『日曜日よりの使者』『明日のハナコ』
feblaboプロデュース
Paperback Studio(東京都)
2023/11/22 (水) ~ 2023/11/23 (木)公演終了
実演鑑賞
満足度★★★★★
鑑賞日2023/11/23 (木) 13:00
座席1階1列
価格3,500円
日曜日よりの使者は石巻公演以来。同じメンバーでしたね。名作は勿論ですが陸男の汗だくがいつも気になるんだよな。今日もカモメは強くつついてあげたよ笑
明日のハナコはとにかく圧巻。こんな作品があるんですね。まず誰が書いたのか気になり聞いて納得。これは演劇でしか見れないし、そもそもこれが演劇。「いまを生きる、いまを生きたい」を原発と演劇の両面から見せた味付が好き。憤りは客席からも同様。私も暴れたかった。
クロノスとカイロス
FREE(S)
ウッディシアター中目黒(東京都)
2023/11/21 (火) ~ 2023/11/26 (日)公演終了
実演鑑賞
満足度★★★★
時空や次元を超えて人の思いを紡いだヒューマンドラマ。常に寄り添い見守るような 優しいまなざしの母、言葉少なく不愛想 不器用な父、そんな両親の下に生まれた三人姉妹(長女 辛沙奈サン、次女 鈴木沙綾サン、三女 神咲妃奈サン)が、それぞれの性格や立場を表し、抱いている思いと苦悩を吐露するように展開していく。
「人は何のために生きるのか」といった旨の哲学めいた台詞もあるが、物語は タイトル 説明にある「『時』と『時間』同じ刻を表す言葉『時間』は一瞬一瞬を表し、それが積み重ねられて『時』となり・・・」という内容を準え、答えのようなものが浮き彫りになる。時の積み重ね=生きることによって 初めてそれが分かるのかもしれない。
家族にとって自分の存在が重荷になっているのでは、と悩む女子高生(三人姉妹の三女)、どうして彼女が苦しんでいるのかが物語の肝。しかし早い段階で、彼女を見守る人、その様子から何となく想像がついてしまうが…。
(上演時間1時間40分 途中休憩なし)
舞台「有頂天少女」
バードランドミュージックエンタテインメント
バルスタジオ(東京都)
2023/11/22 (水) ~ 2023/11/26 (日)公演終了
実演鑑賞
満足度★★★★
鑑賞日2023/11/22 (水) 19:00
若手女優がフェルマーの定理を題材の芝居をする、というので観に行った。数学歴史ファンタジーとでも呼ぼうか。予想外の展開で面白い。91分。
歴史教師が高校時代の同級生の誘いで、高校時代の修学旅行時の事故で消えた同級生のカイを探す回想の旅へ…、のファンタジーな展開。謎そのものの解決はややチープだけれど、それを、フェルマー予想が解決されて定理になるプロセスと重ねるという展開が面白い。ピタゴラスやフェルマーの名前が出てくる芝居にはしばしば出会うが、カントール,エイダ(ラブレス),ヴォルフスケール,谷山・志村,ワイルズといった名前に出会ったことはなく、ビックリした。ピタゴラス教団の話とかも一定程度正確だし、歌やダンスを交えた楽しい舞台だし、布をダイナミックに使う演出とか、見応えはあった。タイトルにも意味があるのだけれど、それほど活きていなかったのは残念。
クロノスとカイロス
FREE(S)
ウッディシアター中目黒(東京都)
2023/11/21 (火) ~ 2023/11/26 (日)公演終了
実演鑑賞
満足度★★★★
お互い誤解のないように、傷つかなくていいように、ちゃんと話をすればいいのに・・・と思うのですが、家族ってその辺りが難しいものです。わかっているだろうとか、話すことに照れがあったりしてなかなか話せないものですね。本当はお互いを思い合っているのに。周りの人たちも暖かくてよかったです。
帰りにパンケーキを買ってしまいました。
クロノスとカイロス
FREE(S)
ウッディシアター中目黒(東京都)
2023/11/21 (火) ~ 2023/11/26 (日)公演終了
実演鑑賞
満足度★★★★★
プラネタジャッジから、新撰組のお話、前作のLetterと、拝見させてもらいましたが、今回の作品もとても面白かった。家族愛にとても感動です。正直にまっすぐ伝わりました。不器用だけど愛一杯の父さん共感しました。心暖まる素晴らしい時間ありがとうございました。
ENJOHJI
ヒューマン・マーケット
WAKABACHO WHARF 若葉町ウォーフ(神奈川県)
2023/11/20 (月) ~ 2023/11/23 (木)公演終了
実演鑑賞
満足度★★★★★
Familyシリーズはここ数作品続けて拝見させていただき、作品のほのぼの感、家族の愛がしっかり描かれ、また役の固定された役者の皆さんの演技の素晴らしさで、本当にに近所にいる玩具屋さんを見ているようで大好きです。今回、番外編は初めてでしたが、雰囲気本編そのままで、笑いあり、涙あり、本当に楽しかった。来年一月のFamilyも、いつもの0番倉庫で、楽しみです。
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人間嫌い
イズモギャラリー(東京都)
2023/11/22 (水) ~ 2023/11/26 (日)公演終了
実演鑑賞
満足度★★★
ビジネスホテルに泊まる4組の女子、彼女達の生態を『フォー・ルームス』のように描写。4つのストーリーが繋がるような繋がらないような。
A かつて文藝賞を取ったが単行本化もされず、SNSのインフルエンサー的立ち位置でエッセイストとして雑誌の仕事をこなす今井未定さん。締切が迫る中、担当(桜田実和さん)が発破を掛けに来る。
B バカ彼氏の発言に怒った武田紗保さん、ビジネスホテルに家出して来た。友人の村上桜佳(おうか)さんが励ましてくれる。
C 東京店の応援勤務で出張に来た二人。女子力高いあべまなさん、大学生バイトの井澤佳奈さん。
D ハードな仕事で会社とビジホを往復する川勾(かわわ)みちさん。過労死寸前の社畜はXで呟く。
井澤佳奈さんが強キャラ。この人、男だったらかなり売れてる筈。同性から絶大なる支持を受けるポテンシャルを備えている。売れて欲しい。田舎者の強味。
川匂みちさんも強い。出てくるだけで笑いが起きる。
MVPは武田紗保さん。凄い攻撃力。ボイスロイド風読み上げも馬鹿受け。本当はどういう人なのか気になる。男のイメージする馬鹿女のカリカチュアライズ。
あべまなさんの訛りもいい味。
無駄な抵抗
世田谷パブリックシアター
世田谷パブリックシアター(東京都)
2023/11/11 (土) ~ 2023/11/26 (日)公演終了
実演鑑賞
満足度★★★★★
コロナ下での「外の道」以来、イキウメの異色作が自分の深奥に届く。時代を捉える感覚というか。
今回は世田谷パブリック主催公演で、ギリシャの叙事詩「オデュッセイア」を題材とした前作「終わりのない」(まだ四年前とは・・随分昔に思える)に続き、ギリシャ悲劇「オイディプス」を下敷きにした作品との事だが、そんな前宣伝は全く知らずに観た。
(結論的な事を言えば、この悲劇の悲劇たる核心の「現象」が今作では現代の悲劇に置き換えられているのだが、原典の物語の副題と読めば納得なタイトル「無駄な抵抗」は、今舞台では痛烈な批評の語になる。)
前川戯曲に盛り込まれる「不思議」は初期はそれが眼目のような所があったが、その「仮想」は問いを含む。言わば形を変えた現代批評。であるゆえに問いの投げ方により「不思議」の入り方が変わる。前作「人魂を届けに」では「魂」が実体化したらしい奇妙な物体であったが、物語の最初の一歩を刻むこの存在は、物語本体が進むにつれやがて霧消し、象徴的存在として最後には「処分」された。
今作の「不思議」は、いつしか電車が止まらなくなった駅(なのに駅として稼働しており「電車が通過します」のアナウンスが時折流れる)の存在、なのだが、効率化と省力化が進んだ先の、僅か先の未来と見えなくもない。少なくとも現代の感覚ではそれはあり得ないから「不思議」に属するが、一歩間違えばそれはあり得るかも知れない。
物語本体(幾つかのエピソード)が進み、あるいは共有されるこの駅前広場が、冒頭大道芸人(浜田)に紹介される(円形劇場の客席のような円弧を切り取った数段ある頂上の高い造作)。そこから劇は始まる。
場面乗り入れの演出も「不思議」との微妙な距離感を作る。平場でのやり取りを、人が遠巻きに座っていたりして、円形劇場風の階段から見るともなしに「見ている」ようで別の次元にいる風である。役を演じた後は椅子に座って役者自身に戻るアレにも似るが、ギリシャ劇風にコロスと呼ぶのが近い。結果的にギリシャ悲劇の筋書きが、円形劇場の中、皆が揃った前で成就するのである。
各エピソードは、会話により語られる対象であるので、その場所は必ずしも「この場所」である必要はない。が時折、語る人物らによってふと意識されるのがこの駅前広場であり、「電車が停まらない」現象についても言及される。そしてカフェを開く青年(大窪)や警備員(森下)の存在があり、とある社会の一角である事を意識させる。
今一つの「不思議」は、場面が閉じられるタイミングで浜田が「○○はこんな夢を見た」と言い、人物らが場所不特定な存在となり夢の構成に動員される(コロス的)。夢判断=深層心理のレベルへ観客を誘う。
かくして全方位的演劇の世界が具現し、「次の瞬間」への集中力が否が応にも鋭さを増す。
YSee
BATIK(黒田育世)
KAAT神奈川芸術劇場・大スタジオ(神奈川県)
2023/11/09 (木) ~ 2023/11/12 (日)公演終了
実演鑑賞
満足度★★★★
つい先日観たイデビアン・井手茂太氏もゲストの一人で出演との由(他に奥山ばらば等)、そして舞踊家・黒田育世は一度再演(若手にレパを踊らせる企画)を目にし、もっと観てみたいと思った人。
ただ事前に紹介を読んで調べた上でなら行かなかったかも?・・ というのは、本公演のタイトルはジョアンナ・ニューサムという女性シンガーのアルバム・タイトルから取ったもので、全編にこの少し幼げな響きのあるハスキーボイスが鳴り渡る。舞踊はその伴走者となる音楽が大きな要素であるが、この歌手の世界が「自分に合わないな」と感じながら観る事になった。中盤から民族音楽的アレンジの長尺曲が流れたりと、好みに重なる部分も出てきたし、眼目となる後半の出し物は集中して観れた。ただし音楽に酔う舞踊鑑賞とはならなかった。
厳密に言えば、音楽だけが理由という事でもなかったかも知れない。舞踊家それぞれ振付の傾向があり、今回は黒田女史の傾向を知ったが、冒頭の演目では感情的な衝動、「床叩き」や「自分叩き、ないしは動作の突然の中断」が挟まり、怒りや自傷の衝動が表出して見えた。苦悩が表現されている。
だがそうしたネガティブな感情は文脈を要すると思う所である。恐らく曲の歌詞の中にそれはあるんだろうと想像されたが、歌詞を知らない者にも届く舞踊表現としては、年輩の踊り手の機敏な身体性、技術を感心して眺める事にはなったが、作品としては「分からなさ」の中へ沈んで行った感じだ。他に覚えているものでは井手氏と奥山氏二人の「熊と猿」という曲で実際に前者が猿、後者が熊を演じ、ユーモラス。その井手氏と黒田氏のデュオも男女カップルの恋模様といった風で微笑ましい。大勢の若手も含めた群舞は見応えあったが、具象的な動きが混じるその示す所を掴み切れず、これも歌詞を見ないと分からないものかな、と。
バリエーションの幅があり楽しめる公演であったが、終わってみてもやはり音楽の要素は大きかったかな。
君は即ち春を吸ひこんだのだ
新国立劇場演劇研修所
新国立劇場 小劇場 THE PIT(東京都)
2023/11/07 (火) ~ 2023/11/12 (日)公演終了
実演鑑賞
満足度★★★★
新国立主催公演以上の成果が視られる事のある研修所公演。今作は卒業生の補助無し、18期生のみの舞台だったが、出色。老齢の役があるが、年齢差のハンディはむしろ「にも関わらず」の域。主役の正八(新美南吉)、幼馴染のちゑ、教え子の初枝の風情がいい。「日本の劇」戯曲賞受賞記念の公演よりも作風に迫っていた。(私がしばしば不評を言う田中麻衣子が演出。見直した。)
童話作家として評価されて行く新美南吉の評伝劇というより、内的世界の軌跡を眺める趣きがあり、そこにスポットを当てたくなる人生であったりもする。彼を通り過ぎた「事実」は衝撃であったりするが、周囲ほどには彼は騒がず、飲み込む。だが観客はその心模様を想像する。それは舞台上の風景やちょっとした彼の仕種や数少ない台詞の中に痕跡を残し、彼が文字を書いた実績によるのでない、彼の内的世界が「存在した」事の中に、意味がある、と感じられてくる。
そしてその事を確かめるために、彼の童話をこれから、開く事があるのかも知れない。
イサク殺し
公益社団法人 国際演劇協会 日本センター
シアター風姿花伝(東京都)
2023/10/13 (金) ~ 2023/10/15 (日)公演終了
映像鑑賞
満足度★★★★
同団体主催で2020年コロナ禍下で観たリーディングの演目だが、今回はどういう経緯か同演目を同演出、大部分同じキャストにより再演。配信で鑑賞しながら、ある施設で劇を演じる、というメタ構造が次第に混沌としてくる中、彼らの背景である「戦争/紛争」、それが個々人に及ぼした影、それぞれの立場が吐かせる論理が表出する。
井上加奈子女史の声に宿る迫力、今回配役されたモダン・西條氏の喋り、他の熱量ある俳優が長尺のリーディングを躍動的に作り上げていた。
イスラエル作家による自(国)省的と言える戯曲だが、今の戦禍がこの戯曲の続きに書き込まれざるを得ない事を感じる。
尺には尺を / 終わりよければすべてよし
新国立劇場
新国立劇場 中劇場(東京都)
2023/10/18 (水) ~ 2023/11/19 (日)公演終了
実演鑑賞
満足度★★★★
新国立研修所公演で観ていた演目。とは気づかず、悪コンディションで20分遅れて辿り着いた後、寝落ちしながら観た。初見の向きには冒頭の「仕掛け」を見逃すと筋を追うのは厳しいだろう。朦朧として一幕を終え、休憩中「あらすじ」を検索、「あーあれか」と後半は面白く観た。
研修所の上演はシェイクスピアの隠れた名作と思わせた。ウイーンの王が旅に出ると言ってその間の統治をある有能な臣下に委ね、自分は僧侶に扮して国内に留まる。王の「気まぐれ」により、治世が変り矛盾が極まるのだが、騒動を収めるために後半は僧侶(王)が奔走し、最後は己の地位と僧侶に扮していた事実を明らかにして事を収める。喜劇なのではあるが、ある意味で社会実験とも言え、法とは何か統治はどうあるべきかの問いがある。法は絶対ではなく人々のためにある、という当然の前提が転倒し、庶民に厳しい割に上層が治外法権のように守られてるかの局面を目にする現代、治世はかくありたいと願う心には響く。
今作は喜劇性を追求し、手練れの役者を配して素に戻る系、客いじり系、熱烈演技系その他縦横無尽に美味しく場面を展開させる。(「ローゼンクランツとギルデンスターン」や「モジョ・ミキボー」での鵜山演出を想起。
Pass the buck
歌をあなたに
両国門天ホール(東京都)
2023/11/17 (金) ~ 2023/11/19 (日)公演終了
実演鑑賞
満足度★★★★
昭和の匂いがぷんぷんの歌謡劇とでもいうのでしょうか!?
距離が近いのと、独特な雰囲気、圧倒されました!
そして、生の演奏はイイですね!
発光体
劇団三日月座
横浜国立大学 第1食堂裏(神奈川県)
2023/11/11 (土) ~ 2023/11/19 (日)公演終了
ジャイアンツ
阿佐ヶ谷スパイダース
新宿シアタートップス(東京都)
2023/11/16 (木) ~ 2023/11/30 (木)公演終了
実演鑑賞
満足度★★★★
始まりはつげ義春の『ねじ式』を思わせる。水木しげるのアシスタントをしていた頃、下宿先の屋上で見た夢を描いたもの。
ぼんやりと夢なのか記憶の中なのか妄想なのかふわふわした場面を彷徨い歩く。目玉探偵が現れ、回想捜索をアシストしてくれる。記憶のパラレル・ワールド。記憶の世界線。無数の有り得たかも知れない可能性が枝分かれしていく。
唐十郎作品のような設定だが、筒井康隆作品みたいなムードが自分好み。
どうもここは誰かが覗き込んでいる世界らしい。その証拠に空に巨大な目玉が浮かんでいる。
ああケイトウが始まった。夕闇の赤に塗り潰されていく。これに呑まれると自分を失くし誰かの設定に引き摺り込まれてしまう。
彷徨い歩く“私”は中山祐一朗氏。『オールド・ボーイ』のチェ・ミンシクを思わせる。別れた前妻との、全く交流がないままになってしまった息子を追憶する。
“あいつ”こと息子は大久保祥太郎氏。弟の坂本慶介氏と日替わりで入れ替わるWキャスト。
息子の嫁役は智順(ちすん)さん。篠田麻里子っぽい美人。彼女が一日の行動を述懐するシーンが今作の一つの肝。
息子のマンションの住人達、村岡希美さんと富岡晃一郎氏。村岡希美さんは作品内に収まらないスケールで最早一つのジャンルそのもの。お釈迦様の手の上で作品が踊らされているみたいだった。
富岡晃一郎氏は今作では「とろサーモン」の久保田みたいなスプラトゥーン中毒。
目玉探偵に長塚圭史氏、妖怪人間ベムに見えた。
秘書の緑は李千鶴さん。流されていく女。
もう一人の目玉探偵に伊達暁氏。今作ではリリー・フランキーっぽい。
喫茶店のウエイトレスに内藤ゆきさん。この人の伊達暁氏との遣り取りがかなり面白かった。
目玉探偵は「時空のおっさん」の回想世界線バージョン。
タイトルはジェームス・ディーンの遺作『ジャイアンツ』からだろう。
是非観に行って頂きたい。
グレンギャリー・グレンロス
演劇集団円
俳優座劇場(東京都)
2023/11/21 (火) ~ 2023/11/26 (日)公演終了
実演鑑賞
満足度★★★★
この芝居の面白さがなかなか解らなかった。話は、町の中小といった感じの不動産屋の社員たちの売り上げ競争でお互い足を引っ張り合って売り上げを競い合う。男ばかりの五人の社員、事件は起きて警察沙汰にもなるが、たいしたことが起きるわけでもない市中の日常の茶飯事、1時間45分である。何で、これがピューリッツア賞なの? 今回でこの芝居を見るのは三度目である。初演は1984年、早速文学座が今のパルコ劇場で江守徹の演出でやった(と思う)のを見て以来疑問だった。
この疑問、40年ぶりにかなり解消された。よくわからなかった理由。まず、当時の社員たちのモチベーションが把握できなかった。例えば、セールスマンにとっての顧客名簿(お客様名簿だがカモの一覧表である)の重要性の意味が理解できなかった。売り上げの歩合制やその社員同士のやりとりもなじみがなかった。セールスのシステムも違う。当時はすでに豊田商事事件などもあったから共通するところも多かったかったのに、そこが日米差で実感がなかった。一般的な社会情勢の変化で今はそこがよくわかる。
二つ目は翻訳が良くなった。滑舌の良い円の役者がまくし立てても、台詞の中身がよくわかる。これは若い訳者のお手柄だと思う。
この芝居に思い入れはほとんど必要ない。登場人物たちは、言ってみれば、おもいっきり我欲だけで突っ走る。なるほど、ここにアメリカを見たのだと、ピューリッツィア賞を納得した。このアメリカたっぷりの芝居に内藤裕子演出は、どうかと思ったが、日本で上演するにはちょうど良いさじ加減で、素直に舞台を楽しめた。しかし、今になって解るというのではそれはこちらの時代遅れで、今のアメリカでの評価はどうなってるんだろう。わかってみると、やはりたいしたはなしではないのだから。
クロノスとカイロス
FREE(S)
ウッディシアター中目黒(東京都)
2023/11/21 (火) ~ 2023/11/26 (日)公演終了
「慈善家-フィランスロピスト」「屠殺人 ブッチャー」
名取事務所
「劇」小劇場(東京都)
2023/11/17 (金) ~ 2023/12/03 (日)公演終了
実演鑑賞
満足度★★★★
「慈善家-フィランスロピスト」
死ぬ程面白い。全く関係ないのだが『ハスラー2』を思い出した。格式高いハリウッドの名画のようで、ポール・ニューマンやマーティン・スコセッシがよく似合う。渋目の佳作。
カナダの劇作家ニコラス・ビヨンが名取事務所に書き下ろした新作。
この作品はアメリカの誰もが知る大手製薬会社パーデュー・ファーマ社の起こした「オピオイド危機」が元になっており、上演前からスクリーンにその旨を記した文章が流されている。
オピオイド(麻薬性鎮痛薬)系の医療用鎮痛剤「オキシコンチン」。モルヒネと同じく阿片を原料とする。元々は癌における鎮痛剤として使用され鎮痛作用と共に陶酔作用がある。中毒性依存性が高く、現在では各種麻薬中毒の入口と呼ばれる。
1995年、パーデュー・ファーマ社が「オキシコンチン」を中毒性のない奇跡の鎮痛剤と医療業界に猛烈に売り込んだ。どこのクリニックでも痛み止めとして簡単に処方されるまでに。1999年から2020年までに米国では約50万人が処方薬と違法オピオイドによって死亡。今も依存症に苦しむ人々が200〜300万人。千件以上の訴訟。被害者団体はオーナーであるサックラー・ファミリーこそ「死の罠」の仕掛け人だと告発する。処方鎮痛剤が引き金となって依存症が広まったのだと。
2017年10月、トランプ大統領はオピオイドの乱用に関する「全国的な公衆衛生の非常事態」を宣言。「国家の恥」であり、「人間の悲劇」とまで。
その総資産が140億ドル(約2兆円)といわれる米国の大富豪、サックラー・ファミリー。今作のモデルであろうモーティマー・デイビッド・サックラーは慈善活動により英国帝国勲章、ナイト&デイム・コマンダーを授与されている。美術館や大学への巨額の寄付によってサックラー・ファミリーは現代のメディチ家とまで称された。
現在、パーデュー・ファーマ社は8700億円の和解金を支払うことで破産申請中だが、創業家一族を不当に保護するものだと最高裁は無効を検討中。
大富豪の慈善家に藤田宗久(そうきゅう)氏。『ペリクリーズ』も凄かったが唯一無二。まるで映画を観てる気分。
古き付き合いの美術館館長に荒木真有美さん。
若きアシスタントに谷芙柚(ふゆ)さん。
敏腕弁護士に鬼頭典子さん。
美術館の傲慢で軽薄な理事に加藤頼氏。加藤剛の息子!
この5人にそれぞれ見せ場があり、A面B面裏返すようにあっと驚く別の一面がめくられる。後半になるにしたがって作者の仕掛けの周到さに感嘆。人間の世界はそんな甘っちょろいもんじゃないんだよ、と若き谷芙柚さんに突き付けるように。作家の純粋なるメッセージにも驚いた。もう今の日本人ではこんな作品を書けないだろう。余りに真実を舐め弄び過ぎた。
役者陣は全員次の作品も観たくなる凄腕ばかり。
是非観に行って頂きたい。
クロノスとカイロス
FREE(S)
ウッディシアター中目黒(東京都)
2023/11/21 (火) ~ 2023/11/26 (日)公演終了
実演鑑賞
満足度★★★★★
素晴らしかったです。舞台初日とは思えない出来栄えでした。最後の伏線回収に「うわっ、脚本家に一本やられた…」と思いました。あと、裏タイトルは「ハナミズキ」か「お母さんのパンケーキ」ですね^^ ほんと、素敵な時間をすごさせていただきました。最高でした^^
ENJOHJI
ヒューマン・マーケット
WAKABACHO WHARF 若葉町ウォーフ(神奈川県)
2023/11/20 (月) ~ 2023/11/23 (木)公演終了
実演鑑賞
満足度★★★★★
鑑賞日2023/11/20 (月)
Familyシリーズは初めてでしたがとっても楽しめました!!人と人のつながりってあったかいなぁ…!!と思える作品。オススメです!!