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穏やかな罅

穏やかな罅

サンハロンシアター

OFF OFFシアター(東京都)

2024/08/29 (木) ~ 2024/09/01 (日)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★★

鑑賞日2024/08/30 (金) 14:00

自分の中でも曖昧な、結論の出ない思いを素直に言葉にしたら
こんな会話になるのかなと思う。
その思いを受け止めてくれる相手がいて初めて成立する会話が温かい。
悪徳業者だと思っていたら、意外なラストにめちゃめちゃ感動してしまったぜ!

ネタバレBOX

来年1月までに立ち退きが決まった古いアパートの一室、
元同僚という中年男2人が一緒に暮らしている。
淡々と、利害関係もなくただ同居しているというのが好ましい。

お人よしの男1は、隣室の女性が不動産業者と立ち退き契約を交わす場に同行したりする。
女性は手土産の菓子折りを持って、言われるままの立退料に判を押して去って行く。

ポストに入っていた「水族館リフレ」という怪しい(?)チラシの店に、
男二人は別々に内緒で通っていたが、ある日店でばったり出くわしてしまう。
同じリフレ嬢の客だったことが判明する。
男2は、リフレ嬢にストーカー呼ばわりされつつ人生初の「好きです!」と絶叫する。

直後、男二人の穏やかな日々に小さな変化が生じる。
何となく立ち退き後も次の住まいで同居すると思っていたが
初めて別々に暮らそうか・・・と思い始めるのだ。
無邪気に、隠し事も遠慮もなく無理せず暮らして来たオジサン二人の日常に
壊れるのではなく、カリッと微かな罅(ひび)が入る感じが絶妙。

”今さらの自我”というか、”大人の秘密”というか、何か”共有すべきでないもの”が
芽生えたように見えた。
罅は自立と変化の兆しという気がした。

登場人物は皆、根は優しくて思いやりのある人々だが、
悪徳不動産業者だけは気持ちいいほど金の亡者だと思っていたら・・・、
何とラストの素晴らしいことよ!
あの菓子折りの使われ方と、男1の無駄な抵抗(に見えた)行動が
こんな結末を呼ぶとは、想像もしていなかった。
無欲で、素直な行動が、相容れない人の心をも変えてしまうという
この「土禁」と「菓子」のラストシーンで、全てが報われ回収される。

役者さんが皆、淡々とした台詞に気持ちを乗せるのが巧く、惹きつけられる。
シンプルなセット3点を素早く移動させるだけの場転も効果的だと思った。


とりあって

とりあって

かわいいコンビニ店員 飯田さん

OFF OFFシアター(東京都)

2022/09/08 (木) ~ 2022/09/14 (水)公演終了

映像鑑賞

満足度★★★

作品として評価すればとてもいい出来だとは思うのですが、個人的に全く救いのない話は好きではないことと現実に普通にある話なのであえて芝居で見ることに意義を感じないというかこの作品で作者が何を成し遂げようとしたのかがわからない、例えば笑ってもらおうでも、泣いてもらおうでも、ワクワクしてもらおうでもいいのだが、大きく感情の動く作品ではない。正直この作品はちゃんと作りすぎていてモヤモヤ以上の感情がわかない。間違いなくお芝居自体は見応えはあるが、いやでも社会人となると経験するものをあえて劇場に足を運んで芝居で見ようと思うのか。ごく一部の経験しないような人にはホラー的な面白さがあるのかもしれないが、多くの人には精神的にもあまりいいものではない。ただ基本的には好みの問題ではある。人物表現も丁寧でちょっとみようと思ったのが最後まで見てしまったほどに芝居としては見応えがあるのは間違いないのではあるが。もしかするとこの作者さんがさらに突き進んで突き抜けた先に大きな感情の動きがでるような作品を作るかもしれないし、そうなると土台がいいのですごく面白いと感じる作品が生まれるかもしれない。

舞台「やむにやまれぬ蒼~150年後の、君へ」

舞台「やむにやまれぬ蒼~150年後の、君へ」

寺子屋プロジェクト

シアター・アルファ東京(東京都)

2024/08/29 (木) ~ 2024/09/01 (日)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★★

面白い。
幕末の動乱劇にしては、派手な殺陣等のアクションシーンは少なく <志>を語るように紡いでいく。物語は、長州藩 吉田松陰の志を継いだ若者たちの迸る<思い>と 彼らを巡る女性たちの熱い<想い>、その両方の観点から描いているところが魅力的だ。男性だけ女性だけといった場面を取り入れ、その時代における男女の立場や役割を強調している、そこに心情が浮かび上がる。

時代は幕末、それもペリー来航した1850年頃から1890年の大日本帝国憲法公布までの約40年間を描いた物語。150年程前の話であるが、現代にも通じることー1人ひとりが自ら考え行動するーそこには当然 責任も伴う。そんな覚悟を熱く語るシーンが多い。パンフにも失敗を恐れず進むことを止めず諦めなかった彼らを<志士>と記している。

公演の特長は、踊り手2人が しなやかに舞うことによって場面転換を行い、生演奏で情況・状況の変化や雰囲気を効果的に盛り上げる。踊り手は、劇中の人物たちの衣裳(和装)と違い、現代的な それも華やかな色彩の物。そこに演出のメリハリをつけることによってトピック的な出来事を印象的に描き出す。脚本の山崎愛美さんが前説を担当し、時代劇が好きか嫌いか(端的に言えば明治維新に詳しいか)を観客に問うていたが、たとえ疎くても本公演は楽しめる。
(上演時間2時間50分 途中休憩10分 *カーテンコール含めると3時間超) 

ネタバレBOX

下手から上手にかけて段々と高くなる段差ある横台。その前後ー前(客席側)が演技スペース、横台の後が生演奏(4人)を行うスペース。公演の特徴は、演奏(キーボード、バイオリン、笛 太鼓等の和楽器)と踊りの臨場感、この相乗効果が実に見事。登場人物の衣裳は 和装から洋装、そして踊り手は 色鮮やか 軽やかな浮遊感ある衣裳で舞う。薄布を靡かせ舞うことによって場転換する、それで情況・状況の変化が一目でわかる。ちなみに踊り手衣裳の色彩は赤と青など補色、勿論 色には意味合いを持たせ、例えば赤は血であり絆、青は薄帯布を波打たせることで海などの情景を表現する。

物語は、松下村塾の吉田松陰とその門下生を中心に描いている。そのため幕末、明治維新に関わる有名な人物や組織はあまり登場しない。例えば坂本龍馬や新選組など、魅力的な題材よりは<時代>という変遷(歴史)の中で、松下村塾の若者達がどのような<志>のもとで生きたか を紡ぐ。志士が駆け抜けた幕末・明治維新、それをテンポよく展開し飽きさせない。歴史を通して、未来を自分の意志で切り開くための経験値が示される。偉人の若かりし頃、挫折・苦悩等どう もがいて偉業を成し遂げたか、それを現代に繋げ考えさせる。

演技は、とにかく情熱的な語りと動きが印象的だ。そんな中で高杉晋作の最期、正妻と妾の夫々の立場と実情を情緒的に描いた場面が胸に迫る。女優2人の好演もあり、泣ける場面として印象的だった。熱いと言えば、オープニングアクトの月性の<志>を抱いて生きているか、そんな台詞が全編を貫いている。
次回公演も楽しみにしております。
『海月』「〜いつも編・いつか編〜」

『海月』「〜いつも編・いつか編〜」

海ねこ症候群

王子スタジオ1(東京都)

2024/08/27 (火) ~ 2024/09/01 (日)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★★★

鑑賞日2024/08/30 (金) 19:30

いつも編。55分。休憩なし。

トナルトコレハ

トナルトコレハ

鳥塚企画

早稲田小劇場どらま館(東京都)

2024/08/30 (金) ~ 2024/09/02 (月)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★★

鑑賞日2024/08/30 (金) 13:00

45分。休憩なし。

徒

劇団スポーツ

小劇場 楽園(東京都)

2024/08/28 (水) ~ 2024/09/01 (日)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★

鑑賞日2024/08/29 (木) 19:00

110分。休憩なし。

舞台「やむにやまれぬ蒼~150年後の、君へ」

舞台「やむにやまれぬ蒼~150年後の、君へ」

寺子屋プロジェクト

シアター・アルファ東京(東京都)

2024/08/29 (木) ~ 2024/09/01 (日)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★★★

すばらしかったです。てか、めちゃくちゃよかったです。劇伴も生バンドで音量もちょうどよく役者さんのセリフのじゃまにならずすごくよかったです。3時間以上の舞台ではありましたが、流れがスムースでストレス感じること鳴く3時間観劇することができました。あと、紐と布と光だけであそこまで場面設定ができるんだなーと感心しちゃいました。これまで佐幕vs.倒幕ネタの舞台いくつも観てきましたが今回のものはベスト5に入るクオリティでした^^ あ、そうそう、ダンサーさんのダンス、秀逸でした。

「Collapse Of Values 」 Episode 2 Truth

「Collapse Of Values 」 Episode 2 Truth

SFIDA ENTERTAINMENT

テアトルBONBON(東京都)

2024/08/28 (水) ~ 2024/09/01 (日)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★★★

すばらしかったです。映画のようなつくりで見応えがありました。役者さん、文字通り熱演でしたね。てか、役者さん、みんな美男美女ですね^^ 最後の演説は社会風刺が効いていて聴き応えがありました。臓器移植ネタではありますが、アウトレージな内容でもありますよねw 仁義なき戦いというかw

天使のように微笑んで 財布なくしてガム踏んで

天使のように微笑んで 財布なくしてガム踏んで

株式会社NLT

博品館劇場(東京都)

2024/08/28 (水) ~ 2024/09/01 (日)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★★★

鑑賞日2024/08/30 (金) 19:00

シンプルに素直に笑えました!満足です!

Re: プレイバックpart3

Re: プレイバックpart3

劇団チャリT企画

駅前劇場(東京都)

2024/08/28 (水) ~ 2024/09/01 (日)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★★

鑑賞日2024/08/30 (金) 14:00

とことん怖く、深刻に描こうとすればそういうふうにも描ける題材を、笑いやおふざけを混ぜて取っ付きやすくしている作風はいつもの通り。この作品の元となった謎の多い飛行機墜落事故(?)、一刻も早く真相が解明されることを私も願ってます。

Re: プレイバックpart3

Re: プレイバックpart3

劇団チャリT企画

駅前劇場(東京都)

2024/08/28 (水) ~ 2024/09/01 (日)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★★★

鑑賞日2024/08/30 (金) 14:00

座席1階

カセットテープを愛用して音楽を聴いていた世代にはぐっと刺さる舞台。開演前に流れている昭和のJポップも盛り上げ効果が絶大だ。

とあるぼろアパートで白骨化死体が発見され、たまたま連絡が付いた故人の甥が残置物の片付けのために友人を伴って訪れる。故人はカセットテープにある告白を残していた。今どき、カセットテープを再生するラジカセを探すのも大変だが、昭和世代の大家さんから借りて再生する。気を持たせたまま終わるA面を聞き、さらにB面を聞く。ところがそれだけでは故人が言いたかったことはさっぱり分からない。そんな時に、ひょんなことで別のカセットテープを甥が手に入れる。
「ふざけた社会派」を標榜するチャリT企画だが、今作は結構シリアスである。もちろん、笑いのツボはあちこちに仕掛けられていて面白いのだが、この舞台が伝えるメッセージは明白だ。いろんな事件・出来事を取り上げているチャリT企画。さすがに今回扱った事件は単純に笑い飛ばすわけにはいかなかったのだろう。いつもとテイストは少し異なっても社会派劇としてのずっしり重いところをしっかり押さえていた。これはこれで、納得できる舞台である。

おもしろかった。見た方がいいと思います。

妻の感覚

妻の感覚

公益社団法人日本劇団協議会

東演パラータ(東京都)

2024/08/12 (月) ~ 2024/08/18 (日)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★

「建国神話が浮かび上がらせる韓国社会」

 日本でも邦訳上演されてきた韓国の劇作家コ・ヨノクの作品である。過去にも同作を手掛けたことがあるキム・ジョンが今回も演出した。

ネタバレBOX


 山で迷子になった女(小暮智美)は熊に助けられ、やがて子どもを授かる。しかし女は熊との間に設けた子どもを猟師(荒川大三朗)に殺されてしまう。他方、森に置き去りにされた男(大塚航二朗)は女に助けられ、やがて女との間に子どもを設ける。当初は幸せそうであったが、やがて二人の間にじょじょにほころびが生じはじめる。男は女友達(荒木真有美)への思いに揺れ、会社では社長(齊藤尊史)に詰め寄られる。かたや女は母(鬼頭典子)との関係に悩む。不穏な空気にはかつて女が交わった熊の存在が横たわりーー

 パンフレットに掲載された作者のコメントによれば、韓国の原始部族には熊と人が結婚し家族を築く神話があり、それが建国神話になっているのだという。本作は韓国社会が歴史的に直面してきた家父長制への鋭い批判を描きつつ、家庭や会社に縛られてがんじがらめになっている男性の嘆きを描くことに成功していた。

 殺風景な舞台上では出演者が箱馬を使い、心情を代弁するかのようにブロックを立てたり、演技スペースを作っていたところは見応えがあった。男と女以外の俳優が持役以外の役に声を当てたり、舞台上を駆け回るようにして動くなど手数が多い演出はめまぐるしい。惜しむらくは照明変化が原色中心で微細な心情を描くまでには至ってなかった点と、男と女の話に焦点が絞られる後半は他の俳優が作品のパーツのように扱われていた点である。
ニルバナナナノニ

ニルバナナナノニ

発条ロールシアター

中野スタジオあくとれ(東京都)

2024/08/29 (木) ~ 2024/09/01 (日)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★

表層的には、説明通り 河原に立つブルーシートハウスに住む男を中心とした日常劇。しかし物語に隠された劇作家の意図は別のところにあるような気がしてならない。この意図に共感し共鳴できるか否かで評価が分かれそう。観劇した日は台風の影響で大雨、全国各地で被害が出ているとの報道もある。この物語は、そんな自然災害を連想させ、観る者に強く訴えてくるような。

一方、説明通りの解釈ならば、社会生活に疲れた人々が何のしがらみもない 自由気ままに過ごす場所を見つけ ひとときの幸福に浸っている。物質的な富はないが心の安息は得られている、人は何かを得て何かを捨てている、そんな当たり前の光景が描かれている。

不寛容・無関心になってきた今だからこそ、信じ助け合うという共助・共生が大切だと。ただ 演劇の面白さやメッセージがストレートに伝わるかどうかは分からない。
(上演時間1時間35分 休憩なし) 

ネタバレBOX

舞台美術…冒頭はブルーシートで覆った段ボール箱、下手に洗濯物が干してある。場面に応じて段ボール箱を変形させて、ブルーシートハウス内や宮殿風の光景を現す。すべて段ボール箱で作っており、ホームレス(安価 簡易?)という状況を表現している。

説明通りであれば、空腹で行き倒れになりそうは浮浪者、自殺しようとして止められたサラリーマン、浮浪者から荷物をひったくろうとした男、そして 立ちんぼ している若い女性、毎日曜日に慰問にやって来る女性歌手、そんな個性豊かで癖が強い人々が集まってくる。そして何かとブルーシートハウスに来る市役所の職員、当初は立ち退きを巡る攻防かと思っていたが…。それぞれ心に何らかの心配事を抱え、それでも淡々と暮らしている。その光景は<平和平穏>といった当たり前の暮らしを独特の世界観で描いている。

自分の勝手解釈は、ラスト 敢えて波の音を響かせることから、ブルーシートハウスに身を寄せているのは被災者で、そこに行政(市の職員)が絡んだ物語。勿論 東日本大震災を始めとした被災の光景を連想した。劇中 毎日曜日に慰問にやって来る歌手スーパースター、実は八百屋を営んでいる。夫は漁に出たまま何年も帰らず、1人で子供を育て商売を営んでいる。そんな夫から手紙が届くが ずいぶん前に投函されたものが今届く。立ちんぼの少女に親兄弟はいるのか はっきり描かない。何となく被災孤児、人に優しくされるよりは 自分の方から寄り添いたい。そこに寂しいが逞しく生きていくといった気持が見えるよう。更に、作演出の則末チエさん演じる松前数之子が、他の浮浪者の情報を収集し市職員に提供している。それが 被災者の情報・動向を官民一体となって取り組んでいるように思える。

市職員は、生活保護に係る手続など面倒を見てくれるが、その支給される金額の一部を搾取している。小悪党的な役割を担っているが、例えば元・経済産業省のキャリア官僚による“新型コロナ対策”の給付金を騙し取った詐欺罪などを連想する。苦境に喘いでいる人々=庶民の<非常時 不安>が透けて見えるのだが…。
この公演は、観る人の感性に委ねられているように思う。
次回公演も楽しみにしております。
ニルバナナナノニ

ニルバナナナノニ

発条ロールシアター

中野スタジオあくとれ(東京都)

2024/08/29 (木) ~ 2024/09/01 (日)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★★

疲れている人、ささくれている人はきっとホッとすると思います。

ネタバレBOX

あんぱんが心のサスペンションになるとは!
穏やかな罅

穏やかな罅

サンハロンシアター

OFF OFFシアター(東京都)

2024/08/29 (木) ~ 2024/09/01 (日)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★

大図愛さんを年に一度は観ようと思っているのでチケットを予約したものの当日はまさかの台風襲来、笑えるくらいの土砂降り。
だが作品は好きなテイスト。全国の大図愛マニアは必見、集結セヨ。

思えば中国に返還される前の香港映画にはこういう作品が多々あった。ジャッキー・チェン、サモ・ハン・キンポー、ユン・ピョウの出ない後期『福星』シリーズな感じ。一体客層のターゲットを何処に絞っているのか全くの理解不能。だがそこがいい。心を込めて作った誰も観ない作品、それは極上だ。いつか世界の何処かで孤独な誰かがそれを眺めてひっそりと微笑むことだろう、きっと。ジョン・シャム(モジャ)やリチャード・ン(チンケ)を思わせる何の取り柄もないおっさん達の与太話。

内藤トモヤ氏と田野良樹氏は前の会社の同僚、今はボロアパートで同居暮らしをしている。建物の老朽化により立ち退きを迫られ、住民はちょっとヤクザっぽい連中との交渉中。そんな中、ポストに入っていたチラシの一枚にリフレ『水族館』と。ちょっとどんなものか気になる二人だったが···。北朝鮮からの弾道ミサイルが天気のように予報される呑気な日本の一コマ。

高齢者モラトリアムはすぐにでも確立されるであろうジャンル。今作はリアルと文学の間を器用に突いている。
『穏やかなヒビ』。日々なのか罅なのか。どっかで何かを間違えた気がしながら暮らしている。さて自分は一体何を間違えたのか?流れる曲は椎名林檎やらエモ切ない感傷的なもの。新海誠の高齢者ヴァージョン。
是非観に行って頂きたい。

ネタバレBOX

ハロン(furlong)とはイギリス英語で200mの単位。上がり3ハロンとは競馬用語でゴールまでのラスト・スパート600mのこと。多分そういう意味だと思っているが、綴りが3 far longなので違うかも知れない。

内藤トモヤ氏は人懐っこさがなべおさみっぽい。
寸詰まったズボンの丈をやたら気にする田野良樹氏は羽生善治顔。
彼の姉の英枝さん、その旦那の刀根直人氏。自分はFtMと受け取ったが確証はない。
リフレ嬢・大図愛さんは魚の着ぐるみパーカーで可愛らしい。リアルな存在感は今作も抜群。行き場のない心をただゆらゆら揺らしている。
店長・和泉輪さんは男役なのか?
お洒落な重井貢治氏は『不良牧師!』ことアーサー・ホーランドっぽい。
垣内あきら氏はメヒコのマフィア調でサムソン冬木を思わせるチンピラ風味。
麻乃なつ希さんもワンシーンだが印象的。彼女の買ってきた菓子折りがエピローグに生きる。

エピローグはアカデミー賞を取った『クラッシュ』を思わせるもの。

もっと長く濃密に描いてもよかった。それには長編小説を書き切る覚悟が必要。人間模様の羅列だけではなく、生きる人と死ぬ人それぞれの葛藤と取っ組み合わなくては。いつか作家にとっての完全版を観たいもの。

※丁寧なコメント恐れ入ります。そりゃ次回も観に行かせて頂きます。
穏やかな罅

穏やかな罅

サンハロンシアター

OFF OFFシアター(東京都)

2024/08/29 (木) ~ 2024/09/01 (日)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★★

役者さんも観客もシニアの割合が高い舞台。シニアには身につまされるエピソードばかりで、う~んと考えさせられます。みんなお星さまになっちゃえばいいのに。

Re: プレイバックpart3

Re: プレイバックpart3

劇団チャリT企画

駅前劇場(東京都)

2024/08/28 (水) ~ 2024/09/01 (日)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★★

鑑賞日2024/07/02 (火) 19:30

座席1階A列11番

公演初日に最前列で鑑賞。

コメディーとトラジディーの入り混じった展開は劇団チャリT企画らしさが感じられ、「軍隊が守るものは何なのか」を教えてくれる秀逸な作品でした。

「推し」の本宮真緒さんが本当にお美しい。

世界 、

世界 、

演劇企画集団Jr.5(ジュニアファイブ)

ウエストエンドスタジオ(東京都)

2024/08/28 (水) ~ 2024/09/03 (火)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★★

面白い、お薦め。
現代社会の暗部を抉り出した観応えあるSF作品。第四次世界大戦以降、厚い雲に覆われ太陽が見えなくなった世界。そんな環境下においても 人間社会の不平等や不寛容は存在する。いや不自由で生活苦だからこそ、その意識は剝き出しになる。そんな人間(個人)と社会(政治)の不都合(暗部)が鮮明に浮かび上がる秀作。
因みに、厚い雲に覆われ太陽が見えなくなった原因は、原爆等 人間に制御不能な新兵器の影響を想像してしまう。

表層的には、骨太で重厚な雰囲気を漂わせているが、随所に笑いの場面を鏤めるなど飽きさせない工夫をしている。舞台美術・技術が見事で、その妖幻といった雰囲気が物語を支えているといっても過言ではないだろう。勿論 内田健介さん、松本紀保さんを始めとした役者陣の演技力は確かで、圧倒的な熱量で物語へ惹き込んでいく。週末、台風の中 出張がなければ もう一度観たかった。
(上演時間2時間 休憩なし) 

ネタバレBOX

舞台美術は、気鋭のロープアーティスト・緊縛師である、一(はじめ)鬼のこ氏による赤い縄を天井まで張り巡らせた蜘蛛の巣 状のオブジェ、その中心部に光る球体。そして収納型の箱馬がいくつか置かれている。全員この赤い縄を(スカーフのように)首に締めており、いろいろな(例えば自縄自縛といった)意味を持たせているようだ。

当日パンフに梗概が記されているが、それによると1000年前に第四次世界大戦が勃発し、厚い雲に覆われた国(王制)が舞台。お金以上に光の鉱石が重宝されており、その光石はマリシテン財団が所有する土地でしか採掘されない。国が財団から光を買い取り、国民に配給している。光は暮らしや動植物の成長に不可欠なもの。月に一度、社会的地位や職種、労働の量によって光の分配が決まる、というもの。

規則・規制の順守、その秩序が守られなければ国は崩壊する。その理屈はもっとものようだが、そのルールは誰がどのような手続で決めるのか。王制といっても 光石がなければ暮らしは成り立たず、実質的な生殺与奪権は財団が握っている。財団の思惑は国をも動かす。翻って、企業献金を始め 色々な資金集めに汲々としている政治(家)、利権に群がる富裕層もいれば、生活苦に喘ぐ貧民層もいる。政治はどこを向き、進もうとしているのか。一方、人の心情を覗いてみれば、嘘偽り、甘言を弄し惑わす。そして嫉妬や羨望が渦巻く深淵が透けて見えてくる。

神の存在を信じるか否か。同じ王宮で働く下男のキーチ・カワウチ(内田健介サン)とエタ(奥田務サン)による存在・非存在の議論は、悪魔の照明 を思わせる緊張と迫力ある場面。神の存在を信じるエタ曰く、1000年もの間 戦争はなく平和に暮らしてきた。それは神の御加護だと。平和であれば多少の生活苦など…その次元の異なる屁理屈が怖い。法の制定と施行を順次行なう国(王)の施策と早急に制定・実施を迫る財団の思惑。そこに絡む風評やデマを厳しく取り締まり、財団への批判をかわす。インターネットの普及によって情報の真偽を確かめる術が難しくなった状況に重なるようだ。そしてコロナ禍を経て不寛容で無関心といった風潮が…。

舞台は、時代や場所を特定させないためにSF。しかし描かれているのは まさしく現代である。登場するのはカワウチ一家・王と大臣・財団で、そこには国民・為政・企業団体といった姿を重ねる。そして衣裳も それぞれ簡素な貫頭衣・上質な白服・黒スーツといった違いで表す。照明は薄暗い中で球体に光を灯す、そして鐘の音で一人ひとり退場(逝去)するラストシーンが実に印象的だ。
次回公演も楽しみにしております。
『大洗にも星はふるなり』

『大洗にも星はふるなり』

ゴツプロ!

「劇」小劇場(東京都)

2024/08/28 (水) ~ 2024/09/08 (日)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★

鑑賞日2024/08/29 (木) 19:00

価格4,500円

ゴツプロ青春の会!台風に負けず観劇して参りました。
「江の島」だけど、舞台は茨城県の大洗の「海の家」です。ひと夏の思い出には「恋」がつきもの。
海の家に共に働く「江里子」に惚れこむ7人の男たちが繰り広げる妄想バトルは必見です。
物語の随所に笑いのエッセンスが散りばめられていて、思春期男子が考えそうな想像力を見事に体現してくれていますよ。

ネタバレBOX

舞台となる海の家「江の島」がしっかりと作り込まれていて好印象。
思わずアイスが食べたくなるような、シーズンぴったりのお芝居だったと思います。
キャストも個性豊かな雄雄しいメンツ。癖が強くて、皆ボケるわ騒ぐわで大混戦‼くだらない事で大笑い出来る温かさが魅力的。手紙で江里子に呼び出されたメンズは「誰が江里子と結ばれるか」で彼女への愛をユーモアいっぱいに語りだします。ストッパー役だった弁護士もまさかのキャラ変。配役が持つ理想と現実への対比が上手です。

初見の劇団でしたが、内容はとても分かりやすく雰囲気の良い空間を作り出していたと思います。
脚本に関しては、笑いで盛り上がって熱量が上がっていく半面、妄想・勘違いにピントが当たり過ぎて、微妙な間が生まれてしまったり、独りよがりな演技が長いと観客側も飽きてしまうかな…と懸念点がありました。
天使のように微笑んで 財布なくしてガム踏んで

天使のように微笑んで 財布なくしてガム踏んで

株式会社NLT

博品館劇場(東京都)

2024/08/28 (水) ~ 2024/09/01 (日)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★★★

オムニバスのコント作品。客を選ばないストレートな笑いの中にも、作演出の上田さんのセンスが光っていて見ていて気持ちがよかった。

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