流れんな
iaku
ザ・スズナリ(東京都)
2024/07/11 (木) ~ 2024/07/21 (日)公演終了
実演鑑賞
満足度★★★★★
鑑賞日2024/07/15 (月) 14:00
座席1階
人気劇作家の横山拓也がiaku設立2年目の2013年、初の大型巡演に挑戦した作品という。彼は東京進出に当たって「スズナリはステータス、あこがれだった」と語っていて、そのスズナリで行われた今作は再演を重ねて広島弁でリニューアルされた、とパンフレットにあった。
結論から言うと、横山拓也の源流とも言える見事な会話劇。「見ないと損する」レベルだ。主役を演じた異儀田夏葉がちょっと今ひとつだった感じもするが、この戯曲の価値が下がるわけではない。1時間半、食い入るように舞台を見つめてしまった。恐らく他のお客さんもそうだっただろう。ラストシーンに近い当たりであちこちからはなをすする音が聞こえる。ああ、これが家族を描いた横山作品の真骨頂なのだな、と納得した舞台だ。
舞台は(広島弁なので)広島の小さな飲食店。名産の貝料理で夫婦が続けてきた店だが、冒頭、妻が洋式トイレに座ったまま大いびきをかいている場面から始まる。その横にいる中学の制服姿の長女。母親が脳出血と思われる状況であることに気付かず、部活に行ってしまう。かたわらには一回り年が離れた妹である赤ちゃん。「泣いてるよ」と母に告げて店を出るが、母は大いびきを続けるばかりで反応がない。
このシーンから約30年後の店の状況から物語はスタートする。地元の名産の貝料理を売り込むキャンペーンをする大手企業の社員が閉店状態の店にやってくる。店の主人である父親が倒れ、入院中なのだ。時に母親がわりをしながら父親と店を続けてきた長女。だが、その名産の貝は、貝毒が起きて漁にも出られる状況でない。
この戯曲は、こうした貝毒を巡る公害問題、出生前診断、今認知症診療でも使われるようになった長期記憶の映像化など、複数の社会的課題を巡って展開する。10年以上前に書かれた戯曲だが、今も続いている課題となっていることにまず、驚かされる。今作では、10年前には登場していなかったAIを盛り込んでリニューアルされているが、特に、長期記憶の映像化という話題には、「これが10年前に書かれていたの?」と本当にびっくりした。
また、この洋式トイレが一つのキーワードになっていて、タイトルにもつながっていく。複数の意味での「流れんな」。終わってみて、そうだったのかと舞台を反すうしてしまった。
横山マジックと言っていい流麗な会話劇。今回登場する5人の役柄にそれぞれ秘めた物語があり、きっちりプロットを散りばめた群像劇でもあって、物語が進行するにつれて新たな驚きが次々に出てくる。もう、これはもう舞台から目を離せない。そんな展開だ。
取り上げられているそれぞれのテーマは重く、笑えるせりふも多くはない。しかし、iakuの源流であり真骨頂であるところを十分に楽しむことができる。
広島弁もいいが、当初演じられた関西弁バージョンも見てみたい。また、どこかでやってくれないかな。
今回のスズナリ。見ないと損するかも。
あいあむ、あいわず! I am,I was...?
ひのでのあくび
小劇場 楽園(東京都)
2024/07/12 (金) ~ 2024/07/15 (月)公演終了
実演鑑賞
満足度★★★★★
「世にも奇妙な物語」の立体版のような新感覚の舞台でした。旗揚げ公演とは思えない演技力、間の取り方に圧巻です。SFが2コマ上演されたのも、小説のショートショートみたいでエッジが効いています。
いっかいやすみ
ポッキリくれよんズ
シアター711(東京都)
2024/07/12 (金) ~ 2024/07/14 (日)公演終了
実演鑑賞
満足度★★★★★
面白かったです。
登場人物達の置かれている状況や台詞にリアル感があり、考えさせられました。
一生懸命は良いけれど、大事な事を見失う事もあるので、一回休む事も必要だと思いました。
謎が少しずつ解けていくストーリー展開も面白く、役者さん達の演技も良かったです。
良い舞台でした!
野外劇『パレード』
公益財団法人武蔵野文化事業団 吉祥寺シアター
境南ふれあい広場公園(東京都)
2024/07/13 (土) ~ 2024/07/14 (日)公演終了
実演鑑賞
満足度★★★
以前は「しあわせ学級崩壊」というカンパニーの主宰として作・演出を担っていた小西力矢さんによる公演。コンセプトは「広場×不条理演劇」。会場はJR武蔵境駅から徒歩1分の公園。僕が観劇目的でこの駅を降りたのは初かも。
『口車ダブルス』
劇団フルタ丸
小劇場B1(東京都)
2024/07/10 (水) ~ 2024/07/14 (日)公演終了
実演鑑賞
満足度★★★★
劇団俳小の『ゴールデン・エイジ』が急遽公演中止。折角なのでこちらに伺った。
脚本が抜群。頭一つ図抜けている。一人ひとりの人間の魅力を余す所なく書き連ねている。ちょっと単調な展開もあったが、「悪そうな奴とは大体契約」の笑いで帳消し。
二つの可動式の高座、二つの釈台、各々に張り扇(おうぎ)と扇子。釈台に叩き付ける張り扇がリズムとなり客席を煽る。シーンによって演者が二人一組で高座を色々な角度に移動していき、その都度舞台デザインのフォルムが変わる。
二人の講談師(真帆さんと篠原友紀さん)が語り始めるのは生命保険会社「第三生命」の人間模様。突如、外部から営業部長として送り込まれた二人。徹底してデータと数字で理詰めの管理をする真帆さん。一見ド素人ながら人の好さでフォローする篠原友紀さん。二人は部長でありつつ、講談の中で様々な役に化けていく。
成績No.1で叩き上げの大勝かおりさんは自分が部長に選ばれなかったことに少々不満顔。
にしやま由きひろ氏は多趣味で、変わった石を拾う楽しみを覚えた。
優秀なキザ野郎、松尾英太郎氏の決め台詞「夢を見てしまえよ!」は最高。
幼稚舎からの慶應ボーイのキタラタカシ氏は刺激に飢えている。
色恋営業で契約を取りまくる神咲妃奈(ひな)さん。
新卒の涼田麗乃さんの教育係に大野朱美さんが命じられる。大野朱美さんは落語家を目指していた時期があり、今でもそれを引きずっている。
セールスマンの営業心理学テクニックが炸裂する。
ラポール(信頼関係)形成、ミラーリング(相手に合わせる)、ペーシング(自身を調節する)、などなど。
神咲妃奈さんは板野友美のアヒル口に多部未華子の目力みたいな美人。こういう女に男はことごとく騙される。それはDNAに刻印された本能で、そう創った造物主が悪い。ホストに騙されて立ちん坊をしている女達も同様。自分の意思を超えたところで惹き付けられてしまうのだからお手上げだ。
大勝かおりさんはナンノっぽい。
にしやま由きひろ氏は渡辺いっけい似。
作・演出を兼ねるフルタジュン氏はタカアンドトシのタカとFUJIWARAの原西を足したような味。
あやめ十八番を観ている時の感覚に近い。
講談師の篠原友紀さんが他の人の熱演を真剣に見ていて、うんうん頷いたり笑いを必死にこらえたりする様がこの劇団の強みだろう。嘘偽りなく演者が本当に面白いと思って演っている。理想的空間。才能が溢れ返っている。
NAIKON_AID2024夏
ナイスコンプレックス
溝ノ口劇場(神奈川県)
2024/07/13 (土) ~ 2024/07/15 (月)公演終了
実演鑑賞
満足度★★★★★
物語の引き込み方といい
脚本といい
とても良かった
パイプ椅子に座した朗読劇
ではあるが
いろいろと動きを入れていて
舞台表現としても
上手に作れてたなぁと
感心しきりな約2時間弱の話
カズオ
世田谷シルク
アトリエ春風舎(東京都)
2024/07/13 (土) ~ 2024/07/15 (月)公演終了
実演鑑賞
満足度★★★★
舞台美術は極めてシンプル。ホリゾントに衝立を設け場面によってその中央部分を開閉することができる。閉まっている時は、袖を形成することになる仕掛けだ。出捌けは袖両側とセンターの3か所。板中央に横長のテーブル。奥に椅子2脚、手前にベンチ。尺125分。こなれた演技だ。華4つ☆(追記8.2 )
授業
劇団ゆらじしゃく
シアターシャイン(東京都)
2024/07/14 (日) ~ 2024/07/15 (月)公演終了
実演鑑賞
満足度★★★★★
イヨネスコの「授業」は世界中で未だに再演され続けている不条理劇の傑作。今回ゆらじしゃくの演出を担ったのは劇団主宰者でもある高野さん。イヨネスコの脚本に内在しているフロイトの深層心理解析的視座からより、現在の我々の生活により密着した視座からの演出が為されている。(追記後送)
カズオ
世田谷シルク
アトリエ春風舎(東京都)
2024/07/13 (土) ~ 2024/07/15 (月)公演終了
実演鑑賞
満足度★★★★★
鑑賞日2024/07/14 (日) 18:30
1984年に永井愛が書いた2人芝居。ついついクスっと笑ってしまう見事な舞台。120分。
二兎社(永井愛・大石静)で初演され、いろいろな団体が上演してた作品を世田谷シルク・堀川炎と山の手事情社・越谷真美が演じる。2人の銀行の支店長の家族に起こった物語を、12人の登場人物を2人で早着替えをしながら演じる、という点が話題になることが多いが、登場人物が2人での会話や独白で物語が展開されるという戯曲の構造も見事だと思う。演じる2人の力量は確かなもので、人物の描き分けもしっかりして、大笑いというよりクスっと笑える芝居だった。
せんがわ劇場×桐朋学園芸術短期大学自主上演実習公演
桐朋学園芸術短期大学
調布市せんがわ劇場(東京都)
2024/07/12 (金) ~ 2024/07/14 (日)公演終了
実演鑑賞
「葉桜」「命を弄ぶ女ふたり」は、どちらも岸田國士作品。なお後者は「命を弄ぶ男ふたり」が原題だったような。それを女性バージョン、しかも現代的に改変している。ただし内容は同じだった。両作品に共通しているのは女性の2人芝居、その会話をどう描くか。
岸田國士作品は、映画 小津安二郎作品のように日常のありふれた光景を滋味ある会話で紡ぐ、といった印象だ。刺激的な出来事などは起こらず、淡々とした日常の味わい深さ それをどう観せ感じさせるかが見所だろう。
せんがわ劇場×桐朋学園芸術短期大学自主上演実習公演
桐朋学園芸術短期大学
調布市せんがわ劇場(東京都)
2024/07/12 (金) ~ 2024/07/14 (日)公演終了
実演鑑賞
有名な戯曲2編「父と暮せば」(井上ひさし)・「2020」(上田岳弘)、と言っても後者は観たことがない。前者は現実をリアルに描いた反戦劇、後者は抽象的というか観念的な創造劇。その違いを続けて観ることで、演劇の幅広さ奥深さを改めて感じさせる。上演演目の選択は勿論、その並べ方(上演順)も上手い。
せんがわ劇場×桐朋学園芸術短期大学自主上演実習公演
桐朋学園芸術短期大学
調布市せんがわ劇場(東京都)
2024/07/12 (金) ~ 2024/07/14 (日)公演終了
実演鑑賞
あまり学生演劇は観ないが、本公演は誘われて というか依頼されて3日間せんがわ劇場へ。全6公演のうち5公演(観なかったのは「地獄」)を観劇した。初日に「『地獄』だけは見たくない」と シャレにもならないことをスタッフ(学生)に言ったが、実は その時間帯に別公演を観ることにしていたというのが正直なところ。
ちなみに、この公演は学士「芸術学(演劇)」取得のための審査対象となる上演であり、上演作品の映像を専門家が観ることになっている。よって★評価はしない。
「観てきた」は演目ごとではなく 観劇日ごとに記する。始めに全公演に共通することと初日の「フローズン・ビーチ」、2日目は「父と暮せば」「2020」、3日目は「葉桜」「命を弄ぶ女ふたり」を書く。3日間は雨が断続的に降り、蒸し暑かったり肌寒かったりと体調管理が難しかった。そんな中、スタッフは 雨で足元が悪い中、受付や傘入れなど丁寧な対応、劇場内では座席への誘導やブランケットの貸出など親切な対応が気持よい。観客にとってスタッフ対応の良し悪し、その第一印象は大切。
NAIKON_AID2024夏
ナイスコンプレックス
溝ノ口劇場(神奈川県)
2024/07/13 (土) ~ 2024/07/15 (月)公演終了
実演鑑賞
満足度★★★★★
朗読劇を観劇。
母と子の話かと思いきや、途中でんっ?となり終盤は涙腺が・・・。
ただの朗読ではなく気持ちを揺さぶられるほどの良い舞台でした。
『口車ダブルス』
劇団フルタ丸
小劇場B1(東京都)
2024/07/10 (水) ~ 2024/07/14 (日)公演終了
実演鑑賞
満足度★★★★★
保険営業員の生態を皮肉に、しかし暖かく描く、その塩梅が絶妙である。そしてまた落とし持ち上げる。終わってみれば根っからの悪人はいなくなっているのだがそこに演劇によくある臭みがない。うまいものだ。
登場人物の書き分けが見事で、そこにどんぴしゃりの役者さんたちを配役する。これもまた素晴らしい。ベテラン演技陣には感心するばかりだ。特に渡辺いっけい似の にしやま由きひろ さんの斜に構えた佇まいに痺れた。女優さんでは若い頃なら神咲妃奈さんに魂を抜かれていただろうが爺さんになった今では大野朱美さんの知的なクールさに惹かれてしまう。もちろん涼田麗乃さんのひたむきさも最高だ。
売りの講談システムだが無声映画の弁士を(有声の)演劇に使ったということに近い気がする。基本はナレーションだが演劇の中での役も与えられていて台本を書く上で非常に便利なしくみになっている。素晴らしい発明ではあるがユニークすぎてそのままでは他の団体が採用することは難しいだろう。何か変種が出て来ることを期待したい。
夏に冬は思い出せない
演劇ユニットせのび
スタジオ「HIKARI」(神奈川県)
2024/07/12 (金) ~ 2024/07/15 (月)公演終了
誰もが自分を殺人犯だと言う
G-フォレスタ
新開地アートひろば(兵庫県)
2024/06/29 (土) ~ 2024/06/30 (日)公演終了
実演鑑賞
満足度★★★★
初回、奥様と観劇。
古い洋館、資産家の母が○○に殺され…
誰もが犯人を知ってるのに、
誰もが自分を犯人だと?!
そこに良いキャラの刑部と刑事が…
皆さん演技は秀逸🤩
予想もできないほど、途方もなく残忍驚愕な結末ではなく…
ある意味、愛に満ちた(ある意味、予想範囲内の)結末…
もう少し裏切って欲しいかったですが、愛に溢れた、良くできた話💓で、大納得です🤩
追伸、終演時に、愛と柔らかな日々を頂けて更に大変満足💕
ワイルド蛍をつかまえろ/寿司の女
岡本セキユ★シングル芝居
早稲田小劇場どらま館(東京都)
2024/07/13 (土) ~ 2024/07/15 (月)公演終了
カズオ
世田谷シルク
アトリエ春風舎(東京都)
2024/07/13 (土) ~ 2024/07/15 (月)公演終了
実演鑑賞
満足度★★★★★
圧巻のステージでした。プロの犯行ですね^^ 開演される前にお客が長蛇の列だった理由がわかりました。ストーリーもわかりやすくプロの根性が感じられた感動の舞台でした。
いっかいやすみ
ポッキリくれよんズ
シアター711(東京都)
2024/07/12 (金) ~ 2024/07/14 (日)公演終了
実演鑑賞
満足度★★★★
タイトルのように少し立ち止まるのも人生には必要なんだなと考えさせられた舞台でした。
初めの疑問がだんだんと解き明かされて、ラストでふわっと温かい気持ちになりました。
流れんな
iaku
ザ・スズナリ(東京都)
2024/07/11 (木) ~ 2024/07/21 (日)公演終了
実演鑑賞
満足度★★★★
劇壇創設の二年目・十年前に初演した作品を、舞台を広島に変え、小劇場で実績のある俳優たちを迎えた横山拓也・作品の再演である。横山は、昨年、「モモンバのくくり罠」で鶴屋南北賞も受け、今や若手劇作家の一方のリーダーとみなされるるようになった。これからはさまざまな要望にあわせての戯曲提供も、商業演劇や大劇場の要請に応じた売れる作品も書かなくてはならない位置にいる。この際🅼ステップを上げた座組で過去作品を自分の劇団の主宰で再演してみるのはいかにも横山らしい。観客にとっても興味深い。
横山の初期の作品では,現代社会の中で、気が付かれてはいるのだけれど、なかなか表立っては一方的に解決できない問題を、それにまつわる人間たちの実生活の姿から描いた作品が多い。いわく、母子家庭の青春問題、障碍者の性処理問題、少年時の事故の後遺症、自然保護、障碍者保護の矛盾。予想できない職場の事故などなど。すべては解決できないけど、それでも人はそこでそれぞれ生きていく。教条的でも教訓的でもないドラマは、非常に新鮮だった。
現代に生きる人々の出発点はまずそこにある生活を見ることだ、という主張は、当時、衰退、硬直して自己中心的な世界に閉じこもっていた小劇団群を一掃する力があった。
関西から出た劇団だが、東京の小劇場界でもたちまち、脚光を浴びた。
「流れんな」もその時期の作品だが、当時は見ていない。ここでも、「貝毒」の処理の問題が、地方の地域活性化の問題と絡んで扱われている。今なら作者もこうは作らないであろうという点も見えるが、初々しさがあって、面白く見た。今回は俳優がずいぶんグレードアップされていて、この俳優たちの芝居でドラマとして弱いところはずいぶんカバーされている。異儀田、近藤の達者なベテランにくわえて、iakuに踵を接して出てきた小松台東の今村、あはひの松尾も健闘、最近見るようになった宮地綾もなかなか良かった。この点でも再演の意味はあった。
横山は次はPARCOのファンタジーの一月公演を書くという。なれない座組だが、挑戦の成功を祈っている。うまくいっても行かなくても、これを糧にしてすねたり、小理屈に走ったりしない(これが大事)作家精神の太さを買って期待している。