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憶えてるのは言葉じゃなくて

憶えてるのは言葉じゃなくて

チャミチャム

カフェムリウイ「屋上劇場」(東京都)

2023/07/27 (木) ~ 2023/07/30 (日)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★★

鑑賞日2023/07/27 (木) 20:00

「ちゃむ」こと波多野伶奈の一人芝居。面白い。(3分押し)前説3分、59分。
 元彼との別れとか回想を、一人で演じて感触を残す。作・演出に「いいへんじ」の中島梓織を置いたのにも興味を持って観に行ったのだが、いい感触の作品だった。終盤の手紙のシーンは冗長感が否めないのだが悪くはないぞ。

みんなのえほん

みんなのえほん

9-States

小劇場B1(東京都)

2023/07/26 (水) ~ 2023/07/30 (日)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★★★

ベシミル! 華5つ☆
 混然一体・迷走の現代日本をよくぞ、ここまで本質的な劇に仕上げた。脚本・演出の見事に驚嘆! 主演・いろは役の松本 わかはさんの熱演も素晴らしいが、夫役・瀬沼 敦さんの大人として距離を置いた演技は若い人には分かり難かろうが自分のような年寄りからみると良い演技であった。無論、他の役者陣の演技も素晴らしいが詳細は追記で。
 初見で舞台美術の特殊性にも気付かざるを得ないが、この美術も実に要を得て本質的であり、然も初見で違和感を感じさせる見事なもの、良い舞台には矢張り、良い舞台美術家が付くものだと改めて関心させられた。(追記後送)

これが戦争だ

これが戦争だ

劇団俳小

ザ・ポケット(東京都)

2023/07/22 (土) ~ 2023/07/30 (日)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★★

鑑賞日2023/07/27 (木) 19:00

価格4,500円

劇団俳小。前回のマギーの博物館に続く2度目の観劇でした。
マギーもそうでしたが、芝居のテンポ感や俳優の持つポテンシャルを十分に引き出している印象がありますね。「これが戦争だ」アフガン戦争から帰国した4名のカナダ軍兵士たちのインタビューから、各々配役の視点で物語が解釈されていく本作品では、戦争の惨さはもちろん…どんな極限状態であっても人間の持つ欲望や想いは、同じくらい強く「生きる」という意味を再確認させられるものと感じた。

ネタバレBOX

スティーブン、ターニャ、ジョニー、クリスの4人が語るのは、共同作戦前夜での出来事。
男女関係のもつれ等から、仲間の若手兵士ジョニーの負傷させてしまう。この一連の流れと配役視点の回想シーンが繰り返され…という流れは、正直予測ができてしまうので面白くはなかったです。日本人キャストがカナダ軍兵士を演じるという点で、ややオーバーなリアクションや台詞回し。台詞の受け身では所々に日本人っぽさを感じてしまう点。作品が戦争をモチーフにしているということもあるが、中盤からの芝居の盛り上がりという部分ではやや欠けているようにも感じました。個人的な感想としては、まるでエチュードのような「役者のためになる作品」だったように思います。
逃亡

逃亡

CEDAR

OFF OFFシアター(東京都)

2023/07/26 (水) ~ 2023/07/30 (日)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★

作家や作品の前知識なしで観たが、良い台本とは思えなかった。おそらく不条理劇ではないのに会話の展開に支離滅裂感があり、思わせぶりなそれらしいセリフがただ並べられ空疎に流れていくだけで心に刺さらない。特に終盤の男だの女だのの話はここでは必要なかったのではないか。

韓国新人劇作家シリーズ第7弾

韓国新人劇作家シリーズ第7弾

韓国新人劇作家シリーズ実行委員会

北とぴあ ペガサスホール(東京都)

2023/07/13 (木) ~ 2023/07/17 (月)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★★

鑑賞日2023/07/16 (日) 15:00

 私は今回、韓国新人劇作家シリーズという、韓国の新人劇作家の作品を日本人の俳優と韓国人の俳優を使って上演するという試みで、それを観るのは初めてだった。
 しかし私が観た回は、全員日本人の俳優で韓国の新人劇作家作品を演じたので、正直そんなに期待はしていなかったが、結果的には非常に楽しむことができた。

Aの『罠』(韓国日報 新春文芸戯曲賞受賞)では、閉店時間の近づいたデジタルカメラ販売店を舞台に、消費者及び善良な市民としての権利を強引に主張し、まるで正論を言っているようでいて、時々屁理屈を捏ね、なんかしら理由を付けては店を出ようとしない、かなり厄介な客、その酷いわがままに手を焼く販売員の女性、そして店長、さらには地元の警察官までをも巻き込み、段々事が大きくなり、よくある日常の風景の延長線上から、もはやお客の側の主張、店側の主張、どちらが正しいかとかはどうでも良くなってきて、物事がどんどんエスカレートしていき、不条理な展開になるにつけ、そのブラックで過激で、スラップスティックでもあるコメディに大いに笑った。
 しかし、最後にお客が不敵に笑って劇が終わるに至って、どこか他人事ではないような気になってき、また、お客の心の底が読めない終わりかたに、背筋が凍りつき、冷や汗が出た。

Dの『名誉かもしれない、退職』(慶尚日報新春文芸戯曲部門受賞)では、カフェが舞台で、同じ会社だが、年齢も立場も違う3人が互いに相手に探りを入れつつ、時々一人を味方につけつつ、退職を押し付け合う、エゴイズムが表面化し、醜く露骨な、感情が激しくぶつかり合う、修羅場と化していく光景に、人間味を感じ、そんなに他人事とも言えないと感じ、大いに笑いつつ、観劇後は、すーと寒くなった。

コココーラ

コココーラ

コココーララボ

こまばアゴラ劇場(東京都)

2023/07/21 (金) ~ 2023/07/29 (土)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★

鑑賞日2023/07/26 (水) 19:00

105分。休憩なし。

ダンパチ20『成人』/女子公演シリーズ『男ZERO0〜オトコ・ゼロ』/新人公演「あなたはだあれ?」

ダンパチ20『成人』/女子公演シリーズ『男ZERO0〜オトコ・ゼロ』/新人公演「あなたはだあれ?」

ショーGEKI

「劇」小劇場(東京都)

2023/07/12 (水) ~ 2023/07/23 (日)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★★

鑑賞日2023/07/22 (土) 13:30

「男ZERO0〜オトコ・ゼロ」115分休憩なし。

これが戦争だ

これが戦争だ

劇団俳小

ザ・ポケット(東京都)

2023/07/22 (土) ~ 2023/07/30 (日)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★★

戦争と言うと私がイメージするのは戦場となった地域の悲惨さや銃撃でした。
しかし、この作品を観て戦場に赴く側の心情を知ることが出来ました。
死と隣り合わせである恐怖、プレッシャー、そして人を殺してしまうという罪悪感、それは攻撃する側される側両方に共通としてある心情だと思います。
今起きている戦争にそれが楽しいと思える兵士はいるのでしょうか。
そう考えると戦争で奪われていくのは人命や建造物だけではなく、人の心も奪われていくのではないかと。
結局戦争の芝居は後味が悪く、誰も幸せにならない。
そこに行き着くプロセスが今までのとは違う視点からでしたので、勉強になりました。
そして何より想像するしか他ないこの戦地に赴いた兵士を演じ切った役者4人を心より尊敬致します。

これが戦争だ

これが戦争だ

劇団俳小

ザ・ポケット(東京都)

2023/07/22 (土) ~ 2023/07/30 (日)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★★

登場人物4人とも素晴らしく、見応えのある凄い舞台。にも関わらずこの☆になっているのは、見終わったばかりの今、自分の中では舞台の出来よりも戦争への嫌悪感の方が単純に大きいからなんだろう(と思う)。時間が経てばまた印象は変わるのかもしれないが。

みんなのえほん

みんなのえほん

9-States

小劇場B1(東京都)

2023/07/26 (水) ~ 2023/07/30 (日)公演終了

実演鑑賞

良い舞台だったと思います。

イントロ

イントロ

ワヲン

早稲田小劇場どらま館(東京都)

2023/07/21 (金) ~ 2023/07/24 (月)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★★

鑑賞日2023/07/21 (金) 19:00

65分。休憩なし。

こんにちは、母さん

こんにちは、母さん

義庵

調布市文化会館たづくり・くすのきホール(東京都)

2023/07/26 (水) ~ 2023/07/31 (月)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★★★

鑑賞日2023/07/27 (木) 13:00

座席1階

吉永小百合と大泉洋の出演映画で注目されている劇作家永井愛の作品。映画は見ていないが、舞台ならではの魅力満載の秀作だと思う。休憩を挟んで3時間。長さを感じさせないすてきな物語だ。

加藤健一の息子義宗の演劇ユニットによる上演。今更のように気付いたのだが、やはり親子だ。目をつぶると、まるで加藤健一がせりふをしゃべっているように思われるからおもしろい。しかし、本作で彼がみせた舞台上での立ち居振る舞いは加藤健一とはまったく違う魅力があって印象的だ。「加藤義宗」という俳優名を刻む舞台になったと思う。
加藤義宗が演じるのは、有名企業のリストラ対策部長として働く男性。一緒にやってきた仲間の退職勧告をして心身共に疲れ果て、助けを求めるように実家に帰ってくれば、一人暮らしであるはずの母の様子が少しおかしい。見知らぬ中国人女性が帰ってきた実の息子を泥棒扱いするし、亡き父に付き従うばかりだった母は今、なんと留学生支援のボランティアをしているらしい。就職後はほとんど実家に寄り付かない息子は世間にたくさんいる。彼らがいつもと変わらぬはずの実家の母の変貌ぶりに戸惑うという、いかにも「あるある」という場面から舞台はスタートする。
この物語の最大の魅力は、隅田川の花火が見られる東京の下町を舞台にした近所のおばさんたちとの付き合いを縦糸にして、息子と同世代の登場人物による夫婦の物語を横糸にして織りなす会話劇である。
こうした物語から紡ぎ出されるものを、加藤義宗は「人間の再発見」と述べている。母は息子を再発見し、息子は母を再発見する。それは母と息子の絆というものをはるかに超えた、人間と人間とが織りなす心の交流というのだろうか。「ああ、そうだよな」と思う場面が何度もあって、「観てよかったよ」と劇場を後にすることができる。

加藤義宗が自ら声を掛けて集めたという出演者たち、道学先生のかんのひとみなど実力のある俳優たちがいい仕事をしている。(今日は客席に道学先生の青山勝さんもいらっしゃっていた)
上下2階建ての舞台セットもなかなか効果的。会話劇、人情物語が大好きなファンならもう一度見たくなる作品に仕上がっている。見ないと損する、と断言したい。

ネタバレBOX

こんなすてきな観劇体験なのに、空席の多さはとても残念。母さん役を映画のように吉永小百合がやっていたら調布文化会館も満席になったのかもしれないが、演劇というのはそういうもの(人気俳優に頼るもの)ではないはずだ。
ザ・ショルダーパッズ この身ひとつで

ザ・ショルダーパッズ この身ひとつで

劇団鹿殺し

本多劇場(東京都)

2023/07/13 (木) ~ 2023/07/18 (火)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★★

⿅版 銀河鉄道の夜ʼ23 観劇
衣装は最初だけ気になりましたが、普通に観てられました。
ミュージカルのような構成も良かったです!

これが戦争だ

これが戦争だ

劇団俳小

ザ・ポケット(東京都)

2023/07/22 (土) ~ 2023/07/30 (日)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★★

面白いという言葉は、語弊があるかもしれないが 観応えがある公演だ。
物語はアフガニスタンに派遣されたカナダ軍兵士が、帰還後インタビューに答える中で 当時のことを回想する。インタビューでは、チラシにもある「合同作戦における『ある出来事』を聞き出そうとする」が、兵士たちはその前夜のことを話すことで、核心を はぐらかした回答をする。リアルな戦場から少し時を経た今、当時の状況を客観的に見つめようとするが、感情が高ぶり…。

「戦争反対」は頭では解っているが、その残忍で悲惨な光景は現実として迫ってこない。どこか遠くの国・地域のことで自分の事として感じられないし 考えられない。この演劇を観れば一時的には戦争のことを考えるが、暫くすれば日常の暮らしの中に埋没してしまう。日本では、夏の時期(特に8月15日前後)に反戦に係る演劇や映画が多く上演・上映されるが、何となく恒例的になってきているような。しかし、戦争の現実を知らない者に、その最悪の不条理を観せ 聞かせ続けることが演劇や映画の役割ではないだろうか。たとえ演劇という虚構の世界であろうと 観客の想像力を働かせることが出来れば、少なくとも観念的には危機意識を持つことが出来る と思う。その繰り返しこそが大切であり、演劇というか芸術の<役割>であり<力>であろう。

さて 公演の見どころの1つは、戦場という極限状況下においても 人間の本能というか欲望が剥き出しになるところ。観念的にしか捉えられない戦争<戦場>、一方 そんな状況下においても欲情する、そんな実践的な行為は容易に想像することが出来る。そこに人間らしい哀しみと可笑しみが垣間見える。
(上演時間1時間40分 途中休憩なし) 

ネタバレBOX

薄汚れたゲートのようなモノがあるだけで、ほぼ素舞台。
登場人物は4人、勿論 熱演である。一人ずつアフガニスタンでの戦闘について心情を述べるが、インタビューで聞かれている<核心>については話を逸らす。因みにインタビュアーの声はなく、自分でインタビュイーとしての役割を演じ 回答を繰り返すというモノローグである。物語は「合同作戦」とはを聞き出そうとすることで観客の意識・興味を惹き出す巧さ。

ターニャ(蜂谷眞未サン)は民間人の少女を誤射し自責の念に苛まれる。ジョニー(遊佐明史サン)は配属初日に同僚の戦死を目の当たりに見てショックを受ける。スティーブン(北郷 良サン)は、別戦場で部下を死なせた責任を感じている。三者三様に心に何らかの傷を負っており、戦場での外傷とは違う意味での戦慄を描く。
一方、戦場という緊張感ある場においても人の欲情は抑えられない。いや明日をも知れない状況だからこそ、異常な興奮ー性欲が滾るかのよう。そこに人間の極度な精神状態、そして戦場という<生>と<死>の隣り合わせの極限状況を活写する。

ゲートのようなモノは、戦闘の激しさを物語る荒廃と化した街であり 半壊した建物イメージ。そんな建物の内と外で繰り広げられる情欲は刹那的、それを覗き見ることによって異常な嫉妬心が芽生える といった違う観点での描き方。人間の死生観という二面性、一方 状況を二方向から描くという対極を見せることで、一様ではない人の心情を表す。更に戦場における命の優先順のようなこと。ターニャが民間人の子供の命を助けるため 救急ヘリを出動させたが、その間に戦傷したジョニーの救出が遅れ後遺症(歩行障害)が残った。戦場という状況の複雑さが浮き彫りになる。

終盤、塹壕を水攻めし土砂で埋め殺す、または爆死させるような語り。公演は全て帰還兵の回想・記憶の証言だけ。一発の銃声も発しない代わりに、音響で泣き叫ぶ声、照明で阿鼻叫喚のような人影を映す。そこには観客の想像力が。
次回公演も楽しみにしております。
ストレイト・ライン・クレイジー

ストレイト・ライン・クレイジー

燐光群

ザ・スズナリ(東京都)

2023/07/14 (金) ~ 2023/07/30 (日)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★★

行政・政治家の善意と先見性が大事なのか、住民・ジャーナリストの声が大事なのか。いまだに解決のつかない永遠の問いを、あらためて考えさせる舞台だった。

その場しのぎの男たち

その場しのぎの男たち

劇団東京ヴォードヴィルショー

紀伊國屋サザンシアター TAKASHIMAYA(東京都)

2023/07/21 (金) ~ 2023/07/30 (日)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★★★

おもしろかった。どくに後半、陸奥宗光と伊藤博文の確執があらわになり、その因縁も絡んだ陸奥の策が、ことごとく失敗していく。犯人の妻、人力車夫、くのいちまで登場し、ダメ男たちだけでは作れない活気をつくり出す。その怒涛の1時間は本当に面白かった。休憩なし2時間5分。
三谷幸喜31歳の作だそうで、戯曲に若さと才気がはじけている。

配役(ほぼ登場順)。
出たり入ったり、ロシア側の動きの説明役の外相・青木周蔵(たかはし等?)
主将の薩摩からの幼馴染で、声は大きいが役には立たない内相・西郷従道(坂本あきら・客演)足が臭いのはご愛敬。それが時には武器にもなる。
首相と伊藤の間で風見鶏を演じる目立ちたがり屋の逓信相・後藤象二郎(石井愃一)。ざんぎり頭の長髪で幕末の志士の生き残り。それらしく、修羅場には強い。
優柔不断の首相・松方正義(佐渡稔)
一番の切れ者と言われつつ、出す策が次々裏目に出るの陸奥宗光(佐藤B作)
政界最大の実力者伊藤博文(伊東四朗)。御年86歳。にこりともせず、オーバーな動きもなく、ただぶっきらぼうにセリフを言うだけで、客席爆笑。喜劇役者の神様である。
伊藤の右腕の若い書記官・伊東巳代治(まいど豊?)
犯人の津田三蔵の妻(あめくみちこ)。「夫の命を助けるため」といわれて、とんでもない役を押し付けられるが、本人も何を期待されたのか分からず……。
ニコライを助けた車引き(山口良一、日により大森ヒロシとWキャスト)。学はないが、誰にもこびない無法松のような男。口先だけの政治家の中に混じると、引き立つ。
元くのいち(山本ふじこ)。伊東四朗同様、にこりともせず、爆笑につぐ爆笑をとる天性のコメディエンヌ。登場回数は少ないが、一番面白かった。ブラボー
ほかにホテルの執事、や楽隊。最後に犯人の津田も現れる。

ネタバレBOX

カーテンコールで佐藤B作が、昨日の感想から元高校日本史教師の女性(67)を紹介していた。「大津事件を学校で教えてきましたが、事件の裏の裏が初めてわかりました」。聞いて会場はまた爆笑であった。
さいごの1つ前

さいごの1つ前

KAAT神奈川芸術劇場

KAAT神奈川芸術劇場・大スタジオ(神奈川県)

2023/07/21 (金) ~ 2023/07/24 (月)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★

鑑賞日2023/07/21 (金) 14:00

85分。休憩なし。

犬と独裁者

犬と独裁者

劇団印象-indian elephant-

駅前劇場(東京都)

2023/07/21 (金) ~ 2023/07/30 (日)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★★

 作・演を担当している鈴木 アツト氏は役者上がりではない。これが原因か否かは不明であるが、ダメだしに役を生きるような演技をどれだけ出していたのかには興味が湧いた。演技にそれを感じることが余りできなかったからである。演劇は一旦上演が開始されてしまえば、役者の演技が勝負である。(追記7.30)華4つ星

ネタバレBOX

 舞台美術のセンスが良い。板中央に目の形をした造形があり、瞳の処に書棚がある。この部分は恐らく回り舞台になっているのだろう。グルジアで若い頃詩を書いていたスターリンが、ソソという愛称で登場するが、これはブルガーコフの深層心理が造形した幻であり、ロシアに抑圧されたグルジアそのものであるから、犬のイマージュを纏って現れるが、ソソの書くグルジア語の詩に現れた詩想はこの戯曲中最も素晴らしい。但し詩は、詩才のある者にしか分からないという傾向を持つ文学の王であるから戯曲や散文とが混在する今回のような作品では極めて演出が難しい。然も描かれる時代は革命時代のソ連である。折角戯曲が良いのだから、演出はあまりスタンダードに拘らずもっと前衛的にした方が良かったと自分は感じている。例えばカンディンスキーの「コンポジッション」を舞台上に映写しつつ、シェーンベルグの「月に憑かれたピエロ」を流す等である。「コンポジッション」は絵画の構成要素である円、三角、四角等を恰もそれぞれが音符であるかのように軽妙に描き、今にもその各々の要素が踊りだしそうな感覚を齎す抽象画であるが、革命の齎す一種の高揚感はこのような作品で表し同時に「月に憑かれたピエロ」の持つ不気味で昏い詩想が齎すもの・印象を重ねるのである。このような操作を更に効果的にする照明とセットで用いたら更に舞台はその造形を深めたように思われる。大前提として眼を現した造形が板中央から観客席を監視しているのだから、オーウェルの「1984」の監視社会は、はなっから今作の不可欠の条件として予め視覚化されている。脚本にはゲーテの「ファウスト」を彷彿とさせるような内容も含まれることだし、ソポクレスの「オイディプス」に通じるシーンもある。詩想を舞台で現実化させる為には、このような奇抜な演出が大切だったと思うのである。
これが戦争だ

これが戦争だ

劇団俳小

ザ・ポケット(東京都)

2023/07/22 (土) ~ 2023/07/30 (日)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★★★

鑑賞日2023/07/25 (火) 14:00

見ていて、こちらの胃が痛くなるステージ。仲間内で、恐怖によるストレス溜まりまくりで、誰もが異常な精神状態なって一触即発の状態。いや、小さな即発など日常茶飯事か。戦争ものというと、日本でははるか昔の敗戦が描かれることが多いが、これは21世紀の出来事ということで時間的にものすごく身近に感じられ、それが怖かった。帰宅後、ネットで「カナダ軍兵士をむしばむアフガン従軍/自殺者が62人」という記事を発見した。

犬と独裁者

犬と独裁者

劇団印象-indian elephant-

駅前劇場(東京都)

2023/07/21 (金) ~ 2023/07/30 (日)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★★

初めて見る劇団だが、もう20年もやっているという。記念公演だ。主催者の鈴木アツトのカンパニーのようで公演数が少ないから見る機会がなかったのか、目立たないようにやってきたのか。作者にこれだけの力量があるなら、もっと注目されるチャンスはあっただろうにとも思う。
スターリン独裁下のソ連の劇作家・ブルガーコフの話である。鈴木アツトは時代の罠に落ち込んだ芸術家の評伝劇をいくつか書いていて、これもその一作だ。芸術家の伝記というのは数々ある名作を引くまでもなく、演劇向きの材料だ。
ソビエトの社旗主義国家という構想は今も人類の忘れがたい夢の一つで、ソ連の夢の後引きになったウクライナ戦争が泥沼化している現在、時宜を得た良い企画である。
物語は、グルジア出身のスターリンが青年時代には現地語で詩を書いていたことを梃子にしている。あの愛に満ちた詩を愛した青年が、社会主義の理想に触れて、なぜ、世紀の殺戮者になったのか。スターリンは、自分の詩を封印してしまう。
舞台では、頭角を顕しはじめたブルガーノフにスターリンの評伝劇を書くようにとモスクワ芸術座から記念公演のために注文が来る。スターリンの詩人性と、脇目も振らず全体主義国家構想への邁進したスターリンが、劇作家の中では融合していかない。作家自身の身辺の前妻と現在の妻との葛藤、飼い犬と劇作家の関係、モスクワ芸術座の見事なまでの忖度ぶりと変節が、巧みな劇作術の中で展開していく。この実話性は一部は聞いたような記憶もあるが、そこはどうでも良い。今の時代につながる現代の芸術家の当面する現代の病癖をドラマにしている。ほどよい前衛性もあって、忘れ去られている後期ソ連時代に現在の後期アメリカ資本主義が重なってくる。知的な構成で、変なキャンペーン性などまるでないところも見事である。戯曲はうまいものだ。
しかし、この作品を生かすには、表面に立つ、演出・演技が戯曲に遠く遙かに及ばない。それでも、一応満席になっていたのはひとえに戯曲の力である。そのほかの点は一つ一つ悪口を言うのは止めるが、この本を、文学座のアトリエで今、旬の女性演出家の手で見られなかったのは残念というしかない。30歳代の若い作家たちはかつての新劇の運動性とは無縁である。劇団運営も演出も得意ではないだろう。この惨憺たる俳優陣にもどう言えば良いか解らなかったのではないだろうか。戯曲を他者に渡すという共同作業が出来るオープンな場を積極的に作ることがこれからの日本演劇の課題だろう。



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