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日記

日記

カリンカ

OFF OFFシアター(東京都)

2023/02/22 (水) ~ 2023/02/28 (火)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★★

鑑賞日2023/02/23 (木) 18:30

座席1階

カリンカの3年半ぶりという公演は、劇団普通の石黒麻衣の書き下ろし。お約束の茨城弁で、家族の物語を紡いだ。

今回は、田舎の老父母を「お試し」だがかなり前向きに呼び寄せた二人姉妹の妹夫婦がまず登場。年老いてきたがまだ元気な老夫婦。でも体のあちこちに不調が出始め、将来の介護ということがちらつく。妹が半ば強引にではないかもしれないが、自宅に父母を呼び寄せた。
室内を片付けて老父母のための部屋を確保し、妹の夫は腰が痛いという義父のために高級マットレスを買ってくる。そして実は、この夫も自分の父親が入院するという事態に陥る。

妹が父母を呼び寄せたと聞いて、姉夫婦も遠方から訪ねてくる。この微妙な姉妹関係というか、お互いの夫が絡んだ関係とか。どこの家族にでもあり得る、起こりえる日常が丁寧に描かれる。茨城弁はともかく、世代間の会話スピードの差をはっきり描いているところが非常に印象的だ。老父母は耳も遠く瞬時の判断もゆっくりになるため、会話がかみ合っているようでずれている。これが実にリアリティーがある。
親と子はこうしたギャップを埋めながら、どこかで折り合いをつけて暮らしていかなければならない。ラストシーンは自分には少し意外な結末だったが、どのような形になろうとも、老父母の方は息子や娘たちの判断にある程度従わざるを得ない、頼らざるを得ないのだ。

作・演出の石黒麻衣はこのあたりの、スピードが異なる会話劇が秀逸だ。劇団普通の「病室」もそうだった。けしてテンポよく進む舞台ではなく、テーマも軽いものではないが、見終わって何だか少しホッとする感じがいい。

15 Minutes Made in本多劇場

15 Minutes Made in本多劇場

Mrs.fictions

本多劇場(東京都)

2023/02/22 (水) ~ 2023/02/26 (日)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★★★

15分×6団体の演目を見ることができるため、いい意味で一演目ずつに集中できます。
いい意味で小劇場的な雰囲気のものから商業っぽいものまである中で、自分の好みのものに出会えて、台本などを終演後に購入してしまう、そんなワクワク感を与えてくれる公演です。

ネタバレBOX

じっくりとした話から軽快なテンポのものまで、飽きのこない順番かつ、Mrs.fictionsさんがしっかりラストを締めてくださるので、満足感もとても高かったです。


入管収容所

入管収容所

TRASHMASTERS

すみだパークシアター倉(東京都)

2023/02/17 (金) ~ 2023/02/26 (日)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★★

#星野卓誠 #倉貫匡弘
#長谷川景 #森下庸之
#藤堂海 #清水直子
#齊藤尊史 #岩井七世
#井上裕朗 #宮越麻里杏
#伊藤俊輔 #橘麦
#坂井宏充 #根岸晴子
#石井麗子(敬称略)
中津留章仁さんの素晴らしさはスピード感だと思う。そして、社会に目を向けたアンテナの高さと感度。そこにある理不尽な出来事、特に政治や権力によるソレに対する批判の目。かつての演劇には存在したそういうメッセージや社会批判の力を持った作品が少なくなっている現在、その姿勢を持ち続ける氏に敬意を表したい。
今回も2021年3月の事件を題材にしている。奇しくも2月15日に第5回口頭弁論で、収監されていた女性の様子を写した映像の公開が決定されたばかり。話題としても絶妙なタイミング。恐らく多岐にわたる資料を当たり、多くの取材も行って構築されたであろう本の持つ説得力に、客席がグイグイ引き込まれていく。
作品が包括するこの国の政治的な問題における危機感を共有したキャストの皆さんの、『多くの人に伝えたい』という上演に対する熱量が凄い。
それぞれの人物に語らせる言葉に苦悩と憤りが宿る。ところどころで氏からのメッセージが代弁される。チョイチョイ顔を出す現政権や独裁的な政治家への批判には大いに拍手を送りたい。ただ、言いた過ぎるのだろう、強引に挟み込んでる感じを受ける部分はあって、もう少し上手いこと……ね。
今作の見どころは、井上裕朗さんと清水直子さんによる局長と新聞記者の取材バトルに違いない。これはたくさんの人に観て聴いて貰いたい。責任を負う『長』という立場にある者は、もっと冷静で傲慢で落ち着き払って対応するように思うので、少々過剰演出な気もするけれど、最初からヒートアップして攻め合うやり取りが、事の重大さによって大物も冷静さを欠くのだと、動揺しているのだということであれば成功なのかもしれない。
それにしても、井上さんはこの役と最初に登場する役とが真逆の立場で、その振り幅を演じ分けるのが本当に凄い。
そして、橘麦さんと伊藤俊輔さんの、作品や役との距離感がとても好きだった。

今、この問題を世に届けたいという情熱がたくさんの人に伝わることを望む。
願わくは、いつか再演する時にもう少し物語が滑らかに流れるとイイ。特にカノ女性が登場するシーンと、カノ女性について最初に討議するシーンは、フワッとしていてしっくりこない気がしたし、まだ乗れないキャストもいるように思えたから。
確かに新鮮なサカナは魅力的だけれど、手をかけて熟成させたサカナは旨味を増すはず。時間をかけて手もかけて、じっくり旨味を引き出してまた板に乗せて欲しい。

ともかく、今作の観劇によって多くの人がこの国について考えるキッカケにしてくれたらと願う。このカンパニーの願いも、そうに違いない。

天河充の華麗なる日常

天河充の華麗なる日常

南森町グラスホッパーズ

南森町LaQoo天神橋三丁目スタジオ(大阪府)

2023/02/22 (水) ~ 2023/02/23 (木)公演終了

満足度★★★★

50分という短い時間の中に、とても良い台詞が沢山あった
仮に花が咲かなくとたも、日々努力をする等々自分が忘れかけていたことを思いださせてくれた
シリーズ三回目も行きたくなった‼️

15 Minutes Made in本多劇場

15 Minutes Made in本多劇場

Mrs.fictions

本多劇場(東京都)

2023/02/22 (水) ~ 2023/02/26 (日)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★★

鑑賞日2023/02/22 (水) 19:00

15分×6劇団のショーケース公演が5年半ぶりに戻ってきたぞ!(3分押し)トータル117分。
 6劇団それぞれに特徴ある作品で面白く観たが、以前も観た主催のMrsFictions『上手も下手もないけれど』が切なく面白い。今村の司会で懐かしくなってしまった。

時間よ止まれ

時間よ止まれ

東京タンバリン

小劇場B1(東京都)

2023/02/22 (水) ~ 2023/02/28 (火)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★★

鑑賞日2023/02/23 (木) 15:00

座席1階

忙しすぎて、時間が足りない。一日50時間くらいあったらいいのに。かつて、本気でそう思ったことがあった。そんな「夢」をかなえてくれる舞台である。でも、そんなことが夢でよかったとしみじみ考えさせられる舞台でもある。

先人も書いていたが、舞台セットが独創的で見事だ。時間がテーマなだけに、テーブルを回転させて時計をイメージしたり、冒頭の前説で砂時計を提示したり。バックのデザインも美しい。

主人公は夫が単身赴任し、二人の子どもの面倒を見ながらパートで生活を支える主婦。子どもと言っても会社員の姉と高校生の弟なのだが、この弟がゲームオタクで「ご飯まだ?」と平気で言うなど最初からもう大変なのである。
そうした雑事を全部引き受けて当たり前と考える女性だから、その時点でもう時間が足りない、物語が進む中で、さらなる難題が次々と降りかかる。

ラストがとてもさわやかでホッとする。AIの時代になっても、人間性が一番と納得できる舞台だ。

高校生役の俳優さん。どう見ても高校生に見えません。少し残念。

入管収容所

入管収容所

TRASHMASTERS

すみだパークシアター倉(東京都)

2023/02/17 (金) ~ 2023/02/26 (日)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★★★

ここまでの「見てきた」を見ても殆ど★5。かえって疑わしいところだが、見てみると最近のトラッシュマスターズとしても抜群の出来。昔日の社会派の面目躍如。今までのコメントに加えることはほとんどないが、作劇的には、登場人物の位置を巧みに配置して一方的なプロパガンダ劇にしかった技術的な冴え。客演を要所に配して、台詞がよく聞こえる俳優で内容の肝心なところを押さえたこと。事実を列挙したかに見えるドキュメンタリー的展開、いずれも成功して2時間45分の超尺をダレずに客席も呑まれていた。
以下は芝居の内容とは全く関係ないが、この劇場の運営がこの芝居の内容そっくりだった。この劇場は入り口が裏通りに回ってから夜公演になると全く足下が良くない。下町の道不案内もある。うっかり曲がり角を間違えて二分遅刻。すると、劇場の入り口は鍵をかけて誰もいない。やはり遅れてきた人もいて表も裏も開口部を探すがわからない。やっと裏の出口から出てきた関係者らしい人に、塀越しに事情を話すと、表に回ってくださいの一点張り。そうこうするうちに表に回っていて遅刻組の同士が関係者を見つけてやっと入場できた。入ってみれば、プロローグでタイトルが出るまでに数分あったから、七時ジャストには門を閉めて鍵をかけてしまったんだね。
七時快演と書いてありますから、それに遅れる人は入らなくても良いのが建前です。劇団はそんな客はフォローしません、
といえば、それも正論だが、観客は不特定多数だ。違法入国者ではないわけで、それぞれに理由があって遅刻している。現に遅れてきた客がその後もあって合計5名。普通それくらいは遅刻者がいるのは当たり前で、それをシャットアウトして定刻以後は入り口に係員が一人もいないというのは、いかがかと思う。またこの劇場は周囲が暗く劇場なんかありそうもないところに入り口がある。その上暗い。公園なので、管理規則があって明かりがつけられない野かもしれない。それでは公的施設とではない。
これでよく、入り口をシャットアウトしたこの劇団の人たちが黙っていると、不思議だった。この芝居でも指摘しているが、この国は上も下もどうかしてしまっている。タモリに新しい戦前と言われてうろたえているが、タモリと違って本当に戦前を知っている私は全くそうだと思う。これを取り返すのは大変だよ、お上の言うとおり、マスクを外す外さないなんて言っていると、たちまち防空壕なんか作らされるよ。

15 Minutes Made in本多劇場

15 Minutes Made in本多劇場

Mrs.fictions

本多劇場(東京都)

2023/02/22 (水) ~ 2023/02/26 (日)公演終了

実演鑑賞

15分の短編×6演目
それぞれ全く違う味で楽しめました!

ネタバレBOX

①西瓜橋商店街綱引大会(ロロ)
唐突なエイリアンに吹き出してしまったw
世界観のギャップがとても良い。
②魔術(演劇集団キャラメルボックス)
原作を知らなったが芥川龍之介っぽいストーリーで良い。
パーカッションの演出、中盤以降ももっと活用できそう、と思ったり。
③ワルツ(ZURULABO)
大分癖のある脚本w
ストーリーがちゃんと把握できず、残念。
④真夜中の屋上で(Bleathe Arts)
のーこめ
⑤またコント(オイスターズ)
めちゃ好き。
ボケなのか微妙なボケにセンスを感じる。
今後の公演もみたいと思った。
⑥上手も下手もないけれど(Mts.fictions)
主催らしくラストに相応しい素敵な舞台。
15分でしっかり引き込まれた。
惜しむらくは遠目の席だったため、メイクや細かな演技があまり見えなかった。。。
(予約しておかなかった自分が悪い)
さらば箱舟

さらば箱舟

オーストラ・マコンドー

吉祥寺シアター(東京都)

2023/02/18 (土) ~ 2023/02/26 (日)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★

1967年にコロンビアのガブリエル・ガルシア=マルケスが発表した小説、『百年の孤独』。世界的ベストセラーとなり、ノーベル文学賞を受賞。
それを寺山修司が翻案し、1981年に舞台化したものが『さらば箱舟』。
それを更に1982年に映画化したものの、原作権問題で揉めて公開出来ず。寺山修司の死後、1984年に公開されている。
今作はタイトルこそ同じだが、ほぼ全く別の新作だろう。

ちなみに黒木本店のプレミアム焼酎『百年の孤独』は、文学好きの四代目がガルシア=マルケスに電話で直談判して許可を得たと云う。

上手サイドに生演奏の川崎テツシ氏。その後ろに黒子のプロデューサー(?)が台本片手に座っており、彼の背中に触れることでBGMのオン・オフを指示。MIDIキーボードとギターでアンビエント・ミュージックを奏で続ける。

衣裳(西本朋子さん)が近未来風、『アルファヴィル』みたい。何かアマヤドリっぽい意識高い系の演劇。

主演の小林風花さんは低いトーンでモノローグのような抑揚のない台詞を呟く。『青の6号』というOVAアニメのキャラっぽい。
座長役の坂本真氏が若き日の宮崎駿っぽい。
関西弁のめがねさんが随分ベテランの貫禄だったが、23歳の若手だったことに驚いた。
下手な手品を披露する三坂知絵子さん、旦那は新海誠!

劇団のメタフィクションな部分も織り込みつつ、タブーとされた恋愛関係についてもじっと考察するような物語。
この系の演劇が大嫌いな自分にとって、逆に色々と考える時間になった。

ネタバレBOX

認知症になった父は全く意味の解らない言語で喋るようになった。言語学者である主人公は、何とかその意味を解き明かそうとする。父は死に、この言語は創作したものではなく、かつて存在したが失われた言語なのではないかと考える。幾つかの解読した言葉。「自分はお前の父ではない。本当の父母は別にいる。」
仕事を依頼されオーストラと云う滅びた街に向かう主人公。街は海に沈んで全てが消え去っていた。そこで会った男女のいざないで、時間を遡行して過去のオーストラに辿り着く。
旅芸人の一座がオーディションをやっていて、そこに潜り込む主人公。自分を産む前の母親に出会う。すでに妊娠している母、父親は果たして誰なのか?

いとこ同士(近親)で結婚すると呪われて奇形児が産まれる為、禁忌とされている地域。愛し合った二人は故郷を捨てて自ら新しい街を築く。だがその末裔もいとこ同士で愛し合ってしまう、永久に巡る因果。

オシャレな衣装、オシャレな台詞、オシャレな空間。観客はカフェ巡りのように、オシャレなムードを味わう。誰もコーヒーに口をつけようとはしない。そこが凄く演劇の核となる部分。
雨の壜(アメノビン)

雨の壜(アメノビン)

空の驛舎

布施PEベース(大阪府)

2023/02/17 (金) ~ 2023/02/19 (日)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★★★

「非日常」が、重なり、それはやがて「日常」になる。
病院 一階のロビー 看護師の気持ち 患者の気持ち 家族の想い
コロナで面会人数の制限 面会禁止
年配の入院患者が言う 今日が息子が来る 孫が、息子の嫁が来る
入院している父に会わない。
看護師 患者 家族の想い 話して 分かり合えるのか その先
それぞれの想い、心、
その後また日常は変わるのだろうか。

咎人の刻印

咎人の刻印

High-position

紀伊國屋ホール(東京都)

2023/02/16 (木) ~ 2023/02/26 (日)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★★

世界観の面白い作品でありましたが、登場人物の心情の変化が速すぎて・・・原作読んでないので、何とも言えないけれど、人の心はこんなにもあっという間に変化してしまうのかと、違和感を感じました。
舞台セットシンプルでしたが、照明効果が変化に富んで魅せるものだったと思います。が、真正面からの風景しか意識していないような気もします。もう少し広がったものであれば劇場全体を惹き込めたであろうと思わないでもないです。
出演者、脇役が魅力的でした!貫禄の中村誠二郎さん、綺麗な動きとクールぼけキャラの伊勢大貴くん、演技のふり幅が増えた杉江大志くん、また一段と動きに磨きがかかった川隅美慎くん、しっかりキャラ成立の古賀瑠さん、アンサンブルの方たちも芝居良し動き良し!対しメインの二人が演技者としては幼い。その為の周り固めだったのかなとついつい思ってしまいました。しかし、このメンバーでシリーズ化していけば、二人の成長も楽しめるのではないかと思います。続編希望です!

生者に梔子

生者に梔子

牡丹茶房

高田馬場ラビネスト(東京都)

2023/02/15 (水) ~ 2023/02/19 (日)公演終了

実演鑑賞

満足度★★

難しかった。最後のほうよくわかんなかった。

博士の愛した数式

博士の愛した数式

まつもと市民芸術館

東京芸術劇場 シアターウエスト(東京都)

2023/02/19 (日) ~ 2023/02/26 (日)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★

原作を読んでいないが、原作の魅力があまり伝わってこなかったのではないかと感じる。80分に収めるためだったのか、筋を追うだけで終わってしまったような印象。おそらく原作では、数学の深遠な無限の世界から語りかけてくるような魅力があるのだろう。

桜姫東文章

桜姫東文章

木ノ下歌舞伎

ロームシアター京都サウスホール(京都府)

2023/02/22 (水) ~ 2023/02/23 (木)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★★

鑑賞日2023/02/22 (水) 18:00

木ノ下歌舞伎×岡田利規(作・演出)興味深く観る。前半はチェルフィッチュのような演出になかなか馴染めなかったが、後半がぜん演出と芝居がうまくコラボして面白く観ました。

なるべく派手な服を着る

なるべく派手な服を着る

MONO

AI・HALL(兵庫県)

2023/02/22 (水) ~ 2023/02/26 (日)公演終了

満足度★★★★

素直に面白かった❗
題目に最初はピンとこなかったが、途中でああなるほどとくる
なんとも言えない、血のつながりのない男兄弟の話で、父親母親がどんな人生を送り、兄弟のポジションを与えてきたのか
母親は本当はさみしがりやだったんだけど、本当は…
考えれば考えるほど、奥が深い

入管収容所

入管収容所

TRASHMASTERS

すみだパークシアター倉(東京都)

2023/02/17 (金) ~ 2023/02/26 (日)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★★★

素晴らしい作品だった。
実際に起きたことを基に書かれた作品で、冒頭からずーーーっと憤りでいっぱいになる。日本人の恐ろしく醜い部分を見ることになる。
近くで観ていたお客さんは、途中で大きなため息とともに、抑えきれない気持ちを身体で表現していた。めっちゃ気持ちがわかると思った。客席から飛び出して、目の前で演じているヤツらに殴りかかりたくなるくらい、やりきれない想いでいっぱいになった。
1人でも多くの人に観てもらいたい作品。

時間よ止まれ

時間よ止まれ

東京タンバリン

小劇場B1(東京都)

2023/02/22 (水) ~ 2023/02/28 (火)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★★★

#谷川清美 #森啓一朗
#遠藤弘章 #青海衣央里
#萩原美智子 #大田路
#木林優太(敬称略)
初日。最初に言っておきたいのは、映画関係者の方に観て欲しい。コレ、監督なら撮りたくなるはず。プロデューサーとかなら撮らせたくなるはず。ちょっぴりCGなんかも使ってイイ画が撮れるよきっと。誰か下北沢に連れてきて欲しい。
サイズの違う二つの長テーブルを上手く使った楽しげな舞台にはミヒャエル・エンデがいて、後半の不穏な空気には喪黒福造がいた。そんな気分。
タイトルからは矢沢永吉を思うのは世代として致し方ない。
床の模様も含め、セットが美しく、転換の流れもスムーズで美しい。複数の役を演じる方たちの衣装を含めた切り替えも見事。
時を止めるとか、タイムリープするとか、時間をコントロールすることは人間にとって永遠のロマン。 浦島太郎の玉手箱や若返りの泉から、銀河鉄道999の機械の体だってそう。不老不死は憧れても、大人になるにつれ、大切な人とのことを考えるようになると、だんだん恐ろしいことだと分かってくる。竹取物語では既に帝が言っていた。「かぐや姫のいない世界に生きながらえても意味がない」と。そうして不死の薬を駿河国の高い山で燃やさせた。命は限りがあるから美しい。
キャストもみんな美しい。可笑しくて愛おしい。
三世代が見事に絡むファミリードラマとしても美しかった。大人の皆さんが上手いわ。
娘と息子も良かったなぁ。
大田路さんは2016年に明石スタジオで観てた。あの時の女学生役にも増してキラキラした綺麗な目をしていた。張りのある声も素敵だった。木林優太さんも味のある二役を見事に立ち上げていた。大人の役を観ながら、胸に込み上げてくるモノを抑えるのに苦労した。
演劇未経験の方の初体験にお薦めしたい。ウイルス感染の脅威で観劇を控えていた方の観劇再開にもいかがでしょう。楽しい演劇体験ができるはず。時間を割き、足を運んで、そこで起こることを同じ空気の中で味わう贅沢を味わえる。たくさんの方に観て欲しい。

15 Minutes Made in本多劇場

15 Minutes Made in本多劇場

Mrs.fictions

本多劇場(東京都)

2023/02/22 (水) ~ 2023/02/26 (日)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★★★

憧れの本多劇場で、照明が綺麗で、ハッキリよく聴こえて素敵な時間を過ごせました。
主催のかたの当日受け取ったパンフのコメントにもありましたが、是非本多劇場でやりたくて、とありました。
とても良かったです。
贅沢な時間が過ごせてオススメです。
6つともそれぞれ味があり、甲乙がつけられません。
どれがよいかは個人の好みですね。
私は一番目の作品が特に良かったです。
次は2番目の作品かな?芥川の作品というのが、魅力でした。
コント風の作品も笑えました。(5番目の作品)
[なんでやねん] のセリフが帰りの電車の中で、声に出てしまいました。


博士の愛した数式

博士の愛した数式

まつもと市民芸術館

東京芸術劇場 シアターウエスト(東京都)

2023/02/19 (日) ~ 2023/02/26 (日)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★★★

「た組。」の第七回公演(2015年)の再演。ずっと観たかったので嬉しい。
原作も映画も知らなかったのだが、それが良かった。ある意味、自分の理想の作品。観るチャンスがあったなら、是非観て頂きたい。『博士と彼女のセオリー』なんかを思い出す。

事故で記憶が80分間経つとリセットされてしまう元数学の大学教授、通称“博士”の家政婦に派遣された女性。皆記憶がすぐに初期化されることに付き合い切れず逃げ出してしまうらしい。博士と家政婦の数学だらけの日々。家政婦はシンママで、家で留守番中の10歳の息子を心配した博士は「ここに連れて来なさい。」と告げる。

時間の砂に塗れた砂丘のようなステージが幻想的。上手に腰掛けたギターを爪弾き続けるUNCHAINの谷川正憲氏!この感覚、懐かしい。語り手の近藤隼(じゅん)氏は開演前から舞台をうろついていて和やか。背後には巨大な窓ガラスが斜めに突き刺さっている。そこに何やら数式を書き込んだり。

家政婦役、ひたすらハンバーグを捏ねる安藤聖さんが美しい。随分綺麗な女優をキャスティングしたな、と感心した。こまつ座の『貧乏物語』が素晴らしかったが、同一人物とは気付かなかった。何処の誰の役でもこなせるであろうキャパの大きさ。

博士役の串田和美(かずよし)氏、80歳!名優が演じている感じが一切しない。本当にそんな感じの人なんだろうな、と思わせた。(数式をよく聴くと結構適当だったりするが、その感じこそ正解だと納得させる役作り)。

息子、ルート役の元乃木坂46、井上小百合さん。絶妙なキャスティング。泣かせてくれる。

博士の義理の姉役の増子倭文江さんはヤバイ。数シーンの出番ながら、強烈なインパクト。市川崑の金田一耕助シリーズ、真犯人役の大女優を思わせる貫禄。事故で足を引き摺る後遺症。登場で空気が変わる。

いろいろな役を受け持つ草光純太氏も軽妙なフットワーク。

数学の世界、崇高で底知れぬ数字の魅力に人生を捧げた博士。彼との生活の中、家政婦と息子も数字の面白さに取り憑かれていく。数字は人類の誕生前から存在していた宇宙の法則。モノリスのように人類はそこに秘められた謎を、手探りで何千年も掛けて解いてきた。宇宙からの巨大ななぞなぞ。
優しさと正しさに全力な人達。出来る限りシンプルに人生を解いていく。

ネタバレBOX

1975年に交通事故に遭い、脳を損傷した博士。同乗していた義理の姉も片脚に障害を負う。博士の兄であり、義姉の夫はとうに亡くなっている。
現在は1992年であるが、新しい記憶を上書き出来ない博士にとっては1975年のままである。

余りにも素晴らしいシーンが二つ。
一つは風邪を引き熱を出した博士を独り置いて行けず、家政婦とルートは泊まって看病をする。朝になって甲斐甲斐しく世話を焼きリンゴジュースを勧める家政婦に、博士はさめざめと泣く。涙の理由も説明もなくそれは誰にも分からない。けれど凄く伝わるものがある。(勝手に家に泊まり込んだことで家政婦は解雇されてしまう)。

二つ目は、家政婦が解雇された数ヶ月後、ルートが博士に読ませたい本を持って遊びに行く。解雇された家に息子を送り込む行為に不審を抱いた義姉は「目的は金か?財産目当てか?」と家政婦とルートを呼び出して問い詰める。ショックで泣きじゃくるルート。その状況が耐え切れなくて、博士はメモに何かを書いて机の上に置く。
「e^πi+1=0」
それを目にした義姉ははっと全てを理解したように話を終える。そしてまた家政婦を雇い直す。
書かれた公式は『オイラーの等式』と呼ばれるもので、「数学史上最も美しい等式」とまで言われるもの。全く無関係に存在している筈だった複雑な数字に一つ足すだけで完璧な調和が生まれることの発見。矛盾なく美しいものの存在に全てが抱き留められること、そう造られたこの世界の不思議さ。

「義弟は、あなたを覚えることは一生できません。けれど私のことは、一生忘れません。」
博士と義姉の、物語では語られない関係性。『オイラーの等式』を一瞥しただけで全てを読み取る知性。

ラストの語り手の現在はルートが中学の数学教師に採用された11年後、多分2004年。原作の小説が発表されたのは2003年である。
終演後、原作を買い求める人が多数いた。

ちなみに自分の「た組。」BESTは花奈澪さん主演の『惡の華』。小説でも映画でもない演劇の面白さに満ち溢れていた。
アプロプリエイト―ラファイエット家の父の残像―

アプロプリエイト―ラファイエット家の父の残像―

ワンツーワークス

赤坂RED/THEATER(東京都)

2023/02/16 (木) ~ 2023/02/26 (日)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★★★

面白い、お薦め。
父が亡くなり、財産分与・遺品整理に集まった姉兄弟が繰り広げる罵倒合戦、その正面から衝突しマウントを取り合う様子が見どころ。そして登場しない人物、つまり亡くなった父の呪縛から いまだに逃れられない怖ろしさ、同時に滑稽とも思えるアイロニーが透けて観えてくる。この公演が面白いのは、父という見えない存在、父が遺したと思われる×××を連想させる資料、そして家の近くにある墓地、そこに眠る<無念>霊、その登場しない姿なきモノの 力<雰囲気>によって支配されているかのような言動や行動、それを圧倒的な迫力をもって描いている。

舞台美術が秀逸で、部屋の真ん中に父の肖像画<残像イメージ>が飾られ、冷徹に見つめているのか嘲笑しているのか、はたまた睥睨しているようにも思える。それは子供たちの凄まじい罵り合いの場面によって、見えざる力を発揮し楽しんでいるかのようだ。また音響だけでその存在を主張している蝉の鳴き声が印象的である。<13年>蝉の生態を通して人の生き様を準える様な、それはある一瞬で燃え尽きる。そこにあるのは論理や理屈ではなく、人の本能というか根源的な行為でもある。

罵り合いと独白を巧く織り交ぜ、会話劇としての厚みを持たせている。勿論、ちょっとした仕草で、その人物の精神状態や性癖を表現するなど、確かな演技力ー熱演で物語を支えている。登場する人物の性格や立場、今 置かれている状況は、それぞれが抱えた問題ー子供との関係や経済的なことを垣間見せることで説得力を持たせている。姉兄弟という家族ゆえに逃れられない悲哀、だからこそ理屈ではない感情を剥き出し 爆発させる。それをワンツーワークスらしいムーヴメントをもって効果的な観(魅)せ方をする。フライヤーの絵柄がその光景を見事に表している。

ラスト、暗 明転を繰り返し照明を諧調させることで時の経過と状況の変化を表す。その光景は、人々のこれからの関係性を暗示しているようにも思えるが、逆に父の存在、その象徴でもある屋敷<肖像画=残像>や周辺に彷徨う怨嗟の魂、その呪縛からの解放をも表しているようだ。その意味でラストシーンは印象的で余韻が残る。
(上演時間2時間40分 途中休憩10分)追記予定

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