タンホイザー
新国立劇場
新国立劇場 オペラ劇場(東京都)
2023/01/28 (土) ~ 2023/02/11 (土)公演終了
実演鑑賞
満足度★★★★★
序曲の巡礼のうたのメロディーで始まり、同じメロディーでタンホイザーの救済を歌いあげて終わる。構成のしっかりしたオペラで、ワーグナーの旋律とオーケストラの響きを堪能した。ウェヌスの宮殿の官能の愛の世界と、城の禁欲的なプラトニックな世界の対立が鮮やかだ。ただ、官能の愛の世界を「罪」とするキリスト教的倫理がどうも堅苦しい。ワーグナーもそんな倫理を正しいと思っていなかったと思う。だからタンホイザーは最後に救われるのだろうが、それも死と引き替えにでしかない。
歌手もみなよかったし、オーケストラもよかった。
二月大歌舞伎
松竹
歌舞伎座(東京都)
2023/02/02 (木) ~ 2023/02/25 (土)公演終了
実演鑑賞
満足度★★★★
午前の部「三人吉三巴白波」を鑑賞。お嬢・七之助、お坊・愛之助、和尚・松緑という人気役者の配役で、客席はほぼ満席。沼津から「法人会女性部」が貸切バスを仕立ててきていた。「月も朧に白魚の…」をはじめ七五調のセリフの調子のよさと、最後大詰めの雪の中の大立ち回りの迫力が見どころだろう。
歌舞伎はホンではなく、役者中心、役者の芸をたのしむものという。でも芸のどこがよくてどこが悪いのか、よくわからない。テレビでもなじみの人気役者だから見ていられる。二幕の巣鴨吉祥院本堂の場で、屋根裏からお嬢が顔を見せるところで、一番受けていた。
二幕の、血縁の因果がいろいろ明らかになるくだりは、飽きて寝てしまった。そもそも聞き取りにくい昔のセリフだし、調子に酔わず、意味をとろうとすると疲れる。入り組んだ縁の糸が複雑をきわめる黙阿弥のホンの一番苦しいところだ。
トムラウシ
株式会社Ask
自由劇場(東京都)
2023/02/04 (土) ~ 2023/02/12 (日)公演終了
実演鑑賞
追っかけ女子の想定外のパワー、観ている側が力を入れてしまうほどのド派手で痛みを感じるアクション、舞台の上に熱気があふれ、それをさらに熱くする太鼓の鼓動。無茶苦茶理不尽な状況と、それに挟まれてくるいろいろな感情や出来事。いっぱいいっぱいになって、気づくと体に力が入ってました。(感想でこんなことを言うのは何ですが)この作品はフィクションですが、実際にこの理不尽は世の中に存在することを、日本にも可能性がゼロではないということを、観る側にも感じて欲しいと思います。
草迷宮~ここはどこの細道じゃ~
演劇実験室◎万有引力
座・高円寺1(東京都)
2023/02/03 (金) ~ 2023/02/12 (日)公演終了
実演鑑賞
満足度★★★★
かつて泉鏡花の『草迷宮』を寺山修司が映画化。40分の短編で、他の監督の二本と合わせオムニバス映画『コレクション・プリヴェ(個人的蒐集)』として1979年にフランスにて公開された。主演の三上博史、15歳のデビュー作。
原作のモデルとなった話は江戸時代中期の1749年、広島の武士の子息・稲生平太郎が実際に体験した実話、『稲生物怪録』(いのうもののけろく)。16歳の豪胆な少年が一ヶ月間毎日脅かしに来るありとあらゆる妖怪共を冷静にあしらう講談調の記録。
J・A・シーザー氏の1979年のコンサート、『ブラック・クリスマス』に於いて『組曲・草迷宮』として初披露。1986年、渋谷で開催されたイベント「テラヤマ・ワールド」にて「演劇実験室◎万有引力」により『幻想音楽劇「草迷宮」―てんてん草紙ー』と銘打ち初舞台化。2006年、『幻想燈音楽劇「草迷宮」―たずねて母の迷宮三千里ー』(こまばエミナース)にて二度目の舞台化。
そして今回は、
「『ブラック・クリスマス』の際に寺山修司が書いた原作より手毬唄を巡るエピソードを核として抽出した十九枚の台本原稿をベースに、前二回の公演や原作の要素を織り交ぜ···」(「Press Walker」より引用)。
最早誰の夢なのかも解らない。
J・A・シーザー氏はパーカッション。(キーボードも?)
琵琶語りの川嶋信子さんと巨大な二十五絃箏(そう)を操る箏奏者・本間貴士氏が素晴らしい。もうずっとLIVEで曲の合間に芝居位が丁度いい。ヴァイオリンの多治見智高ジーザス氏は聴いたことのない音色を響かせる。
亡き母(森ようこさん)の口ずさんでいた手毬唄。それをどうしても思い出せない主人公・明(髙橋優太氏)。その歌詞を探して諸国放浪の旅に出ている。横須賀市秋谷(あきや)にて川上から流れてきた手毬を捕まえ、上流にある廃墟と化した黒門屋敷に泊まり込む。
怪奇西瓜男(三俣遥河氏)の軽業師を彷彿とさせるアクロバティックなアクション。
裏の土蔵に監禁された色気違いの千代女(ちよめ)。
誘惑に抗えない少年時代の明(多賀名啓太氏)。
神隠しに遭った幼馴染みの菖蒲(あやめ)。
芋の葉で顔を隠しながら「通りゃんせ」を唄う童たち。
小寺絢さん、内山日奈加さん、真夢(まむ)さん、皆化粧が美しく女優陣が映える。
何度でも観れる良いLIVEだった。
宝飾時計
ホリプロ
東京芸術劇場 プレイハウス(東京都)
2023/01/09 (月) ~ 2023/01/29 (日)公演終了
実演鑑賞
満足度★★★★
根本宗子ノリノリの頃のスズナリ公演を楽しく観たのが最初、その後割とすぐに観たのがもう一つな内容で、恐れ知らずの若い感性が必然に突き当たる壁、という印象があって結局数年観なかった(評だけは見ていたが伸び悩んでる様子だったような..)。
今回は劇作家&演出家としての数年分の深まりを見た思いで少し嬉しかった。作劇の方はばっちり、とは行かないが、女子の実感に発するリアリティが横たわる感覚があり、ストーリーそのものより瞬間に見せる煌めきが点として記憶にに打ち込まれる感じである。とは言え作劇は「謎」で関心をひきつけ小出しに解いていくサスペンス型ではあるが。
生演奏の音楽の使い方が贅沢である(ヴァイオリンソロ及び弦楽四重奏)。が、それもこれもこのためであったか、と思わせる主人公による歌が最後を飾る。キャラ的には口には出さないだろう高畑充希演じる三十女子(歌う場面では年齢は不詳)の心の声が歌に乗って暴発するが、実際のところ、歌詞が入って来ない箇所があって惜しく、惜しいだけに拳に力が入り、思わず頑張れと心中応援目線。それを引き出すだけの歌唱力(私は初)とも言える。
一人の人間を人生の最後まで思い続ける、イデア的な愛が、劇の最後に残される言わば神話的な語り終わりの中に、作者はどうにか普遍的な何かを書き込めたのかな、とも思う。
男はその最後の日に女の前に現れて、自分が戻れば繋がれると信じていたがその目的地に辿り着くのに遠回りしてしまうのが自分、こんなに時間が掛かってしまったよ、と言う。女は男の腕の中で、これまでの長い長い苦しみがなかったかのように貴方が今ここにいる事が嬉しい、と言い息絶える。
根本作品だけに女が生きた日々の具体が様々に想起されるのであったが、日々を刻むしかない受苦の実存と人の人生をシンプルに規定するものの存在が脳を駆け巡り、根本流に演劇たり得ていると感じた次第である。
トムラウシ
株式会社Ask
自由劇場(東京都)
2023/02/04 (土) ~ 2023/02/12 (日)公演終了
実演鑑賞
満足度★★★★
鑑賞日2023/02/06 (月) 14:00
特にプロレスの角田選手、大迫力でした。腕の筋肉は説得力あり! ハードボイルドから荒唐無稽なコメディー、真面目な社会批判、未来予測まで、ちょっと詰め込み過ぎかなあ。
トムラウシ
株式会社Ask
自由劇場(東京都)
2023/02/04 (土) ~ 2023/02/12 (日)公演終了
実演鑑賞
満足度★★★★★
圧倒的な世界観にてっきり人気マンガが原作の公演かと思いきや、なんと完全オリジナル作品
強者(政治)が弱者(一国民)に押し付ける理不尽
マンガ的とはいえ現在ある政治情勢・構図の延長線上にイメージできてしまう部分もあって何とも空恐ろしい設定
怖いながら巧い塩梅にコミカルさや楽しめる要素が盛り込まれ、とても乗っかりやすいエンターテイメント作品になっていました
何より登場人物達の心情描写が丁寧なのが良い
理不尽に投獄された男達の自問自答とは裏腹に、主人公のファンである女性の揺るぎないストーカー気質がめっちゃ面白い
そして筋肉隆々、リアル超人ハルクとも言うべき角田信朗さんの迫力といったら
こっこりゃ絶対に勝てない…と思わせる凄味が物語に説得力を持たせていました
この役はWキャストで明後日からは宮迫博幸さんにバトンタッチ
とても重要な役どころ故どんなふうにキャラクターが変わるのか非常に気になるところです
日替わりゲストは小出恵介さん
賑やかしでも面白ければいいよね。と思っていたらなるほどストーリー的にもそう繋がっていくわけか
最初から最後まで見どころだらけ お腹いっぱい、大満足です
舞台『十五少女漂流記』
舞台『十五少女漂流記』製作委員会
THEATRE1010(東京都)
2023/02/03 (金) ~ 2023/02/06 (月)公演終了
実演鑑賞
満足度★★★★
ジュール・ベルヌ『十五少年漂流記』(1888)の少女版である。原作は子供のころから気にかかっていたが今更読む気もしないのでちょうど良い機会と出かけてみた。さすが冒険活劇の名作だけあって血沸き肉躍るストーリーに引き込まれた。出演者はアイドルとはいってもさほど有名ではない方ばかり。私も特に推しがいるわけではなく純粋に演劇を楽しむことができた。
退場はキャスト全員が舞台に並び「お見送り」をするのだが前8列のSS席は1列ごとに立って手を振り、3秒間のカウントダウンが行われる。さすがに私はSS席ではないので早々に退散した。色々やるのねえ。
桜姫東文章
木ノ下歌舞伎
あうるすぽっと(東京都)
2023/02/02 (木) ~ 2023/02/12 (日)公演終了
実演鑑賞
上演時間は約3時間15分(15分休憩含)。
半ば廃墟の和洋折衷の公衆浴場を芝居小屋に見立て、そこに集った
芝居好きだが演技はずぶの素人?の今風の若者たちが歌舞伎の真似事をしている。
浴槽と洗い場のある浴室辺りを(「黒御簾」や「床」に当たる所も含め)舞台、
脱衣所辺りを待機中の役者が後見や観客役を兼ね見物休憩する袖兼客席、
その間付近を引幕で仕切ってできた大まかな劇場空間で起こっている
芝居も含めた出来事を悉く隅から隅まで、実際のお客さんが客席から
観察しているという二重構造meta構造の仕掛けが施されているとみるのが
素朴な観方か(従って、幽霊が出るのもあり、待機中の大向こう?の
観客役の役者から舞台上で奮闘中の役者へ、例えば、べにヤ、いなげヤ、
ダルメシアン、セカチューもといセケチュー、ニコイチ、待ってました、
久しぶりなどと掛け声がかかるのもあり)。
古典歌舞伎へのリスペクトも込め話の内容がよく分かるように
創意工夫されている演出。ただ、これまでの木ノ下歌舞伎でよくみられた、
つかこうへい芝居張りの多少のムリスジも押し通すあの勢い、熱量、
テンポのよさ、躍動感や高揚感に溢れた作品からはかけ離れるが、
その分、各場面に応じてreal実観客との適度な距離感の調節が行われていて
(ただ、終盤になるにつれこの制御が利かなくなりつつあるが、意図的か)
どちらかというとフラットでコンパクトな作りになっている。
これまでをdynamic動的とするなら、今回は全体としてはむしろ
static静的に近い作品という印象あり(もちろん、いわゆる本来の歌舞伎に
比べればはるかに動的。静かな脱力系の『熱海』や『蒲田』を観ている
感覚に近い。ただ、深淵に沈み、また浮かばぬままの撃沈組が奏でる
健やかなBGMが終始耳に入ってきていたことも否定しないが)。
注意深く観てきた方は、そういえば弟の松若丸はどうなった?
吉田家は?などと思うかもしれない。しかし、少なくとも公家の姫である
桜姫がジェンダーの縛りをこえ、これからの自分の運命は
自分で切り拓くといった自立意識、自我に目覚めたとするならば
(いかにも近現代的観点だが)、今回の幕切れ結末はそんなことは
どうでもいいことと物語っている気もする。
また、細かいことで記憶が不鮮明なため間違っていたら申し訳ないが、
引幕の色柄が薄鈍色というかくすんだ白色から淡い青色へ開演時と終演時で
変わっていたような。町内の寄合の出席を渋る権助の出席への決め手が、
八百善の仕出し→なだ万の弁当
に変更されていたのには気づいたが。
No Robot
One Bill Bandit
阿佐ヶ谷アルシェ(東京都)
2023/02/04 (土) ~ 2023/02/05 (日)公演終了
実演鑑賞
満足度★★★★
鑑賞日2023/02/05 (日) 17:00
価格1,000円
THE・エンタメ演劇。
2時間近い舞台でしたが、中だるみせず最後まで集中出来ました。
作品の内容が濃い…とは言えませんが、テンポ感・楽しませ方はよく考えられてます。
手間のかかったであろう台本と演出には、当然チケット代1000円という対価には見合わないが、
お客さまへの「もてなしの精神」が、満席を呼ぶ力になっていると感じました。
No Robot
One Bill Bandit
阿佐ヶ谷アルシェ(東京都)
2023/02/04 (土) ~ 2023/02/05 (日)公演終了
実演鑑賞
満足度★★★★
理屈抜きに、楽しんでもらうに徹した 典型的な娯楽劇。そのまま素直に愉しみたい。
説明にある、ジャパンロボットウィークに出展する製品の企画…資料の空いたスペースを埋めるため冗談で書いた企画案が通り、発案者という事でそのプロジェクトに参加することを余儀なくされ…荒唐無稽な内容〈ビジネスドラマ〉だが、それを面白可笑しく観せる。
そしてタイトル「No Robot」とは 実に上手いネーミングで、物語の肝そのもの。感情無きロボットの開発だが、それを担う人間は熱き思いを迸らせる。
歌・ダンスなどは、まさしくエンターテイメント作品だが、それ以上にイカれた、いや イカの手や巨大(肥大)化した人物の印象が強烈。観客に楽しんでもらう、そんなサービス精神に溢れた演出である。
冗談の企画、しかし それに関わった人々の〈正直な〉心を育んでいく成長譚でもある。そこに表層的な面白さだけではない 〈ヒューマンドラマ〉としての奥深さも垣間見えてくる。
そして、出来れば“No Robot”を登場させてほしかったが…。
(上演時間1時間50分 途中休憩60秒)
ドッペルゲンガーちゃん
坊ちゃん嬢ちゃん
東中野バニラスタジオ(Vanilla Studio)(東京都)
2023/02/03 (金) ~ 2023/02/05 (日)公演終了
実演鑑賞
満足度★★★
タイトル「ドッペルゲンガーちゃん」通り、自分に向き合った心象劇。自分の気持の在り様を語る内容であるが、1人2役ではなく、ハーフマスクを付けた別人物が自分に成り代わるという 演劇的な観せ方をしており分かり易い。同時に舞台美術を上手く使い、気持の整理を巧みに表現する。
物語は、パンフの記載にある章立てーー「ハムスターに呪われた女」「月の光に導かれ」「部屋を片付ける」のような内容を順々に展開していく。それは時の経過であり心の落ち着き、そんな一人の女性の心の変遷、成長譚である。
上演前から、舞台下手にいる じゃじゃんがサンの圧ある存在感。それは劇中での進行役であり俯瞰もしくは観察といった役割を担っている。そこに脚本・演出/加藤睦望さんの心象<劇>を ことさら抽象的にさせない工夫が読み取れる。
(上演時間1時間10分)
ウブスナvol.1
アメツチ
シアターKASSAI【閉館】(東京都)
2023/02/01 (水) ~ 2023/02/05 (日)公演終了
映像鑑賞
満足度★★★★★
#ナラティブアプローチ を映像で観劇。前評判通りバンタムクラスステージの細川さんの作風を思い起こさせるテイストながらそれほどこじれてなく正直長編なら「こっちの方が好みな方も多いのでは?」と感じた。(役者さんの力によるものも多いとは思うが)個人的には場面ごとの切り替えが(映像で見る限り)シームレスに繋がる感じでなく細切れになっているようになっているように感じたがごく短いやつであればありだと思うけどもちょっと疲れるというか好きでない。ストーリーは「これが正義だ」といった主張もなくわりと淡々と進んでおり非常に観やすいと感じたし趣味に合う感じ。渋めのおっさん祭りなのも100点です。車を車名でなくメーカー名で言うところ何気に好き
良い演者さんがそろっているので当然台詞が聞こえるだ聞こえないだの基本的な部分は全く不安はなく。不安要素は作演というやる側見る側共に贅沢な企画。これだけ良い作品がやれたのだから是非続けてほしいし。劇場で見たいんだよ(結局これ)
No Robot
One Bill Bandit
阿佐ヶ谷アルシェ(東京都)
2023/02/04 (土) ~ 2023/02/05 (日)公演終了
ドッペルゲンガーちゃん
坊ちゃん嬢ちゃん
東中野バニラスタジオ(Vanilla Studio)(東京都)
2023/02/03 (金) ~ 2023/02/05 (日)公演終了
ウブスナvol.1
アメツチ
シアターKASSAI【閉館】(東京都)
2023/02/01 (水) ~ 2023/02/05 (日)公演終了
実演鑑賞
満足度★★★
ナラティブ・アプローチを観劇。ストーリーが今ひとつの感。少々ウザくイライラさせられる場面もある。パブリックスクールのナイーブな生徒のような少年時代のアレンや、現在のアレンのクラッシュジーンズ姿に違和感。
スター誕生2 2023
ミュージカル座
中目黒キンケロ・シアター(東京都)
2023/02/01 (水) ~ 2023/02/05 (日)公演終了
実演鑑賞
満足度★★★★★
鑑賞日2023/02/04 (土)
中目黒キンケロ・シアターにてミュージカル座『スター誕生2(2023)』を観劇。
2018年に観て大変感銘を受けた『スター誕生』の続編。前作を拝見してから5年の歳月が経っているものの、個人的な感覚としては未だに衝撃が残っている作品の一つで、今作に対する期待値も自然と高まっていました。
結論から言えば、今回も期待値をはるかに上回る内容であったと感じました。星5つでは足りません。とにかく最初から最後まで全てが素晴らしいのです。
前作の『スター誕生』と同じ1970年代の芸能界という設定はそのままに、新たなエピソードを詰め込んだ内容は、どの役にも感情移入してしまいそうなくらいのリアリティー溢れるストーリーばかり。表舞台に立つ人、それを裏で支える人、或いは生み出す人。芸能界という華やかなイメージだけでなく、それぞれが抱える悩みや葛藤などが上手く描かれており、とても奥が深く、見応えがありました。今の時代も知られざる芸能の世界というのは存在すると思いますが、インターネットなどはなく、画面を通してしか知ることが出来なかったこの時代の芸能界というのは、尚更ベールに包まれていたと思います。その昭和の芸能界が実に上手く描かれている内容であると感じました。皆が試行錯誤しながらクオリティーを追求していた時代。今とは違う価値や重みがあるように感じましたし、これはこれで良い時代だったのだろうな、と回顧しながら楽しませていただきました。
決して大掛かりな舞台セットが組まれている訳ではなく、ステージ上に並べられたパイプ椅子に、キャストの多くが常に着席しているという個性的なスタイルはこれはこれでインパクトがあります。さらに、単に着席しているのでなく、札を立てる芸能関係者、ペンライトを振る観客などきちんと役目を果たしているのが面白いと思いました。大掛かりなセットがなくても、賑やかで華やかなステージに見えました。
また、24曲にも及ぶミュージカルナンバーはどれもこだわりが感じられ、それを歌うキャストの皆さんの歌唱力が半端なく高く、お見事としか言いようがありません。前作同様、特定の誰か一人にスポットライトが当たる訳でもなく、登場人物それぞれに見せ場があるうえ、長尺で歌を披露するという見所満載の内容は、何ともまぁ贅沢な内容なのでしょう。終始感動、興奮の連続でした。物語の最後に披露される“その後”のエピソードも微笑ましく、「その後どうなったのだろう」というモヤモヤを吹き飛ばす、すっきりとした終わり方であったように感じました。人生良いときもあればそうでないときもあるのは当然な訳で、この作品はその辺りを上手く描き、決して悲観的にならずに前向きに生きていけばきっと良い方向に事が運ぶというメッセージ性もあるように思いました。そして歌が重要な役割を果たしているということも。サブタイトルにある「歌こそわが命」はまさにここにあるのではないかと感じました。
今回で通算9作目となったミュージカル座さんの観劇作品の中でも、この『スター誕生』のシリーズは特に好みの作品です。昭和歌謡をリアルに楽しんでいた世代ではありませんが、どこか懐かしく、細かな感情表現、演出なども秀逸で大満足の演目。拝見出来て良かったです。
武士とジェントルマン
朗読劇『武士とジェントルマン』製作委員会
サンシャイン劇場(東京都)
2023/02/01 (水) ~ 2023/02/05 (日)公演終了
実演鑑賞
満足度★★★★
役者(声優)さんが変わると登場人物の性格も変わる感じがします。しかしお願い。声優さん(一部だと思いますが)プロフィール写真は更新して、現状に近いものにしていただきたいです。HPで見て行ったのに、誰だかわかりませんでした。
演出する方は会場の真ん中にお座りなんでしょうか。最初の方で、車窓から見えている2人みたいなシーンがありますが、下手席からだとその枠に阻まれてアンソニーがよく見えないのですよ。
おやすみ、お母さん
風姿花伝プロデュース
シアター風姿花伝(東京都)
2023/01/18 (水) ~ 2023/02/06 (月)公演終了
実演鑑賞
満足度★★★★
2回目。
凄く合点がいった。作家の表現したいことがやっと理解出来た。
自死遺族の物語は家族や友人恋人にある日突然、死を選ばれたことへのショック、遺された者の心の傷を語るものが殆ど。
「何故相談してくれなかったのか?」
「自分に何かしてやれることはなかったのか?」
永遠の自問自答が続く。
今作は自殺する娘が丁寧に母親に説明してくれる。泣き叫び怒り狂い喚き散らす母親。だが娘の決心は揺るがない。「やっぱり私がやることは思ったようにいかない。」と、さらに自己嫌悪の念が広がるのみ。
自殺を決めた者の、この感覚の表現。
「これ以上、自分のことを嫌いになりたくない。」
「誤った選択を選ぶ位なら、もう何も選びたくはない。」
そんな娘に何を言える?
死を選んだ側の気持ちを的確に表現してみせた。
おしまいのつづきのつづき【札幌公演中止】
イチニノ
シアター711(東京都)
2023/02/04 (土) ~ 2023/02/05 (日)公演終了
実演鑑賞
満足度★★★★
詩的な台詞と絵本の物語のような話でしたが、私には少しわかりにくかったです。
個性的な人物達が魅力的でした。