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Le Fils 息子

Le Fils 息子

東京芸術劇場

東京芸術劇場 シアターウエスト(東京都)

2024/04/09 (火) ~ 2024/04/30 (火)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★★

昨年だったか、隣の席に座った見知らぬ老婦人に話しかけられたことがあった。岡本健一さんの名前が出て、私が思わず「(彼は)若いのに…」みたいなことを言うと「違いますよ」と笑われてしまった。ええ?と思ってすぐ気がついた。私の中では彼はいまだに男闘呼組のギタリストなのだ(オイオイ)。その岡本さんも今では54歳、共演できる息子(岡本圭人)さんまでいるとは。

その健一さん演ずるお父さんピエール、繊細で尊大な息子テスラ(圭人)に思いっきり苦しめられる。そして離婚した元嫁にも悩まされ、夜泣きする赤ん坊の世話で寝不足になり、良好だった今嫁との関係もどんどん悪くなっていく。それに加えて職業は弁護士で大統領候補の政策案策定にも関わることを要請されているという。

いやあ大変だ。昭和の日本のお父さんならこんな息子は母親任せで知らんぷり(そして全責任を母親にかぶせる)か2-3発ぶん殴るとか押し入れに閉じ込めるとかで終わりなのだ。兄弟姉妹もいるので一人だけ駄々をこねても相手にされないし、近所にも子供がうじゃうじゃいて孤立しにくいという事情もある。しかし、欧米のお父さんはただひたすら家族を愛する。そういう相互依存の関係が悪いんじゃないのか、親も子も自分の中で完結してよというのが私の感想だ(異論多数は承知)。

素に戻るときが時々あったような健一さんに対し、常に小さな精神崩壊のエネルギーを放出している圭人さんの演技には怖くなることもあった。そして唐突ながら、影絵風な暗転が美しい。しかし、2018年にパリで初演、と新しい割に内容は通り一遍で深みに乏しい。そう感じるのはこういう若者のことに関しては日本がずっと先を行っているからだろう。

世迷子とカンタータ

世迷子とカンタータ

9-States

駅前劇場(東京都)

2024/04/10 (水) ~ 2024/04/14 (日)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★★

鑑賞日2024/04/13 (土) 19:00

価格4,300円

前作「みんなのえほん」から2度目の観劇と巡り合う事が出来ました。
9-Statesらしい陰の部分と日常の暖かさや笑いのエッセンスを取り込んだヒューマンドラマです。
今回はけやき峠温泉にある旅館「湯鳥」で働く従業員、西野海斗の心の葛藤を視覚的に舞台転換や照明などで効果的に表現した当劇団の十八番とも呼べる作品。
今回も出版に関する内容で大きく展開されていく人間模様…序章~終盤に至るまで、少しづつ散らばった言葉のピースが頭の中で嵌っていくのは楽しいです。
20周年おめでとうございました!!

ネタバレBOX

今回の表紙デザインも好みの出来栄え!グッと期待感が高まります♪
役者陣は個性派揃い。各々が色んな色を持ってて分かりやすい。
前回もそうでしたが、チケットがステッカーになっているのもお気に入りだったりします。

個々で観ると舞台セットもテロップも、突然始まる歌謡演出や照明効果も一つ一つ丁寧で
良作なのですが、いまいち2時間10分の公演に没入していく集中力が、私にはなかったです。
これは舞台ドラマとしての日常が、やけに遅く感じて平和ボケしてしまうから?と考えます。
肉付けしている感…と言えばいいかな。過去が深堀りされていき、文芸部との決裂に至るまでの経過が長い。旅館での出来事(小川家のくだりとか)は削って、代わりに小説の内容や魅せ場(旅館らしい歌唱や踊りなどのパフォーマンス)を増やして、観客側の視点を逸らす演出も有りかなと思いました。
「泡が消えない」

「泡が消えない」

どんぐり企画

難波サザンシアター(大阪府)

2024/04/13 (土) ~ 2024/04/14 (日)公演終了

若い人が求めるピュアラブスト
オッサンには歯がゆいけど、同年であれば、共感すると思う
本当にこんなグループいんの?と思いながら、展開
ちょっと現実場馴れしないいて、オッサンには理解不能
にむん

生命のぬくもり

生命のぬくもり

劇団往来

in→dependent theatre 2nd(大阪府)

2024/04/10 (水) ~ 2024/04/14 (日)公演終了

満足度★★★★★

松竹系の泣かせる内容 吉本よりも松竹の方が歴史があるとは…
無医村に迷い込んだ尊厳死を重視した医者と、村人で繰り広げられる信頼構築の話
吉本新喜劇よりも数段上の泣かせる話 今後の松竹に注目
前半のイベントも充実 本編が更に楽しめた‼️内容もひねりは無いが、楽しめます‼️

世迷子とカンタータ

世迷子とカンタータ

9-States

駅前劇場(東京都)

2024/04/10 (水) ~ 2024/04/14 (日)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★★

面白い、お薦め。
寂れた温泉街、閑古鳥が鳴く旅館・湯鳥を舞台にしたヒューマンドラマ。物語は、温泉街 旅館の活性化と街興しに絡んでの人間再起が交錯して展開していく。人の再起に関しては、それぞれの考え方 生き方を問うようなもの。表層的には面白可笑しく描いているが、地域興しや人への思いやりを通して、古き良き時代?を思わせる。

9-Statesの特長ともいえるモニターを活用した演出…言葉の持つ<力>を台詞と文字で聞かせ そして見せる。少し哲学めいているが けっして世迷言ではなく、心に刺さるような味わいがある。すぐに物語の内容や人物に準えて理解することは難しく、後になって反芻するようなもの。

物語は、生きることに疲れた男 西野海斗が主人公、そして彼をめぐる個性豊かな人々との交わりを通じて人の喜怒哀楽を高らかに謳う。誰彼が善・悪でもなく、人それぞれに立場や事情がある。それは本音でぶつかり合うことで解る、理屈ではそうなのだろうが そう簡単ではない。そんな問いかけ をするような描き方である。そこに この公演の強かさがある。
(上演時間2時間10分 途中休憩なし) 

ネタバレBOX

舞台美術は、旅館 湯鳥(ゆとり)のロビーといったところで、中央に帳場、その横奥は別場所へ通じる階段。上手は玄関に通じる通路---障子、暖簾、雪洞そしてベンチが見える。下手は少し高くし和室---卓袱台や座布団、更にその横に厨房へ通じる通路がある。上手下手の上部にモニターがそれぞれ設置されている。

物語は温泉街の復興と人間の再起…閑古鳥が鳴く旅館だけに出入りする客は一組の家族だけ。それ以外の多くは旅館の従業員。そして温泉街の活性化のために企画したのが小説の舞台になった この温泉地の聖地巡礼。その小説家の創作に係る考え方や生き方が旅館の人々ひいては温泉街の復興に絡んでくる。

小説家として名を馳せているが、実は当人ではなくペンネームを拝借している 全くの別人。自分の書きたい題材では売れない=小説家としての存在が認められない。一方、世間が求める題材と自分が書きたい題材とのギャップに悩み苦しむ。すべて編集者の言いなりで良いのか自問自答するが…。

温泉街の人々VS 小説家と編集者の双方の思惑が錯綜する。旅館の従業員 西野海斗(瀬畠 淳サン)は、元編集者でありペンネームを無断使用されていた小説家の担当であり恋人であった。小説家としての(自分)才能と世間の評価の狭間で悩む姿に人間らしさを見ることが出来る。結局は、世間に流されることなく自分自身を見失わないこと らしい。
次回公演も楽しみにしております。
パレードを待ちながら

パレードを待ちながら

兵庫県立ピッコロ劇団

ピッコロシアター 中ホール(兵庫県)

2024/04/12 (金) ~ 2024/04/14 (日)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★★★

昨年、他劇団ではあるが、上演され名高い賞を受賞した今話題の演劇であります。ストーリーはわかっていたが、劇団と演出が変わるとこれほど変化するものなのか、と驚いた演劇でした。

現代の戦争に見立てることは我々観客のなすべき姿勢であろう。最近続いている戦争の気運がどうしても気になり、この劇の時代である第2次世界大戦とは思えぬ背景と彼女たちの心根がずしんと我々の心に引っ掛かり、重くのしかかる。

ラストのパレードは彼女たちにとっては戦争の終わりを告げる明るいものでないことが、さらに我々に戦争のむなしさを訴えてくる。素晴らしいラストであった。しずかに感動の涙が頬を伝い、席を立てなくなった次第。私も老いて来たかなあと思う。

生きる為には君が邪魔だった

生きる為には君が邪魔だった

劇団水色革命

新宿スターフィールド(東京都)

2024/04/10 (水) ~ 2024/04/14 (日)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★★

とてもデリケートで難しい内容を題材しており、大変だったと思います。家族愛や友情を中心に上手まとめられてるなと感じました。面白かったと思います。皆さん熱演でしたね

生きる為には君が邪魔だった

生きる為には君が邪魔だった

劇団水色革命

新宿スターフィールド(東京都)

2024/04/10 (水) ~ 2024/04/14 (日)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★★★

重いテーマだが、面白い場面が多く(山賊とか)アクションも切れていてよかったです。
タイトルの意味は最後に「そっちかぁ」となり考えされられました。

ハナコトバ -朗- for spring

ハナコトバ -朗- for spring

Daisy times produce

アトリエファンファーレ東新宿(東京都)

2024/04/10 (水) ~ 2024/04/14 (日)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★★★

Bチーム千秋楽拝見しました。朗読劇は何度か拝見してますが、感情のこもった、情景が見えるようなお芝居でとてもよかったです。内容も上手くできていましたね。高3に出会ったことで病気は治まっていたと言うことなのかな思いながら見てました。皆さん感情豊かでとても個性的で可愛らしく、本当に心に響く舞台でした。いい時間を過ごせました。

世迷子とカンタータ

世迷子とカンタータ

9-States

駅前劇場(東京都)

2024/04/10 (水) ~ 2024/04/14 (日)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★★

相変わらずグッとくる9-Statesらしいヒューマンドラマですね。いつもながら、何が正解かは分かりませんが。

ハナコトバ -朗- for spring

ハナコトバ -朗- for spring

Daisy times produce

アトリエファンファーレ東新宿(東京都)

2024/04/10 (水) ~ 2024/04/14 (日)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★★

Bteamを観劇。きちんとした朗読劇ですね。聴き取りやすいし、ストーリーもおっと思わせる展開。じっくりと楽しめました。

エアスイミング

エアスイミング

カリンカ

小劇場 楽園(東京都)

2024/02/28 (水) ~ 2024/03/03 (日)公演終了

実演鑑賞

初日と前楽を観劇。
大好きな俳優二人ががっぷり四つに組んで火花を散らす。いや、違うな。決して戦っているわけではない。可愛らしさも、可笑しさも、激しさもぶつけ合っているけれど、相手を倒すわけでも、やり込めるわけでもない。それぞれが持ちうるスキルと感情を、これでもかと惜しみなく披露して、それが互いを刺激して、高め合う熱情がうねりのように遠心力を増して空間を飲み込んでいく。物凄いモノを観てしまったなという思いを客席が共有した。
ストーリーは二度見ても掴めなかった。理解しようとする程に混乱した。でもきっとそれが正解のような気もしている。なぜなら彼女たちは精神に異常をきたしているという話なのだから。終演後の腑に落ちなさは、まんまとしてやられたのかもしれない。

世迷子とカンタータ

世迷子とカンタータ

9-States

駅前劇場(東京都)

2024/04/10 (水) ~ 2024/04/14 (日)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★★★

よかったです。クリエイティブな仕事をしている人にはかなり刺さるセリフがありました。

朗読劇「Aiと命」

朗読劇「Aiと命」

WizArt

Art Live Space 「Special Colors」(東京都)

2024/04/13 (土) ~ 2024/04/14 (日)公演終了

実演鑑賞

面白かったです。

将棋無双・第30番 ~神局のヴァンパイア~

将棋無双・第30番 ~神局のヴァンパイア~

E-Stage Topia

上野ストアハウス(東京都)

2024/04/10 (水) ~ 2024/04/14 (日)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★★

「将棋無双・第30番」

昨年観劇した前作「将棋図巧・煙詰」で、真田林佳さん演じる伊藤看寿のセリフ「わが兄 伊藤宗看の将棋無双だって・・・」というのがあって、気になっていました。そして今回はその「将棋無双・第30番」。待ってました。

自分は昔いろいろ調べたことがあって、詰将棋の作問ルールやその難しさについては詳しい方だと思います。セリフに出てくる「不完全作」の意味も分かります。よくあるのが「余詰」と呼ばれるもので、別解があるものは不完全とされます。

完全作かどうかは作問ルールの範囲ですが、それを満たすだけでもけっこう大変なのです。しかも詰将棋はそれだけではなく、「問題として面白いかどうか」が重視されます。言い換えれば芸術的な価値です。

この「将棋無双・第30番」は手順を予習して臨みました。詰将棋としてすごい作品ですね。詰め上がり=最終形が「曲詰」と言われる、意味のある形になるものです。なんでも「神局」と言われているとか。これが江戸時代に作られたというのが驚きです。

ネタバレBOX

以前観劇した「煙詰」では伊藤看寿として出演されていた真田林佳さん。今回は5一の桂馬としての出演。看寿のときと同様の迫力あるお声は期待どおりでした。
そのペアとなる5三の成桂の中井杏奈さんとはまったく違う雰囲気なのが良かったと思いました。ペアを似たようなキャラで表現する舞台がけっこうあるのですが、遠目だとどっちがどっちか分からなくなってしまうので、はっきり違いがあるほうが好きです。
その桂馬と成桂は最初から最後まで動かないので話にどう絡むのか想像できませんでしたが、いろんな意味で絡んでました。

前作の煙詰ではギャグシーンは無かったのですが今回はテイストが変わって、遠慮なく笑ってよいシーンがたくさんありました。
前作にも出演された政田圭敬さんの「と金の精」にはびっくりしました。大笑いでした。
馬鋸でどう時間を使うかに注目していたところ、総動員でスピードアップして、これまた大笑いでした。
金将の出番が終わるシーン、まさか玉将が食べてしまうとは。飛び散る血の花が鮮やかでした。
何度も出てくる「反逆の逆十字」という言葉が詰め上がりを指していることは分かってましたが、最後に反転させるとは。その手がありましたか。

詰将棋を知らない人がどれだけ楽しめたかは分かりませんが、少なくとも、楽しめるように工夫されていたと思います。是非シリーズ化して欲しいです。
5月文楽公演「通し狂言 妹背山婦女庭訓」

5月文楽公演「通し狂言 妹背山婦女庭訓」

国立劇場

国立劇場 小劇場(東京都)

2019/05/11 (土) ~ 2019/05/27 (月)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★★

 国立劇場で『妹背山婦女庭訓』を通しで観た。人生初の10時間半観劇である(3年前に京都で観た『繻子の靴』を超えた)。前回2004年の通し以来2度目だが、その時が初の文楽鑑賞だったこともあり退屈してしまい途中で席を立ってしまった苦い思い出がある。

ネタバレBOX

 第一部は歌舞伎ですら観たことのない段が観られてよかった。98年ぶりの上演となる大序「大内の段」は荘厳。二段目「芝六住家」はまるで忠臣蔵「六段目」のような筋と感じる。歌舞伎では1996年以来上演されていない。貴重な体験である。

 第二部の「山の段」「御殿」はこれまで見取りで何度か観ているが、前段を観ているためにより理解が深まるうえ歌舞伎との比較もあり面白い。「山の段」はアクロバティックで特に定高が感動的。何度も観ている「御殿」では求馬の冷酷打算ぶりに怒りを感じ、お三輪の哀愁が染みた。

 通して観ることで「国造りと抵抗」「喪失と和解」「自己犠牲と純愛」のような普遍的なテーマを強く感じられた。くわえて『妹背山』は天皇制支持者に市政の人々が巻き込まれていく物語であり、巻き込まれた人たちが死んだり家族と引き離されたりはするものの最後は嬉しそうであるという点が悲劇的と感じた。
八月花形歌舞伎

八月花形歌舞伎

松竹

歌舞伎座(東京都)

2020/08/01 (土) ~ 2020/08/26 (水)公演終了

実演鑑賞

 5ヶ月ぶりに開場した歌舞伎座の初日に勘九郎巳之助の「棒しばり」を観た。

ネタバレBOX

 入口で消毒・検温を済ませ自分でチケットをもぎったのちロビーに入ると、平時であれば売店の掛声や弁当・甘味の香りが漂うが、今はほぼ全て休店しているため閑散としていた。同様に客席も前後左右がつぶされた仕様でアナウンスに従い皆話し声も立てない。長いことこの劇場に通って初めて目にした異様な光景ではあるが、観客のマナーの良さを感じないではいられない。左右の桟敷をつぶし後方の扉から換気をしているのが目につく。

 開幕前にアナウンスで勘九郎が口上を述べると、本来は嵐のような大向こうがかかるところではあるが代わりに観客は拍手で応える。いよいよ幕開き。勘九郎の次郎冠者は棒指南の豪快さ、両手を棒で縛られてから酒をくむ手際のよさ、終盤の全身を使って舞台を駆け回る様と大したものである。巳之助の太郎冠者は輝くような顔つき、安定した発声がまず印象的。中盤の下半身中心の踊りのキレが良く、勘九郎とピッタリイキが合っている。この二人の亡父・十八代目勘三郎、十代目三津五郎の名コンビは対照的な身体性で魅せたが、この若いコンビは身体がよく動くのが身上。扇雀の大名が安定しており舞台を締める。

 まだ手探りの日々は続くだろうがなにはともあれ開場はめでたい。このまま無事に興業が続くことを願う。
夢の泪

夢の泪

こまつ座

紀伊國屋サザンシアター TAKASHIMAYA(東京都)

2024/04/06 (土) ~ 2024/04/29 (月)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★★

井上ひさしの「東京裁判三部作」の二作目、2003年初演。音楽は宇野誠一郎(&クルト・ヴァイル=ドイツの『三文オペラ』の作曲家)だが、かなり狙ったマニアックな曲調。歌い辛そう。あえてそれをやっている感覚がある。今作では朴勝哲(パク・スンチョル)氏が独り軽快にピアノを奏でてくれる。

瀬戸さおりさんはここ数年、井上ひさし作品のヒロインを背負って立つ貫禄。彼女が象徴する気高き精神性が井上ひさし作品を別格とする拠り所となる。今作も最高だった。
MVPは秋山菜津子さんだろう。何でも出来るんだなあ。歌もずば抜けていた。本物。
藤谷理子さん(28歳)と張り合う、板垣桃子さん(50歳)、いや全く気付かなかった。この配役がズバリ。才能のある連中を集めた上で更に捻りを入れている。贅沢に面白いことやってんな。

戦後すぐの昭和21年(1946年)、新橋駅近くに法律事務所を持つラサール石井氏と秋山菜津子さん弁護士夫妻。秋山菜津子さんの連れ子で8歳の時に義理の娘となった瀬戸さおりさん。だがラサール石井氏の女癖が悪く夫婦は崩壊寸前に。
GHQの将校クラブで歌う歌手、藤谷理子さんと板垣桃子さんはそれぞれの夫が自分の為に作ってくれたオリジナル曲を巡って大喧嘩。音楽出版権を争う事に。
秋山菜津子さんには東京裁判にて、A級戦犯・松岡洋右元外務大臣の補佐弁護人の依頼が。占領国であるアメリカが裁く日本という国の罪、一体敗戦国にどんな弁護が可能なのか?

テーマは『戦争(歴史)を誰がどう裁くべきか?』。
演出家の栗山民也氏が稽古中、「今、こんな戯曲は何処にもないよ。」とポツリ。確かにもう誰も書かないし、書けもしない。
けれど本当の日本の歴史を誰かが紡いでいかないと。嘘ではなく、“本当”の歴史を。
かなり面白い、是非観に行って頂きたい。

ネタバレBOX

劇団チョコレートケーキの『帰還不能点』を観ていると、非常に判り易い。それは日本が何処で道を間違えたのか、そのギリギリのポイントを探る話だった。
1931年の満州事変(どさくさに紛れて満州を占領)を国際連盟に非難されたことを受け、1933年国際連盟を脱退。1940年日独伊三国軍事同盟、1941年日ソ中立条約を締結。(欧州へのアメリカの介入を阻止する為)。その中心人物となったのが松岡洋右。1929年に批准したパリ不戦条約(国際紛争解決の為の戦争放棄)が一つの論点に。

秋山菜津子さんは日本を弁護する為に、世界に通用する論理を模索する。それには交わされた法律(契約書)だけが頼り。今後の国際秩序の礎として、「平和に対する罪」「人道に対する罪」が戦争の抑止力と成り得るのか?

GHQの日系二世、土屋佑壱氏が自身の半生を語る。移民としてカリフォルニアで必死に暮らしてきた日本人、日系人は太平洋戦争開戦により敵性外国人として強制収容所に送られた。腕一本で築き上げた財産を全て没収された父親は夜毎うなされて泪を流す。青年だった土屋佑壱氏達は合衆国憲法を楯に取り、所長に抗議を繰り返し続ける。ならばと、文句を言った日系人達は軍隊に入隊させられて一番危険な戦場に送り込まれた。

在日朝鮮人の前田旺志郎氏はこの世界の仕組みについて気付いてしまう。「単純なことだった。世界に見捨てられただけなんだ。」見捨てられた者達にも人生は続く。さあ、見捨てられた自分はこれからどう生きてやるものか。

瀬戸さおりさんは土屋佑壱氏の話を聞いてショックを受ける。何も持たない弱者が国家の横暴と渡り合う最後の命綱が法律であることを知る。この契約書だけが生きていく為の頼り。法律を学び、世界と向き合う覚悟を決める。

作品はまあいつも通り何か中途半端な構成にも感じるが、このアイディアは凄い。これを語ろうとしただけで評価する。普通はそもそも語ろうとはしない。

「丘の桜(丘の上の桜の木)」の歌、この歌詞が物語に密接に絡まっていれば最高だった。
世迷子とカンタータ

世迷子とカンタータ

9-States

駅前劇場(東京都)

2024/04/10 (水) ~ 2024/04/14 (日)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★★

舞台は説明の中であった
寂れた温泉街の旅館=湯鳥(ゆとり)のホールが設定
閑古鳥の鳴く街を人気の小説で舞台になってるとして
聖地巡礼で盛り上げようとして
様々な人々が旅館を舞台に繰り広げる
群像劇=主軸は小説関連=です
なかなか重厚だった
2時間5分の長丁場作品

ネタバレBOX

点と線のオブリビオンの舞台セットと同じだよなぁ と感想
デジャビュー

ラストにチラッと出てきた
湯鳥の温泉手ぬぐいがリアルでした=我感動

あいかわらずの
暗転+してのモニターでの台詞流しで
視線誘導して舞台から意識を逸らさせる手段は
ナインステイツ独自で良いなぁと感心デス
私を殺して...

私を殺して...

東京ハイビーム

地中海料理&ワイン Showレストラン「ガルロチ」(東京都)

2024/04/05 (金) ~ 2024/04/12 (金)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★

テーブルに囲まれた舞台での
客いじりなどしつつ~の
テーブルトーク舞台といった感じでしょうか
韓国での舞台は普通に劇場での上演スタイルなのかしら?

ピアノの生演奏もあり
主役の汗だくの熱演も評価できるが
自分的には大ヒット~という感じはしなかったかな
いろいろと趣向を凝らしていてるんだけどね

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