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黒星の女

黒星の女

演劇ユニット「みそじん」

吉祥寺シアター(東京都)

2023/06/30 (金) ~ 2023/07/02 (日)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★★★

結構、良かったです。
ストーリーも良かったし、動きがあるお芝居で飽きなかったです。

幸せはいつも小さくて東京はそれよりも大きい

幸せはいつも小さくて東京はそれよりも大きい

中央大学第二演劇研究会

APOCシアター(東京都)

2023/06/29 (木) ~ 2023/07/02 (日)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★

「崩壊していく共同生活と『監禁の連鎖』を巡る濃厚な密室劇。狂っていく隣人を誰も止められない現代の恐怖をじっくりとあぶり出す」という説明に興味を持ったが、その芯となるところを十分に表出できたのだろうか。何となく中途半端なようで物足りなさがあった。
今 この作品を上演する意味は、そしてアマヤドリ(脚本:広田淳一氏)がいうところの<現代日本>が見えてくるのか。
(上演時間2時間 途中休憩なし)

ネタバレBOX

舞台美術は、会場を斜めに使用し、奥上部にスクリーン、その下にソファ。変形机(テーブル)、色違いの空間(衝立壁・床)をもって個々人の部屋を表す。何となくスタイリッシュな印象だ。

冒頭と最後は人が直線的に交差する動き、それは大都会 東京における人々の忙しく動き回る様子を表しているのか。続いて登場人物全員によるダンスパフォーマンスは何を表現しているのだろうか?意地悪な見方をすれば、上演前のウォーミングアップ、最後の同じようなパフォーマンスはクールダウンのよう。仮に役者紹介であるならば、役名を表すモノがほしい。パフォーマンスがなければ、スッーと大都会(雰囲気)の物語へ入って行けた。

キーワードは【監禁/密室劇】さらに【孤独】が加えられるのでは。
小田ユキヒト、星野カズユキ、仁村ヒトミの三人は、都内で一軒家を借りてルームシェアをしている。星野がある日、長期監禁から逃亡してきたという女、三谷クミコを保護する。星野から彼女を警察に連れて行くよう頼まれた小田は、何となく自分でクミコを守ることを決意し偏愛していく。そうして始まった奇妙な4人暮らしは段々と歪みを見せはじめ…… というのが大筋。小田は、司法試験を諦めて会社員(正社員)として働く。星野は小田の中学時代のハンドボール部の先輩 で、今は居酒屋でバイト。ヒトミも同じ居酒屋で働いており同僚にあたる。他の登場人物との相関関係も、このハンドボール部と居酒屋繋がりである。

初演は2009年…当時は新型インフルの感染が拡大し、経済的にも厳しい状況下(世界同時不況)にあったと思う。全く同じとは言わないが、今のコロナ感染拡大、物価上昇による経済停滞は似たような環境に思える。コロナ禍を例にとれば、ソーシャルディスタンスという名の下に没対人関係の中で、中学時代の部活仲間が出合い飲食する。その楽しい会話と自由な雰囲気を満喫する。一方、監禁は孤独と不自由を強いる。犯罪か愛の束縛かは微妙なところだが、息苦しさを覚えるのでは。
この二つの場面の意味合いが融合し、自由と不自由といった対比が一つの見所だと思う。が、この演出では別々の(分離した)物語と言うか、取って付けたかのよう。だからこそ、飲み会⇨三人の激論という展開に妙がある。
非日常どころではない監禁とその連鎖の異常性が迫ってこない。また多くの人がいる東京の中で、一人ぐらい行方不明(監禁)になっても という漠然とした不安が感じられないのが憾み。

小田のクミコに対する束縛は「新たな監禁」 の始まりで 、当然、星野とヒトミとの間に軋轢が生じる。二人と狂気していく小田の激情した口論がもう一つの見所。
小田にしてみれば自分が守らなければ、という使命感=偏愛を何故二人は分かってくれないのか。司法試験を受験していたという理論家、しかし理性という扉に隠された心の奥に潜む本性〈束縛欲〉が剥き出しになる。一方、二人にしてみれば得体の知れないクミコを保護する必要性はなく=警察に任せればという相容れない不毛な議論。そしてクミコの携帯電話に掛かってくる前の監禁者との緊迫した会話。今にも小田たちの家に来そうな怖さ。
監禁と密室というシーンは観応えがあった。勿論クミコの内にある思いは明かされることなく、彼女の背景等も謎を残したまま、小田たちの家を出る。

辛口になるが、映画館で偶然に会った中学時代の部活仲間との会話、その後の居酒屋での会話、どちらも一本調子で 大声を張り上げた演技。小田・星野・ヒトミの三人での激論も大声だが、こちらは激高している様子が伝わる。大声=熱演ではないと思うので、場面毎の情感にあった演技が求められる。ラストのピアノは印象付けとして実に効果的であった。
次回公演も楽しみにしております。
黒星の女

黒星の女

演劇ユニット「みそじん」

吉祥寺シアター(東京都)

2023/06/30 (金) ~ 2023/07/02 (日)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★★★

劇場に入った瞬間「え?女子刑務所の話って書いてあった(東京新聞・演劇パラダイス)と思ったけど。刑務所はドラマや映画でしか知らないけど違うよね」と戸惑うほどの舞台セット。これは女囚たちの妄想でできているのかしら・・・

ネタバレBOX

と思って、終演後ニシオカさんに伺ってみたら、それぞれの人生の背景なんだそうです。
きっと普通の暮らしをしていた頃の好みとか趣味が反映されているのだと思うので、次回もっと近くの席で確かめたいと思います。
確かめたいといえば、まきさんがまどかさんを待つシーン。ついつい緊縛希望のまどかさんを見てしまって、まきさんを見る余裕がなかったのでこちらもどんな表情だったのかちゃんと見てこようと思います。
終演後に演者の皆さんとはまだ会えませんでしたが、ニシオカさんとお話しできて良かったです。コロナ前はこうして感想やら疑問やらをその場で話せて、これが小劇場の魅力よねと思っていたので、少しずつでもそれが戻ってきて嬉しいです。
マリコの神像

マリコの神像

劇団森

早稲田大学学生会館(東京都)

2023/06/30 (金) ~ 2023/07/02 (日)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★

鑑賞日2023/06/30 (金) 19:00

早稲田大学公認の劇団森。
今回は花園というか、女子大サークルを観ている様な作品でした。
物語の中心となるのはフランス・リヨン地方のミッション系スクール(寄宿舎ものと呼ばれるそう)。
舞台そのものを額縁のように彩るプロセニアム・アーチが印象的。
視界を少し遮ることで、舞台の奥行を感じさせる工夫が感じられました。
音響も全てクラシック。ピアノやチェンバロの音色が心地よくステージとマッチしていました。

ネタバレBOX

まずチケットの予約が成立してから、お知らせ・行き方・当日変更点など、
決まったことを細かく何通も伝えて下さることに安心感がありました。
観劇する前からチームワークがしっかり出来ていると感じるので好印象。

芝居の内容ですが、開演時に「華麗なる大円舞曲」で華やかさ・盛上を狙うのであれば
8人も板付きがいる訳ですから、メインの台詞以外のキャストはもう少し動きが欲しいかな。
例えば小さい声でもガヤを入れるとか。小芝居を挟んでみても良いですね。
アーチや大道具等が殆ど木材だと思うので、声が吸引されている印象も受けました。

それからステンドガラスに映る影の演出、とても素敵で気に入りましたが
讃美歌312番だったかな?…歌うならもっと魅せた方が良いと思います。
最初から音源を使うのか。全員で影歌するか。
独唱なら今回のようだと自信がないようにしか映らないので、朗々と歌って頂きたいです。

脚本に関しては宝塚のような、女性ならではの詩的な台詞まわし。
哲学的な要素や言葉に品位を持たせている様子が、愛を慈悲深く高貴なものに感じさせます。
その一言一言に含みがあるように感じさせているように考えるけれど、
意外と内容は入ってこなかったです。万人受けは難しく、役者たちも理解して演じきるのは
ちょっとハードルがあるように感じました。まだまだ伸びしろがあると思います。
ブラウン管より愛をこめて-宇宙人と異邦人-(7/29、30 愛知公演)

ブラウン管より愛をこめて-宇宙人と異邦人-(7/29、30 愛知公演)

劇団チョコレートケーキ

シアタートラム(東京都)

2023/06/29 (木) ~ 2023/07/16 (日)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★

イマイチ深さを感じなかった。平凡で一面的な印象がぬぐえない。‘監督’のほうを主人公にした物語が観たかった。

Hey ばあちゃん!テレビ点けて!

Hey ばあちゃん!テレビ点けて!

Bee×Piiぷろでゅーす

新宿スターフィールド(東京都)

2023/06/28 (水) ~ 2023/07/02 (日)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★★★

鑑賞日2023/06/30 (金) 14:00

エンタメ系のお笑い作品だと思って観始めましたが、
サチ子さんの第一声がとても良い声で、芝居にグッと引き込まれました。
声圧のある落ち着いた通る声。劇団の大黒柱ですね。

作品内容はとてもシンプル。説明欄にも記載されているように、
亡くなってしまったサチ子が夫の治の前にロボットとして現れる。
死んでからさせたかった100のコトをミッション形式にして、1つずつ家族や仲間たちと
協力して叶えて行く。それが治のためにもなっていき…あとは乞うご期待!

ネタバレBOX

オープ二ングでは、ダンスときらびやかな照明が物語の期待感を高める。
治とサチ子のテンポ感も観ていて飽きないが、特にサチ子さんの笑かすところ。落とすところ。泣かせるところ。
ロボットだけに表現が入っても役の土台がブレず、常に劇団員たちの中軸として機能している。
夫婦だけで成立して行けそうな濃さに、更にアクの強い脇たちが物語を固めます。
小劇場で比較的響きやすい会場に、若手俳優の張った声が少々ミスマッチだったかな。
張るところがあるのは勿論良いのですが、配役作りが殆ど同じように感じました。ノリが似ているというか。
サブキャストも誰が演じても同じようにならない繊細さが、芝居の中でもう少し感じられるともっと良いです。

最後にこの日は、主題歌を歌っている相澤香純さんのミニライブも入るラッキーデーでした。
相澤さんのことも初めて知りましたが、話し声は結構強い胸声なのに、歌声は頭声多めの柔らかい声質。
笑って泣いて、ほっこりしたてんこ盛りの内容だったので、5つ星付けさせて頂きます。
ブラウン管より愛をこめて-宇宙人と異邦人-(7/29、30 愛知公演)

ブラウン管より愛をこめて-宇宙人と異邦人-(7/29、30 愛知公演)

劇団チョコレートケーキ

シアタートラム(東京都)

2023/06/29 (木) ~ 2023/07/16 (日)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★★

子供向け番組を超えた深いテーマも盛り込んだウルトラマンシリーズへのオマージュであり、在日・同和・関東大震災の朝鮮人虐殺・同性愛者差別まで、差別問題に果敢に取り組んだ挑戦作である。小劇場としては間口の広いシアタートラムの舞台を、上手から順に、企画会議室、撮影スタジオ、書斎と使い分ける。

ユーバーマンシリーズの「老人と少年」(帰ってきたウルトラマンの「怪獣使いと少年」がモデル)を下敷きに、脚本家は差別をテーマに、善意の宇宙人が人々から迫害を受ける「空から来た男」を書く。それだけなら「社会的深みのあるエンタメ」に終わるが、当事者でもないのに差別をネタにする欺瞞性にも十分自覚的なところが一味違う。

場面転換や物語進行にもたつきを感じるところも少々あったが、後半、テーマと趣向がぐんぐんかみ合っていく。作り手たちの舞台裏と、カメラの前で(あるいはけいこで)演じるドラマがうまくかみ合って、差別の愚かさと、それを超えていく希望の片りんを見せてくれた。

ネタバレBOX

「差別」という論争的問題を扱うことに、テレビ局から横やりがはいるが、監督は自分の進退を条件に、脚本通り撮影する。「大人になれ」「局が言うなら仕方がない」という常識的な対応から、議論の末、骨を見せる強行突破路線に変わるくだりが見どころ。朝鮮人虐殺を思わせる、川原の襲撃シーン。そして最後の死んだ宇宙人に、優しかったパン屋の娘の幻が寄り添い、満天に星が輝くラスト(これは甘すぎるとして、監督が却下したので、脚本家の脳内映像)まで、見せ場がいくつもある舞台だった。
ブラウン管より愛をこめて-宇宙人と異邦人-(7/29、30 愛知公演)

ブラウン管より愛をこめて-宇宙人と異邦人-(7/29、30 愛知公演)

劇団チョコレートケーキ

シアタートラム(東京都)

2023/06/29 (木) ~ 2023/07/16 (日)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★★

アンジーの『天井裏から愛を込めて』を彷彿とさせるタイトル。アンジーはメルダックでデビューしたのだが、先に同事務所でデビューし大ブレイクしていたブルーハーツを踏襲させられた。本来は「頑張れロック」路線ではなかっただけに非常に不運。実際は『たま』系の独自世界のアーティストだった筈。

小学生の頃、再放送の『帰ってきたウルトラマン』で観た『怪獣使いと少年』。滅茶苦茶衝撃を受けた。灰色の工業地帯で繰り広げられる全く救いのない物語。プロレタリア文学のような目線。『帰ってきたウルトラマン』はスモッグのどんよりとしたイメージで、ディストピアの日本の姿を突き付ける(ただそれ以後観ていないので記憶による美化はあると思う)。後年、切通理作氏のデビュー作『怪獣使いと少年』を読んだ時、凄く腑に落ちた。

巨大変身ヒーローモノが1990年に作られている世界線。(実際は『ウルトラマン80』放送終了の1981年から1996年の『ウルトラマンティガ』までは空白)。
テーマは『差別』。誰にも正解の見えない永遠の難問。TV番組『ワンダーマン』にて、伝説の『怪獣使いと少年』に挑もうという若き脚本家の心意気。子供向けTVドラマで一体何処まで本質を描けるのだろうか?

主人公の脚本家は伊藤白馬氏。特撮モノに初挑戦。
大学時代の先輩で『ワンダーマン』のメイン監督は岡本篤氏。木下惠介っぽい清潔感。
特撮監督は青木柳葉魚氏。
助監督は清水緑さん。
主演のワンダーマン役は浅井伸治氏。ペナルティのワッキーを思わせる役作り。
大物ゲスト枠は橋本マナミさん。気負い過ぎて少し固かった。
宇宙人(コクト星人?)役の足立英(すぐる)氏の振り幅が素晴らしい。
MVPは東特プロのプロデューサーの林竜三氏とTV局から出向しているプロデューサーの緒方晋(すすむ)氏。ここのリアリティがドラマの厚み。社会で生活している人間の重みがあってこそ、ただの絵空事のファンタジーにはしない。
是非、観に行って頂きたい。

ネタバレBOX

ネタ元
①ウルトラマン『故郷は地球』
事故により遠い惑星で見捨てられた宇宙飛行士ジャミラは棲星怪獣ジャミラと变化、復讐の一念で地球に舞い戻る。
②ウルトラセブン『超兵器R1号』
惑星攻撃用超兵器R1号を無生物のギエロン星にて実験。成功に終わり惑星は粉々に。しかし実はそこに居住していたギエロン星獣は復讐の為、地球を襲う。
③ウルトラセブン『ノンマルトの使者』
古代、人類より先に地球で繁栄していた先住民ノンマルトは人類の侵略に地上を追われ、海底都市を築いて静かに暮らしてきた。海底開発が進む中、抵抗してきた海底都市を地球人は全滅させる。
④帰ってきたウルトラマン『怪獣使いと少年』
川崎の工業地帯、河川敷の廃工場で暮らす老人(メイツ星人)とアイヌの少年。かつて地球の気象調査にやって来たメイツ星人だったが、汚染された地球の環境に耐え切れず重病を患っている。強大な念動力を持ち、公害で畸形化した怪物ムルチを地底に封印している。気味の悪い余所者がのさばっていることに不快感を感じた地元民は暴力で排除に出る。群衆にリンチされる少年を庇ったメイツ星人は惨殺される。それと共に封印の解けた怪物ムルチが暴れ出す。人々は泣き喚いてウルトラマンに助けを求めた。
モデルになった史実は関東大震災後に起きた朝鮮人大虐殺。判明しているだけで、2613名の朝鮮人が虐殺されている。

〈今作の展開〉
暴徒と化した群衆は宇宙人(足立英氏)を襲撃する。心優しいパン屋の店員、橋本マナミさんは誤解を解こうと必死に止めに入る。だがどうにもならない。橋本マナミさんは惨殺されるも、死の間際に想いを伝える。「(他者を)怖がらないで。私も怖がらないから。」
差別の本質は恐怖であることを告げる。恐怖を乗り越えた先に解り合える未来が生まれることを。
(舞台上をセピア色一色に染めた照明が効果的)。

この後の展開をどうするかで二転三転する。

〈最終的に作品化されたもの〉
一人自らの寿命が尽きるまでただただ生き続けた宇宙人は死の訪れと共に彼女との再会を果たす。

もし自分が小学生でこのTV放送を観ていたとしたら腑に落ちない気がする。人間が衝撃を受けるのは顔を背けたくなる程のリアル。綺麗な作り話ではない。『デビルマン』の牧村美樹邸の魔女狩り、『カムイ伝』の正助への残酷なる私刑、『ブッダ』のタッタの蜂起。理屈や綺麗事では納得出来ない人間の動物としての本能。『デビルマン』では怒りに狂った不動明が人間達を皆殺しにした。「俺は悪魔の体を手に入れたが人間の心を失わなかった。お前達は人間の体を持ちながら悪魔になったんだぞ!これが俺が命懸けで守ろうとした人間の正体か!?」
実はここが重要な点。人間の“何”を守ろうとしているのか?

監督が同性愛者であることはすぐに気が付いた。差別を受けることに敏感な弱者である少数派がこの手の話題に大声を出せない事。

何が正解なのか、未だに解らない。多分、正解は時間の経過。時間が経って何もかもが消えて無くなるだろう。どんな結末を自分は求めていたのか?
アンカル「昼下がりの思春期たちは漂う狼のようだ」【7月6日昼公演中止・7月7日~9日まで映像公演実施】

アンカル「昼下がりの思春期たちは漂う狼のようだ」【7月6日昼公演中止・7月7日~9日まで映像公演実施】

モダンスイマーズ

東京芸術劇場 シアターイースト(東京都)

2023/06/29 (木) ~ 2023/07/09 (日)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★★★

舞台は中学3年のクラス。主役の姉妹は二卵性双生児で父は日本人だが母は在日朝鮮人であり、姉妹が生まれて1年で両親は離婚した。それ以来、姉のソジン(瑞生桜子)は母と、妹のゲン(藤松祥子)は父と暮らしていたのだが父が亡くなってゲンが二人と同居することになりソジンのクラスに転入してくる。

という最初の設定だけで重さに押しつぶされそう。さらに妹は転校してきてすぐに父親の形見の自転車を盗まれる。大事なものだから一緒に探してくれと頼む妹に姉は取り付く島もなく断る。ゲンはクラスの不良が犯人だと思い危険な裏山にまで出かけるのだが…。ここで更に重りが大量に追加される。

実は2年前の公演も観たのだが重さに耐え切れず休憩時間に帰って来てしまった。重さといっても作られた重さと感じたのだ。当時はまだ演劇のわざとらしさへの耐性が低かった。そして今回、心の準備はできているので再度の挑戦である。その結果はちょっと欲張りすぎて散漫ではあるが結構感動的じゃないか、ということになった。

登場人物は生徒24人と担任、副担任それに用務員のおばさんの計27人である。その人々が単独あるいは2人から4人の塊になって恋愛、部活、子育てなどでそれぞれの1年間のストーリーを紡いで行く。それらは独自の世界を持っていて見ごたえがある。さらには全員によるダンスもあったりして、姉妹のことを忘れたころソジンがゲンに「生まれて初めて母親に逆らって二人の前から消える」ことを宣言する。そしてソジンのいない卒業式へ…

ダンスが素晴らしくて星一つ増しとなった。しかしこのダンス、キレッキレの人もモタモタの人もなく、かといって全員の動きをピタリと合わせようというのでもなく、個性を出しつつほどほどに調和させるというこの劇全体の作りがそのまま出ていたように感じた。

ラ・ボエーム

ラ・ボエーム

新国立劇場

新国立劇場 オペラ劇場(東京都)

2023/06/28 (水) ~ 2023/07/08 (土)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★★★

雪の中、ロドルフォ(スティーヴン・コステロ)とミミ(アレッサンドラ・マリアネッリ)が「春になったら別れよう」と歌う第3幕がよかった。幕開けの冒頭のスタッカート的メロディーから、幕切れのアリアまで実に緊密で、飽きない。シリアスなミミたち二人だけでなく、ムゼッタとマルチェッロの滑稽味ある痴話げんかとの四重唱になっているのも巧みなつくりだ。ただ、一緒に見た芝居友達とも話したが、この二人がなぜ別れるのか、なぜ春までそれを延ばすのか、という整合性は突っ込みどころ満載。

テノールのコステロがよかった(らしい)。1幕の自己紹介の歌「冷たき手を」からブラボーが飛んでいた。それにたいして、マリアネッリの「私はミミ」は、高温の伸びや迫力が物足りない。ブラボーもなかった。しかし、4幕の最後の二重唱はしっかり決めてきた。
ミミより、第二幕のムゼッタのヴァアレンティーナ・マストランジェロが魅せた。「私が街を歩くと」は素晴らしい歌声で(青いサテンドレスに黒い毛皮のコートの派手な衣装も相まって)圧巻だった。
4幕は「外套のうた」の渋い輝きに開眼させられた。フランチェスコ・レオーネのバリトンに、ブラボーが飛んだ。「ポケットには、思想家や文豪が洞窟に遊びに来た」など歌詞もいい。ミミの臨終という悲しいしめっぽい場面に、滑稽味ある内容でその場の気分を和らげながら、、シリアスな雰囲気をぎりぎり壊さない絶妙なバランスがすばらしい。

ミミが死んだあと、しばらくはロドルフォが気付かない。観客はじりじりし、しばしのためのあと、一気に管弦楽も歌も最後のクライマックスを盛り上げる、この「間」も素晴らしい。

舞台「いま、会いにゆきます」

舞台「いま、会いにゆきます」

Sh!nkiяo

阿倍野区民センター・大ホール(大阪府)

2023/06/30 (金) ~ 2023/07/02 (日)公演終了

満足度★★★★★

映画(2D)→本(1D)→今回(3D)の順で体験したが、今回がやはりナンバーワン 最後の高校生男子が重要なセリフをカンダのには残念だったが、愛嬌と言うことで…
隣のオヤジが終始船をこいだり、寝息をたてていたことも集中力を欠いたが、舞台の人は何も悪くない
寝るくらいなら最初から来るな⚡家で寝とけと言いたかったが…😰
もう一度観たいです Tシャツ買いました‼️

この雨やむとき

この雨やむとき

海外戯曲をやってみる会

雑遊(東京都)

2023/06/29 (木) ~ 2023/07/09 (日)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★★★

#井上幸太郎 #大沼百合子
#斉藤麻衣子 #相樂孝仁
#田中里衣 #松本みゆき
#三宅勝 #山森信太郎
(敬称略)
魚、スープ、帽子……さまざまなバトンを渡し、繋ぎ、紡ぐルーツ。語らないこと、語れないこと……知りたいこと、知らせたくないこと……守りたいモノ、守り得ないモノ。
とても興味深い作品。
斉藤麻衣子さんが滲ませた葛藤がわたしにとってハイライトだった。
松本みゆきさんがはめる最後のピースで世界が終わりを告げる。目眩がする。
最後の晩餐のような最初の晩餐。田中里衣さんの眼差しは神を信じない者にもマリアに見えただろう。彼女の瞳に映る者への慈しみが、穏やかで柔らかなその表情から溢れた。美しかった。
逆に大沼百合子さんが見せた絶望の闇の深さに、どうしようもない人間の愚かさを思い知る。
井上幸太郎さんが渡す最後のバトンが、すべてを浄化させる扉の鍵であることを祈る。
劇場空間の使い方も興味深かった。

あぁ、自殺生活。

あぁ、自殺生活。

劇団夢現舎

新高円寺アトラクターズ・スタヂオ(東京都)

2023/06/27 (火) ~ 2023/07/02 (日)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★★

ずーっと見たいと思っていた作品、また見られたことが素直にうれしい。 

メインの2人のストーリー以外は、ほぼ総取っ替えだったような。

独特な入場方法がなくなったのはちょっとだけ残念。

それにしても日本人は「道」とか「力」とか好きですなあ。

黒星の女

黒星の女

演劇ユニット「みそじん」

吉祥寺シアター(東京都)

2023/06/30 (金) ~ 2023/07/02 (日)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★★

面白い、お薦め。
黒星と言えば、相撲では負けを意味するが、そんな負け人生の女の観点…時事ネタを織り込み、現代日本の世相・物情を皮肉り酷評する。社会派 娯楽劇のような…これがニシオカ・ト・ニール女史の世界観とでも言うのだろうか。

この公演は、2020年下北沢のOFF OFFシアターで上演する予定であったが、コロナ禍で延期。そして 主宰の大石ともこ女史の言葉を借りれば、「この広~い会場にて、満を持しての上演」である。やはり吉祥寺シアターは広くて、役者間の距離(間隔)があるため、全体的に大きな動作と素早い動きをするが、なんだか慌ただしく観える。また初回だからだろうか、シンプルだが、場転換にも 少し時間がかかったのが惜しい。

少しネタバレするが、黒星とは女囚を表し、犯した罪の背景にある不寛容・無理解・無神経などを彼女達に負わせて紡ぐ。しかし、その描き(観せ)方は軽妙洒脱だ。歌・ダンス・緊縛…等々、しっかり聞かせ観(魅)せる。

彼女たち 1人ひとりの犯行、その動機や経緯を オムニバスのように展開させ、全体を通してみると現代日本の〈膿〉のような事象が浮び上がる。表層的な面白さ可笑しさだけではなく、その奥を覗くと哀しみ、怒り そして遣る瀬なさが…。
脚本と演出が、何となく骨太と滑稽といったアンバランスな魅力。勿論 観応え十分、ぜひ劇場へ💨
(上演時間1時間50分 途中休憩なし)2023.7.2追記

ネタバレBOX

舞台は女子刑務所内12号室。中央と上手・下手に二段ベットがㇵの字に置かれている。ベットには洗濯物、可愛い小物が置かれておりリアリティはない。上部には睥睨するように見下ろす刑務官(小岩崎小恵サン)がいる。ほぼ中央にカレンダーがあり 物語は5月から7月迄。刑務所内で行われるダンス大会(8月)への参加は…。因みに役名=出演者名。

新人の大石が入房し、この部屋は5人の女囚になる。全員 上下赤いジャージ姿、胸には模範囚の印。物語は、大石が刑務所の一日、部屋のルールを説明するところから始まる。そして5人がどんな罪を犯し服役することになったのか順々に説明していく。単に女囚同士の会話ではなく、劇中劇のようにオムニバスで綴っていく。
<以下、個々人の話は割愛しようか迷ったがそのまま。>

●矢野は、前科7犯。夫と平凡な生活をしていたが、夫がリストラされ暮らし向きは苦しくなる。貯えも尽き家を出たが、何と夫は再就職し若い女と暮らし始めた。矢野は仕方なく路上生活者のようになり、スーパーで万引きし、ワザと捕まり警察へ。刑務所では衣食住が与えられ、一方 刑務所外は誰も相談に乗ってくれず 助けを求める場所すらない。何とも行政の矛盾を突く。

●赤星は、介護施設の職員。入所者への対応は丁寧に行っていたが、先輩職員から非効率と詰られ、痣にならない緩い拘束を指示される。その結果 入居者が拘束を外し窓から転落した。刑事の取り調べで優しく頭を撫でられ、寄り添う態度に思わず犯意を漏らす。やってもいない行為をでっちあげられたが、房の仲間の助けを借り、裁判のやり直しが…。権力(警察)による冤罪を指弾する。

●高畑は、屋上で女子高生が飛び降り自殺をしようとしているのを止める。自殺の原因は 苛め。彼女の父がコロナに感染し精神的に病み、自分もコロナ感染という偏見、不寛容な風潮に耐えかね自殺を決意。高畑は、自殺を止めるが、彼女から生きる勇気より死ぬ勇気がほしいと。いざとなったら足が竦み、背中を押してくれと懇願される。結果的に自殺幇助になるが、優しくない社会(世相)への批判。

●倉垣は、男に騙され薬物依存へ。断れない性格をいいことに男の身勝手に翻弄される。薬物、緊縛といったプレイに肉体を支配される。舞台中央、薄い白Tシャツの上から荒縄で縛られ、上部から照明が彼女を妖しく照らす。恍惚とした表情、妖艶な姿態が艶めかしい。政府は薬物防止の警鐘を行うが、有効な対策が講じられないことへの痛烈な皮肉。早々と仮出所をし舞台からしばらく姿を消す。

●大石は、一人で赤ん坊を育てていたが、言い寄る男から「俺と赤ん坊のどちらを取るのか」と無理な選択を迫られ…。この房では「やっちゃった」は<殺人>を意味し、皆それだけは嫌っていた。蹲る大石に向かって 矢野がボクシングではないが、立ち上がれと鼓舞する。

個々人が犯した作為、もしくは無実だと主張し続けなかった不作為、その背景にある事情や経緯を鋭く綴るが、その描き方はポップな歌やダンスなどで観せる。骨太作品を硬質にすると、ある(特定の)方向へ誘導するかも知れないが、逆に軽妙にすることによって柔軟な思考をもって観ることが出来る、と思うのだが。この公演はそこが魅力だ。
次回公演も楽しみにしております。
Hey ばあちゃん!テレビ点けて!

Hey ばあちゃん!テレビ点けて!

Bee×Piiぷろでゅーす

新宿スターフィールド(東京都)

2023/06/28 (水) ~ 2023/07/02 (日)公演終了

実演鑑賞

面白かったです。

ヴィクトリア

ヴィクトリア

シス・カンパニー

スパイラルホール(東京都)

2023/06/24 (土) ~ 2023/06/30 (金)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★★★

鑑賞日2023/06/27 (火) 18:00

2度目の観劇。今さらではあるが、とにかく大竹しのぶらしい芝居。67分。
1度目に観たときとはオープニングの演出が変わっている気がしたのだが、勘違いか。

Hey ばあちゃん!テレビ点けて!

Hey ばあちゃん!テレビ点けて!

Bee×Piiぷろでゅーす

新宿スターフィールド(東京都)

2023/06/28 (水) ~ 2023/07/02 (日)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★★★

とても面白かったです!
クセのある(ありすぎる)登場人物達が可笑しくて、ずっと口元が緩んでいました。
AIになったサチ子が何とも言えない可愛さで、夫や家族を思う気持ちに涙でした。
そして、サチ子を愛する夫に感動でした。
ラストは涙腺が緩んで、涙が流れました。面白くてニヤニヤししながら観ていたのに、こんなに泣くとは思いませんでした。
楽しいだけではなく、とにかく感動の舞台でした!

Pickaroon! -ピカルーン-

Pickaroon! -ピカルーン-

壱劇屋

すみだパークシアター倉(東京都)

2023/06/24 (土) ~ 2023/07/02 (日)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★★★

最高にして最強の舞台でした。
華奢な女優さんが最強の盗賊を演じるなどキャストの見どころも満載でした。
効果映像を使わず人力での舞台効果に特化しているところもオンリーワンの成せる業だと感じた。
このまま頂点を目指していく劇団だと思いますよ!

SUNNY

SUNNY

梅田芸術劇場

東京建物 Brillia HALL(東京都)

2023/06/26 (月) ~ 2023/07/05 (水)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★★

あらすじ:夫や娘との生活もまあまあ順調な奈美(花總まり)は母親の入院先で偶然30年前の高校時代の遊び仲間「サニー」のリーダー千夏(瀬名じゅん)に会う。千夏はガンで余命1か月だという。彼女の願いで昔の仲間を探すことになる。彼らはある事情で連絡を取り合うことが無くなっていたのだった……

舞台は二段に分かれ、主に下の段で現在を上の段で高校時代を展開する。同じ人の現在と過去の姿が全然似ていなかったりするのはあまり気にしないことにしよう。

よくあるお話で普段なら絶対に行かないのだが「SUNNY」という題名に引き込まれてしまった。「SUNNY」は1966年のBobby Hebbの大ヒット曲。もっとも1976年のBoney M.のディスコバージョンの方が私の耳には馴染んでいる。それでこの曲を中心に60-70年代のアメリカンポップスが歌われるのかと思いきや、他は80年代の日本のポップスであった。オープニングは花總+スクールメイツもどきの「センチメンタル・ジャーニー」である。たしかにこの時期のJ-POPは大豊作なのでこれも良しと頭を切り替えた。何にも考えずに歌とお話を楽しんでいる分には結構快適である。

母娘混合のダンスは体操のレベルだったが、若者だけになって「ダンシング・ヒーロー」の2017年登美丘高校ダンス部版「バブリー・ダンス」で一気にスピード&パワーアップして盛り上がる。ミュージカルとしての不満はここから始まる音楽の怒涛の大波であらかた吹き飛ばされてしまう。
…としても満足度は3つ星半だなあ。

ネタバレBOX

前にも書いたがBrillia Hallは音響が良くない。今回も歌がマイクに乗らず、伴奏や環境ノイズに埋もれてしまう。花總+瀬名の「待つわ」も歌声が浮き上がらないので自分の耳で二つの声を取り出しバランスをとってデュエットにしなければならない。
…と書いてからYouTubeで検索してみると、ゲネプロの歌唱があった。観客ゼロ(でマイク直結?)なので歌声は鮮明だが溶け合っていない。元々お二人の声が合わないのか合わせる気が無いのか、練習回数が不足しているのか、はたまたマイクの音質が硬すぎるのか要因はいろいろあるのだろう。
さらには会場でもこのYouTubeでも感じるのは、プロの歌手でもこういう聴きなれた曲を歌うのは苦手なことがあるということだ。
Hey ばあちゃん!テレビ点けて!

Hey ばあちゃん!テレビ点けて!

Bee×Piiぷろでゅーす

新宿スターフィールド(東京都)

2023/06/28 (水) ~ 2023/07/02 (日)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★★

面白い、お薦め。
笑わせ泣かせるといった王道のハートフル ヒューマンドラマ。
また、前説での温め・カーテンコールでの内輪ネタなど、スタッフ・キャストの対応も楽しませようという姿勢が好ましい。

説明にある「AI化したサチ子、彼女から課せられたミッション『死んでからさせたい100の事』をクリアする」、そのために奮闘する家族や仲間の姿を面白可笑しく描いた物語。勿論AI化したサチ子の様子・動作もコミカルで可愛い。
映画「死ぬまでにしたい10のこと」という、残りの人生を悔いなく生きる様を描いた感動作があったが、この公演は 逆に死者から生者へ力強く生きてもらうための応援譚だ。中盤までは緩い笑いを誘いながら、後半・ラストにかけて怒涛のような展開、そして悲哀と滋味に感動。思わず涙腺が緩む。

少しネタバレするが、第一のミッションはガラ携帯からスマホへ替え、LINEが出来るようになること、第二は若者言葉を覚えること といった実に他愛のないもの。

ミッションの一つ、サチ子を愛している証しとして<変顔><セクシー>そして映画「ローマの休日」に準えた<バーバの休日>という3枚のポスターを貼り…。「ローマの休日」は境遇や時間的制約がある中で、どう結末を迎えるかという興味を惹くが、この物語でも 制約ある中で最後のミッションは、という最大の関心事へグイグイと惹きこむ。この自然な展開が実に心地良い。
(上演時間1時間40分 途中休憩なし)㊙️ネタバレ

ネタバレBOX

舞台美術は田所家のリビングルーム。中央にソファとローテーブル、飾り棚が置かれている。棚の上にカレンダー(5月14日)があるが、場面が変わっても日付は変わらないことに違和感を持っていたが、ラストにその意味が氷解する。また後景は黒と白といった鯨幕で、サチ子が亡くなり葬儀の日から前に進めていないことを表している。

妻 サチ子が亡くなり、消沈している夫 治〈オサム〉。そこへAIを駆使して蘇ったサチ子、虫のような触覚を頭につけ、ぎこちない動作で100のミッションを突き付ける。呼び掛けは「Hey サチ子!」、そうしないと反応しない。
治は不承不承行いだすが、内心では喜々としている。他愛のないミッションだが、何となく生活に関わることが多い。そんな充実した日々、しかし そこへ総務省役人が電波法に抵触している疑いがあると…。
サチ子(AI)は試行(実験)段階で、彼女が発する電波は謂わば違法状態にある。それがバレるまでに何とか100ミッションをクリアしたい治と家族(長男・長女とその夫、子供<孫>)の思いは叶うのか? 99番目は「もう一度プロポーズしてほしい」、100番目は「私を忘れてほしい」である。

治は まだ定年前、現役で仕事を続けていたが、すっかりやる気を失くしている。職場の後輩たちも心配し、サチ子の知り合いも応援に駆けつける。登場人物が皆 個性豊かで濃い人たちばかり。特にサチ子(きむらえいこサン)と治(坂内勇気サン)の変顔を含めた表情・演技が物語を面白可笑しく牽引する。そのコメディ・タッチの場面を多く散りばめながら、ラストの感動ミッションへ。その感情を揺さぶる 振幅が半端ない。
治と総務省の役人たち<譲れない思い>の遣り取り…あなた達の言うことは尤もだが、ミッション遂行は譲れない、一方 役人・上司 曰く 違法は放置できない、しかし 部下は市民の幸せを守りたい、三つ巴のような会話が印象深い。

自分が亡くなり治が生ける屍状態…私を忘れ、思い出の品々も燃やしてほしい。一人で生活が出来るように鍛え、どうか前を向いて生きて行ってほしい、というのがAIになったサチ子の思い 願いである。治は言う「(いつも)思い出は胸の中にある」と。

ラスト、ずっと切ない劇中歌が流れ、朱色照明によって燃え上がる品々をイメージさせる、その余韻付が見事。年月の移り変わり…カレンダーが7月22日に変わり、今日も田所家の人々は元気だ。
次回公演も楽しみにしております。

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