなふうに過剰にバカっぽいキャラクターをたくさん出してごちゃごちゃな動物園状態にしないとドラマになりにくいのだろうか。一生に一度あるかないかの、誰もが重圧と緊張を感じるであろう裁判陪審(しかも親による幼児殺害という深刻な事件)という公の場なのに、まるでピクニックのように楽しげな雑談で盛り上がったりとか、人前で臆面もなく偏見アクセル全開で暴走したりとか、有り得なさすぎるように思う。あれではバカの見本市状態。
それとも、有名な映画を含め過去の陪審員物作品ですでにやれることはやり尽くされていて、もう相当無理な設定をしないと新しいことをやるのが難しいのかも。
フィスト・オブ・ノーススター~北斗の拳~
ホリプロ
Bunkamuraオーチャードホール(東京都)
2022/09/25 (日) ~ 2022/09/30 (金)公演終了
実演鑑賞
満足度★★★★★
ミュージカル『フィスト・オブ・ノーススター~北斗の拳~』
超面白かった!イロモノかと思いきや予想外の傑作!
山﨑玲奈リンが最後の真実歌いながら村人と悪党に立ち向かう辺りでレミゼ超え!
平原綾香ユリアの歌コンサートかよ!
伊礼彼方ジュウザ持って行き過ぎ!
福井晶一ラオウの昇天で拍手喝采!😆
八月のモンスター
甲斐ファクトリー
オメガ東京(東京都)
2022/09/28 (水) ~ 2022/10/02 (日)公演終了
『やってきたゴドー』『ああ、それなのに、それなのに』『病気』
名取事務所
吉祥寺シアター(東京都)
2022/09/23 (金) ~ 2022/10/02 (日)公演終了
実演鑑賞
満足度★★★★★
『病気』
特に何もしていないサラリーマンが周りの屁理屈、珍理屈、謎理屈によってどんどん窮地に陥って行く不条理劇。まあでも、ただのコントであって久し振りに大いに笑ってしまった。満足度星5つ。
『ああ、それなのに、それなのに』
いやあもう全然分からない。本を1ページ飛ばしで読んでいるかのようだ。まあでも、そういう正統な不条理劇であって、ただ暴れているだけで演劇かどうかもよく分からないという不条理さではないのが救い(?)ではある。こちらは満足度判定不能。
コマギレ
ラビット番長
シアターグリーン BASE THEATER(東京都)
2022/09/22 (木) ~ 2022/09/25 (日)公演終了
燐光のイルカたち
劇団青年座
ザ・ポケット(東京都)
2022/09/23 (金) ~ 2022/10/02 (日)公演終了
実演鑑賞
満足度★★
鑑賞日2022/09/27 (火)
まったくわからなかった。なんかかっこいいステージ!!とは感じたのですが。爆音と銃撃音でちょっと・・・と思う方がいると思います。
私が分からないのはそこじゃなく、それぞれの関係性と、映画という虚構そして現実。この狭間の中を行ったり来たりなのだろうけど、わからない。でもね、銃撃シーンとか、ラストのイルカ、モノローグはカッコ良い!!って思いましたよ。
これって脚本を読むともっとわかるのかしら?でも、読まずに伝わらなきゃだめよねぇ。
ペレアスとメリザンド<新制作>
東京文化会館 / 新国立劇場
新国立劇場 オペラ劇場(東京都)
2022/07/02 (土) ~ 2022/07/17 (日)公演終了
実演鑑賞
満足度★★★★
初めて見たドビュッシーのオペラ。プールサイドでの義弟との逢瀬など、寒々しくももだえるように官能的だった。家族そろった食卓のシーンも互いの孤独とすれ違いを黙劇のように見せた。前面の壁を開閉するたびに、箱の中のセットが変わる演出は、物語の流れを途絶えさせずに、リアルな場面を作り出していた。意外な掘り出し物
蝶々夫人
東京二期会
新国立劇場 オペラ劇場(東京都)
2022/09/08 (木) ~ 2022/09/11 (日)公演終了
実演鑑賞
満足度★★★★
ライブビューイング1度を含む4回目の「蝶々夫人」観劇。大村博美のアリアが素晴らしかった。最後の蝶々さんの悲劇に向けて、最初から伏線がたくさん張ってある。ピンカートンを信じている間も「もし帰ってこなければ、死にます」と、結末を予言している。ケートの存在からすべてを察し、信じるものに裏切られた絶望の深さから、いわば発作的に自害してしまう心情がよく分かった。
音楽はすばらしい。バッティストーニの指揮はメリハリがあり、わかりやすい。美術も屏風を配して港の光景を作るなど、オーソドックスで豪華。
ドードーが落下する
劇団た組
KAAT神奈川芸術劇場・大スタジオ(神奈川県)
2022/09/21 (水) ~ 2022/10/02 (日)公演終了
実演鑑賞
満足度★★★★
久しぶりに加藤拓也の創作劇、それも自分に身近な青春喪失劇である。
「無用の人」ドラマは、今までにもチェホフを発端に(もっと昔からあるだろうが)数々見てきたが,これはまがうことなき現代劇。相変わらず、うまい。
現代の無用の人は芸人社会からおちこぼれて30歳代になってしがない食堂のバイトなどをやっている夏目(平原テツ)と、それを取り巻く男女。信也(藤原季節)は友達として事ごとに夏目の面倒を見るが、歳を経て、その距離は次第に遠くなっていく。二人を中心になんとなく集まっている同世代の若者グループの、いかにも今風の3年間の物語を、現在、三年前、一年前、直前と時間設定して辿っていく。自殺するとか、警察に捕まるとか、深刻なものから、男女関係、親子実家問題、友人関係、日々の生活問題と、この世代にありがちなエピソードに加え、知的障碍者への性犯罪とかエグイ現代社会タネも交えて物語は進むが、それらを解りやすいテーマにしがたって並べてはいない。最後が、突然のように終わることも含め、作者が当日ビラで述べているように一つの時代の人間関係記として描いているだけで、評価もしていなければ、感情を伴走させてもいない。それでも面白く見てしまうのだから、この作者、やはり並大抵の才能ではないと思う。
現実の社会にはこの若者程度の総合失調症の人たちは普通に生活している。内心、自分たちは世間には見えない方がいいんじゃないか、と思いながら生きているし、周囲もそこは塩梅してきた。しかしその亀裂は時に露呈することもあるわけで、丁度安部国葬の日にこの芝居を観たのも奇縁であった。いや、そこは病を持つ人たちだけでなく現代のどこにも誰にも遍在することだろうと、観客は解らないでもない。少し引いてみれば、誰もが個人の壺に入ることを推奨しているような社会への批判劇にもなっている。
今回は、そういう無用の世界に生きる人たちをマダカスカルの絶滅した飛ばない鳥ドードーになぞらえているが、そこは作劇的には少し性急だったかと思わないでもない。
この作者の才能はよくわかっている。しかし、こういう生モノを扱っていると思わぬけがをしてあたら才能を潰すこともある。この作・演出者に「ザ・ウエルキン」を持って行ったのはさすが、シスカンパニーの見識であった。「ザ・ウエルキン」ジェンダーを問う難しい側面を持っていたが、ほとんど完璧と言っていい演出だった。それは翻訳台本だったからのびのびやれたからだろう。野田秀樹もこの年代には、よく古典や小説原作の作品に取り組んでいた。日本古典をベースに野田の桜の下のような新作を期待したい。
銀幕ボイス
盆栽サイダー
in→dependent theatre 2nd(大阪府)
2022/09/23 (金) ~ 2022/09/25 (日)公演終了
実演鑑賞
満足度★★★★★
相変わらずの素晴らし伏線回収。
気持ちがスっと入っていき泣かずには居られない素敵な舞台でした!
そして何度でも見たくなる!
次回も楽しみです。
いつかまた逢える
居酒屋「夢の郷」☆製作委員会
活鮮旬菜 夢の郷(東京都)
2022/09/17 (土) ~ 2022/09/25 (日)公演終了
実演鑑賞
満足度★★★★★
「夢の郷2022秋物語 いつかまた逢える 過去の忘れもの 取りに行きませんか」 前半と後半千秋楽の3公演を観劇しました 若手ベテランがとってもいい雰囲気で、笑ってホロってきてみんなで歌って、楽しい時間を過ごせました 交流会では多才な演者さんたちの実力発揮、あっという間の終演で、次回公演が楽しみです(期待を込めて)
賊義賊 -Zokugizoku-
壱劇屋
シアターグリーン BIG TREE THEATER(東京都)
2022/09/21 (水) ~ 2022/09/27 (火)公演終了
実演鑑賞
満足度★★★★★
ワードレス殺陣芝居。
台詞はないのですが
表情や動き、そして殺陣からも感情・言葉が聴こえてくる。
笑って泣いて、たくさん心を動かしてくれます。
壱劇屋さんは一度観たら、虜になります。
新訳「あわれ彼女は娼婦」ワークインプログレス
NICE STALKER
スタジオ空洞(東京都)
2022/09/21 (水) ~ 2022/09/25 (日)公演終了
実演鑑賞
満足度★★★
開演前、可成り哲学的な質問がエンドレスに読み上げられている。会場は下手壁際に暖色系の柔らかな素材を腸のように纏めたオブジェが意味も無く存在しており、その上部に天井から白、赤、緑、藍、黄、紺等で色付けされた電球が高さや位置をずらして下がっている。舞台美術はこれだけで板上はフラット。役者は全員裸足で演技する。
J.フォードは17世紀エリザベス朝演劇末期にイギリスで活躍した劇作家。今作は彼の代表作とされる作品だが兄・ジョバンニと妹・アナベラ兄妹の純愛故の破滅を描いた衝撃作。作品成立は1620年頃と考えられている。今回、開演前には可成り哲学的な質問がエンドレスに流され続けている。(追記後送)
賊義賊 -Zokugizoku-
壱劇屋
シアターグリーン BIG TREE THEATER(東京都)
2022/09/21 (水) ~ 2022/09/27 (火)公演終了
実演鑑賞
満足度★★★★★
とにかくすごかった。そしてとてもとてもおもしろかった。
台詞がないのにストーリーがわかる。殺陣がめちゃくちゃすごい!かっこいい。そして笑って泣ける。
すごいものを観てしまった感がすごかったです。
新訳「あわれ彼女は娼婦」ワークインプログレス
NICE STALKER
スタジオ空洞(東京都)
2022/09/21 (水) ~ 2022/09/25 (日)公演終了
実演鑑賞
満足度★★★
鑑賞日2022/09/24 (土) 19:30
わが国でも何度か上演されているが、新訳版として翻訳し、令和の時代にあった言語感覚で「観やすい」古典として再構築し全編上演するという試みの「途中過程」としての公開だということだったが、はっきり言って今回のワークインプログレスを観た限りにおいては、何をしたいのかわからない。まともに正面から取り組みたいのか、コメディとして構成したいのか。
序盤において、台詞廻しがあまりにも大仰でわざとらしさに満ちており、ここでまず意欲が削がれる。
これだったら、明治大学が年に1回、全学をあげて取り組み上演している明治大学シェイクスピア・プロジェクトの方が、大学院生による翻訳も現代語を交えてわかりやすく、演技にしても演劇サークル以外の学生も参加している関係上から全員が上手いという訳ではないものの、観ていてすんなりと舞台世界に入っていける。
ただ、進行役と神父、そして妹アナベラの乳母を演じた東京ドム子は、私は初めて観たのだが、魅力的な役者だった。殊にジョバンニとアナベラが演じるラブシーンを舞台上手端に着席して観ている時の半ば陶然とした表情に心惹かれた。